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町まで飛ぼうぜ 2



―――なんという日だ、最悪だぜ。


オロッソ、つまり俺はガラムと並んで飛竜で飛ぶ。

今日も快晴、視界は良好だった。

愛竜ワンフー・エイティは先週ちょっと腹の調子が悪そうだったが、別段それ以外問題はなかった―――まぁどこかでまた余計なものを食ったのだろう。

。今日も今日とて、配達に精を出そうとしていた。


しかし、盗賊団に狙われるなんて言うのは、ついていない。

ついていないが、思い当たる何か、予感はあった。

確かに、いつだったか安い酒屋に行った時、盗賊団崩れが人気のない森を通る時を集団で狙う、なんていう噂話を酔っ払い特有の大きな声で噂している視線の定まっていない若者がいたものだ。

その際、乗っている馬や、この世界ではそう珍しくもない様々なモンスターを奪われるという可能性はあった。


飛竜乗りは流石に例外だ、襲われはしないと思っていたのだが、盗賊団に飛竜使いがいないという根拠も、また、無いのである。

戦に負けた傭兵や竜乗りなどの中に、その手の、悪の心を持った連中がいるとか、なんとか。

人間に捨てられた竜の幽霊だのなんだの、そんなことも言っている。

なにぶん、思考回路を上着と一緒に脱いだ酔っ払いの発言なので、信頼性は薄い。

オカルトと言った方がいい性質のものもある。


だがこのナツナ=マウンテンは俺たちの地元だ。

そう簡単に追いつかれはしない―――。


「あのう、すみまッせーん!」


呼ばれて顔をそちらに向けると、盗賊団おそらくがいた。

すぐ隣を飛んでいた。


「う、ううわあぁ―――ッ!?」


「あ、あのう!俺ぇ―――ちょっと道を御尋ねしたいんですけれどォオ!」


飛竜に乗り、高速で飛びながら、という状況。

そのため必然的に大声で話しかけて来る男。

この男、追いついてきたのか―――。

見かけない面だし、服装である。


その所為で普段の倍驚いた俺の、その声は必要以上に、大声になった。

谷間間で、《《やまびこ》》のように反響して四方八方に拡声し、俺の恐怖心をさらに揺さぶった。

時期が時期ならば、雪崩(なだれ)の原因になり得る振動だ。


「うわっ!なんだ声、大きい―――い、異世界から来たので、ちょっと道を尋ねて」


「やめろォ!俺を襲うんだな!襲うんだな俺を襲うつもっりでぇええ!」


「いや、ですからちょっと、町に!町に行きたくて」


「盗賊団みたいにーッ!盗賊団みたいに!俺を襲うんだな貴様、ナメんなよ、ここは俺の地元だ!」


「イヤ、だから―――」


こんな狭い谷間で並走してくるとは、かなりの使い手だ。

道が狭いと速度も速く感じられる。

無論、その危険度も上がる

まさか―――今まで出会ったことがない奴だが、《《慣れている》》のか!?

このナツナ=マウンテンに!


前を飛ぶオロッソと目が合った―――。

そいつを早く振りきれ、と首だけで指示しているようだ。


「上等だ!俺だってやる時はやるんだぜ!いくぜワンフー・エイティ!」


『――ォワォオオオン!』


竜の咆哮が谷間に響く。

鳴き声がワンって、まあ、ちょっと獣系モンスターっぽいので、相棒であるこの竜種はワンフーと呼ばれている。


結果から言ってしまえば、俺は盗賊団の端くれである若い男から、逃げ切ることは出来ないまま、ふもとの町に到着した。

そして別に、盗賊団の端くれではないということを説明された。


本当かよ、信じがたい。

彼がいう話は何一つ信用できなかった。

悪党ではない?

じゃああの男の後ろで気絶している女の子は一体なんだというのだ。


「誤解ですよ!この女神が勝手に!」


彼は必死になって弁解していた。


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