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木我一体


 剣術は、その立ち方から構え方、斬り方ひとつにおいても細部まで分解できる。その分解した動作のことごとくは、最後の『斬る』という行為につながる一連の動作であるために、その行動は予測できる。斬るためには踏み込まねばならず、踏み込む為には構えなければならない。


 盤上のチェスのように、それは規則正しく変わりがない。故に動作を読み、その行動を察知し、先手を打つ。これは剣だけに限らず、肉体で行う戦いにおいておよそすべてに当てはまる原則である。


「(あれは構え、ではない)」


 ライも、そうしてカリンの攻撃を予知し、ソードブレイカーで対応してきた。だが目の前にいる剣聖は、その原則を逸脱している。まず剣聖は構えていない。まるで散歩でもするかのような軽い足取りと、ただ持っているだけの剣。だというのに、体を切り刻まれているかのような殺気をその老人は放っている。


「(そんなところまで似なくても! )」


 その殺気の質は、彼の妻であるクリンと同じであることが、状況の理解をさらに妨げている。何故と問う暇も、応えてくれる者もこの場にはおらず、ただ、目の前に現れた圧倒的な力に構えざるおえなかった。それは隣で剣を構えるカリンも同じ様子であるが、ひとつ違うのは、カリンはこの殺気の質について気が付いていない。彼女は彼女の姉の殺気を受けたことがない為である。


「(どうしたものか、これは)」


 改めて剣聖を見る。右手には大きな杖。左手には途中で湾曲している不気味な曲刀。剣先そのものはまっすぐなため、突きが出来るようにはなっている。


「(刃渡りのわりに柄が短い……片手で振るうにはいささか長すぎる)」


 ライはその曲刀がはなつ異様さを長さから感じ取る。刃渡りがざっと1mを超えているにも関わらず、両手で握れるほど柄が長くない。そのせいで片手で振るう事を余儀なくされている。


「(重さと取り回しは最悪と見た)」


 刃渡りが無いのはたしかに間合いの有利を取れるが、同時に連撃しにくい不利を得る。これが槍のように、両手で振り回すような武器であれば話がかわってくるが、剣聖の武器は、常人より剣聖の手がおおきい事を踏まえて上でも柄が短い。


「(なにかある。剣術か、それとも別の何かか)」


 戦いにおいて感じた違和感をないがしろにするライではない。かならずその違和感は、最悪のタイミングで発露することを知っている。


「いざ、征くぞ」


 だが、逡巡する暇はなかった。剣聖が動く。まっすぐ立った状態から、わずかに体をかがめた。踏み込むための前動作である。


「(どっちだ! どっちを狙う! )」


 ライを狙うのか、カリンを狙うのか、この時点では分からない。目線を追えばそれもかなうが、剣聖の顔は屈むと同時に地面へと伏せている。対人の戦いにおいて一連の行動がどれも理にかなっているのをライは感じとる。


 そして、剣聖が一歩目を踏み込んだ。



 土煙と共に白い装束が舞う。たった一歩。その一歩で肉薄していた。凄まじいスピードと相まって、それはもはや踏み込みではなく跳躍の類であった。そして、剣聖が向かったのは、居合の構えをするカリン。


「(速い!? )」


 すでにカリンは剣聖の間合いに入ってしまっていた。そしてカリンは、さきほどライを迎え撃とうと返し(カウンター)である居合の構えのまま。あまりに剣聖が速く間合いに詰めてきたために、居合を放つ事ができない。


 剣聖の脚がコロシアムの土を抉るように踏み込む。左手の剣は地面スレスレから頭上へと跳ねる逆袈裟の軌道を取っている。先んじて攻撃を撃てる瞬間はすでに無くなっていた。


「(躱してみせる! )」

 

 カリンが上体を逸らし、間合いから逃れようとする。足をつかい、一歩、その間合いから外へと出ようとする。剣聖の剣は長いとはいえ、その長さから間合いを把握する事はできる。


