ベイラーと燻る憎悪
避難民が、スキマ街の病人を襲う事件が発生した。これを受け、カミノガエは、避難民たちに、聖女の軍勢の事を正式に通達する事を決めた。混乱を避ける為の緘口令を敷いていたが、それが逆効果であったのだ。
「幸い、軽傷だそうです」
「……分かった。あとで余も、病人たちに見舞いに行こう」
「陛下、何もそこまで」
「そこまでしなければならないのだ」
幸い、黒騎士が居合わせた為、事は収まった。コルブラットの進言を遮るように、カミノガエは続ける。
「元より、スキマ街の人間とそうでない人間とで軋轢があった。余は、この数日で、ほんの少しでもその軋轢が無くなったのだと勝手に想像しておった。だが現実はそうでなかったのだな」
「それは、陛下のせいでは」
「マイノグーラはやってのけたのだ! 余が出来なくてどうする! 」
聖女の軍勢に、スキマ街の人々が居たかどうかは、現時点では確証はない。それでも、民衆の中に、スキマ街の人々に襲われたと証言する者で出始めている。それはつまり、マイノグーラが、スキマ街とそうでない者、どちらも分け隔てなく迎え入れた事に他ならない。こうなれば、もはや確証や証拠を求める段階を通り過ぎている。人々に説明したうえで、こちらの対応を伝えなければ、第二、第三の事件が起きかねない。
「しかし、今日明日で、わだかまりが解けるとは思いませぬ。」
「遺恨が大きすぎるのは承知している。だが、このままでは作戦もままならない」
そして、カミノガエには、聖女の軍勢が現れた後に考えていた、とある作戦があった。コルブラットが手元で目を通している、その作戦の概要を載せた資料には、いささか信じがたい事が書いてる。
「この作戦は……陣で迎撃、ではなく、陣が、進撃の合図? 」
「そうだ。散発的な衝突はこちらが不利。ならば、全面的、かつ徹底的に抗戦するしかない」
「しかし、敵の数が分からぬ以上……」
「そこだ」
「はい? 」
「徹底抗戦をすれば、おのずと敵は集まる。そこを中央突破する」
「そんなことが」
「この港を見ろ」
カミノガエが、現在の生活拠点である港を指す。
「海を背にし、船があり、そして侵攻するには、門より来なければならない」
「猟犬が相手ならば、その試算は意味がないのでは? 」
「今までならな。だが、我らの敵は猟犬だけでは無い。そこに勝機がある」
「……軍勢は、人」
「そうだ。猟犬はどこにもで現れ、空さえ飛んでくる。だが人は違う。どれだけ数がいようが、どれだけ武器を持とうが、敵の取れる戦術は、人の物しか取れない……ならば」
カミノガエが、陣の周りを指でトントンと鳴らす。
「空を飛ぶ猟犬をベイラーで迎撃、そして、地上の人を、我らの兵で抑える。その後は、人同士の戦い。取れる手段はいくらでもある。なにせ、我が国は飽きもせず戦争を続けてた国だ。一日の長がこちらにはある」
「そんな簡単に行くでしょうか」
「奴らの戦力は不明だが、ひとつ分かっていることがある」
「陛下、それは如何に?」
「奴らには戦術を立てる者が居ない」
黒騎士が会話に割って入った。皇帝に聞いた問いが皇帝の口から答えが聞こえてこなかった事に、一瞬、シーザァーがムッとしつつも、当のカミノガエが納得した顔をしており、それ以上の追及が出来なくなる。
「戦略家や指揮官が居ないんだ」
「黒騎士、なぜそう思う」
「敵が散発的に奇襲を仕掛けている。敵の戦力を削ぐ際に使われる戦略です」
「……実際に削がれているではないか」
「違うのですシーザァー様。この戦略は本来、数で劣る勢力が行うのです」
