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コウとエクトー

《上手くいったようですね》

「はい。何よりでした」


 黒いベイラー、アイ改め、グレート・エクトーが現れた。彼女の力はすさまじく、商会連合を瞬く間に壊滅へと追い込む。それは敵である商会連合にとっては、まさしく悪魔のような存在であった。しかし、味方である避難民からしてみれば、その圧倒的な力は、恐れ混じりではあるものの、心強い事この上ない存在となっていた。


 そして、エクトーとコウが、バスター・ケイオスへと向かう最中、その後ろに、グレート・レターと、今の占い師アマツが居る。彼女たちが、エクトーが眠っていた結晶を、ここに呼び出していた。


「てまえは、この光景を待ちわびておりました」

《この光景を?》

「黒いベイラーと、白いベイラーが、戦火の中で並び立つ。この光景を。これこそ、まさに、先代が占いで垣間見た景色そのもの」


 商会同盟が空から落とした爆弾で、瓦礫と共に巻き上がる炎。まともに戦っているのは、今やコウとエクトーのみ。かつて二人は争い合い、戦い続け、コウの方が辛くも勝利を収めた。


「以前のアマツは、白いベイラーが厄災を招く存在であると疑っておりました。それは、黒いベイラーと結託し、この世界を破壊しつくしてしまうのでは、と。この景色を見てしまえば、致し方ない事でしょう」


 だが、先代アマツは、コウの事を信じた。例え彼女が見た占いがどうであろうと、ホウ族の里で、サルトナ砂漠で、人を助け続けたコウが、そんな事するはずがない。できるはずがないと。


「見てください。グレート・レター。彼等は、今まさに、星の敵を打ち倒さんと、互いに共闘すべく立ち上がりました」

《ええ。ええ。見えていますよ。アマツ》

「先代がコウを信じたのは、決して」


 アマツの声がどんどん震えていく。安堵と共に、身震いするほどの衝撃が体に奔り続けている。


「間違いなどでは、無かった」

《ええ。ええ》

「先代が、ほんの少しだけ教えてくれた事があるのです。アマツの記憶とはまた別の、ひとつの事実を」

《……事実?》

「はい。それは、てまえが、()()()()()()()()()()()


 アマツ・サキガケは個人名ではない。砂漠の民、『ホウ族』を長年導き続ける統領の名である。占いで星を詠み、未来を見据え、民を導く。その知恵と知識を、無作為に選ばれた少女が、その名と共に、グレート・レターの力によって、代々受け継ぎ続ける。それは脈々と続く血族とは違う、厳しい砂漠でホウ族を生かす為の手段。両親は里から最大の感謝と報酬を様々な形で受けると同時に、我が子の名を捨て、里の中で静かに暮らす。コレを犠牲と呼ぶか、大儀と呼ぶかは、人の判断基準によって異なるが、少なくともこの営みによって、ホウ族は砂漠で生き続けてきた。


「アマツの前の、両親を、コウは、助けてくれたのだと」

《……ええ。そうです。先代のアマツは、その時をしかとみておりました》

「最初、てまえは信じられませんでした。知識としてあっても、戦火の中で佇む、あの恐ろしい白いベイラーが、どうしても結びつかなかった。街に、あんなひどい事をしているベイラーが、なぜ、どうして、両親を助けたのか。白いベイラーにとっては、彼等は名前さえ知らない、ただの赤の他人のはず」


 彼等。両親の事をそう呼んでしまうほど、今のアマツに両親の記憶はない。里の中で、顔を合わせる事はあっても、両親である事を明かす事はゆるされていない為だ。過去、両親である事を告げられたアマツが、アマツでなくなりかけた事例から、厳格な規則ができあがっている。


