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二十話 クリスマスイブの奇跡

メリークリスマスイブです。


真琴さんにプロポーズを受けた夜、なかなか寝付け無くて夜の浜辺に出て歩いていた。

今夜は満月(まんげつ)、寄り添う様に二つの月が空に浮かんでいる。

二つの月が満月(まんげつ)の状態で並んで居るのは珍しい事で少し得した気分になる。

潮風を浴びながらゆっくりと浜辺を歩いて居ると何処からか啜り泣く声が聞こえる。

深夜の浜辺で啜り泣く声・・軽くホラーである。

声の聞こえる方に歩いて行くと、そこに居たのは白石さんだった。

岩場の近くで膝を抱えている。


「こんな時間に何してるの?てか何で泣いてるの?」


月明かりのお陰で周囲は明るく相手の顔くらいはハッキリ見える。

白石さんの顔を見ると目元が少し赤くなっている事に気付く。


「あんたに関係無いでしょ・・・」


手に持っていた何かを隠す様に身をよじる。

一昨日の料理をした時に少しは仲良くなったと思ったのは気のせいだった様だ。


「いやいや、こんな時間に膝抱えて啜り泣いてたら誰でも声掛けるって。悩みが有るなら相談に乗るよ?」


「うるさいっ、関係無いって言ってるでしょ、ほっといてよ」


そう言って浜辺の砂を投げつけてくる。

それをもろに頭から浴びた俺は顔中砂だらけになる。


「ペッペッ、最悪口に入ったし」


「ごっ、ごめんそんなつもりじゃ・・」


じゃあどんなつもりで砂を投げたのか問いただしたかったが止めておいた方が良いだろう。


「向こうじゃ頼りないかもだけど、此方ならある程度は力に成れるはずだから、ダメ元で良いから話してみてよ。取り敢えずこれ」


俺はストレージからタオルを取り出し水の魔法で濡らして絞り渡す。


「ありがと・・」


白石さんは濡れタオルを受け取り涙の跡を拭いて行く。

其から少しの間辺りを沈黙が支配する。

そして徐に語り出す。


「家(うち)ね母子家庭なんだ・・。去年お父さんが行方不明に成ったの。山岳写真が趣味でねいつもの様に山に出掛けて行ったっきり・・。遭難した訳でも熊に襲われた訳でも無くて忽然と姿を眩ましたって一緒に行ってた人が言ってた。私の家が定食屋なのは知ってるんだよね?お父さんが居なく成って今かなりヤバイ状況なの。高校になってからは家を手伝いながら時々短期のバイトしながら家計を支えてる。こんな格好してるのも一輝の家の伝(つて)で読モとかやってるからなんだ。何処かでお父さんが私が載ってる雑誌を見てくれたら帰って来てくれるんじゃないかって・・。それなのに私まで居なく成ったら・・・」


再び泣き出す白石さん。

普段の見た目や素行に反してかなり重い物を背負っていた。

元の世界に帰れるけど帰るまでは行方不明扱い、確かに聞いた状況では落ち込むのも無理はない。


「さっき隠したのは?」


無言で俺に差し出して来たのは写真だった。


「お父さんが居なく成る前に最後に撮った写真でね、御守りの替わりに持ってるの。全く効果無かったけど」


皮肉めいて笑う白石さん。

写真を受け取った俺は月明かりでは細部まで分からないから光の魔法で光源を出して写真を見る。

そこには四人家族が写っていた。

白石さん (まぁ全員白石さんなのだが) と両親と弟と見られる小・中学生位の少年。

俺は写真に写った父親に見覚えがあった。


「これ、リッキーじゃね?」


俺が発した言葉に


「ふぇっ?」


間の抜けた返事を返す。


「間違い無いって、城の厨房で料理作ってるリッキーだ。親父さんの名前は?」


「力斗(りきと)だけど・・・」


力斗、だから “リッキー“ って呼ばれてたのか。


「大丈夫、親父さんは無事だよ。俺の実家?の城で働いているから。此方ではリッキーって呼ばれててかなり腕が立つから和食、此方では大和食(やまとしょく)って呼ばれてるけどそれを専門に作ってる」


「本当に?」


「マジで、でもリッキーが転移者って事は俺聞いて無いんだよね。間違い無いと思うけど一応調べて見るからこれに触って」


ストレージから取り出したタブレット端末に触れて貰い俺はスキルを発動させる。

『世界記録全集(アカシックレコード)』を発動させてネットサーフィンの要領で情報を辿って行く。


「うん、間違い無い。リッキーは白石さんの親父さんだよ。城に仕えて十数年に成るらしいけど・・・、転移した時にかなり過去に飛ばされたみたいだね」


「??、お父さんが居なく成ったの去年だよ?過去に飛ばされる?」


俺の説明不足でいまいち理解出来ていない。


「えっと、解りやすく説明すると俺達の世界と此方の世界は同じ様に時間が進んでるんだけど普通は今回の俺達の様にXX年にイレギュラーゲートで飛ばされたらXX年のエクセレートにたどり着く。だけど、ごく稀に過去に飛ばされる事があるらしいんだ。俺の親父もそうだったらしいけど白石さんの親父さんも過去に飛ばされたんだと思う」


俺の親父、地球の戸籍上はアラフォーだけど実際の年齢は俺も把握していない。

Lvが1000を超えて居るのは確実で俺と同じ魔人に進化している為見た目は若いままで全く老いない。

この世界はLvが高くなると老いにくくなるからリッキーもLvがそこそこ高い様で見た目は中年のオッサン、飛ばされた当時と見た目は変わって無い。


「よかった、生きててくれた・・・」


三度(みたび)涙を流す白石さんだが今回は嬉しくて泣いている。

日付は既に変わり地球ならクリスマスイブ。

本来なら俺達がスキー合宿から帰って来る筈だった日。

エクセレートではクリスマスの風習は無いけどせっかくの奇跡だから朝にでも全員に説明してちょっとしたパーティーでもしようと思う。





遭難三日目終了



これからも頑張りますので宜しくお願いします。

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