神在月ー10
およそ二年の歳月をかけて執筆していた本作が本日を持って完結致します。
最後までお付き合い頂きました皆様に心から感謝を申し上げます。
誠にありがとうございました。
ラスト一話、どうぞお楽しみ頂ければと思います。
こうして、正しき魂の人々は全て「神々」「天使」「仏」等の高次元の存在になったのだった。
地球の滅亡から生き残り、元より存在していた高次元の存在である、多神教の神々、天使、仏達によって導かれ
永遠の命を得、永遠の若さと美しさ、全知全能を手にいれた、元より正しき魂の人々は皆一様にこう考えていた。
聖なる書物に記されていた事を実践して本当に良かった。
「教えの通りに生きていて本当に良かった。」
「自分より他人を優先させて本当に良かった。」
「地上ではたくさん嫌な思いをしたが我慢して本当に良かった。」
「人を押し退けてまで夢や望みを叶えなくて本当に良かった。」
「必要以上にお金持ちでなくて本当に良かった。」
「極楽浄土は本当にあった。信じて拝み続けて本当に良かった。」
「“山上の垂訓”は本当だった。本当に惨めな人間だったのに、天国に入れた。むしろ惨めな人間だったからこそ救われたのだ。本当に良かった。」
「自然の神々を大切にして良かった。自然の恩恵に常に感謝を忘れずにいて本当に良かった。」
「自らの愚かさに気付いて罪を認め許しを求めて本当に良かった。」
「教会にもお寺にも神社にも分け隔てなく通って信心して本当に良かった。」
「これまで自己犠牲的な生き方ばかりしてきたがそれで正しかった。自分だけいい思いなんかしなくて本当に良かった。」
「良かった。良かった。本当に報われた。本当に救われた。自分達は正しかったのだ。むしろ下の世界のほうがおかしかったのだ。間違っていたのだ。」
一人の神が言った。
「悪魔は滅んだか。地獄は消えたのか。」
「下の世界で好き勝手に楽しく生きていた者達は、われわれを虐げ、馬鹿にし、卑しみ、蔑み、ないがしろにした者達は」
「自分だけいい思いをして甘い汁を吸い楽をして利益も全て独り占めしていた者達は」
「皆無に帰ったのか。」
一人の天使が応えた。
「どうだろう。」
「哀れではないか。ざまあとはやはり思えない。」
「哀れだ。」
一人の仏が言った。
「見よ。下の世界を。まだ炎が燃えている。」
「まだ水が荒れ狂っている。」
「鎮めよう。治めよう。
もう一度やり直そう。」
「もう一度世界を作り直そうではないか。」
「われわれの手で、もう一度。争いのない世界を。」
神々は口々に言った。
「そうだ作り直そう。美しい花ばなが咲き誇る世界を。」
「誰もが皆平等に幸せを享受できる世界を。」
「誰もが皆互いに思いやりあえる世界を。」
「誰もが皆美味しくお腹一杯ごはんを食べられる世界を。」
「誰もが孤独を感じる事なく寄り添いあえる世界を。」
「誰もが平等に学び合い教えあえる世界を。」
「誰もが互いに手をとり助け合い望みを叶えあえる世界を。」
「そして最後には必ずこちらに来られるように、誰一人間違わない、誰一人道を踏み誤らないように、われわれで支えようではないか。」
「全ての命が救われるように導こうではないか。」
「時には下の世界に降り間違えそうになったら優しく諭しに行こう。
共に歩みに行こう。」
「真の意味でわれわれのようになれるように。」
「さあ。われわれの手で生命の星地球をもう一度作り直そう。」
新しく神々や仏、天使になった者達より先の時代に高次元に至っていた者達は驚きを隠せなかった。
「まさかわれわれと同じ考えに至るとは。」
「われわれもまさに同じ事をしようとしたのだ。」
「しかし滅んでしまった。また繰り返すのか?」
「いったい、どうするつもりなのだ。」
彼らの呟きに立ち上がり声をあげたのはかつて「稲葉智輝」として地上に生きていた大天使ザドキエルだった。
「この世から宗教の壁を無くします。あれがまず問題なのです。」
更に隣にいた白衣観音が付け加えた。
「宗教とは本来、人が如何に正しく生きるか、如何に生きれば本当に幸せになれるかを教えるものであるはずなのに、どの教えは正しくどの教えは間違っている、どの教えは邪教だ等と考える概念がいつしか生まれてしまったのです。」