 状態を逸らし、足をつかい一歩下がった。それで間合いからは外れる。剣聖の剣は、カリンの頭上わずかにかすめ、完全に剣閃から逃れた。


 だが。


「―――まずはひとつ」


 剣聖がつぶやくと、剣が翻り、再びカリンへと襲う。片手で、それも重要のある長い刃渡りの剣を踏み込みも無しに切り返す。逆袈裟の軌道を再びなぞり戻るような袈裟斬り。完全に首を狙ったその攻撃はカリンを捕らえていた。


「……ほう」


 カリンの首は.落ちていない。ギリギリで剣聖の攻撃と首の間に自分の剣を滑り込ませることに成功する。ガキガチと不快な金属音が耳の残る。


「(逆手で抜かなけば間に合わなかったッ! )」


 カリンは居合で先手を取る事を諦め、即座に逆手に持ち直し防御をして見せた。もしカリンがここでいつまでも先手を取る事にこだわり、順手で居合斬りを放っていれば、剣聖の方が速く剣が届き、カリンの命はなかった。


 冷や汗がどっとあふれ出すのを感じ取りながら、改めてカリンは剣聖をみた。骨と皮しかないような体躯。帝都の人々の特徴の長身。手足も長い。皺だらけの肌には血が通っているのかどうか怪しい。しかし今まさに首を落とそうとしてきたこの剣には,確かな力を感じとる。カリンが全力で押し返そうとするも、まるでビクともしない。


「よく、選んだ」

「ど、どういたしまして」


 未だ剣聖が話しかけてくるとは思っておらず、そのまま素直に返してしまう。状況が不明のまま次々と変わるために混沌としていた。


「(なぜ剣聖がここに? 病で倒れたのでは? )」


 首元に迫る刃をまえに考えが纏まらない。押しこまれた刃が首に触れ、ぽたぽたと血が滴りはじめた。


「(しかしやる事は決まっている! )」


 だが行動を止めることはしない。両足を使い、押し返すのはでなく引く事で間合いからさらに離れる。カキンと軽い音と共に逃れると、不思議と剣聖は追ってこなかった。


「(私の居合の速さでは、間に合わない! )」


 己の未熟を噛みしめながら、大上段の構えを取る。構えを取る事自体で、剣聖との差をまざまざと見せつけれらている様だった。


「まだ、征くぞ」


 剣聖ローディザイアがつぶやいた瞬間、ほぼ跳躍である踏み込みが始まる。長い手足を存分に使った一歩で、たやすくカリンを間合いへととらえた。予備動作一つなく行われるその移動に、カリンは睥睨する。


「(動きが読めない!! )」


 相手の、すさまじい殺気だけは分かるのに、それがいつ、どのタイミングで自分に降りかかるのかまるでわからない。それはまるで、己の恐怖心を試されているようであった。


 剣聖がこんどは袈裟斬りで襲い掛かる。防御が間に合う速度ではなかったが、カリンとは別の方向から、まるでそよ風のようにスッと割り込んでくる影がある。


 ガチリと鈍い金属がかち合う音がする。そこにはソードブレイカーを構えたライがいる。


「お義兄様! 」

「カリン! 動き回れ! 決して止まるな! 」

「は、はい! 」


 剣聖の一撃を間一髪で防ぐライ。彼のソードブレイカーも、その技量も遜色がなかった。はじき返し、二人は剣聖から離れるように駆け出していく。左右に広がりつつ、2人は挟み撃ちを敢行する。


「(間合いが広いとはいえ剣は一本! )」

「(まらば左右から攻めれば! )」


 カリンとライがお互いを対象の位置にとり、突撃する。双方が向かう真ん中には、剣聖がなにもせず棒立ちで立っている。防御をするそぶりさえ見せない。


「ズウェアアアア!!」

「ッハ! 」


 裂帛の気合と、短く鋭い気合が重なりながら剣聖に剣を向ける。どちらも手加減などない一撃。手加減をしないのではない。剣聖が常時発している殺気のため、本気にならざる負えないのである。


