文月ー8
久しぶりの投稿です。
お楽しみ頂ければと思います。
智輝、小莱、米奇の3人はその日も同じ話の切り出しで会話を始めていた。
「暑いですね。」
その日も朝から38度と油断をしていたら確実に熱中症になる気温だった。
「これも悪魔の企みなんデスカ?」
小莱は首にかけたタオルで額を拭いながら言った。
「ですね。」
小莱の問いに智輝もシャツの襟元を摘まんでパタパタさせながら答えた。
「暑いの慣れてる香港人の兄さんでも流石に堪えるよね。これは。」
小莱とは近親関係になった米奇も百均で買った扇子で風を送りながら言った。
「今朝もニュースで言ってたよ。熱中症で何人も病院に搬送されたって。」
智輝も肩にかけたカバンからうちわを取りだし仰ぎながら言った。
「京都のお姉さんが心配デス。お腹の十祈哉くんも一緒デスカラ…」
小莱はそう言うと堪らず羽織っていたシャツを脱ぎ、上半身タンクトップのみの服装になった。
「…!ロイさん!?」
智輝は小莱のあまりの潔い脱ぎっぷりと思いがけず良い具合に鍛えられた美しい体に驚き、持っていたうちわを落としてしまった。
「兄さんはちょっとその色気を自制する必要があるよ。」
米奇は智輝が落としたうちわを拾い上げながら溜め息まじりに呟いた。
「ロイさん…そんなかっこいい体してたんですね…。」
智輝は目のやり場に困っている様子で小莱から目を逸らしながら言った。
「いえ…。そんな…。葉さんのほうがかっこいいデス…。」
小莱も智輝の照れにつられたのか急に恥ずかしそうに身をよじり
いそいそとさっき脱いだばかりのシャツを着直した。
「…葉さん、兄さんとは結局どうなってるんですか…?一緒の家に暮らしてるのに、その様子だともしかして…まだ…」
米奇は拾い上げたうちわを智輝に渡しながら訝しげに顔を覗きこみながら言った。
「…な…何を聞きたいんだよ…!」
うちわを受け取り焦りを吹き飛ばすように激しく扇ぎながら智輝は言った。
「まあ…だからその…愛し合ったりしてないのかって事ですよ…。」
「…だっ!大天使聖ミカエルともあろう君が…な、何て事を…!」
智輝の耳元で小声でそう囁く米奇に智輝はひどく狼狽し更に激しくうちわを扇いだ。
「肉体に宿っている今は人間と同じですよ。」
米奇は口を尖らせながら言った。
「書物にも書かれてあるだろ?妄りに姦淫してはいけないって!」
智輝は秒速25メートルは下らないぐらいの速度でうちわを扇ぎながら必死の形相で訴えた。
小莱は何も言わずタオルで流れる汗を拭いながら智輝と米奇を交互に見ていた。
「その通りですよ。流石大天使ザドキエル様。」
米奇は納得した様子で智輝と小莱の二人に目線を送り言った。
「もし二人が書物の教えに背いて欲望のままに互いを求めあったりしていたらどうしようかと思ってたけど、杞憂でしたね!」




