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得意と流儀と命と

  船旅というのは、当人が思っている以上に体に負担がかかる。足場は常に波で揺れ、体に当たる潮風に耐えるべく常に体を硬くしている。それが始めて海に出たのなら、疲労感は筆舌に尽くしがたい。


  カリンもまた、コウに寄りかかったままいつのまにか眠ってしまっていた。毛布が足と肩に二枚かかっている。誰かが体を冷やさないようにとわざわざ二枚もかけてくれたのだと気がつかないほど、鈍感ではない。かけてくれた人には礼を言わねばならないなと、ぼんやりする頭で考えながら、ふと顔をあげた。アジトにむけて太陽が差し込んでいる。白い砂浜がキラキラとしている。窓枠から影が出ているために、今がちょうど、一日で日が一番高く上っている時だとわかった。


「いまお昼!? 」


  がばっと起き上がる。規則正しい生活を行なってきたカリンにとって、昼まで寝過ごすなど始めての経験だった。いつもであれば従者が起こしにくるし、そうでなくても日が昇り、日差しが部屋に入ってきた時点で自然と起き上がることができる。それができなかったのは、旅の疲労だけではなく、自分の背後にずっと影を落としていたベイラーにあった。


「……おはようコウ。私までお寝坊さんになってしまったわ」


  淡い期待を胸に、少々遅い朝の挨拶を交わす。しかし、コウからの返答はない。未だに目に光はなく、腕は垂れ下がり、肌の傷は癒えていない。


「皆はどうしているのかしら」


  耳をすませば、聞き慣れたベイラーの音が外から聞こえてくる。立ち上がって外を眺めると、そこには海賊の面々がいた。なにやら船から物を運んでいる。ベイラーが担いでいたり、人間が担いでいたりと方法はバラバラだが、運んでいるのはほとんど食料であることはわかった。自分だけこうしてすやすやと眠っている中で、海賊たちはせっせと動いている。泊めてくれた恩と、一食分の感謝も込めて手伝おうと、アジトから出てる。すると真っ先に先頭で指示を飛ばしているサマナがカリンに声をかけてきた。しかしサマナもサマナで、目の下にクマが出来ている。あまり眠れていないようだった。


「どうしたの? 」

「ごめんなさい。寝過ごしてしまったわ……海賊さんこそ、どうしたの? 」

「なんでもない。考え事をしていたら眠れなくなっちゃって。よくある事だから気にしないで」

「気にしないでって……フラフラじゃない」

「大丈夫。私もお昼寝はしたし、まだ貴族さん以外みんな……1人以外は寝てる」

「そ、そうなの? 」

「のっぽの人ははうなされてるよ」

「《かしらー。これはー》」

「一番奥ー! 日持ちするやつから奥にー!! 」

「《あいさー》」


  ベイラーが指示にしたがい、砂浜に足を取られながらもしっかりと足を踏みしめて進んでいく。


「何をしているの? 」

「荷下ろし。さっきサーラの輸送船がきていろいろくれたんだ。輸送船じゃこの奥まで来れないから、うちらの船ではこびこんでる」

「サーラから? ここの場所がわかってしまっていいの? 」

「沖でもらってるんだ。誰もあとからついてこれない。ついてこようとしたら、リスクキルにガブリ。」

「そ、そうね。そうえば、起きてるもう1人っていうのは」


  すると、2人の頭上をベイラーが飛びこえる。マントが翻り、バシャァンと、砂浜で柱が立つ。着地してすぐさま駆け出す姿は、明らかに他と違う動きをした空色のベイラー。背中に背負う荷物をほかのベイラーに任せ、すぐさま戻ってくると、サマナとカリンに気がついたのか、足を止めて中から乗り手が顔を出した。


