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☆初投稿作品☆「From where I stand 」  作者: 山河新(ユーリー)
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水無月ー7

明けましておめでとうございます。

今年最初の初投稿です。

白衣観音様の悪魔成敗はキリスト教の天使のアグレッシブな悪魔成敗との対比としても見所です。


お楽しみ頂ければと思います。


ザドキエルの次は白衣観音が悪魔成敗を担った。


「では、僕はあの女性を救いたいと思います。」


白衣観音が目を遣った先には思い詰めた表情の白いパーカーにホットパンツの女性がいた。


過去、モーニング娘で活躍していた安倍なつみにも似た可愛らしい容貌だが


荷物も持たず、着の身着のままで、項垂れながら植え込みのブロックに腰掛けていた。


歳は20台前半だろうか。見るからに訳ありそうであった。


「見えました。あの女性は家庭に問題を抱えています。」


白衣観音は静かに呟いた。


「母子家庭で、母親が精神の病にかかっています。家に帰っても毎晩のように口喧嘩が絶えないようです。」


「真面目に一生懸命家計を支えるために働いて疲れて帰ってきても、小さな事で小言を言われ喧嘩になり、今日もそれで飛び出して来たようですね。」


ザドキエルは白衣観音の話に耳を傾けると慈愛に満ちた瞳で見つめながら言った。


「もし、今ここで悪魔の誘惑が生じたら、彼女は確実についていってしまうでしょうね。」


「そうならないために僕が彼女を守ります。ザドキエル様、見ていてください。」


白衣観音はザドキエルに向かって言うと彼女の頭上一メートル程の高さまで降り

雲に乗った蓮の台座に今度は座禅を組んで座った。

両足を腿に上げた正式な座禅で左足を前方に組んだ、「降魔座(こうまざ)」という座り方だった。


「悪魔よ。立ち去れ。」


白衣観音はそう静かに呟くと、右手の人差し指を下に向け「降魔印(こうまいん)」を現した。


これは仏陀が修行中に悪魔を追い払った際に使った手の形だった。


「凄い…!」


今度はザドキエルが空から驚きの眼差しを送っていた。


下心剥き出しでさっきからチラチラと影から彼女を見ていた男達からみるみる、どす黒い影が霧のように離れ、清らかな七色の光に包まれていったからだ。


この場にいる全ての人に生じていた

(よこしま)な心が白衣観音によって完全に消されたのだ。


次はどうするのだろうとザドキエルが上空から引き続き観察していると


今度は立ち上がり、彼女の近くを歩いていた女性の中に入り込んだ。


「白衣観音様!」


ザドキエルが叫んだ時、女性に入り込んだ白衣観音は安心するようにと上を見上げ微笑み返した。


様子を見に、近くまで降りたザドキエルが見たのは


「心の悩み無料相談ダイヤル」「家庭問題解決、生活相談センター」


等の宣伝のティッシュやチラシを渡している所だった。


「こんな時間に、こんな所に一人でいては危ないですよ。良かったら、ここに相談して、あなたは一人じゃないんですから。」


女性の顔は白衣観音が乗り移っているからか

とても慈悲深く、優しい穏やかな表情だった。


「すみません。ありがとうございます。」


安倍なつみ似の若い女性は救われたような表情で目尻に涙を光らせながらそれを受けとると立ち上がり

女性に礼をすると家路に戻っていった。


しばらくその後ろ姿を見送ってすぐ白衣観音は女性の体から抜け出てきた。


「ちょうど駅前でもらってた所を確認しましたので。」


白衣観音はにこやかに微笑みながらザドキエルの傍に戻って来た。


乗り移られた女性は一瞬はっとなった様子で首を傾げながら再び歩き出していた。



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