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壁の内側

「壁が、なくなっていく」

 

 たった一箇所とはいえ、帝都の堅牢さを象徴していた壁が、ガラガラと音を立てて崩れ去っていく。堅牢さと同時に、人々を隔ていた壁は、リクの剛腕によって力ずくで粉砕された。人々は言葉をなくしながらも、王城が見えた事により、自分の身を守ため、一斉に動き出す。


「でもこれで王城にいける! 」

「早く逃げ込め! 」


 壁の崩壊は、確かに民衆にとって衝撃的だった。だが、今は商会同盟軍を名乗る敵が、空には得体の知れないベイラーに乗って飛び回っている。さらにはその空飛ぶベイラーには、新型爆薬を満載した爆弾が備わっている。その威力は、たったひとつで街を壊滅させるほど。リクがその身を呈して皆の盾とならなければ、民衆は誰1人として生き残ることはなかった。


 我先にと、新しくできた王城への道に人々が駆け込んでいく。敵のもつ爆弾の威力を目の当たりにし、民衆は初めて、この国が本当に戦争をしているのだと実感していた。男も女も、若者も老人も、大人も子供も関係なく、ただ恐怖に支配されながら王城へと突き進んでいる。


「王城にいけば、陛下も、剣聖もいる! きっと俺たちを守ってくれる! 」


 彼らが盲目的に王城に向かうのには理由があった。陸路で帝都の外に出るより、皇帝の、ひいては剣聖の庇護さえあれば、この戦いを生き残ることが、勝利することができると確信している。彼らにとって、皇帝とは、剣聖とは非常に大きな存在だった。


「リク、手は大丈夫? 」

《ーーー》


 民衆を助け、王城へと導いた立役者であるリク。しかし先ほどの攻撃により、彼にもまた消耗が見られる。『サイクル・すごいパンチ』と命名された、ただ全力で行う拳打だが、リクの怪力も相まって、その威力は凄まじい物になっている。だが代償として、殴る相手が硬ければ硬いほど、リクの拳が消耗してしまう。具体的には、指の関節に負担がかかり、満足に動かせなくなってしまう。


 『サイクル・すごいパンチ』を使う相手がリクと同じベイラーであれば、さほど問題にならない。木と木がぶつかり合ったところで、多少削れてしまう程度で戦いに支障はない。問題は、ベイラーより硬い物。石や鉄を殴った時である。


 リクが殴ったのは、高さ50m以上ある大きな石造りの壁。石の塊を積み上げていく方式で建築されており、ひとつひとつが固く重い。いくらリクが怪力の持ち主だからといっても、特別両手が頑丈という訳ではない。元々人体においても、指は関節部分が多く細いため、雑に扱えば、非常に壊れやすくできている。鉄拳王のベイラーのように、拳を鋼鉄で覆ってしまえば、手の脆さは関係なくなる。


「しばらく、右手はお休みだね」


 だがその結果、鉄拳王のベイラー、アレックスは指を持たないため、道具の一切を作ることはおろか、何かを持つ事も叶わない。その両手は、何かを壊すためだけの形になってしまっている。それは、クオの知る、ベイラーの本懐からかけ離れていた。


 一仕事を終え息をつこうとすると、クオの目が、逃げ惑う群衆を映した。


「……あれ。この景色って」


。今、リオの目には二種類の視線が交わっている。ひとつは、リクの中から群衆を見ている視線。もうひとつは、帝都のベイラー、ウォリラーベイラーの手にのってこちらにやってくる景色。


「これって、もしかして」


 クオがその視線にきがつき、リクのコックピットから飛び出でて、その肩に上る。以前として、自分の景色が双方向に向いている。それはつまり、もう一方の、共有している相手がこちらに向かってきているという事。


