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ビィ・ブロックの白竜


ミチユキたちが飛んでいる地点から大きく離れて、ビィ・ブロック。

そのスタート地点から谷にかけて、ラミンゾ村という小規模な村がある。

ウェルギリウス商会の新人女性会員、書類仕事なのに妙に楽しそうなことで有名なリーメは、この村を訪れていた。


商会から支給された衣服に、羊皮紙を束ねたものを持ち、馬車から降りる。

馬車といっても、最近は四足歩行種のモンスターが多種多様に活躍していて、この村でもいろんなモンスターが見られた。


小規模な村であるはずだったが、飛竜乗りの祭典として歴史的規模を誇る、イモール・ウェルギリウスの開催初日である。

そのルートの渦中、村には多くの人が集まっている。


「す、すごいなぁこの人だかりは―――」


馬で引いてきたのであろう荷台を、回収した即席の屋台。

そういった出店でものを売っている、多数の商人はウェルギリウスの許可を取ってある者たちだ。

彼らは焼いたパンに蜜をかけたものや割り氷、固めたホルン・カウの乳など様々な食品を提供している。

飛竜乗りの祭典、というよりも、もっと純粋なお祭り騒ぎであった。


「どうだい、そこのお嬢さん!ジュラ・バードの干し肉だよ!あっちの方では郷土料理さ!」


リーメも商人から快活な声を掛けられる。

笑顔は返しつつも、今日も商会の仕事出来ているのである。

目的の店に、ひたすら歩くしかない。

かくして、リーメも料金についての確認に、事務仕事に奔走していた。

レースが始まる前だけでなく、始まってからも当然気は抜けない。

目的の仕事場へと赴く彼女は、仕事熱心だ。

優しげな目をした店主の男と会話をした。


「はい、確かに確認いたしました………。商会での登録通りですね」


「ああ、ウチはしっかりやってるぜ、おかげさまで」


「お客さんが多いですね」


「ああ、正直言って、ウチの団員(モン)も手いっぱいだ―――こっちのビィ・ブロックを選んだ、それは良かったな」


「と、言いますと?」


「この辺りはヴェルシム騎士団長さまが、通る。ビィ・ブロックは―――だからスタート地点から近いこの村でも活気があふれている」


「騎士団長―――アオギ飛竜騎士団(ドラゴンナイツ)の団長様の事ですね?」


「そうだ、なにしろ優勝候補だからな。この人だかりは彼目当てだ」


店主は言いながらも、勘定票に鳥の羽ペンを走らせる。

ここは裏方だが、表では今も増えているし、店員の若者の声があちこちから聞こえてくる。

この人だかりは、他のブロックよりも多いという事か。



空のどこからか、音が聞こえてきた。

弦楽器で高音を引き散らすような、そんな音が。

風を鱗のついた翼で引き裂く音。

続いて、村ごと空気を揺らす、竜の咆哮。


『ィギャギャギャ      ゴヒャ アア ア ア ア』


リーメは店主に背を押され、屋根の下から出た。

村人の若い衆が、空の向こうを指差している。


「来たぞォ―――!」


先頭(アタマ)が騎士団長だァ!」


直ぐに白竜がやって来た。

青空を駆ける、白い彗星。

騎士団というからには甲冑で完全に身を包んでいるかとは思ったのだが、遠目には甲冑と軽装の入り混じりであった。


その白竜が先頭を取っている。

綺麗な竜だった。

村人の男衆の声を引き裂くように、女の黄色い声がきんきんと響く。

同性のリーメではあるが、若干威圧された気になる。


「―――オイ見ろ!仕掛けるぞ!」


ハッとする―――白竜に見とれている場合ではない、そのすぐ後ろには他の飛竜が追走しているのだ。

一つ、二つ―――三騎。

敵の飛竜乗り(ドラゴンライダー)が迫っている。

大勢の観客が注目する中、一騎が風に立ち向かって大顎を開き、火球を放つ。

ぐんぐんと伸びるその火球は、白竜が滑るように身を傾けることで、完全に回避された。


「ちィィ………ッ!」


「落ち着け、まだだ!」


今度は残りの二匹の竜が、強く加速した。

見ている間に、二匹が追い付き、左右から挟み込まれるような位置関係になる白竜。

リーメは心臓の音が早くなるのを感じた。

右の飛竜が、真横に向かって火球を放つ。

あッと叫ぶ間もなく、白竜が火球の下を潜り抜ける。

火球は左側から虎視眈々と狙っていた飛竜に、直撃した。


火球を吐いた側の飛竜乗りが、生じた思わぬ結果に首を振り、狼狽える様子が見えた―――と、その時には既に白竜の口から火球が放たれていた。

直撃、爆風。

翼にぶつかり、竜何頭身か、吹き飛ばされて距離を開けてしまう。


届いた風がリーメの髪をなびかせる。

村人から歓声が沸いた。


「すげぇ!」


「カウンターでやりやがった!ド迫力だぜ!」


三騎の飛竜は体勢を立て直してまだ追いかける―――しかし全員が同じ重圧を感じていた。

背後を取っている。

自分たちは敵の背後を取っているのに―――白竜に勝てる気がしない。

歯噛みしながらも再び飛竜は強く羽ばたき始める。


「三人がかりでも、ものともしねぇ」


「あんなすごい飛竜乗りが、アオギ飛竜騎士団(ドラゴンナイツ)が、町を守ってくれているんだ!」


次々と飛竜が村の上を飛んでいく中、村人たちは今しがた行われた、そして行われていく激闘を語り出した。

騎士団長が勝つか、いや、他のブロックにも強者はいる、俺はあいつに賭けている―――そんな話をいつまでも。



リーメは目にするすべてが、初めてだった。

イモール・ウェルギリウス。

これが飛竜でのバトル。

そして、そんな中でも今の白い飛竜の人物、あの人は凄い………本当にすごいと、心から思った。

飛竜レースには怖さが存在する。

だがただの野蛮な暴力ではない、それを超えた、強烈に光るものを持っている。

優勝するのではないか、あの白竜は。


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