文月ー6
1ヶ月ぶりの投稿です。
油汚れは放置しているとどんどん落ちにくくなります。手遅れになる前に早めの除去が肝心です。
人の道でも全く同じで、悪いとわかっていながら放置してそれが当たり前になると、どんどん悪い方にしかいかなくなります。
今の職場がまさにそれですが、私はこれをこのままにはしません。
どんなに時間がかかろうと必ずや良くしていくつもりです。
その晩だけで天使四人と観音菩薩は被災地で二千人近い人々を救った。
「僕、地上のエデンを再興するという事の意味がだんだんわかってきた気がシマス。」
朝が訪れ、肉体に戻った白衣観音こと小莱はキッチンで朝御飯の支度を手伝いながら智輝に呟いた。
「過去、古き良き時代にそうであったように、人々が助け合いや支えあう事が当たり前にできる世の中にすることですよネ?」
小莱の問いにザドキエルなる智輝は深く頷きながら答えた。
「その通りです。かつて地上に確かに存在していたエデンでは、人々は皆そのように生きていました。それぞれ互いに思い合い愛し合い、誰一人として孤独や疎外感を感じない、すばらしい世界でした。」
一口サイズにちぎったレタスを小莱が用意した硝子の鉢に人数分盛合せながら智輝はかつて地上に存在していた「楽園」に思いを馳せていた。
「豊かさ」が現代のような、金銭や土地や地位や名声、学歴、家柄、自慢できる職業ではなく
思いやりや助け合いや優しさ、気遣いや分け与える心といった精神的なものだった時代。
少しずつでも、世の中をあの頃のように戻す事が出来れば。
この世に「楽園」は再び再興に導く事ができる。
天使の生まれ変わりである智輝はそう確信していた。
「文明」が発達してから数えきれない程の月日が流れ、それを乱用し間違った道を辿ってきた人類。
積み重ねられた、悪の常識や、間違った思想は長年放置してこびりついた油汚れのようにしつこくこの世に悪魔とともに蔓延っている。
それらを僅かに存在する正しい人々だけの力で払拭していく事はやはり並大抵の努力では到底成し得る事は不可能に等しい。
同じぐらいの年月をかけても、やっと半分にできるかできないかだろう。
「バラクがこの世に降誕するまであと三ヶ月です…彼が来てくれたあとの世界はきっとどんどん良い方向へ変わっていきますよ。」
ザドキエルなる智輝は白衣観音なる小莱に真っ直ぐ眼差しを向けながら言った。
その言葉はまるで智輝自身が自分自身に言い聞かせているようにも小莱には感じられた。