いわゆるゲリラ戦である。少数による奇襲、それにより与える打撃で長期戦を仕掛ける戦いであるが、戦力が拮抗している場合、この作戦の意義は薄い。この作戦が効果的なのは。、奇襲する側が少数で、かつ地の利を得ている時。奇襲、撤退を繰り返し、大軍の補給を断ち、進軍を遅らせる。そして、人の集まりと言うのは、数が集まれば集まるほど、維持が困難になる。食料、寝床、その他様々な維持コストが掛かる。そして、本来掛けるはずだった時間を大幅に長引かせると、大部隊は機能不全に陥ってしまう。
「この奇襲はまるで統率が取れていない。目的もてんでバラバラ。手当たり次第に見つけた相手を襲ってるようだ。そして、マイノグーラに戦略ができるとも思えない。ところでシーザァー様」
「な、なにかね急に」
「もし、貴方がマイノグーラだったとして、聖女の軍勢を動かすとしたら、敵の奇襲先を何処にする?」
「……パン屋か、小麦のある船だ」
「はい。僕でもそうします。ですが敵はまだ一度も、どちらにも手を出していない。1番重要であるにも関わらず、です」
「この奇襲は、あくまで聖女の軍勢、その一部が、自発的かつ、衝動的に行っているに過ぎないと? 」
「確証は有りません。ですが、もし、最初から敵が統率が取れていたのなら、こうして僕らは生きていないでしょう」
今、黒騎士達が生きている事が、聖女の軍勢に統率が無い裏付けであった。
「ご両人のお話は、よく分かりました」
これまで沈黙を保っていたコルブラットが話を聞き返す。
「シーザァー郷が言う通り、人的被害はもはや無視できません。食糧にも限度がある。ならば、攻勢に出れる内に、攻勢に出るべきでしょう」
「うむ」
「いささか、作戦そのものが単純すぎるきらいはありますが」
「そうか?」
「黒騎士の言う通り、敵は我々とでは数で圧倒しています。突破するのは……」
カミノガエの戦略は単純明快である。相手が人であるが故の徹底抗戦の意義と、戦力の把握も同じく有効。。だが、その先が無い。だが、コルブラットの問いに、カミノガエは不敵な笑みで返した。
「フフフ。コルブラットよ。地下水道を忘れるな」
「地下水道を通って、敵の背後に出ると? 」
「そうだ」
「ならば……防衛を囮にして、本陣に切り込むと? 」
「全軍が囮、というのもおかしな話だがな」
「全員?……子細をうかがっても? 」
そうして明かされた作戦の全容とは、陣を整え、迎撃し、しかる後に、地下水道を突破、本陣のマイノグーラ撃滅を計る。だがコルブラットが思い浮かんだ作戦と、いささか齟齬があるようで、彼は詳細を求めた。
「これは……戦力を分け、本隊を囮とするのではないのですか? 」
「敵も人である。ならば我々が作った道も使われる可能性が高い。だからと言って、今までの作業で作り上げたソレらを、『利用されるかもしれないから』と全て潰すのは惜しい」
「では、囮も無しにどうやって本陣に? 」
「まず、空と、地上から二方面から攻撃をかける」
「先程も仰ってましたね……なるほど。偵察も兼ねて、ですか」
「そうだ。そして、敵の戦力を把握した後、誘いをかけ、この地におびき寄せる」
「……全軍で? 」
「そうだ。部隊は分けぬ。全軍でだ」
「それは、何故? 」
「ひとつ、我が方が戦力が乏しい。故に最初から分散しては勝つものも勝てない」
指をひとつづつ挙げていき、カミノガエが反論を述べていく。
「ふたつ。マイノグーラの所在が分からぬ。あの大きな目玉の結晶の元にいって、不在であったなどあれば、せっかくのチャンスも不意になる」
「……確かに」
「マイノグーラを見つけ次第、その場所にむけ、一気に進軍する」
「敵に意図が気が付かれたら?」
「その時は敗北となる」
「マイノグーラの場所が分からなかった場合は? 」
「その時も敗北となるな」
「……酷い作戦です。誰も参加しようと思わぬでしょう」
