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姫さま頑張る。

戦うだけがロボットのすることじゃありません。そしてそれはパイロットもです。

「そうそう。高さはベイラーと同じくらい。でも目線より下に。前がみえるように。」

「《こ、こうでしょうか? 》」

「そうそう。そのまま、それを押して雪をかき分けていくの。」

「《ちょ、ちょっと待ってください。どうやってそんなことをするんですか? 》」

「あー、えっと……ミーン! 疲れているところ悪いのだけど、すこしだけお手本をみせてあげて。「《それくらいなら、お手のものです。 》」


 カリンが、作業の現場に入った。街道の雪かきにきてから、キールボア・ギルギルスの討伐にはじまり、まるで作業を手伝うことができずにいたカリンだが、ここへ来ての、初めての現場監督としての仕事に張り切っていた。オージェンは「形式上」として決めた役職だったが、仕事をしないで日和見するカリンでもなかった。、手始めに、作業の手順を確認し、その後、整備とは別に、食事を作る役割の分担と、作業を入れ替えで休憩する人員をきめ、スムーズに仕事をすすめられるように最大限配慮する。しかし、ここまではオージェンがカリンに残した仕様書とも呼ぶべきものに書かれている通りであり、事実、仕事はそれでかなりはかどっていた。今日中には、予定の半分までは作業が終わる見通しまでついている。しかし、このままでは現場監督の名折れと感じたカリンは、ミーンの持ってきた道具、除雪器の普及に着手したのである。


「《サイクルシールドを二つ折りにしたような形なんですね。》」

「そう。この折れた部分は、本来なら鉄でできているけれど、ベイラーなら、その部分をサイクルブレードの刃の部分みたく、硬い材質にすれば問題ない。そして、その道具が、完成すれば……ミーン、準備はよくて? 」

「《いつでも! 》」

「じゃぁ、お願い! 」


 ミーンが、今さきほど別のベイラーが作った、サイクルでできた除雪器をつかって雪をかき分け始める。この雪の中でも、すいすいとはいかずとも、スムーズな動きで、道につもった雪をはらっていく。その光景に、ベイラーたちは思わず声をあげた。


「《あんな単純なことで雪が分けられるのか! 》」


 ベイラーとその乗り手たちが、こぞってサイクルを回し始めた。最初こそ、2枚のシールドを狙った場所で結合できず苦労していたが、そのうち、ひとりの乗り手とベイラーが、除雪器を作ることに成功した。そこから、その成功例を真似をして作り、成功し、その成功例を真似してを繰り返し、ついには作業する者全員が除雪器を作ることができた。


「3人、1列にならんで、ゆっくりすすむの。そうすれば、端に雪があつまっていくから、残った人たちで崩れないように整えて。」

「了解しました。いくぞお前たち! 」

「《応とも! 》」


 出来上がったばかりの除雪器を構え、3人1列でゆっくりと進んでいく。雪がベイラー達の行く手を阻むが、それをものともせず、ひと筋の道を作っていく。脇に押しのけられる雪が、ふたたび道に戻ろうとするのを、今度は後ろに控えたベイラーが押し固めていく。そうして、日の光が真上になるまで無心で進んでいたとき、おもむろにひとりのベイラーが振り向いた。今度は、ベイラーが、そして乗り手たちさえも、驚嘆の声を上げた。


「《あ、あっという間にここまで終わった……。》」

「掬ってやってたときより、ずっと早いぞ! 今日の予定なんかもう終わりそうだ! 」


 ミーンらがもたらした除雪器の効果は絶大で、あっという間に、ベイラー3人が通れる道が出来上がっていた。雪が崩れて落ちてこないように、ある程度固めてて整える微調整こそ必要だったが、それでも、今日予定されていた作業箇所までが終わってしまい、皆が手持ち無沙汰になってしまう。


「どうしましょう。オージェン様は今日ここまでやるようにとのことだったので。」

「《進めてていいんじゃないかなぁ。はやく終わらせられるなら。それに越したことないのに。》」

「みな、ちょっとまってね。そこのあなた、手を貸してくださる? 」

「《もちろん。》」


 カリンが皆の迷いを受けて、行動を起こす。ベイラーの手をかり、たった今作られた通路の脇、集められた雪の上に舞い降りた。なんどか足ふみし、この雪がきちんと押し固められているかどうかを確認する。