 群衆を踏みつぶさないようにすべく、すり足をしながら、慎重にウォリアーがやってきている。その手には、リクを見つけて両手を大きく振っている姉の姿。


「クオ!! 」

「お姉ちゃん! 」


 やがてふたりのベイラーの距離が近くなると、リオはウォリアーの手から飛び降りてコックピットへと直行する。共有された視界が限りなく零になる。


「お姉ちゃん、クオね、ちゃんとリクと戦えたよ」

「うん。ずっと見てた。すごかった」


 額と額を合わせる。ふたりの肩は、わずかに震えている。


「爆弾、怖かったの」

「うん」

「おねえちゃん、怖くなかった? 」

「怖かったよ。でも、ヨゾラとマイヤちゃんがね、リオを守ってくれたの」

「マイヤちゃん、大丈夫? 」

「うん。皇帝様がうけたまわったから」

「うけたまった? 」

「そこから先は()()話そう」

「へ? 」


 クオが間抜けな返事と共に目を丸くする。ウォリアーベイラーのコックピットから、聞き覚えのない声が聞こえたためである。だが、帝都の人々からすれば、聞きなれた声であった。


「4本腕のリクとやら。よくぞあの壁を打ち破った。ほめて遣わす」

「こ、皇帝様だぁ!? 」


 ウォリアーベイラーの中から、帝都の最高権力者、カミノガエが現れた。人々はその姿に驚愕し、戦場から逃げている最中であるにも関わらず、その場で跪き始めたが、その対応はカミノガエも予想していたのか、即座に制した。


「民よ。いまは善い。そのまま逃げよ。王城の門は開いておる」

「「は、ははぁ! 」」


 人々は一瞬戸惑いながらも、逃げ込む先を明確に示されて、とどまる理由がなくなり、その足を再び動かしはじめる。兵士しか乗る事のないウォリアーに乗り込んでいるカミノガエに驚いたのは、目の前にいたリオ達だけではない。


「へ、陛下、ベイラーにお乗りになれたのですか」

「おお。そなたが黒騎士か。まぁまだ歩く事くらいしかできんがな」


 黒騎士こと、オルレイトである。


「マイヤという従者を預かっておる。黒騎士よ。カリンはどうした? 」

「そ、それが」

《お初にお目にかかります。黒騎士のベイラー、レイダと申します》

「おお。深き森のような肌だ」

《お褒めにあずかり、光栄です》

「して、カリンはどうした? 」

《私の背中をご覧ください》

「ん? 」

 

 黒騎士が説明するよりも先に、レイダは背中に背負ったコウの姿を見せた。両腕は力なく垂れ、その目には光もない。怪我らしい怪我が一切なく、ただ眠っている。


「まさか、この戦いの中で眠っているのか? 」

《黒いベイラーとの闘いで消耗しきってしまったのです》

「黒いベイラー……シーザァーが戦ったとかいう、アレか」

《はい。今、そのベイラーがやってきています》


 リクが大穴を開けた壁からは、避難してきた人々だけが通っているのではない。壁を奥、第四地区には、いまだ黒いベイラー、アイは健在であり、執拗にカリン達を追いかけようとしてくる。


「壁をふさぐのは、むずかしいであろうな」

《なぜです? 》

「それは、だなぁ」

「な、なんだこいつら!? 」


 民衆の一人が声を荒げた。見れば、アイたちとは違い、壁と壁の間から、日の光で、目をくらませながら、人間がのっそりのっそりはい出てきている。その数は多く、逃げていた民衆と同じほど。彼らの身なりは一様にして貧相かつみすぼらしい。靴を履いている者はほとんどおらず、肌という肌には血と脂でにじんだ包帯を巻いている。


 最初、彼らは戸惑いながら現れた。長年存在し続けた壁が突如として壊れ、その頭上に見ることも叶わなかった太陽の光を浴びている。


「なんで、壁が壊れてんだ? 」


 スキマ街。帝都を区切る壁と壁の間にある、日の光さえ届かないスラムに住む彼らは、もちろん戦争の事など知る由もない。スキマ街は、帝都で時折起こる疫病。その疫病を防ぐために行われた『消毒』を生き延びた者が寄り集まっていた。運河もなければ畑もない。何もかもが足りない世界で暮らす彼らにとって、壁の外が少々騒がしい程度では、明日の食糧の心配の方を上回る事は無かった。今日、この日までは。