 カリンは大上段の、ライは下段をそれぞれ剣を振るう。左右から放たれたその攻撃を受けるには剣では間に合わない。


「―――フン」


 しかし剣聖は、それを鼻で返した。短く息を吐きながら、その両足を強かに踏みしめ、左右からきた二刀を、受けるでもなく下がるでもなく、剣聖は、命中する寸前で、杖を地面へと突き刺し、それを基点に逆立ちをして、三次元の動きで回避して見せた。それによりカリンとライの剣は空を切る。


「(なんと身軽!?)」


 カリンが驚嘆している間に、頭上へと至った剣聖はすでに剣を振り上げている。カリンもライも、その剣の間合いに入ってしまっている。回避は不可能。


「カリン! 合わろ! 」

「やってみせます! 」


 1人で剣聖の放つ剣を受けるのもまた不可能。であればと、ライのソードブレイカーを押し上げるように、カリンが己の剣を当てる。


「―――ならば」


 その時、剣聖は持っていた杖と、歪んだ剣を合わせる。長い刃渡りであったその剣の柄と、いままで杖としてつかっていたソレが、カチリとかみ合う。そうして出来上がった武器の、奇異な武器であった本来の姿は、敵の首を掻きとる為の大鎌であった。


「(仕掛け武器!? )」


 刃に対して短すぎる柄は、そもそも柄ではなく『刃でない部分』というだけであり、剣聖が杖を突いていたのは、決して足腰が弱いのではなく、その鎌の一部であったというだけだった。剣聖が、気合を込めて大鎌を振りぬく。剣聖1人に対し、カリンとライ、二人の剣が交差する。剣聖の体はまだ空中にあり、剣戟はその体にもる純粋な筋力で放たれている。カリンもライも、地面に足を踏みしめているからこそ、剣戟に体重を乗せることが叶っている。


「(ふたりがかりで押し負ける!? )」


 刃と刃が真向からぶつかり合った直後、二人は剣聖の一撃で二人共ども吹き飛んでいった。弾かれた玩具のように無様に転がっていく。片手で振るわれる剣にこうも翻弄されている現実を受け入れるのに時間がかかった。


「(これが、剣聖の力)」

「(でたらめにもほどがある)」


 カリンもライも、たった二回の切り結びで力の差を体感している。足に力を込めて立ち上がろうとすれば、肉体がそれを拒否していた。己の肉体が死ぬような錯覚を味わう剣聖の殺気を浴び続け、ついに人間の本能にまで影響を与え始めていたのである。だが。


「(強い! 凄い!! )」


 カリンはその強さをみてしなびるどころか、さらにその闘志に火をつける。かつてない強敵。かつてない威圧。それらすべてが薪となり、カリンの体を動かす。恐れを知り、実力を知った上でなお、カリンは立ち上がった。剣聖をまっすぐ見つめる瞳に曇りはない。


「剣聖ローディザイア! 我が全霊の一刀を受けよ! 」

「―――よかろう」


 大上段に構えるカリンに対し、やはり構えなど取らない剣聖。しかし、幽鬼にもみえた白い肌は、うっすらと赤くなりつつある。この数合の切り結びで、剣聖の体温が上がっている証であった。


「(お義兄様は言っていた。私の剣は大地すら斬れると)」


 放つは己の最大の技。小難しい技法などなく、己のすべてを賭ける一撃。


「(ならば、それは今! )」


 目の前には殺気を放つ剣聖。指先でもった剣の速さに打ち勝つかどうかさえ分からない。見て反応することができない剣に対し、真向から勝負を挑む。愚策であるが、もはや他に手がない。


「(コウ、私に、力を貸して)」


 この場に居ない己の相棒を脳裏に浮かべながら、剣を構えた。その時である。カリンの腕が、足が、そして全身がわずかに、チリチリと燃え始める。まるでカリンの闘志がそのまま体に反映されているかのように。その炎は不思議とカリンを焦がすことはなく、温かい。


「(か、カリンの身に、何が起きてる? )」


 隣で顔をみあげたライが、その光景に今日一番の驚きをみせる。いままでも剣聖との闘いは驚嘆の連続であったが、ライの人生で身内の体から炎が出るなど見たことがなかった。カリンはその変化に気が付いていないようで、ただ燃え盛る炎に身を任せている。その炎は、激しく燃えているにも関わらず、何処か優しい、緑色をしてた。