「ほかもこのように固めていたわね? 」

「はい。今度また雪が降った時、柔らかい雪と硬い雪で差がでますから、私たちは柔らかい雪をどかせばいいというわけです。」

「なるほど。……この道具をつかった道と、昨日までの整備の道とで、差があると思う? 」

「私は、大丈夫だと思うのですが……。」

「ご自分の判断には自信がない?」

「その、最終的に、オージェン様が逐一確認していましたので。」

「ああ……あの男は神経質ですから。細かいところまで見えるのでしょう。」

「し、しかし、決して私たちの仕事を悪くはいいませんでした。それに、確認の後、追加の指示はでていませんでしたから。」

「なるほど。仕事は完璧にこなしていた証ね。流石。……それはそれで、困ったことになってしまいましたけど。」

「なぜです? 」

「オージェンからは基準表はもらっていないのよ。2度手間をよしとするなら、このまま進んでしまうのだけど……。そうえば、器具の調子はどう? 」

「《姫さま! あれすっごいね! さくさく進んじゃうんだもん! 》」

「ベイラーからそう言ってもらえるなら、効果はあるみたいね。 うーん。作業時間そのものは短くなっているし、二度手間になってもすぐ治せると考えましょうか。」

「《ああでも、この先は使えないかも。 》」

「ん? なにかあるの? 」

「この先、緩やかな坂になっています。それに、ミルワームが眠っているのを見た者もいるのです。」

「それはまた、地中をえぐって寝ているのを邪魔しちゃったらダメね。」

「いつものように掘り進める形なら、こちらの揺れに気がついて動いてくれるはずです。 」

「でも、すいすい進む除雪器じゃ、ミルワームは気がつく前にあってしまう。うーん。」


 うんうん唸ってはその場でぐるぐる足跡をつけるカリン。そのまま、明暗が浮かんだわけではなく、ついにはベイラーに背中をあずけて、うつむいてしまった。


「《ひ、姫さま! ? 》」

「進むべきか。進まざるべきか。 手順間違っていたら二度手間どころではないし、かといってこの先は通常通りゆっくり進むしかないし、これは……。」

「どうなさるので? 」

「いっかいお昼にして、そのあと考えましょう。 」

「は、はい? 」

「考えてみれば、予定の今日の分は終わっているのだから、あとは自由にしてもいい。でも、除雪器の力をもうちょっとだけ調べたいの。この道具、いろいろな応用がききそうじゃない? 」

「は、はぁ。 」

「土を削るんだもの。 農耕にだってつかえるわ。きっと。」

「なるほど。ベイラー達の手ではなく、除雪器で掘り返すと。」

「そう。だから、いまはベイラーがどれくらいの重さなら得意不得意関係なく除雪器で持ち上がるのか知りたいの。いけないかしら? 」

「いいえ。オージェン様も、お喜びになられるお考えかと思います。」

「でしょう? きっとそうよ。 」


 雪の上にたち、カリンがベイラーとその乗り手たちに声を張り上げて伝える。


「ありがとう!皆の働きで今日の分はもう終わり! お昼にしましょう。そのあと、もうすこしだけ、除雪器を試しにつかってみたいの。この道具は、今後ゲレーンでの新しい器具となるはずです。 そのためにもどうか、皆で試して、その手応えを聞きたい。いかがか! 」


 ベイラーたちがお互いの顔を見回す。そして、道具を掲げて応えた。


「《応とも! 》」

「これがあれば雪かきがこんな楽になるんだもんなぁ! 」

「では、また後で。」


 各々が食事に向う。そのなかで、ミーンに駆け寄るカリン。乗り手のナットを呼びにいったのだ。


「ナット、聞こえて? 昼食にしましょう。」

「はい、今降ります。ミーン。」

「《はいはい。》」


 ミーンが、おもむろに地べたに足を投げ出して座り込む。投げ出した足は畳んで、膝を抱えるように体に密着させた。ナットが中から出てくる。コウのように膝立ちで乗り手を降ろさないのは、階段の役目をするために添える両手がないミーンが、コクピットからナットを安全な高さから下ろす為の配慮だった。