「姫さま! おはようございます! 」

「ナット。おはよう……寝過ごしてしまったわ」

「昨日の今日ですから。しょうがないですよ」

「ミーン。おはよう」

「《おはようございます。コウはまだ寝ているんですか? 》」

「ええ」

「郵便のー そろそろ飯にするぞ。流石に他の連中も起きてもらうけど、いいよな貴族さん」

「ええ。もちろん」

「《姫さま。どうぞ》」

「ええ。よしなに」


  傅くようにミーンがしゃがみ、肩に載せようとしてくれる。カリンもなんの抵抗もなくミーンを駆け上がり、その肩になおった。頭に手をついて ベイラーの目線と同じになる。眼下に広がるのは、せっせと荷物を運ぶ海賊と、その海賊1人1人に労いをかけるサマナ。そして今現在、国にいる頃の習慣で、さっと肩に乗ってしまったが、そのそもミーンはナットのベイラーであり、その彼女が自分を運んでくれている事実と、無意識に甘んじている事に、自己嫌悪に支配される。


「……腕をなくしているミーンもがんばっている。片目のない海賊さんは皆に指示を飛ばして物を運んでいる。私は、どちらもあるのに、どちらもできなかったわ」

「《姫さま、それ、嬉しくないです》」


  ミーンの声が静かに染み込む。


「《腕は生まれついて無かったし、あったとしてもミーンはミーンのままです。きっとあの海賊さんも、目があってもなくても海賊さんです。そして、一番頑張っているのは姫さまだってみんな知っています。あの海賊を退けたのは姫さまとコウなんです。だから、そんなこと言わないでください》」

「……ええ。ありがとう。もう言わないわ」

「《もし許せないっていうなら、姫さまじゃなくってコウです。なにかあるといつも寝てるんだから》」


  ゲレーンに来たばかりのコウをミーンたちは知っている。その時のコウは、まだ眠る癖がついておらず、

 三日ほど眠り続けていた。


「《牧場でも寝ていたって聞きます。まったくもう……起きたら説教です》」

「そうね。お説教ね」


  アジトへと戻るカリンたち。まだ眠る旅団の皆を起こし、食事を取ろうとしていたが、そこにいたのは、

 各々ベイラーの中で眠る仲間達。コクピットの中から未だに悪夢でうなされるオルレイトの声が聞こえるレイダ。寝ぼけて隣にいるガインを蹴飛ばしているリク。そしてマイヤはマイヤで、針仕事をしていたのか、その手に縫ったばかりの布を持ちながらねむっていた。


「……どうしましょうか」


  寝坊してしまったカリンとしては、自分のことを棚に上げて起こすのも変だと遠慮した。そんなカリンなど

 知らずに、次々蹴とばすように起こすナット。のちに判明したのは、郵便はいかに早く手紙を運ぶのかが重要で、そのために朝はやく起き、地図をみて場所を確認し、ルートを定めて、そのこまでして手紙を運ぶ。体に染み込ませた仕事の癖で、寝坊している仲間を叩き起こしにいくこともよくあったナットには、ねむりこける旅団の仲間と仕事仲間が重なり、つい起こし方が同じになったとの事だった。


「コウが起きたら、まずは手紙をかかせましょうか」


  郵便という仕事を事細かにしらなかったカリンは、コウに手紙を書かせるのであれば、また代筆する必要があるな考えながら、首の鞭打ちが癖になりかけているオルレイトの悲鳴を聞き流した。


 ◆


「ねぇ海賊さん」

「うん」

「食事にするって言ったわよね? 」

「言った」


  アジトの周りにあるいくつもの湖。昨日はそこにシラヴァーズが居たが、タームの活躍により今日は来ていない。ここはその、シラヴァーズか来なかった湖。その淵に小舟を浮かべ、囲むように陣取っている。


「ならなんでこんなことに? 」

「なにって、もう魚がないんだ」

「今日運んで来たものは!? 」

「あれは別。宴会用の備蓄」

「それを食べればいいのではなくて? 」

「それ食べたら宴会できないよ? 」


  完全に、カリンの理解が及ばずに、への字に曲がった眉毛を隠すこともできずにただただ呆然としている。今彼らは、アジトの湖で総出で魚釣りをしていた。ベイラーはその手をまっすぐ伸ばし、手のひらに乗り手を乗せて、出来るだけ人間の気配を湖から遠ざけていた。今、カリンとサマナは、赤いベイラー、セスの両手に乗って、のんびりと釣り糸を垂らしていた。人間が顔を洗う時にする、両手ですくう状態の上に、2人は並んでいる。カリンは、サマナの左側に陣取っていた。