「それが今、やっとわかった。白いベイラーは、決して人を選んで助けているのではないのだと。この戦火は決して、コウが成したことではないのだと」


 アマツの眼からは、涙が止まらなかった。


「占い以外に見るべき物。それが、ようやく分かりました」

《花丸ですよ。新たなアマツ》

「グレート・レター。どうかコレからも、我らを御導きください」


 涙をぬぐい、アマツは操縦桿を握りしめる。


「これより、二人を援護したくおもうのですが」

《下手に援護すると、新たなグレートに巻き込まれます。ここは先に退路を確保しておきましょう》

「では、そのように」

「あ、アマツ様!」

「アンリー? 一体何事ですか?」


 決意と共に動こうとした時、その出鼻を挫くように、傍にアンリー・ウォローが、相棒のシュルツと共にやってくる。彼らは、アマツの戦士であるが、今はどこかあわただしい。


「でもちょうど良かった。アンリー。退路を確保するのを手伝いなさい」

「それは、もちろん、なんですが……えっと」

「ん?」


 いつもは歯切れよく返事する、気っ風の良い戦士であるアンリーが、どこかまごまごしている。それは、アンリーが自分では判断しかねる状況が発生している時に、時折見せる表情であった。言いにくそうな事を察知しつつも、アマツは痺れを切らし続きを催促する。


「どうしたのです?」

「それが、あの結晶の中から、女の子が」

「女の子……?なら救助を」

「でも、こ、この子、なんだ」


 シュルツの手に収まる女性。兵士のようには見えず、むしろ肌の露出が意図的に多い、踊り子のような服をきているのが、この戦場においてとても奇妙だった。彼女は命に別状はないものの、体のそこかしこに怪我も見受けられる。手当をしなければ、どうなるか分かったものではない。だが、それよりも、アマツは腕に巻かれた腕章が気になった。


「それは、商会同盟が着けているものじゃないか」

「や、やっぱりそうだよな!? で、でもさ」


 それは、商会同盟に属する相手であった。つまり、この戦争を引き起こした元凶である。しかしアンリーはそれでも引き下がらない。

 

「治すのにつれていったら、駄目かなぁ占い師様」

「―――やめておきなさい」


 僅かな逡巡の後、理路整然とその理由をアマツが述べていく。


「怪我を治せない事はないでしょう、しかし周りの皆が受け入れるとも限りませんし、ひいては、連れてきたお前まで避難されます。現状、誰とも知らぬ相手を助けているほど余裕があるわけでも―――」

()()()()知っているんだ!」


 アンリーが、涙まじりに答えた事にアマツがわずかに怯んだ。その後に続いた言葉で、コックピットの中で仰天してしまう。


「この娘は、前にバスター化して街を焼こうとした娘だよ!」

「まさか!?」


 今、目の前にいるのは、サルトナ砂漠で初めて確認された、ベイラーの巨大化現象。バスター化。その乗り手の娘だという。街の被害は大きく、復興もさることながら、大勢の犠牲を生んだ、恐ろしい敵。そして。


「そしてこの子が、コウ達が前のアマツと一緒に助けた娘だ!」

「……そう、でしたか」


 先代アマツの記憶にあるのは、ケーシィ・アドモントという名前。彼女は、バスター化した後、そのコックピットからカリンが救出し、そして、覚醒したコウの炎によってその体を癒した。重要なのは、コウもカリンも、いつでもケーシィに対して、犯した罪の報いを与える事はできたという点にある。救出したケーシィは意識を失っており、その時点で、カリン達には生殺与奪の全権が握られていた。 

 

 だが、彼女らは、そうしなかった。故に。


「占い師様、この娘を、もう一度、助けていいかなぁ!?」

《……》


 生殺与奪の全権が、今度はアマツへと巡ってくる。人々を苦しめた者への報いを、この瞬間ならば与える事ができる。過去の戦いで彼女が居なければ、バスター化も起こらず、怪我人や死傷者もずっと少なかっただろう。


 殺人。それはまごう事なく悪であり、悪には報いが必要であると、アマツは思っていた。だが、その前提は、一度コウ達によって覆されている。


「(人々を助ける事を、選ぶ事は、果たして()()()()()()()()()()()?)」


 この人は助ける。この人は助けない。この選択、この線引きをする時点で、それは本当に悪因ではないと言い切れるのか。その差。その違いを、果たして誰が肯定するのか。そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……」