コルブラットの評価は、忖度もなく、率直な意見だった。攻勢に出なくてはならないと言っても、成功するかも分からない作戦である。それに、兵士たちがこの作戦を聞いて、とてもではないが共に戦ってくれるとは、コルブラットは考えられなかった。士気は、カミノガエが無気力だった頃に以前に比べれば、格段に上がっているとはいえ、それでも難しいと、客観的に判断できた。
「故に、先陣は余が行う」
「な、なんですって? 」
だからこそ、カミノガエの言葉に仰天する。
「人をついていかせるには、まず余が動かねば、説得力に欠けよう。それに余であれば、グレート・ブレイダーを操れる。余だけでも50人のベイラーが動くのだ。尖兵としては申し分なかろう」
「それは、あまりに危険なの、では」
「では聞くがコルブラット。危険を冒さず、この窮地は脱せると思うか? 」
その問に、コルブラットは無言で首を横に振らざる終えなかった。そして、カミノガエも、この問いが如何に難しいかを己で理解しており、その理不尽に近い問いを投げた事を謝る。
「……忘れろ。余も意地汚い問いをした」
「は、はぁ」
「あと三日もすれば陣は完成する。そして完成した陣で、奴らを迎え撃ち、猟犬どもを一掃すれば、この龍も、流石に開けてくれよう」
この地が閉ざされ、戦う相手は猟犬だけだった頃に比べれば、食べ物も物資もうんと増えた。増えたとはいえ、全く安心はできない。その安心を、未来を勝ち取る為の戦いであるのだと。
コルブラットは、カミノガエの意図を理解し、そしてこれ以上の追及を避けた。
「……わかりました。陛下が、そう仰るなら」
「黒騎士、貴君は、ベイラー達の調節を頼む」
「ベイラーの、調節? 」
「コレより、余の権限を用いて、あらゆる武器、あらゆる物資を使う事を許す。猟犬と戦い、マイノグーラと決着をつける為、全ての力を集めるのだ」
「……そう言う事であれば、お任せください」
「頼んだぞ」
黒騎士に課された使命。ベイラー達の、最後の調整。龍がこの地を閉ざしてから、戦う為のあらたな道具があつまりつつある。猟犬を倒す為の水砲。商会連合が持ち込んだ新型爆薬。他にも、ベイラー用の鎧や武器など、ありとあらゆるものが、探索により集められていた。
「さて、行くぞコルブラット。人を集めよ。聖女の軍勢の事を話に行くぞ」
「は! すぐに」
コルブラットをひきつれ、カミノガエは会議を後にする。黒騎士もまた部屋からでて、己の相棒がいる場所へと向かった。
「まずは……武器からだな」
戦う為の下準備をするべく、黒騎士が奔走し始める。陣の構築まであと3日。
◇
「あらゆる武器、あらゆる道具……とは言ったが」
黒騎士が向かったのは、各地から無造作に集められた物資の山。その中でも、武器、鎧など生活には不必要ではあるもののの、兵士たちには必須の物。どれも瓦礫から掘り出されような物ばかりで、泥や煤で汚れている。
「どれもコレも人間用だしなぁ」
ここに集められたのは、あくまで人間用。ベイラーが持つにはサイズが小さい。
「でもアレがあるとすれば、ここぐらいだと思うんだけど」
「……おや、君は」
黒騎士がため息をつきながら、武器の山をかき分けていると、同じように武器を探していた者と 目が合った。仮面越しで分かる、その美しくも鋭い瞳に、黒騎士は思わず姿勢を正す。
「サーラ王!? 」
「ライでいい………あー、黒騎士君」
そこに居たのは、間違いなく、サーラの王、ライ・バーチェスカ。であるのだが、少々様子が変わっていた。この国で最初に見た時よりもずいぶんと痩せており、頬がこけて、薄く無精髭が生えていた。目の下には濃い隈ができており、健康体とは言い難い。
「しばらく見ない間に、やつれましたね」
「……そうかな」