「海賊さーん。つったよー」

「よし。食っていいよー」

「やったー!! 」


  リオとクオが釣り上げた魚を意気揚々と掲げる。危うく落ちそうになるのをナットが支えた。


「餌だけこっちによこしてくれー」

「はーい。ミーン 」

「おねがいねー」

「《ナット。いいのかなぁ》」

「いいんだと、思う。多分」


  釈然としないまま、双子を残してミーンの中に入っていく。ここは海ではなく湖で、波もなければ、この吹き抜けで風もない。手漕ぎで船を漕ぐしかないが、ベイラーがいれば話が変わっていくる。


「まだ浅瀬だって言ってたけど、無理ならさっさと上がるよ」

「《わかった》」


  決意を新たに、船から飛び込むミーン。水しぶきが湖で波となって、カリンたちの船を揺らす。ベイラーの体では沈む事はなく、すぐさま浮かび上がってくる。胴体で船にぶつかるように、そのままばた足を始めるミーン。


「おー」

「はやーい」

「《魚を驚かせるから静かにね》」

「「はーい」」


  ミーンは国で川遊びでもしていたのか、かなり慣れたように船を動かしている。白波を立て、多少の音がたつが、それでもベイラーが泳いでいるにしては随分静かな音で、船を砂浜へと連れて行く。船の上にいる双子は楽しくて仕方ない様子で、きゃっきゃきゃっきゃはしゃいでいる。魚を落とさないようにとナットが注意を呼びかけながら、リクが待機する砂浜までくると、その4本の腕で船を受け渡した。双子を受け渡し終わると、すぐさま向きを変え、今度は海賊達のいる船へと泳ぎはじめ、再び船を伴って浜辺へと運ぶ。ベイラーは基本的には海を苦手とする。だというのにミーンがこうして泳いでいることに、カリンは面食らっていた。


「泳ぎ方、上手くなってない? 」

「《シラヴァーズって人たちの泳ぎ方を真似してみたんだ。そしたらスイスイ進む! 》」


ミーンの泳ぎ方は、いわゆるバタ足と呼ばれるものではない。両足を揃えて水中を進む、ドルフィンキックだ。魚のように尾びれを動かすにあたり、シラヴァーズはたしかにいい手本になりえる。下半身が魚なのだ。それも哺乳類。昨日はその大きな尾びれを縦に横に自由に動かしてい泳いでいた。そしてミーンはそれを一目見て習得してしまったのだ。


「……ミーン、泳ぎが得意だったのね」

「《ゲレーンにいた頃、どうしても橋が渡れなくって、その時に、川を泳いで行こうってナットが考えてくれたんですよ。でもあんまり好きじゃなかっんだ。けど今日から好きになったよ! 》」

「ええ。すごいわ。ベイラーって、泳げたのね。あら。でもそうしたら赤いベイラーは……」

「《泳げる。だがボードで波に乗っている方が良い》」

「そうゆうこと。あ。引いてる」


呟いた瞬間にはすでに手元に釣竿を引っ張り上げている。ぴちぴちと針に刺さった魚が暴れまわる。糸を持ち上げ、吊り下げる形でカリンに見せる。


「ほら」

「えっと、針を抜けばいいのよね」


カリンが食いついた針を抜こうとする。だが、返しのついた針ががっしりと食い込んでおり、なかなか抜くことができない。さらには、糸を吊るした状態で、魚を針を抜こうとしているために、魚が今以上に暴れ回る。


「もしかして知らない? 」

「え、ええ。いつも最後にはネイラやマイヤがやってくれていたから……」

「……なるほど。まずは」


サマナが魚をひったくると、まず魚の口に指をつっこみ魚のエラを開く、そのまま、糸を持つのではなく、魚を直に持って針を抜き始める。あれほどカリンが苦戦していた針抜きが、一瞬で終わってしまう。

