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付け入る隙

ギ ギャギャ―――ゴヒャァ ァ ア ア

 

クルマ二台分はあるだろうが、それでも狭い谷を二頭の竜が高速で駆け抜ける。

空を駆ける。

眼下には流れの速い川が轟音をたてている。


そんな空間で、イエローの飛竜の搭乗者、竜騎士クリスは焦っていた。

肩ががくがくと震える。

強風を、イエローの飛竜と硬質な鎧が切り裂く。


「武者震いだぜ、これはァ………!」


右、左と続いただけで相手が一頭身大きく見えた―――つまり、ぐんと近づいてきたのだ。

この狭い谷道を俺よりも速く下っている―――何よりの証拠。


はやい相手が後ろから追いついてきたことに対して、ある種の嬉しさがある。

炸裂する空気を感じながら、大きく翼を広げた。

そうだ―――翼を広げろ、それを意識しろ。

それで後ろの奴が追い抜けるスペースは消える―――元々、特に翼がおおきな品種の飛竜であり、俺はそこに惚れたのだ。


狭い谷道でフェルグランドがしっかり翼を広げてしまえば、身元不明のゴーストドラゴンが追い抜けるスペースはかなり限られる。

………あまり格好のいい手段じゃあないから、普段は使わないようにしているんだが。


「さあ、どこから来る………ナツナのゴースト!?」


右か左か―――どこからでも来い。

思えば、ここまで必死になってのブロックは久しぶりだ。

奴は速い―――ああそうだ、速すぎる。

だからこそ、この警戒だ。

気を抜けば前のようにあっさりと抜かれてしまうと警戒しているからこそ、この対応だ。

ただでさえ速いヤツが、自由にスペースを使われればまさしく縦横無尽にどこからでも行かれるだろう。

俺の相棒にいつもよりスペースを使ってのコーナーリングを指示する。


まずは、このセコい小手調べのような作戦に構えておくしかないだろう。

これはあくまで第一段階だがな………!

このままでは終わらんぜ。





―――




「あぁ、そういう感じか………」


つまらないとは思わなかった。

むしろ当然の対応だろうと思った。

目の前を飛ぶイエローの飛竜はかなりの使い手だ。

しかもだ―――前よりも隙がなくなっている。


「一回抜いちまったからなぁ」


以前会ったときは不意打ち同然だったから行けたものの、二度目が同じように通用するわけはない。

いや、通用するかもしれないが何らかの妨害、引っ掛かりは避けられないだろう。

難易度は上がる。


「ていうかデカいな、あのウイング………!ウイングっていうか、翼っていうか」


自分の相棒と、全長こそ大差ないが、翼だけを計れば1.5倍ほどの違いはあるだろう。

これは厄介だ―――道幅は狭いし、三車線あるところで勝負に出るしかない―――。

いや、この世界に車線という概念は無いのだったか。


「まあ、相棒に乗り始めてわかったこともあるし、この世界でつかんだ《《コツ》》を使っていくしかないか」


幸いなことに、付け入る隙はある。

前のイエローの飛竜、速いことは速いし大きな翼でのブロックは厄介だが、それでも―――それでもブロックしている。

後ろの俺を気にして、ブロックを心掛けながら飛んでいる。

つまり、全速力で飛べているわけではないのだ。


「まずはこれで行くか………!」


走行する空路ラインを少し変えていく―――その変化は、右でも左でも、無かった。



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