「真っ向、唐竹ぇ……」


 肩に刀を添え、両足を踏ん張る。カリンをめぐる炎は一層強くなる。剣聖はその炎に後ずさる事もなく、ただしかとその剣を見ている。すり足でじりじりと間合いを詰め、そして一歩分まで迫った時、ついにカリンが動く。


「大、切、斬ぁああん! 」

 

 豪快な声と共にカリンの一撃が放たれる。ライに打ち込んだ時以上に重く、速い。その一撃は剣聖に避ける選択肢を奪い去り、その場で受けるか弾くかを選ばされる。


「むぅううん!! 」


 はじめて、剣聖が唸った。カリンの刀と、剣聖の鎌が激突する。いままでの比ではない轟音がコロシアムに響いた。剣聖は真向から受けて立った。カリンの渾身の一撃は剣聖のその長身をかがませるほどであり、両足を踏みしめる地面はその衝撃でひび割れた。


 巨大な鎌と、細い刀。単純な質量差や体重差をかんがみても、カリンが勝てる要素が全くない。だが、それでなお、対決は互角であった。


「(相手は強大。しかし!! )」


 カリンはその激突の最中、自分の体がどうなっているのかを理解していない。第三者からしてみれば、カリンの体は緑の炎を上げている奇人になっているが、本人の変化は全くない。あるとすれば、眼前の敵に対して、負けはしないという意思と、もう一つ。


「(不思議。コウが、傍にいてくれているような)」


 それは決闘中だというのにかかわらず、剣聖から文字通り浴びるように受ける殺気があるにも関わらず、どこか安心をしている。それは己の中で最も信頼を置く相棒が、すぐ隣にいてくれるような錯覚を得ている。その錯覚こそ、炎として現れているのだが、そのことにカリンはまだ気が付かない。


「ハァアアアアアアア!! 」


 今はただ、真正面の相手に対して全霊を尽くす事を至上とした。


 時間にしてわずか一秒未満で、事の決着がついた。


 剣圧、質量、間合い、すべてにおいて剣聖が勝っていた。だがたったひとつ。大鎌に変形する仕掛け武器である事が、剣聖に対して災いとなる。バキバキと、大鎌へと変形したその武器が砕け散る。カリンの剣戟と、剣聖の剣戟とを合わせた時、武器が耐えることができなかった。無残な姿となった大鎌であった何かが剣聖の手から零れ落ちる。


 一瞬の静寂の後に、いままで息をのんでいた観客が声を上げた。


「剣聖に、勝った? 」


 誰もがその光景を疑った。あの剣聖が負ける。誰にも想像ができなかった光景


「(武器を壊した! これで)」


 カリンも、その時、僅かに喜びを感じる。あの剣聖をこの手で下したのだと。胸を張って誇る事が出来ると。だがその喜びは、いまだ止まぬ殺気に打ち消される。


「カ、カリン」

「お義兄様! まだです! 」

「いや、それより君の体は」

「体? 」


 間合いから素早く飛びのき、ライに警戒を促した時、ようやく自分の体に起こっている事を理解した。体からコウが出すような炎が上がっている。


「燃えてるぅうう!? 」


 至極当然の反応が返ってくることに、ライは一周回って安心を覚えた。


「気が付いてなかったのか」

「な、何がおこったのでしょう」

「君がやったんじゃないのか? 」

木我一体(きがいったい)

 

 剣聖が壊れた鎌を投げすて、その言葉を紡ぐ。


「それにたどり着く者が、今の世にいたか。年をとったものだ」

「な、何のことです? 」

「それの、使い方を教えてやろう」


 剣聖が、再び大きく踏み込む。しかし今度は両手に武器を持っていない。まったくの無手である。しかし、剣聖はまるで剣を使うように体をひねった。その動作にカリンは身の危険を感じ、とっさに刀を構える。


