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炎の色

 砂漠の真ん中に、火柱が立った。それはいい。すでにバスターベイラーのような常識の外にあるような存在がいる。口から熱線を吐き出す全長50mのべいらーが歩いている時点で、火柱一つで驚くこともない。問題は、その火柱は、まるで森林を思わせるような緑色をしていたこと。その緑色の炎は、ミーロの街ではあの橋をかけた時にもみた、奇跡の象徴にもなっていたこと。


「あれは、旅団の方々が橋をかけてくださったときの」


 大きな火柱は、戦場から程近い避難所からでもよく見えた。ナットにつれられ戻ってきたボッファは、その火柱を見ながら呟く。


「白いベイラーが、何かしているのか? 」

「ボ、ボッファさん」

「どうした? もう勝手にいなくなったりせんよ」

「別にそっちは疑ってないんですけど、えっと」


 腕に包帯を巻いた若者が、ボッファに駆け寄ってくる。彼もまた怪我をして戦いには参加していない。ただその若者の様子がずいぶんと慌てた様子であったために、ボッファの中に不安が生まれた。


「何かあったのか? 」

「その、ボッファさんを連れてきたあの子供か」

「ナットか……まさか」


 そこまで聞いて、若者が何を言いたいのかを悟る。


「出て行ったのか? また戦場に? 」

「そうなんです」

「なぜ止めなかった! あの子は骨があちこち折れているんだぞ」

「それが、あのこすばしっこくて」


 ナットは、山の中を文字通り駆けずり回ってその足腰を鍛えているだけでなく、走り方の技巧については誰よりも経験を積んでいる。素人が追いかけて捕まるような者ではない。


「ええい、どこだ」

「もうベイラーに乗ってるはずで」

「ベイラーの方もなぜ止めない! 」


 イライラしならがも追いかける。ミーンのいた場所には覚えがあった。


「確か避難所の入り口近くに座り込んでおったはず」


 記憶を確かに、介抱する人々を邪魔しないように、できるうる限り早足で進んでいく。そして入り口近くに来たとき、周りが騒然としていることに気がついた。


「どうしたんだ」

「あ、ボッファさん、もういいんですか?」

「別に怪我はしとらんからな。で、ここにいたはずの空の色をしたベイラーは一体どこに行った?」

「それが、ついさっきまでここに……」

「ええい、みなどうして止めない」

「い、いや、止めようにも、あれは」

「あれ? 」


 騒がしい人々をかき分けるように進むと、目の前の光景に、思わず足を止めた。


《郵便の! 双子の! どちらも動けるんだな! 》

《動ける! 》

《---!! 》


 派手な赤いベイラーが、ミーンともう1人、腕と足が四本ある黄色いベイラーを連れ出そうとしていた。それだけならばまだ止める余地はあったかもしれない。しかし、それを阻止する者がいた。


「これは、クチビスたちか? 」


 ベイラーたちを囲うように、街を襲ったあの大量のクチビスたちが羽を震わせて辺り一面を飛び回っているのである。だが、奇妙なことに避難所にくることはなく、こちらの食料を食べようともしない。まるでベイラーたちを守っているかのようにその場で跳ね回っていた。


 街の人々は、かつて自分たちを襲ってきた虫たちにすっかり腰を抜かしている。だがボッファは、自分の命の恩人に無茶をさせる愚行を止めねばならないと使命感を胸に抱いてここにいる。たじろぎこそすれ、退くことは考えなかった。


「待つんだそこの赤いベイラー! ナット君は今怪我をしているんだ! 連れて行くのはやめたまえ! 」

《うん? ああ、街の長だな。おいサマナ》

「面倒なことを押し付けたなぁ! ええと」


 ボッファの声に応えるように、赤いベイラーから、乗り手が顔を出した。片目を眼帯で隠した彼女は、申し訳なさそうに、しかし確固たる思いで告げる。


「コホン。えっと、ナットに無茶はさせません! でもどうしても、あの姫様のもとに、あたし達が行かないといけないんです」

「姫さま? カリンどのか」

「それに、行くのは戦場じゃありません。あの優しい色をした炎の場所です」

「優しい? 炎に優しいも何もあるのか」

「あるんだよ! ではさらば! 」


 それだけ行って、彼女、サマナはベイラーに戻る。サマナが合図すると、クチビスは三人のベイラーを持ち上げるようにして、自分たちを絨毯にでもしているように下敷きになる。そして一斉に羽を震わせたかと思うと、その場から飛び去って行った。