「食事をとったら、すぐにもどってしまうの? 」

「はい。みなさん、手紙をたくさん書いていました。なら、僕はそれを届けるのが仕事です。」

「すこし、お話していいかしら? 」

「それはもう!是非!し、しかし、お隣を歩いていいのでしょうか……。」

「ご不満? 」

「そ、そうではなく!ぼ、僕では釣合いが……。」

「ここにいる者で気にするものなどいませんよ。」

「で、では、お隣を歩かせていただきます。」

「はい。……ミーンの乗り手は、あなたが初めて? 」

「え、えっと。はい。叔父さんと観測所から帰る途中、ソウジュの木で休んでいたんです。そのとき、丁度ミーンが落ちてきました。」

「いつのお話? 」

「は、はい! もう2年になります。」

「乗り手としては私より先輩ね。私はまだ半年と少し。」


緊張でガチガチなナットをよそに、カリンは他愛ない話をしながら、今日の食事を取りにいく2人。料理人が、すでに用意を終えていた。スープとパン、そして、サーラからきた塩で漬けたキールボアの肉だ。野菜が少し少ないのが気になるが、野菜の収穫量がそもそも0等しい今のゲレーンで、ここまでの食事が取れているのだから、あまり無理をいうことができない。ここで、ナットが、その香りに首をかしげた。料理人に問いかける。



「あまり嗅がない匂いです。肉とこれは……キノコ? 」

「郵便のは鼻が効くんだなぁ。ギルギルスの肉と、ゲレーンで取れたキノコのスープだ。」

「ギルギルスって、あの腕が槌になっているやつ? 食べられるの? 」

「なんでも、こうしてキノコと煮込めばいいそうだ。このギルギルス、誰が捕ったと思う? 」

「え?……赤い肩のベイラーかな? でもここに赤い肩をしたのは居なかった気がする。 」

「これはな、姫さまと白いベイラーが獲ったんだ。 」

「え、ええ!? 姫さまが!? 」


 おもわず皿を落とそうになるのを、料理人が支える。ナットが謝罪をしてから、カリンに向き直った。


「そのお話、聞きたいです! 」

「いいけれど、あまり面白くないわよ? 」

「おっと、郵便のだけに独り占めはさせはしないぜ? おーいみんなー! 」

「ちょ、ちょっとあなた!? 」


 なんだなんだと人が集まってしまい、そのまま追い返すのも忍びないと思ったカリンが、食事をしながら、行儀が悪いかもしれないと思いつつ、自身の初めての狩りの体験を話す。語り口が大げさになりすぎ無いように気をつけながら、キールボアがシールドを突き破るほどの胆力があったことや、ギルギルスがブレードをその口で防いだこと、足蹴にされてコウが雪まみれになったこと、話す種はいくらでもあった。ナヴやジョットの怪我の話題は、極力抑えて話したが、それでも、彼らがこさえた罠が最後の決め手になったことだけは、どの部分よりも詳細に、かつ明確に話した。しかし聴く方はといえば、まるで怪談をきくような心持ちで、しんを静まり返っている。


「本当に恐ろしギルギルスだったわ。」

「姫さま、我々はいま恥ずかしゅうございます。 」

「え、ああ、ごめんなさい、こんな大勢でお話を話すなんて初めてで……聴き苦しかった? 」

「そうではありません。そんな体験をさせてしまった我々の、なんと未熟なことか! 」

「お助けしたかった……。」


 話を聞いておいおいと泣き出すものまでいる。


「本当に、ご無事でなによりでした……。そのような修羅場であったとは露知らず、我らは肉をかっくらってばかり。」

「オージェン様も人が悪い! もっと護衛を増せばよいのに! 」

「そ、それはダメよ。あくまでこの街道をちゃんと通れるようにするのが、あなたたちの役目なの。私の護衛に人をさいて、作業の手を送らせたら、物が届かなくて困ってしまうのよ? 」