「食事は? 行き届いていないのなら手配を」
「ああ違う。あまり、喉を通らんのだ。全く。生まれてきた子の方が、よく食っているかもしれんな。ハハハ」
乾いた笑みを返すライに、黒騎士が顔をふせる。
「(……あまりに、お辛い)」
ライと、カリンに姉、クリン。ふたりの間に生まれた子供は、未だ泣いていない。泣いていないのに、食事も取る、排泄のする。こちらからいくら呼びかけても返事ひとつしない。父親としてはあまりに虚しい光景である。
「名前も決めていたのだがな。呼びかけても返事がないと思うと、呼ぶ気が無くなってしまった」
彼らの子供が男の子であり、相応しい名があったようだ。だが、その名をいくら口に出しても、声はおろか反応
ひとつ無い。食事と排泄以外は全て眠っており、抱き上げても、何も無い。
「それに、アレほど愛しいはずの我が子が、人形のように思えてしまって………そして、人形のようだと思ってしまった自分に、私はひどく苛立ってしまった」
本来あり得ない現象である。まだ流産したと言われた方が現実味があった。
「クリン様は、アレから」
「ずっと、ずっと息子を抱きしめている」
「……ずっと?」
言い方が引っ掛かり、ついオウム返しで問いかけしまう。
「ああ。ずっとだ。時間になればお乳を与えて、抱きしめ、その繰り返し。言葉をかけても、返事もせん」
「眠って、いらっしゃらないのですか?」
「そうかもしれない。少なくとも、俺が起きている間は、眠っている所を見た事が無い」
クリンは、超人的な剣の使い手。嫁ぎ先であり、部外者であるはずの国でも、民から信頼を勝ち取ったほどの女傑である。そんな彼女の、変わり果てた様子に、黒騎士は言葉を失った。
「これも、全て、あの化け物どものせいだ。そうに決まっている」
「……」
それでもライが心を失っていないのは、単に憎む先を自身で捏造し、怒りで体を奮い立たせている為であった。今、彼の足元には、刃がこぼれていない、ただ汚れているだけの、大量の剣が集められている。
「黒騎士も、ここから使えそうな剣を持っていくといい。あいつらを根絶やしにするには、武器がいくらあっても足りないだろう」
「……」
「錆びているのは昨日よけておいたから、安心してくれ」
剣を集めている時のライの目は、憎悪に染まってギラギラとしていた。いつか見た、他者を圧倒するような目とも違う。狂気に染まった目。
「もうすぐ攻勢に出るのだろう? 」
「何故、それを? 」
これから公表予定の進軍について、まだライは知らないはずである。現在構築中の陣は、迎撃用と銘打っている。まだ誰にも、あの陣が、攻勢の基盤である事を伝えていない。だがライは呆気なく答える。
「勘、と言えれば格好がつくのだがな」
「では、一体」
「何。戦いは、まだ元気でいる内にしか出来ないからな。食糧が足りなくなってからじゃ戦えない。それに」
「それに? 」
「猟犬を倒す術がわかった今、家族を、友を、大切な者を奪われ、燻ってる奴らがいる。そんな奴らの鬱憤晴らしには、戦いが一番いい」
ライは、己の経験談で答えにたどり着いていた。その目を憎悪に染めつつも、思考そのものは冷静と言える。だが、黒騎士の懸念が、問いを生み出す。
「もし、もしもだ、ライ殿」
「何だ? 」
「その猟犬側に、人が居たとしても、貴方は、その人を斬れますか? 」
「それは、猟犬に噛まれた人間の事を指しているのか? 」
「そうでは無いとしたら? 」
「なんだそれは」
ライに、改めて現状を伝える。マイノグーラを、猟犬を討つ為、三日後攻勢に出る事。今や、マイノグーラに心酔している人々がいる事。彼らが、マイノグーラを聖女として迎え入れ、自分達を「聖女の軍勢」と名乗っている事を伝える。最初、ライは首を傾げ、一度大きなため息をついたと思えば、黒騎士に向き直った。そして、最終確認だと言わんばかりに問いかける。