「これは日の光だ、お日様の光だ」 

「ま、まぶしい」


 自分たちを隔てていた壁が、一部とはいえ崩れ去った。それは第四地区と王城を直通させただけでなく、スキマ街ともつなかがった事を意味する。スキマ街は王城を囲む壁沿いに、ぐるりとドーナッツ状に出来上がっている。つまり、一部でも壁が砕ければ、彼らにとってそこが出入り口になる。ため池から水が抜かれていくように、スキマ街の人々は、日差しを求め現れ始める。


 その行動には、なんら意味などなかった。ただ、彼らは、生涯で初めて、あたたかな日の光を浴びたいという理由だけで、壁の中から出てきたのである。


「このみすぼらしいやつ! こっちに来るな! 」

「く、臭い! 」


 だが、避難してきた人々は、それを良しとしなかった。スキマ街の人々は皆貧しく、風呂が無いためひどい体臭をしている。包帯からは血の匂いまでしみだしている。生活環境の違いにおける、生理的嫌悪感。毎日風呂にはいれる環境にいた人間からしてみれば、スキマ街の人々は、およそ同じ空間にいたくない存在だった。


「ええい、こっちに来るな! 」


 そして、新たな争いが始まるのにそう時間はかからなかった。避難してきた人々が、その手に武器を持ち始める。ある者は石を。ある者は棒を。ある者は剣を。武器の種類は多彩だが、そのどれも、スキマ街の人々にとっては等しく凶器だった。焼けただれた肌を包帯でかろうじて止めている彼らにとって、殴られる事は、たとえ素手であろうと重症になる。


 一発触発の雰囲気を変えたのは、彼らの背後から来た、女の声。


《へぇ。なんか一杯いるわねぇ》


 黒髪をなびかせ、右手についたカギ爪をかちゃりかちゃりと鳴らしながら、ゆっくりと歩いてくるベイラー。


《何? あの汚いやつら》

「……」


 アイが、スキマ街の人々を見て思わず無い眉をひそめた。ベイラーにとって匂いは問題無いが、みすぼらしさからくる嫌悪感は、一度認めてしまえば、拭い去る事はできない。


《この国にもあんな連中がいるのね》

「……ああ。そうだな」

《あんた、どうしたのよ。そんな黙っちゃって》


 嫌悪感に身を包まれながらも、乗り手のパームが、いつになく落ち着いている事が気になった。


「なにも、変わっちゃいねぇな」

《は? 》

「おいアイ。あの小汚いやつらをサイクルノヴァで吹き飛ばせるか? 」

《できるけど、アレを生身の人間に当てる気? あの大勢に向けて? 》

「当然だ」

《大勢死ぬわよ? 》

「殺すんだよ」


 パームは、笑わない。感情の乗らない声で、淡々としている。


「どうせこのままにしても、壁の外で生きてた連中に殺されて終わりだ。なら、先に済ましてやった方がいい」

《へぇ。ずいぶんお優しい事で》

「なんだよ」


 アイの右手が、スキマ街の人々に向けられ、その手にある琥珀色の結晶が、まばゆく光り始める。パームの行為は、ただの残忍な殺戮。理由はどこまでも独善的で、彼に正義があるはずもない。


《ベイラーっていうのは楽ね、簡単に過去を知れる》

「何が、言いたい? 」

《ようやく合点がいったわ》


 パーム・アドモントはどこまでも救いようがない。それはアイも知っていた。狡猾で残忍。他人を自分の踏み台にしか思っていない。さらには喜怒哀楽が正常に機能しておらず、嬉しくもないのに、楽しくもないのに笑う。その笑い方も、アイにとっては気持ち悪い。