 何度も回る逡巡と、海の底に向かうような熟慮が交互に繰り返される。その繰り返しの中にあったアマツは、自身では答えは出ないと結論付けようとした。しかしケーシィが今ここに居るという前提を再び考慮した瞬間に、今までの思慮の一切を、一度経験したであろう相手の事に思い至る。


「……この思考を、カリン殿は一度したのかぁ」

「あの、アマツ?」

「ならばやることは1つ」


 カリンもきっと、同じように考えたはずだ。そしてその答えこそ、目の前にいるケーシィなのだと。


「アンリー!」

「は、はい!」

「お前の、したいようにするといい」

「で、でも、さっきは」

「この女を助けた責任は、てまえが取る!」


 そして、助けたのならば、必ずやり遂げねばならない。それこそ、カリン達はしてきたことなのだと。


「この女に手を出す事は、てまえに手を出す事と心得よと伝えよ!」

「わ、わかりました!」

「よし! 行け!」

「はい!」


 アンリーは、アマツの答えを受け、ケーシィを連れ風のように去っていった。その顔は、先ほどの迷いはなく、いつもの気っ風のいい戦士の表情に戻っている。


「……助けるのならば、最後までか」


 助けるのならば全てを助け。助けないのならば全てを助けない。そうでなければならない。カリンとコウはそう考えた。それは、ともすれば愚かしいほどの思考停止に見える。


「だが、ソレを可能にするだけの力を、彼等は持っている」


 コウの力、サイクル・リ・サイクルは、その炎さえ当たれば体が治療される。それはかつて、瀕死の重傷を負ったアンリーの事さえ治している。


 そこまで考え、ふとアマツは気が付く。コウの力はわかった。だが、戦場で戦っているもう1人、黒いベイラーであるグレート・エクトーは、一体どんな力をもっているのか。


「……想像もできない」


 コウに匹敵する、治療する力なのか、それとも全く別の力なのか。はたしてその力が、人類にどのような影響を及ぼすのか。


「それでも、信じてみる他ない、か」


 だが、もうアマツは彼等の事を、信じる事に決めた。故に、迷わない。


「レター! 避難経路を確保を!」

《ええ。そうしましょうそうしましょう》


 アマツは、自分の仕事に専念する事を決めた。



《ま、まってくれエクトー! そんながむしゃらにいっても!》

《黙ってみてなさいよ》


 戦場でコウとエクトーが言い争いをしながらもバスター・ケイオスに向かっている。商会同盟を退けたはいいものの、未だバスター・ケイオスは健在。加えて致命傷すら与えていない。恐るべきはエクトーの速さで、変形したコウでなんとか追いつけているような状態だった。


《もう楔は打ち込んだんだ! 龍の一撃さえ》

《その前に地上の連中がやられるって話でしょう―――》


 バスター・ケイオスが、その拳を向ける。肘から先にが飛び出し、拳そのものがエクトー達へと飛翔する。


《―――っが!》


 エクトーが全身のサイクル・ジェットを噴射し、拳の落下地点をより早く通がすべく加速する。コウは柔軟に翼をつかい、迂回すうる形で回避している。一直線上へと加速にはエクトーに軍配が上がるが、やはり小回りに関してはコウの方が上であった。


 帝都に拳型のクレーターが出来上がるのを眺めつつ、最短距離でエクトーがかっ飛ばしていく。


《龍はなにやってんだが》


 すでにバスター・ケイオスには楔が撃ち込まれている。その楔に龍の一撃が入れば決着となるものの、幾度も行われたバスター・ケイオスの攻撃により、竜は間合いとタイミングを計りな寝てい居た。龍の攻撃には多少のタイムラグがあり、そのラグの間に、バスター・ケイオスが接近、拳の一撃を叩き込むだけの隙となる。