今度は後ろにいた大天使バラキエルが続けた。
「その間違った思い込みを消し去ります。これから“作り直す”世界では、キリストの教え、仏教の教え、多神教の神々の教え、自然の恩恵に感謝する事、人間が生命の頂点ではない事を全て教えとし大切に何度も言い聞かせ心にとどめさせます。」
大天使聖ミカエルも同じく続けた。
「全ての命が平等にあるように、競争という概念を無くします。全てが勝者であり、全てが満足できるよう、初めから力や能力に差をつけずにおきます。」
後に続き“新しい神々、天使、仏”も口々に言った。
「そして全ての命が平等に五体満足で全ての体の機能を完璧に備えさせて生まれさせます。」
「全ての命が平等に幸せを享受できるよう全ての子供は必ず正式に結ばれている幸せな両親の元に生まれさせます。」
「離婚や失恋の概念を無くします。全ての男女は一度で引かれ合い愛し合い結ばれ、新しい命をもうけ互いに協力して生活し死ぬまで一生涯添い遂げるようにさせます。」
「全ての命が平等に豊かであるように、お金という概念を無くします。豊かさとは互いに助け合い思いやりあう事です。生活は全て自給自足で満足できるよう、それが当たり前と思えるよう初めからそう作ります。」
「運という概念を無くします。幸福は全ての命に行き渡り誰か一人に片寄ったり、一時だけのものであってはなりません。全ての命が初めから抱えきれないほどの幸福に死ぬまで包まれている状態にします。」
「上下の概念を無くします。全ての命が平等であり全ての命が誇り高く偉大で素晴らしいのです。人が人の上に立つという概念を無くします。全ての命が全ての命の互いの指導者となれるようにします。」
「全ての命が生まれた順に死ぬように、早死にの概念を無くします。人は皆必ず100年以上の一生を最後まで全うできるように作ります。」
「見ていてください。次こそは本当の意味でわれわれと共にあなた方の望んでいた理想の世界です。われわれは必ずやそれを作り上げて見せます。」
こうしてついに「8回目」の「天地創造」「地球の再生」が行われた。
これまでと違うのは、悪魔が初めから関与できないよう、それらを片っ端から「救い上げた」形で行った事だった。
これは大天使ザドキエルの案だった。
「俺は悪魔ですらも救いたかったんだ。彼らは愚かゆえに哀れなのだから。救わなければ永遠に同じ事の繰返しだから。悪魔がこの世に初めからいなければこの世は完璧な世界なんだ。本当に本当に全ての命が平等に幸せなんだ。今の俺なら理想を現実にできる。車の免許より素晴らしいものを手に入れたのだから。」
大天使ザドキエルは遥か昔、かつての地球で人間だった頃を懐かしみながら天地創造の作業を手伝っていた。
救われた“元悪魔”は
現天使となり、ミカエルやバラキエル、白衣観音と共にやがて完成する「ザ・地球volume8」に生まれ来る新しい人類を如何に幸せにするか指導を受けていた。
「ここは天界。ここから全てが始まった。」
「From where I stand 」
「私が立つこの場所から」
完
本日、2019年12月25日クリスマスにて本小説は無事完結致しました。
書き始めた2017年はまさに私にとって暗闇の年でした。
本作の主人公智輝と同じく、車の免許の取得に失敗し、小莱のように帯状疱疹になり、ブログを荒らされ、Twitterで粘着され、同人誌の発行も親に阻止され、希望を持って信じて就職した調理師の仕事も結局駄目になり、介護士の仕事も駄目になり絵の道の夢はずっと叶わず結婚もできず
親に責められ人間性を否定され
親切にした人には裏切られ連絡を絶たれ
本当に前厄、本厄、後厄とガッツリ災厄を味合わされました。
たくさんの人間を恨みました。
この世も呪いました。
特にブログを荒らした人間には本気で死を望みました。今は許す努力をしています(^^ゞ
本当に本当に辛かったです。最悪でした。
しかし、おかげでこんな深い深い物語を仕上げる事ができました。
宗教、人間、人生、様々に思想を深められました。
来年はどうかどうか私だけでなく、たくさんの苦しんでいる人が報われ幸せになれる年になることを願っています。
最後に、メリークリスマス。よいお年を
皆様にたくさんの幸せが訪れますように。