「クチビスが、ベイラーを運んでった……」

「こんなこと有るのか」


 人々はその光景に目を奪われながら呆然とする。ただ1人、ボッファだけは先ほど出会った少女のことを考えていた。


「さらば……その一言で別れられるのか。確かカリンどのは、また共にと……いろいろなところの、いろいろな人々に、出会っているのだなぁ」


 カリンがどんな旅をしてきたのか、興味が湧いてしまう。


「そして、あの炎を出しているのか、そのカリンどのが選んだ、ベイラーか。であれば」


 きっと、大丈夫なのだろうと、少し安心した。




 戦場では混乱が続く。カリンが飛び出し乗り手を救出したまではいいものの、熱線で攻撃された。しかしそれをコウが庇ったと思えば、その場所から新たに火柱が立ち上っているのである。


「あの炎は」

《あそこは姫様がいた場所では? 》

「向かいたくても、これじゃぁ」


 オルレイトが苦々しく吐き出す。背中にいるヨゾラの翼はすでに欠け、レイダの足も両足が熱線によって溶けている。あることさえままならない。


「レイダ。ヨゾラの方はどうだ? 」

《。先ほどから返事がありません。おそらくマイヤ様も気を失っているかと》

「そうか……どうしたもんかな」

《助けを呼ぼうにもだれもいません》

「ここで指を加えてみてろってことか」


 悔しさが身を包む中、緑の火柱を見つめるオルレイト。その色は確かにミーロの街で、そしてこの砂漠にくるときにも見たあの炎だった。


「あれを制御できるようになったのか」

《オルレイト様! バスターベイラーが! 》

「まずい! 」


 オルレイトは、這いつくばったままでもひとまず動こうと努力する。しかしそれを嘲笑うかのように状況は動いた。バスターベイラーは当初、緑の炎をあげるその中をただ呆然と眺めているだけだったが、障害には違いないと判断したのか、再びその口に光を集め始めた。


「サイクルショット! せめて射線だけでも! 」

《やります! 》


 レイダはその場で固定砲台になることを選んだ。腕にサイクルショットを作り、何発の浴びせて行く。針は真っ直ぐとび、バスターベイラーに届く。しかし、熱線を放たんとしているその顔に何発当たろうが、まるで意にかえさない。


「くそ! こっちを向かない! 」

《乗り手がいなくなって鈍感になったのでしょうか》

「なんでも良い! 撃ち続けろ!」


 オルレイトは諦めきれず、何発も何発も撃ち続けた。そして数回目の射撃の際、ようやくバスターベイラーの顔が僅かに逸れる。遠距離の攻撃でも効果があったことを喜ぼうとした直後。バスターベイラーの口には再びあの膨大な熱量が溜め込まれ、そして、吐き出された。


 緑の火柱に向け、真っ直ぐに突き刺さるようにして放たれる。射線は動くことなく、斉射され続ける。緑の炎はなす術なく穿たれる。


 火柱を突き刺す熱線は、しかし突如としてその形を変えた。バスターベイラーの口が先ほどよりも大きく開いたと思えば、今までの熱線がさらに太く、強大な音を伴い始める。最初から熱量を集めたかのようなその赤熱化した色も、もはや赤色を通り越し、地中から噴き出るマグマのような黄色い光へと変化して行く。


 その威力はついには一瞬で砂を蒸発させたのか、砂漠の中で大爆発がおきた。耳をつんざく破裂音と、バスターベイラーの高さ以上に砂は舞い、そして衝撃に至っては離れていたオルレイトたちにも届く。固定砲台になっていたレイダはその衝撃にはじかれ、コロコロと砂漠の上を転がって行く。オルレイトはコクピットの中で体を支えるも、この連戦でついにベルトが切れ、体が固定されなくなる。そしてあえなく頭を強かに打ち付け、意識が刈り取られた。