「し、しかし! 」

「いいから、気にせずにやりなさい。オージェンだってそう言うわ。 」

「カリン様がそこまで言うのなら……」

「さて、まだ雪もふってこないし、やるだけやってしまいましょう。」

「そうしましょう。」

「ああ、でも皆食べ終わってないか。」

「その、姫さま以外みんな食べ終わってます……。」

「……ちょ、ちょっとまってね? 」

「「「「「「ゆっくりでいいですから! 」」」」」」

 

 初めて大勢の前で喋りながらの食事は、食事の部分を切り離してこそうまくいったようで、スープこそ飲み干していたが、パンや肉はそのまま手付かずであった。そこまで一口が大きくないカリンであるが、一度、オージェンに憤慨しながら取った朝食での食べっぷりがよほど皆の目にとまったのか、ふたたびそれが観れる機会が訪れ、カリン以外は食器を返しながら横目で食事シーンをじっと見ている、傍から見れば異様な光景が出来上がっていた。しずしずと、それでいながら咀嚼するための休むタイミングがない為に皿から常に一定のペースで食べ物が消えていく。見事なのは、口元がまるで汚れていない。そして、一口が小さいのにいつの間にか、カリンは肉もパンも食べ終わっていた。


「……どうかして? 」

「い、いえ!なんでもありません! 」

「では、みなさん戻って作業を進めましょう。もう少しだけすすめて、今日は早くにきりあげてしまいましょう。」

「はい! 」


 料理人は、その役職を皿洗いに変えながら、皆の食器を丁寧に洗っている中で、ぞろぞろと乗り手たちは自分のベイラーの元に戻ていく。それは、ナットも例外ではなかった。尻餅をついているであろうミーンの元にもどる。だが、そこで少々異変が起こっていた。


「《も、もどりましたか、ナット。》」

「ミーン、どうしたの?それ。」

「《背後からどっしりときました。不覚です。とりあえず乗ってください。ひとりだとどうにも踏ん張りがきなかくって。》」

「わかった。」


 ナットがミーンに乗り込む。尻餅をついている状態ならば、こうしてすぐに乗り込むことができる。問題があるとすれば、ベイラーひとりのときにすぐさま立ち上がれないくらいだろうが、今回はその問題が仇になっていた。


 ミーンは、ゲレーンミルワームに伸し掛られていた。高さ1m長さ6mのミミズにのしかかられて、ミーンもぐったりしていて動かない。尻餅を付いた状態から、手を使わずに立ち上がるには、自身の重心を前に持っていかなければいけないが、それも、上から蓋をされてはできなくなってしまう。重心が移動しないのだ。しかし、ミルワームもこの状況は予想外らしく、あまり動かない。むしろこちらもぐったりしているような状態だ。


「ミーン。あなたが動いたわけでもなく、勝手にこの子が土からでてきたの? 」

「《はい。突然どかんと土が盛り上がって、気がついたらこんなことに。》」

「そしたら、もしかしてさっきの雪かきで土を抉ってた? それで起こしちゃったとか。」

「《いや、さっきの雪かきで土は掘ってないから、そうじゃないと思います。》」

「……偶然? 」

「《さぁ……》」

「姫さま! 今、立ち上がりますから、離れてください! 》」

「ええ、もちろん。」


 タッタッタと小走りで、十分にミーンから距離をとる。それを確認してから、ミーンが動き出した。体を左右に揺らしてワームを動かしつつ、強引に足の力でたちあがる。マントが翻ると同時に、ミルワームが雪の上にドスンと落ちた。


「土に返してあげられない? 」

「穴に放り込んで置けばいいんでしょうか? 」

「そうね。雪の上よりは暖かいでしょうから。いま他の人を呼んでくるわ。」

「《……はい。お願いします。 》」


 カリンが状況を見て、他のベイラーを呼びに走る。ミルワームを穴に運んで戻してやる為だ。生まれながらに腕がないというのは『持つ』『運ぶ』『支える』に類する全般が困難であるということで、現にいま、カリンはミルワームを運ぶ為に、別のベイラーを呼びに行った。人間の場合、肘から先があればやれることがまだ多いが、ミーンの場合、肩口からごっそりと本来あるはずの物はない。それを知っているからこそ、口に出さずにすぐさま適切な行動ができるカリンを、ミーンは、素晴らしい方だと思うのと同時に、自分はどうして腕がないのだと、普段マントで隠している体を見て思う。そそてそれは、乗り手であるナットにも伝わってしまう。