 次の瞬間、カリンの刀に、確かな金属の感触と共に、剣がぶつかった。


「まだ剣を隠し持っていたの!? 」

「か、カリン、違うぞ、それは」


 ライが、カリンが。その振り上げられた武器をみて、息をのんだ。その武器を、自分の故郷でよくみており、そして自分でも使った事がある。


「サイクル、ブレード? 」

「左様」


 ガチガチと鍔迫り合いが起きているその武器は、剣聖の手の甲から伸びるように生えた、サイクルブレードだった。手刀という無手の構えがあるが、剣聖が行っているのはまさし手の刀である。


「に、人間のあなたが、なぜ? 」

「木我一体ともなれば、ベイラーの力を己に宿すなど造作なし」


 さらなる踏み込みでカリンを押しのける。人間の手の甲に生えたサイクルブレード。剣聖がまったく異なる次元の人物であるとカリンは認識し始める。だが隣にいるライは、その次元に、カリンもまた近い位置にいるのだと、今なお燃える体をもつ義妹を見て直感する。


「これを見せるのは何年ぶりか……久方ぶりに良き相手である……ん? そうか」


 剣聖がなにやら、空を見上げると、しばし思案するように首を動かした。


「だが……まぁそうか……ふむ……」

「あ、あの」

「それも、そうだな……良し」


 その思案する際中だけ、すさまじい殺気がなりを潜めて、カリンも口がきけるようになったのも束の間。剣聖は再び殺気をみなぎらせる。


「お主と、お主のベイラーに会いたいという」

「そ、その、どなたが? 」


 剣聖の言葉には主語がなかった。故にカリンが問うと、剣聖が、初めて笑った。


「我が友、我が父、我が理想。目を見開いておろがむがよい! 」


 あれほど白かった顔が、あれほど足取りのおぼつかなかったはずの老人が、戦いの中で生気を取り戻していく。そして、サイクルブレードを仕舞い、天に指をむけて高々と叫ぶ。


「出ろぉおおお!! ブレイダアアアアア!! 」


 天に向け、パチンと、指が鳴った。


 一瞬、何が起きるのか、観客は、ライは、カリンは静観する。その指鳴らしで何が起きるのか。知っているのはこの中では、ただ一人。


「剣爺が()()()を呼んだぞ。空を見るがいいわ」


 それは、剣聖をただ一人、愛称で呼ぶことを許し、許されている皇帝カミノガエ。天を向きながら、その時をまつ。


 目の良いカリンは、剣聖と共にずっと空を見ていた。故に変化に気が付く。


「……何か来る? 」

「何か? 」


 最初の変化は、耳をつんざく轟音だった。次第に大きく強くなるソレに耐えるべく、剣聖以外の全員が耳を塞いだ。次に空。天から降り注ぐその音と共に、雲を切り裂いてソレは訪れる。最後に衝撃。地面に叩きつけられたその大質量は、コロシアムの中央に大穴を開けた。


「な、んだぁ!? 」


 カリン達は剣を地面に突き刺し衝撃に耐える。


「カリン、何か見えたか!? 」

「み、見えました」

「なんだ? 」

「剣です」

「……何ぃ? 」


 ライは、カリンの言葉が信じられなかった。たった今空から降って来たのが剣だという。


「なぜ剣が空から降ってくる!? 」

「……あれが、剣でないと? 」


 カリンが、空からやってきたソレを指さし、今度こそライは度肝を抜かれる。


 片刃である事くらいが特徴の、なんの変哲もない剣がそこにある。しかしその大きさは10mはあろうかという大きさ。雲を裂き天を超えて。これが空からやって来た事実を目にして固まってしまう。


 そして次の瞬間、その剣から、手足が生えた事で、ライは口が開いたま動かなくなってしまう。


 剣は形をかえ、巨大な刃先を背中に背負い、畳まれていた手足をついて立ち上がり、最後に顔を見せる。感情の高ぶりを表すかのように、その目が虹色に瞬く。


《グレートブレイダー。ここに見参》 


 剣聖のベイラーが、ここに堂々たる名乗りを上げて現れた。

先週ガンダムチャンネルでとある作品の45話が配信されました。なんの作品かは想像にお任せします。

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