《あー、攻撃手段をなんとかすればいいか》

《エクトー! 孤立したら危ない! 狙い撃ちにされる!》

《うるさい!》


 後方から聞こえるコウの声にイライラしつつも、彼の助言そのものは正しいと頭では納得していた。


《(拳を飛ばす攻撃以外にもいろいろあるだろうし)》


 接近したくともソレを拒否してくる拳。そして、まだエクトーは知らないが、ケイオスの胴体にある結晶体からは、体を凝らせる冷凍光線が発射れる。誘導性があり、コウの炎を受ける以外では、対象に当たるまで、光線は一向に止まらない。


 エクトーは龍とバスター・ケイオスを見比べ一つの結論を出す。


《……あのバカでかいのをどうにかするより、竜が攻撃できるようにしてやったほうが、まだ()()()()()()ね》

 

 結論を出すや否や、エクトーは減速し、方向転換、こんどは逆方向へと加速し始める。あとからついてきたコウはその行動に思わず驚き、急減速を駆ける形となる。


《な、なんで反転した!?》

《ちょうどいいわ。遅いからつれてくわよ》

《え、ちょっとまっ―――》


 加速を変えないまま、コウの腕を取り、強引に引っ張っていく。急制動からの逆噴射で、コックピットにいたカリンは急激な吐き気を催すも、気合で耐え、思わずエクトーに文句を垂れる。


「あ、貴女ねぇ!?」

《ところでさぁ、あの詩なに?》

《詩……ってまさか》


 サイクル・ジェットの轟音に紛れて聞こえてくるのは、バスター・ケイオスの胴体から響く奇妙な詩。


――――La ――la――lA


 その詩が聞こえた瞬間、コウもカリンも文句を飲み込み、ただ真っ直ぐ進む事だけを考える。


《や、やばいアレがくる!》

《アレってなによ》

《誘導冷凍ビーム!》

《あんた私の事馬鹿にしてる?》

《違う! 本当に誘導してくるビームを撃ってくるんだ!》


 ――La ――la―lA ―La―lあ―lA LalあラaLalあラa


《何これうるさ!?》

《アレが龍に当たるとマズイ!》

《待った……誘導するって言った?》


 エクトーが聞き返した内容を、コウは首をかしげつつ繰り返す。


《そうだ!追ってくる》

《へぇ……ミサイルとかそんな感じ?》

《うわぁ!? すげぇ久しぶりに聴いた! そう! ミサイル!》

「(……コウの世界の武器?)」


 コウが思わずテンションがある。今まで、現代の単語や話題はそうそう出会うことはなかった。それが、エクトーという同郷の者が現れた事で、久しぶりに自分からではなく、相手からの言葉で聞こえてくる。その喜びようは、まるで耳が喜んでいるようであった。

ようなレベルであった。


《で、あんたミサイルの避けかた知ってる?》

《知る訳ないだろ!?》

《でしょうね。私もしらない》

《なんなんだ君!?》


 ――――LalあラaLalあラalA Lalあ


《あーもうマズイ!》


 喜びも束の間。すでに発射体制に入ろうとしているバスター・ケイオスを前に、しかしエクトーは飄々としていた。


《知らないけど、対処法はなんとなく想像はつくのよ》

《そ、そうなの!?》

《そうなの。だから私の言う事を聞きなさい》

《聞いたらどうなる?》

《誘導冷凍ビーム避けられるわ》

《わかった! やろう!》

《即答キモ》

《キモッ!?》


 考える時間すらなく答えたコウに面くらいながらも、エクトーはどこか不思議な面持ちであった。


《(こいつ、騙された事とかないの?)》


 エクトーが見る限り、コウはどこまでも性善説での判断をしている。この瞬間にでもエクトーが裏切るかもしれないなどと微塵も考えていないように見えた。それはエクトーにとって信じられない思考回路である。


《(能天気で愚鈍で見通しが甘い……でもまぁ)》


 エクトーにも、耳触りな詩は聞こえ続けている。その詩はやがて音が高くなり、耳触りがさらに悪くなっていく。この高音が上がり切った瞬間に、ビームというのは発射されるのだと直感した。