 目が覚めると、オルレイトはレイダのコクピットの中で海老反りしていた。起き上がろうとしたとき、操縦桿に足をぶつけ、大きな青痣を作る。本棚にしまってあった本がコクピット中に散乱し、これを整理するのは大変そうだなどと考えた直後、血の気がひいて行くのを感じる。


「レイダ、僕はどのくらい気を失ってた? 」

《大丈夫です。ほんの少しです》

「カリンはどうなった? コウは? 」

《……見ていただいた方が早いかと》


 操縦桿を握り、共有をした直後、血の気と共に言葉おも失う。


「なんだ、あれは……あれがバスターベイラーがやったっていうのか」


 たった今、緑の火柱が立っていた場所に、天にも届くようなキノコ雲が出来上がっていた。雲の中には稲妻が走り、気圧が無茶苦茶なことになっているのが伺える。そして何より、そのばにいたものがどんなことになっているか、もはや想像したくもなかった。


「(確かに射線はずらしたはずだ……でも、あれはそれ以上の威力だ)」


 オルレイトはしかとこの目で、レイダのショットが効いたのを見た。だがその効果が全くなかったのではないかと考えそうになる。さらに、たった今放たれた、規格外の熱線。威力は今までの比ではなく、当たればどんなベイラーだろうと一瞬で溶けてしまうような物に強化されている。


「あんなものが避難所に放たれれば、全滅だ」

《はい》

「……動けないよな? 」

《不甲斐ないです》

「なら、ここでできることをするぞ」


 想像し、心が折れかける。しかし、ここで折れるわけにはいかないと、ここで何もしないわけにはいかないと奮い立たせる。


「サイクルショットを撃ち続ける。少しでも注意を逸らすんだ……今のは避難所からでもよく見えたろう。なら、すでに別の場所に移動を始めてくれている」

《私たちは、その時間稼ぎをするのですね》

「そうだ」

《そして、あの熱線にやられると》

「……そうだ。だから」


 時間は掛かったが、確かに答える。


「僕と死んでくれ。レイダ」


 もはや逃げるも叶わず、反抗する手だでもない。その上でオルレイトはレイダに頼んだ。


《お1人でお逃げになれば、まだ逃げ切れるかもしれませんよ? 》

「僕がお前を残して逃げられると思うのか? 」


 即答であった。


 共有している今、お互いに隠し事などできない。故に決断に何一つ偽りはない。


《仰せのままに》


 レイダが答えたが最後、その目が真っ赤に輝く。両腕にサイクルショットを作りあげ、一斉に射撃を開始する。距離こそあれど、その威力が落ちることはなく、何十もの針がバスターベイラーの顔に降り注いでいく。やがて針の一本が目に当たったのか、乾いた音が鳴り、ようやく顔だけがこちらを向く。そして再びその口に光が集まって行く。


「なんだ。あの熱線、思ったより連射できそうだな」

《時間、稼げたんでしょうか》

「少なくとも逃げるよりは」

《ならば、よしとしましょう》


 レイダはその目を閉じだ。聞こえてくる爆音だけが耳に残る。


《(しかし、ゲレーンの土地以外で死ぬとは思いませんでした)》


 レイダは、もしこの体が死ぬようなことがあれば、きっと歴代の乗り手が眠るあの土地でと、ぼんやり考えていた。もとより本懐を遂げれば死ぬ問うことはない。あくまで仮定に過ぎなかった。しかし今、その仮定が現実のものになりつつある。


「緑のない場所ならば、お前の体は目立つさ」

《なら、見つけてもらえますね》


 そんなことを思いながらついに覚悟を決める。


《坊や。また共に》


 これがきっと最後の言葉になる。そう思った直後だった。


 熱線を放とうとするバスターベイラーが突如としてその行動をやめた。音が聞こえなくなり、閉じていた目を開くと、バスターベイラーはその顔をじっとキノコ雲があがる場所を見つめている。


