霜月ー5
もうすぐ3月になりますね。
待ち遠しい春がやっと来てくれます。
春と言えば花粉症。
花粉症に乳酸菌は本当に効きますので、今の時期から乳酸菌を摂取して対策をとって間違いないと思います。
「でもほんと、びっくりしちゃった!まさかあの時のイケメンのお客さんが林さんの知り合いのコックさんだったなんてさ。」
店のテーブルに並べられた“まかない”の海老焼売を箸でつまみながら米奇が言った。
林さんと言うのは智輝の後輩の林亮平のことで彼のこの店での愛称だった。
「ほんとダナ!初めて見た時カラ従業員にナテクレタラ思テタけどほんとにナテクレタ。スバラシ事ダ!」
壽康も智輝の炒めなおした青椒肉絲を頬張りながら言った。
「いや、何か成り行きって言うか、俺も何で自分がここに居るのか不思議で仕方ないです。」
小莱が温めたお粥を啜りながら智輝は二人に応えた。
お粥は絶妙な塩加減とほんのりと効いた海鮮と野菜の出汁の風味で驚きの美味しさだった。
「このお粥、めちゃくちゃ美味しいです。」
「そうでしょ?それ廖さんの家庭の伝統の味なんです!廖さんが作ったんですよ!」
智輝の率直な感想に米奇が応えた。
「廖さんの実家、客家ダカラ。塩味効カセル、ほんと上手。このお粥も近々メニュー加える予定ダヨ。」
「…!」
壽康の言葉にさっきから下を向いて黙々と食べていた小莱が
慌てたように顔を上げて困った表情を見せて壽康を見ている。
「ハッガーって…もしかして客家人?台湾とか福建省とかに多いっていう…香港にもいるんですね。」
「そうそう!凄い!葉さんよく知ってますね!そうなんですよ。廖さん客家人なんですよ。」
智輝の何気ない言葉に米奇が嬉しそうに応えた。
「俺の住んでる川崎がね。中国の瀋陽って所と姉妹都市だから、学校で中国について色々勉強させられたんですよ。」
穏やかに微笑みながら返している智輝に小莱はまた視線を送っていた。
それにすかさず気付いた智輝はすぐに小莱の方へ顔を向け
「本当にこのお粥美味しいですよ。」
と言うと
「あ…アリガト…ございます…」
小莱は切れ長の目を見開きながら言った。
横の幅が広く細い印象が強いその目だが縦に見開くと意外と大きい目である事が分かる。
瞳も非常に綺麗で深く澄んだ濃い茶色で見開くと光が幾重にも取り込まれキラキラと輝いてとても魅力的だった。
下ばかり向いて伏し目がちにしているのは勿体無いと智輝は思った。
「廖さん折角綺麗な顔してるんだからもっと堂々としてたらいいのに…」
口には出さなかったが、穏やかな笑みで智輝は小莱の強張った表情を解そうとした。
その気持ちを読み取ったのか見つめ返す小莱の表情が心なしか緩んだように智輝は感じるのだった。