「つまり敵は人なんだな? 」
「そう、なります」
黒騎士にとっては、認め難い事実だった。なぜ、手を取り合えるはずの人間同士で殺し合いをしなければならないのか。何か、今からでも、聖女の軍勢となってしまった人々を説得できないかと考えいた。だが、ライ王は違った。
彼は、歯を剥き出しにしながら、大声で笑い始めた。その声は、子供が泣いているようにも聞こえる、奇妙な笑い声だった。
「なら存分に殺せる! 俺の剣術が通用する!」
「ライ王! そんな軽率な」
「軽率なものかよ! そもそも、あのマイノグーラなんぞに与するのが、よっぽど馬鹿のする事だろうが! 」
「そ、それは」
「俺の剣はどうしても対人向けだ。どうも猟犬相手には分が悪かったが、相手が人なら遅れは取らん」
ライの目には、もはや狂気しか宿っていない。あの、サーラで出会った、王として成り立てながらも、その責務を全うしつつ、宴会があれば全力で騒ぎ明かす、気風のいい男は、そこには居なかった。
「任せてくれ黒騎士。俺が百人力の働きをしてやろう」
「……はい」
黒騎士はそれ以上、言葉を持たなかった。コレほどまでに変わってしまった男に対して、人同士が争ってはならないなどと言う性善説を説いて、一体どうするというのか。それで、この男が味わっている喪失感拭えるとでも思うのか。
「ライ殿。迎撃としてベイラー達も参戦します。彼らが使えそうな武具や道具に、なにか心当たりはありませんか? 」
「うーむ」
「どんなものでもいいのです」
そして黒騎士は、別の話題へと切り替えた。彼の憎しみを解く手段も知恵も無い。ならば、己に課せられた使命を果たすのが先決であると、無理矢理己を納得させる。しばらくライがうんうん唸っていると、突然声をあげた。
「あるな」
「本当ですか!? 」
「ついて来い。集めたはいいが、ここま運んで来れなかったのがある」
「それは、一体? 」
「パラディンやウォリアーの残骸だ。中にいた連中だけ先に出して、あとはそのままだ」
「帝都のベイラー達か」
ライに連れられたどり着いた先の景色は、燦々たる物だった。力無く倒れる人工ベイラー達。先の戦争で砕け、折れ、朽ちていこうとしているだけのベイラー達。だが、黒騎士にとってこれは朗報であった。ウォリアーには鉄でできた剣を持たせるのが一般的であった。そしてパラディン・ベイラーには、鎧が着せてある。追い剥ぎのようだがそれでも、今居るベイラー達の戦力補強に大いに役立つ。。
「その他にも、よく分からんものがひとつ……」
「よくわからない物? 」
それは、壊れたベイラー達の中、一つだけ丁寧に掘り起こされた、長い筒状の物体。時折、内側から小さな光が発している。
「生き物の死骸か何かだとは思うのだが、何なのかが分からない」
「……コレって、まさか」
黒騎士が、筒状の何かに触れる。長さにしてベイラーよりわずかに小さい程度。材質は鉄ではなく、人工物ではなかった。そして、その筒の先端には、頭の半分上がくっついている。全体を見渡し、黒騎士がこの物体の正解を見出す。
「バスター・ベイラー」
「何? 」
「ライカンが乗ってたベイラーだ。その頭。コウが切り落とした……あの熱線を打ち出す部品だ」
コウが、大太刀で切り落とした、あの頭が、そこに転がっていた。
「なんだ、じゃぁ使えないのか」
「……いや、コレがあれば」
黒騎士は、目の前にある、小さく瞬く、バスター・ベイラーの一部を前に、わずかに浮き足立つ。
「あの熱線が、僕らで使えるかもしれない」
思いもよら無い武器が手に入る。そんな予感を前に、黒騎士は期待に胸を膨らませていた。