 命が助かったことを安堵するより先に、オルレイトはその不可思議な行動に意識がいった。


「(あれは、見ているのか? )」


 バスターベイラーは振り向くだけでなく、確かにキノコ雲の方を見ている。やがてその行動は、キノコ雲がある方向を警戒している行動だと気がつく。


「レイダ! サイクルスコープ! あの雲の中! 何か見えるか!? 」

《やります! 》


 指示に従い、スコープで雲を見る。雷が走る以外になんの変化もないかと思いきや、一箇所、突如として雲の中から何かが飛び出してきた。その形には見覚えこそるものの、なぜそれが出てきたのか一瞬戸惑う。


《オルレイト様! 》

「ここでアーリィベイラーだってぇ!? 」


 確かにそれは、鳥の形に変形したアーリィベイラーだった。しかし違いもある。翼が2枚1組から、4枚2組となり、大型化し、サイクルジェットも心なしか大きくなっている。


 キノコ雲から飛び出したアーリィはバスターベイラーを旋回し、黒い蔦を攻撃し始める。サイクルショットらしいその攻撃は、しかし今までみたどのショットより異質だった。


《飛ばしているのは、針ではありませんね》

「小さな刃だ。ナイフのようなちいさな剣を飛ばしてるんだ。あれなら黒い蔦を、1発で複数片づけられる」

《そんなアーリィがまだ帝都にいたのですね》

「鎧を着せたり、たくさん作ったり、いろいろやっていたからな。でもあれは」


 ずっと心に引っかかっていたことがある。それは今飛んでいるアーリィの色。


 そこにいるアーリィは、青黒い色をしていない。


 そこにいアーリィのコクピットは、毒々しい翡翠色をしていない。


 何にも犯されぬ白い体に、暖かな色彩のある琥珀色のコクピット。


「まさか、あれは」


 答えは、空中で黒い蔦に襲い掛かられて始めてわかった。


 そのアーリィは、畳んでいた腕を、足を一挙に伸ばし、代わりに羽をたたみ、そして腕からブレードを取り出す。その時の裂帛の気合が何よりの答えだった。


《「サイクルブレード!!! 」》  


 襲いくる蔦が、2人が声を轟き、ブレードの一閃で散っていく。砕け散った蔦を物ともせず、そのまま地上へと降下した。やがてそのベイラーは、地面で倒れるレイダの元へとやってくる。


《遅くなりました》

《その、声は、まさか》

《はい。俺です。コウです》


 声の主は間違いなくコウのもの。しかしその姿が違っている。肌の艶はいつのもなく増して、もはや対面するレイダの顔さえ映る艶やかさがある。またその肩には肥大化したサイクルジェットと、さらに大きな翼までくっつき、シルエットをさらに大きくみせた。何より、両肩にあったはずの赤い色がなくなっている。


《一体、その姿は》

《話すと長いので、また今度。ともかく足を見せてください。ヨゾラも翼を》

「ま、待てコウ! 姫さはま無事なのか」

「私ならここよ」


 コクピットの中に確かにいるカリン。その顔は今までのより晴れやかであった。しかし不審な部分もある、コクピットの内側が不自然に赤黒かった。疑問に思う暇もなく、カリンは行動を開始する。


「オルレイト、あなたの好奇心を満たすのはまた今度ね。今はレイダをなんとかしなきゃ」

「なんとかって、できるのですか? 」

「ええ。ようやく分かったのよ。コウが何が得意なのか」

「わかった? 得意? 」

「コウ! やるわよ! 」

《お任せあれ! 》


 ついこの間まで不仲だったと誰が信じようかという阿吽の呼吸で返事が返ってくる。一体あの火柱で、あのキノコ雲の中で何があったのか疑問しか出てこない。だがその疑問も、次の瞬間には新たな疑問で吹き飛んでしまった。