《あんた、元は帝都(ココ)の生まれなのね》

「てめぇ、俺の過去を」

《しかも、かなりの貴族のおぼっちゃん》

「……」

《あんたにとっちゃ、テーブルマナーなんか朝飯前ってわけね……でも長くは続かなかった》


 アイは今、パームの記憶を垣間見ている。彼のわずかにあふれた想いが、意図せず流れ込んでくる。その上で、アイは苛立っていた。


《謀略か、陰謀か。あんたは貴族社会から母親ごと追放された。そしてあの、スキマの街に落ち延びたってわけ》

「なんだ。同情でもする気か? 」

《同情? 私が? 》


 一瞬、間が空く。息を吸い込んで。一秒。


《バカじゃないの? あんたの過去がどうあろうと、人から何かを奪わなきゃ気が済まないその性格はそのまんまじゃない。貴族の時も、スキマの街にいた時も、あんたはそうやって生きてきてた。あんたは本当に、ただのクズ》


 アイは、心底気持ち悪いものを見る目と声で罵った。


《貴族の時は、他人の宝石を奪って母親にあげた。奪った事以外はいいお坊ちゃんね。ベイラーなのに涙が出そうよ》

「……」

《それで、スキマのころは、もうひどいもんね。今と何も変わらないじゃない。奪って、殺して、また奪われて。母親が病気で死んでから拍車がかかったのね。笑い方が染みついたのもその頃》

「説教でも」

《何? 》

「説教でも、したいのか? 」

《まさか》

「なら、なにがしてぇんだ」

《決まってるじゃない》


 アイが、罵るよりもさらに大きな声を張り上げる。


《みみっちぃ事言ってんじゃないわよ! 》

「は、はぁ!? 」

《あんたのその、奪おうとした物は絶対、殺してでも奪い取るのは、見上げた精神よ。ええそうね。そこは認めてやってもいいわ》

「急に何を言ってるんだ? 」

《分かんないの!? 私には()()が無かったのよ! 》


 パームが、あっけにとられる。そのあっけにとられている間に、アイはまくしたてた。


《私にはソレがなかった! 周りに流されて、勝手に信じて、裏切られて、奪われた! 何度も、何度も繰り返した! しまいには焼き殺された!》

「そ、それは」

《でもあんたは違った! 昔から! 何を奪われても立ち上がった! あのコウを、カリンとか言うお姫様相手にも向かっていった。私にできなかった事を、あんたは何度もやってるのよ!》


 感情が高ぶりすぎて、怒っているのか泣いているのか叫んでいるのか区別がつかない。アイは自分の言葉を、ただ暴力的なまでに相手の耳にぶつけていく。


《そんなあんたが、今更、過去なんざに執着してんじゃないわよ! 私なら過去だろうが世界だろうがぶっ壊して見せるんだから! 》

「な、なら、どうしろってんだ」

《スキマ街の奴ら()()なんて、そんなみみっちいぃ事言ってないで、いつもみたいにふざけた笑い声をあげながら、ここにいる全員吹っ飛せって言ってみせろ! 》


 激励だった。およそ人としての尊厳など一切考慮しない、世界を壊す宣誓。


《こんなとこでがっかりさせんな! 》

「……ハ」


 その激励は、人を奮い立たせるにはあまりに乱暴だった。励ますでもなく寄り添うでもなく、ただ本当に檄を飛ばすだけの単純なもの。ベイラーと人との間で行われるようなものではない。ベイラーは人を信じなければ動くことができず、人はベイラーを信じているからこそ乗り込んでいる。だが、ここにいるパームとアイは違う。


「なんだよ、ソレ、めちゃくちゃじゃなねぇか」

《嫌なら降りなさい。小心者が私の胸の中に入ってほしくないわ》

「なんだよ。ほんとうに」


 アイは、世界を憎んでいる。パームは、奪う事でしか、己を満たす術を知らない。お互いの目的は一見、相反している。世界がなくなってしまえば、パームは、誰からも奪く事ができなくなる。


