文月ー10
久しぶりの投稿です。
2019年も半分が終わってしまいました。一年は長いようであっと言う間です。
お楽しみ頂ければと思います。
智輝と小莱は6月半ばからボランティアで児童福祉施設にレクリエーションスタッフとして勤めていた。
今日は明星の仕事が一日休みだったので智輝は朝から施設に出向きボランティアで雑務を手伝っていた。
14時を回ってからは続々と利用者の子供たちが集まってくる。
智輝は職員と今日も子供たちを笑顔で出迎えていた。
いつかに小莱が言っていたとおり、利用者の子供たちは全員「天使の生まれ変わり」や「多神教の神の一柱の生まれ変わり」だった。
智輝はレクリエーションの時間の合間、他の職員の目を盗んでは子供たちの意識の奥深くに話しかけた。
彼らの真の魂の姿を呼び起こすためだ。
今日も智輝は一人の少女に話しかけていた。
「我が名は大天使ザドキエル。我等が偉大なる主、イエス・キリストの御名において、この世から悪魔を滅し人々を導き再び地上にエデンを甦らさんとこの地に下ろされました。」
「貴方に我が魂の呼び声が聞こえたなら、どうか返しの言葉を聞かせて下さい。」
子供たちは智輝からそのアプローチをかけられると始めは智輝のオッドアイをじっと見つめその瞳の奥を覗きこんだ。
目は心の窓とも言うが、口から言葉で発するより念じて目で伝えるほうがこの子供たちには伝わりやすかったからだ。
智輝が大天使ザドキエルだと分かると子供たちは何かを悟ったような表情を一瞬浮かべ、智輝の瞳を見つめ返しながら自己紹介を返すのだった。
「聞こえました。大天使ザドキエル様。私はヒンズーの神の一柱、ラクシュミーです。まさか、キリストの教えの天使様に声をかけられるとは思っておりませんでした。」
ラクシュミーの生まれ変わりの少女は持っていた絵筆を置くとヒンズーの神らしく合掌をし挨拶をした。
その瞳は小莱のように深く澄んだ濃い茶色だった。