食べれる魚かどうか確認したあと、瓶に放り込んだ。


「……釣りって、最後までやるの大変なのね」

「今、貴族さんは魚を掴まないで針を抜こうとしたから。あれだと針が抜きにくいだけじゃなくって、抜いた後魚が逃げる。さっきみたいに魚をとっ捕まえた後にとってやればいい。あと、傷のないのがいい」

「傷? 針のではなく? 」

「最近、やたら船が沈んでる。 その破片で怪我をしてる魚がいるの。このアジトにまで物が漂流してきた。シラヴァーズが持ってた弓をみた? 」

「ええ。ベイラーを突き刺すことができる弓矢なんて、どうやってシラヴァーズが作ったのか……」

「あれはシラヴァーズが作ったんじゃない。流れてきたのを使っているだけ」


ヒュンと釣り竿を投げて、再び静かな時間が流れる。カリンの竿にはまるで反応がない。昼過ぎから始めて、たった今釣り上げた魚が最初の成果だった。沈黙に耐えきずカリンが話しかける。話題を考えながら、

やはり気になっていたことを聞いてみる。


「何を、考えていたの? 」

「……シラヴァーズの事と、海賊の事と、いろいろ」

「そうえば、どうして、海賊に? 」

「どうして、……船長が海賊だっていうのもある……けど」


サマナがゆっくりと振り向く。その赤い片目が、カリンを睨んだ。


「……船長を、そして母さんを、私をこうしたやつらが怖いからだよ」

「こう、した? 」

「……貴族さんは、すっごい平和な国からきたよね? ゲレーンって言ったっけ」

「ええ。いい国よ」

「この国は、少し前までは荒れてて……人が、金で買われていたんだ」

「人が、買われる? 」

「船長も、ここにいる海賊のみんながそう。船長が売られる前に助け出した、らしい。私はまだお腹の中にいた時の話だって聞かされた」

「……そんな、ことが」

「私の、目。珍しいでしょ? 」


じっと睨みつける目を形容してみろと問われたカリンが、以前と同じように返す。カリンにしてみれば、それは純粋な好意であり、本心であり、他に意図などない言葉


「ええ。綺麗だと思う」

「……だから、嫌。船長と同じ。船長も、私のお母さんも、この目のせいで酷い目に合った……だれも、私を人として見ない。赤い綺麗な目をした『モノ』としてずっと見られてきた。シラヴァーズはいつも、特にのメイロォは当てつけみたく、私を「可愛そうな片目の子」って呼ぶ。それが嫌なんだ。」


釣竿に魚が食いついた。そのまま餌を引きちぎり、何事もなかったように釣竿が緩む。


「この目は龍と同じ赤。だから高値で売れたんだって。私が海賊を続けるのは、船長がもう足が弱くなって船に乗れないってだけじゃない。街に、行きたくない。人に、会いたくないんだ」

「なら、なんで今、私は貴方の隣にいていいの? 」

「それは」


魚がつれたのか、遠くから歓喜の声が上がっている。だが、今この瞬間、話を聞くも者と聞いてほしい者の世界に、他の雑音は入ってこない。


「今、左側に居てくれているから。何も言ってないのに」

「そ、それは周りの方がそうしているからで」

「ちゃんと言ったんだ。見える側から話しかけてくれって。でも貴族さんはそうじゃなかった。だからこうして助けるし、釣りも教える。海賊は、奪う前に何かを与えられれば、必ず返すのが流儀」

「その流儀、素敵だと思う」

「でも、流儀だけじゃない……嬉しかったんだ。貴族さんが、目以外にも私をちゃんと見てくれているのが……ええと」


ついに釣竿を離す。これから離す事が、どれだけおかしな事か自覚しつつも、話したくて仕方ない。だが離すことが苦しい。


「ええと、友達に、なってほしんだ。海賊以外の人に、こんな事いうのは変だって思うんだけど、私は、貴族さんのことをもっと知りたい……せめて、国を出るまでは、友達でいてほしい」