 はずであった。


「……ハハ、ハハハ」


 パームが、ほんの少し、だが心の底から、笑いがこぼれた。


「はは。ははは。ハハハハ」

《……》

「てめぇは、やっぱイカれてるぜ」

《で、降りるの? 降りないの? 》

「降り無ぇ……だからよ」


 パームは、前を向き、牙を剥きながら吠えた。


「目の前にいる奴ら、()()吹っ飛ばせ」


 アイの、訂正通りに宣言する、もう、過去に目を向ける事は無い。アイは、そのパームの言葉をしかと聞き届け、右手を剥ける。


《しょうがないわねぇ! 》


 初めて、アイが、パームの指示を、否定から入らずに受け入れた。その瞬間、アイの体中のサイクルが高速で回転し始める。耳をつんざく高音があたりに響く。


「こ、この音は、まさか」


 黒騎士ことオルレイトは、その高音を知っている。かつて、自分がレイダと共に、初めて戦った時にも聞いた音。乗り手と、ベイラーの心がひとつになったときに起きる現象。


「まさか、あの黒いベイラーが、赤目に!? 」


 アイの目が、真っ赤に光る。それは、ベイラーの赤目と呼ばれる状態。サイクルの動きは通常の何倍も速く強くなる。いままで、アイはその領域にたどり着いた事は無かった。パームの事を受け入れていなかったのではない。問題はパームの方にある。


 パームは終始、アイの事をアーリィと変わらない存在ととらえていた。それまで乗り込んでいた人工ベイラー、『ザンアーリィ』であれば、赤目に成る事ができていたのも、要因のひとつだった。


 そのパームが、はじめてアイという存在を受け入れた。彼女の目的に同意し、そしてアイもまた、受け入れられた事を自覚できた。どれほどいびつでも、彼らは初めて心がひとつになった。

 

《「サイクル・ノヴァ! 」》


 その目を真っ赤に輝かせ、アイの右手からサイクル・ノヴァが放たれる。今までもすさまじい威力と範囲を伴っていたにもかからわず、赤目になった事でさらに強大になっている。


「レイダ! コウはまだ起きないか!? 」

「リク! もう一回守るよ! 」

《―――! 》


 爆発から皆を守ろうと盾を構えるリク。直線状の攻撃であれば、鋼鉄製の巨大なタワーシールドを持つリクは無敵である。だが、赤目になったアイの攻撃は、予想だにしない形を取る。


「だめだお姉ちゃん! 攻撃がおっきすぎる! 」

「こ、これじゃリクで守ってもみんなが守れない! 」

 

 迫りくるサイクル・ノヴァの直径が、あまりに大きく、タワーシールドの外にまで広がっている。このままリクが攻撃を受け止めたとしても、タワーシールドを超えて、後ろにいる避難した人々、スキマ街の人々、ひいてはカリン達全員が巻き込まれてしまう。


「「これは無理かも!? 」」

 

 双子がおもわずハモりる。巨大な光が、リクを、人々を、皆を飲みこもうとした、その時。


 空から、剣が降ってきた。アイの放ったサイクル・ノヴァを、その剣は真っ向から受け止め、一条だった光の筋を、真っ二つに引き裂いていく。


「なんだ!? 」

「ああ、間に合ってくれたか」


 パームが驚いている最中、皇帝カミノガエは安堵していた。彼は幼い頃から、その剣をよく知っていた。彼が認める、最高峰の剣士とベイラーが、この土壇場で間に合ってくれた事を感謝していた。すでにその乗り手の年齢は百歳を超えており、この戦争では、戦う事ができないのではないかと危惧もしていた。


「世界を壊す。その意気やよし」


 突き刺さった剣の姿が、形を変えていく。手足が生え、立ち上がり、振り返ってにらみを利かせた。


「ならば、我が剣をこえてみせよ」


 剣聖ローディザイアと、ベイラーであるグレート・ブレイダー。彼らが王城の危機にその力をふるうべく、ついに出陣する。一方のアイは、自分の攻撃が簡単に無力化された事を一瞬は苛立つも、ローディザイアの言葉に対して、パームと共に叫び返す。


「《上等! 》」


 もはや喧嘩の前口上である。その言葉と共に、アイと、剣聖との闘いの火蓋が、ここに切って落とされた。


エルデンリング楽しいです

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