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見上げて、背後を

ナツナ・マウンテンの入り口。

ミチユキを一足先にたどり着いたのはイエローの翼が強く主張する、大きな飛竜だった―――。




―――――――


山頂が近づいてきたので、俺はコースをさがす。

山頂自体は岩の集まりのような形状だが、その下を見れば緑も多い。

葉も多い―――前方が見えづらい。

余分に高度を上げ、飛び上がって見下ろし、ウェルギリウス商会の旗を見つける。

今回のレースでは下りのコースだ

川の流れは高いところから低いところへと流れる道理がある限り、岩肌の隙間、他にも同様だ。

背後には誰もいないし、呼吸は整える。


「ちゃんと見えるように旗を振れよ!」


すれ違いざまに、商会の係に言う。

その男はやや表情をこわばらせたが、俺の本心は文句をつける事ではない。

ちゃんとコースを把握して、そしてすぐに追いついて来やがれ。


俺はこのレースで圧勝したいわけではない。

あいつとバトルをしたいのだ。



ナツナの谷に侵入すると、急に狭くなった道で、空気の変化を感じ取った。

かなり下だが、水が流れている―――激流だ。

スタートからしばらくは直線だが、そこからは俺の地元とは異なる。

まずは左へゆっくりと曲がる。


しかし、あの飛竜が実在するとはな―――しかもナツナの飛竜発送団?のお抱えだとは―――。


「あのやる気なさそーな(ツラ)した奴―――見ない顔つきだな―――どこか違う地方出身なのか?」


奴についての情報は少ない―――だが情報が少ないことは俺にとってデメリットではないぜ。

自分(てめえ)の力だけで勝つ。

俺が選んだ飛竜が、フェルグランドが速いから勝つ、それでいい。

情報を揃えて勝つのは、アニキがそういうタイプらしいが、俺はアニキとは違う美学を持っているぜ。


ウェルギリウス商会のレースである以前に、あのナツナのゴーストとのレースだ。

まずその勝負でキッチリ勝っておかないと、始まらないぜ。

勝ちたい。

負けたくない勝負だと、久しぶりに思える。


飛竜騎士団の名が有名になってから、戦場を駆けていても喧嘩を売られることはあった。

野良レースで馬鹿をやったこともある。

だが、本当に快進撃を続け、有名の程度が上がると、様子は変わってきた。


単なるポッと出の傭兵集団が、高額の報酬でないと仕事を引き受けないと制限するほど引っ張りだこになり、ついに王族が絡んで町のお抱えになってしまう。

暮らしは良くなった。

食べ物も良くなった。

保存がきく焼き方の、やたらと硬いパンの味を、忘れている自分がいた。

居場所は戦場ではなくなった。

どんな戦乱にも出向くのが使命、と思っていた時期は過ぎ去っていった。


違う傭兵団と縄張り争いのため、狭い谷道をどちらが速くはしなくなった―――しなくても生きていけるようになった。

興奮するバトルはない。

俺はバトルで本当に興奮することを、忘れていく。


どこか虚しかった。

速さの上、レベルの上。

知れば知るほど、この世界にライバルは減っていく。

『上』に行くにしたがって―――。

山の頂上は、ふもとよりも細い。


俺は飛び続けたが負け無しだった。

アニキ以外には。


幾つかのコーナーを確認しつつ抜ける。

前よりもよく見える―――前よりも速く飛べるように、何度も考え直した。

デカいウイングを、右に曲がるときは右翼を思いっきり下げて、腹をアウト側の崖壁に擦りつつ曲がる。

実際に擦ってはいけない―――飛竜は強靭なモンスターだが、このスピードで無茶をさせてはいけない。

崖に激突すれば、乗っている俺だって無事では済まないだろう。


訓練はしているので、手綱を握り背を叩けば今よりも強く羽ばたくだろう。

それを狭い谷道でどこまで攻め込めるかが、そう―――(キモ)だ。

最高速度との相談。

飛竜乗り(ドラゴンライダー)のレースとは―――そういうものだ。

以前よりは、道幅を使えている。

どれくらいのスピードならば行けるのかが、わかっている。

何度も繰り返し飛ぶことにより、思いっきり翼を伸ばせるエリアが増えた。



前方を確認しつつも、背後を何度も意識していた。

腹を外側にして曲がるとなると、フェルグランド

の背に乗る俺は内側になる。


見上げれば、曲がるときに背後の様子がわかるのだ。

背後に白と黒の影が、素早く動いた。

最初に追い付いてきたのはその飛竜らしい。


次のコーナーに侵入する頃には、俺の後ろに高速で迫る飛竜が、視認できた。



「あああ―――なんてこった、逃げ切れないのか」


追いつかれてしまった。

追いつかれてしまったので―――自然と笑みがこぼれる。


『 ギャギャ ギャ キシャ アアアアアアア!!』


お前も嬉しいかよ、フェルグランド。


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