「……その、国を出るまではっていうのも、流儀なの? 」

「うん。去る者を追っちゃいけない。だからこの国にいる間だけでいい。ふつうに名前を呼ぶ友達でいてほしい。もちろん、貴族さんの事は海できちんと案内するし、他の魚の取り方だって」

「なら」


ピシャリと会話を途切らさせる。一瞬サマナの緊張がピークに達する。対してカリンは冷静そのもの。


「どうして名前でお呼びにならないの? 」

「……呼んで、いいの? 」

「いけない? 」

「え、えっと、えっと」


口をパクパクさせながら、冷や汗が止まらなくなりながら、サマナが決意の元に言葉を出す。それは、周りに同年代がいなかった少女の始めてのお願い。


「カリン、さん。友達に、なってください」


竜巻で心をぐちゃぐちゃにされてしまったような気分。ついに言ってしまったという後悔と、言ってよかったという満足。そして、なぜもっと別の言葉でもっとスマートの言えなかったのかの自己嫌悪が混ざっている。そしてカリンは、なんの対応もなしに右手を差し出して言う。


「よろしく。サマナ」

「あ、ああ! 」


こちらの苦悶など知ったことではなく、カリンは、そのまま求めに応じた。サマナもまた、差し出されるまま右手を握り、握手を交わす。すぐにカリンは訂正をおこなった。


「でも、あれはだめ」

「ど、どれ? 」

「この国を出たらって、それはダメよ」

「じゃあ、一週間でいい。それくらいでいいんだ。本当に」

「……本当に、怖いのね。まったくもう」


そして、今度はサマナに大混乱が生じる。カリンが、あろう事かハグを返してきた。


「私がお友達になってほしいの。一週間でもない。国を出る間でもない。あなたが、許してくれる限りのお友達に、私がなりたいのよ。サマナ」

「い、いいの、? 私、目がないよ? 」

「なら手伝える事を手伝うわ。もし私も無くなってしまったら手伝って頂戴」

「うん。うん!! ……カリン」

「何? 」

「シラヴァーズは怖いやつだだけど、1つだけ、本当にすごいことがある。私はそれを、なんでもない貴族に教えるのをずっとかんがえてた。でも、カリンは友達だ。友達なら、私は助けられる。助けてみせる」

「……それは、コウのため? 私のため? 」

「両方。海賊は欲張りなんだ」


ニシシと笑うサマナ。今日一番の笑顔がそこにあった。


「それで、シラヴァーズのすごいところって? 」

「シアヴァーズは心が読める。こっちが飾ろうとした言葉をひっぺがせるのも、心を読めるからなんだ」

「それが、なぜコウを助けることにつながるの」

「もし、ベイラーの故郷に戻っているなら、呼び戻さないといけない。それには、笛と、乗り手と、ベイラーの心がわかる必要がある」

「ベイラーの故郷? ソウジュの事ではないの? 」

「《それは体の話だ》」


突如上から声が聞こえたことで、2人が驚き、さらに、ハグしたまま会話していたことでさらに驚いた。


「いつの間に起きてたの? 」

「《ついさっきだ。いつの間にか仲良くなっているな》」

「そ、それで、体の故郷がソウジュとは、一体」

「《ベイラーだけではない。生き物全ては命の中に体と、心がある。その心の故郷に、ベイラーは人と比べて帰りやすいのだ》」

「その、故郷の名は? 」



「《『見果ての川』……見るものによって草木にも、魚にも、星にも形を変える心だけの場所。コウがもし体に心が戻ってきていないなら、シラヴァーズに力を借りるしかない》」

「《見果ての川……草木? 例えばどんなものなの》」

「《一例だが、人は綿毛としてみることが多いのだとシラヴァーズー彼女らーは言っていた見果ての川と呼ぶ物は少なく、綿毛の川として残す物も居るそうだ》」


草木に見える川の流れ。その言葉に、カリンは聞き覚えがあった。


「綿毛の、川、ですって」


それは、コウがいつもいっていた、夢の中にでてくる話であった。




いろいろ進み始めます。

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