 掛け声と共にサイクルが高速で周り、コウの目が赤目になったかと思えば、ふくらはぎ、コクピット、肩を起点に、突如としてコウの体が燃え盛り始める。その色は何者をも焼き尽くす紅蓮ではなく、故郷ゲレーンでみた森林と同じ緑。


 そしてその緑の炎こそ、砂漠に落ちた時にコウが見せたものだった。


「コウ、お前その炎は」

《ああ、これは俺の力だ。ようやくこれがなんなのか、わかったんだ》

「一体、それはなんなんだ? 」

《それを今から見せる。レイダさん、脚、ちょっと触りますね》

《は、はい》

《ヨゾラも、翼に触るよ》

《……ハーイ》


 今まで力尽きていたヨゾラが反射的に返事を返す。それを了承と捉えたコウは、右手でレイダの足を、左手でヨゾラの翼を触る。カリンはというと、大きく深呼吸し、意識を集中し始める。すると、コウの手の平から小さな炎が灯り始める。最初は蝋燭ほどの小さな灯だったのが、徐々に灯台のような明るさを伴い、この昼間の砂漠でも十分に明るいと感じるほど大きくなる。


「ぶっつけ本番ね」

《いつものことだ……やるぞカリン! 》

「ええ! 」


 そして、かざした手から、緑の炎を解き放った。


「サイクル! 」

《リ・サイクル!! 》


 声と共に、レイダたちの体に異変が起きる。熱線に当てられ、融解していた両足。それが突如として生え変わり始めた。レイダだけではない。


 ヨゾラの体も、また変わって行く。大穴が開いていたはずの翼が突如として朽ち果てたかと思えば、新たな翼が凄まじい勢いで生え始める。


「サイクル・リ・サイクル!?」


 オルレイトは、一体レイダが、そして自分が何をされているのか全く理解できないでいた。しかし共有している意識の中で、膝から下がついさっきまでなかったはずのものが、突如として感覚が戻ってきている事実に驚いている。


「これは、まさか、治しているのか? レイダを? 」

《ちょっと違うんだけど、説明すると長いから、今はそれでいいよ》

「な、なんだそれは」

《さぁ! 足は終わった! 次は全身! 》

《終わった? 全身? コウ様? 何を?》

《ちょっとむず痒いよ! 》

《痒い????》


 うろたえるレイダを置き去りにしてコウがその炎を操作する。今までレイダの足に向けていた炎を、次は全身へと放った。突如として炎に飲み込まれることでオルレイトの心は一瞬で恐怖包間れた。


「コウ! お前なんて……こと……を……? 」

《オルレイト様、これは》


 抗議の声をあげようとした時、その炎が全く熱くないことに気がつく。それどころか、レイダの怪我をその炎が焼いて行くように、傷が塞がって行く。


《熱く、ありません、むしろ心地いい暖かさと言いますか》

「そうだな。コクピットも別に代わりない……どうなってるんだ? 」


 そして、全身が炎に包まれ、怪我と怪我を焼き尽くした最後。


 ヨゾラの翼は真新しい輝きに満ち、レイダに至っては五体満足に復活。さらには、その肌に傷一つない状態にまで変わっていた。レイダは訝しげながらに立ち上がるも、動きにも全く問題はない。たかう前の状態に完全に治っている。


「どうなってるんだ……砂も噛んでいないし、受けた針もない。まだ取り出していないんだぞ」

《サイクルが全部押し出した。だから大丈夫》

「押し出したって、コウ、お前一体何をやったんだ? 」

《オルレイト。俺わかったんだ。俺が何が一体何が得意だったのか》

「得意? 」

《レイダさんはサイクルショットが得意。ミーンは走るのが得意》

「お前は、戦うのが得意なんだろう」

《そうじゃない。そうじゃなかったんだ》

「そして、今からその得意なことをしてくるわ。さぁオルレイト、いつものようについてらっしゃい! 」

「は、はい! レイダ! いけるな?」

《行けます! なぜかは、わかりませんが》


 反射的に答えてしまったものの、疑問は晴れることはない。理屈がわからない。だがオルレイトには一つだけわかることがある。


 今ここに、コウとカリンは完全に絆を取り戻した。



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