《(裏切った所で何も無いからいいか)》


 裏切って見れるのは、コウの落胆する仕草と、激昂したコウの乗り手を見るくらいであろう。それはエクトーにとって裏切ってまで得るには、少々採算が合わない。


《(終わった後で考えてやる)》

  

――LAアアアアアアアアアアアアアアアアアア



 そしてついに一つの音階、一つの種類の音が、長音となって、あたりに響き渡る。そして、眼球より、光の束が寄り集まった、光線のようなものが発射される。その数は……8本。


《ハァ!? レーザーって複数なの!?》

《あ、言ってなかった!》

《馬鹿! アホ! 愚鈍!》

《君、なんか語彙が変じゃないか!?》

《とにかく上昇!》

《ど、どうするんだ?》

《まずアレの軌道を龍じゃなくって、()()()()()()()!》

 

 コウとエクトーが急上昇する。エクトーの狙い通り、上空へ向かったコウ達を追いかけるように、レーザーが迫る。


《この後は!?》

《その前に確認! あんたの乗り手、急降下は平気!?》

《だ、大丈夫!……だよねカリン?》

コウ(あなた)の中で何回吐いた思って? 大丈夫よ!」

《だ、そうだ!》

《(……そういや、そんな奴だったわ)》


 改めてコウの乗り手の声を聴き、ほんの少しだけ感傷に浸る。


《(生身でベイラーの剣を振るうような奴だった)》


 エクトーの中で、完全に野性味あふれる女性としての固定観念が根付いた瞬間であった。


《合図で地面スレスレまで下降しなさい!》

《その後は!?》

《龍を守って、攻撃させるまで全力で護衛!》

《あーなるほど。わかった。そうしよう!》

《(今のを即答しなかったのは単純に作戦を理解する為かぁ……)》


 そして、コウの事も、固定観念ができつつある。


《〈コイツ、頭いいのか悪いのか分からないわ)》


 なんだかよくわからない。だが知っている事もある。


《(お人よしのお節介焼きって事しか知らない)》


 人が泣いていれば駆け寄ってくるようなタイプである事だけは、エクトーもすでに知っていた。


 背後にレーザーがせまった所で、エクトーが叫ぶ。


《今!》

《おう!》


 コウとエクトーが同時に降下を始める。レーザーは彼等を追いかけて降下していく。荷重でコウの翼が軋み始める。


《コウの乗り手! 失神してないわね?》

「―――よ」

《あ?》

「名前で! 呼びなさい! カリンよ! 私の名前!」

《カリン。カリン、ねぇ》


 今まで何度も戦っていた。それでいた初めて、相手から名乗られた。パームが何度が呼んでいた記憶もあるが、それでもエクトーは、ずっとコウの事しか呼んだ事はなかった。呼べと言われれば、呼んだ方が意思疎通が叶うとして即座に呼び始める。


《じゃぁカリン、今度はスレスレのまま飛ぶのよ》

「上等!」

《(……アレ。たしかこの国の女王じゃなかったけ? 案外口悪い?)》


 パームが寄越した前情報と随分印象が異なる事を考えながら、エクトーもまた地面スレスレに飛び付ける。レーザーは曲がり切れず、その全てが帝都の石畳に命中し、地面を凍らせるだけに終わった。


「す、すごい! こんな方法が……」

《すごいぞエクトー!》

《安心すんな馬鹿。さっさと龍のとこ行くわよ。私達が狙われてる分には、龍だって雷を使えるだろうし―――》


 そうして龍を見あげた瞬間、ソレは始まった。先ほどの詩と変わらないほどの爆音。轟音。そして空の嘶き。間違いなく、龍はブレスを使おうとしている。これにより、コウ達の行動もおのずと決まる。


《よし!始まった!》

《じゃぁコイツをなんとしても、守ればいいのね》

《そうだ! いこうエクトー》

《命令すんな》

  

 黒いベイラーと白いベイラーが戦火の中、龍の元へと急いでいく。それは、少し前まで、絶対に叶う事のない、共闘の光景であった。

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