「またそうゆうこと考えてる。」

「《……ごめん。》」

「ベイラーにはそもそも得意不得意があるからいいんだよ。」

「《分かってはいるよ。でも、こうゆう時はどうしても考えちゃって。》」

「もう、2年にもなるのに。」

「《うん。あっという間だった。……覚えている? 立ち上がるときのこと。》」

「忘れるもんか。」

「《なんて言ったかも覚えてる?》」

「もちろん。かっこいい色してる。それは今もだもん。」

「《腕がないのに。って言ったのに、色がかっこいいから立ってって、会話が成り立ってない。》」

「うう、そう言われると、……もしかして、立ち上がらないほうが良かった? 」

「《ううん。あっという間だったけど、忘れられない景色がたくさん見れた。あのとき立ち上がったから、それは見れたんだ。ナットは、もっとそんな景色を見せてくれる? 》」

「もちろん。」

「《楽しみにしてる。》」

「まかせて。」

「《ナット。》」

「なに? 」

「《ありがとう。 》」

「変なミーン。」


 カリンを待っている間、、ナットとの思い出にでも浸ろうかと思った時だった。ほんの少し、ミーンは、じっとして動かないミルワームを眺める。普段は土の中にるこの生き物に、こうして不可抗力の行動を受けたのは、2度目だった。1度目は、嵐から逃げようとするミルワームの群にたまたまかち合ってしまった時。そして2度目が今回。幸いながら、群でなく1匹であったために、そこまでの被害を受けることはなかった。しかし、それはそれとして、このミルワームが一体どこから来たのかが、気になってしまう。


「《ナット。この時期、ミルワームが土から出てくる理由ってなにかな? 》」

「ん? そうだなぁ……寝ている最中に起こされてびっくりしたときは、土からでてくるって叔父さんが言ってた。」

「《それ以外だと、どう? 》」

「それ以外となると……なんだろう。動かなきゃ行けない理由ができた。とか? 『追われ嵐』のときは、自分の土が根こそぎ流されるから逃げたんだろうし。」

「《逃げる。……また嵐がくるのかな? 》」

「えー! 吹雪はたしかにすごいけど、あんな嵐みたいなのじゃないし、違うよ。」

「《なんだろう。どうしてこんなとこからでてきたのかな。》」

「気になる? 」

「《ミルワームが変なことするときって、なんかの前触れみたいで。前もそうだったし。》」

「うーん。そう言われると……あれ? 」

「《どうしたの? 》」

「穴に、なんかいる。」


 ずる、ずる、ずる


 何かが、地中を掘り返して、ミルワームが通ってきた道を広げている。その音は、だんだんと大きくなり、勢いも強くなる。ついには、中から押し出されたであろう土が、穴から吹き出した。


「《ナット! なんか変だ! 離れよう!! 》」

「そうする! 」

 ミーンが、ミルワームが出てきた穴から距離をとる。その判断は正しく、地中から掘られたことで地面がもろくなったのか、そのあたり一帯が、一斉に陥没する。ミルワームは、その陥没にまきこまれ、そのまま地中に埋もれてしまう。


「《運ぶ手間が省けた。》」

「でもなんだろう。このあたりこんな脆いっけ?  」

「《いや、さっきまでたくさんのベイラーが一緒にいて崩れなかったのに、今更になって……出てくる!! 》」


 地中から、その正体が現れる。


 大きく、背の高い体。色は黄色くも、傷だらけで華やかとはかけ離れている。その手は、土を掘り返して泥でまみれただけでなく、もう長い間体が拭かれていないことが分かる。そして、もっとも目に付くのは、普通のベイラーと決定的に違う、丸い点となっている4つの目。あとから、人間も2人、黒いマントで身を包んでいる。


 「ほう! 幸先いいな。これで8つ目だ。」


四ツ目のベイラーと、パーム盗賊団が、街道に現れた。


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