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ベイラー、誘う

 カリンら龍石旅団とホウ族との和解が、占い師の打算も混じりながらも成立しはじめ早3日が経った。彼女らは時折ホウ族を助け、時に助けられを繰り返している。主にカリンらはホウ族の特産である鉄の鋳造を、ホウ族はカリンらに寝食を手助けしている。理想的なギブアンドテイクの関係が出来上がっている。


 そんなカリン達に唐突に休暇が訪れる。彼らの仕事も一定以上に評価を受け、丸一日自由に過ごしてもいいと言う信頼をついに手に入れていた。出会い頭に襲われていた事を考えれば大進歩である。そして今日という日を楽しみにしているベイラーがいる。


 《流石に早く来すぎたか》


 まだマイヤすら起きていない時間帯に宿まで来てしまった事を少し後悔した。時間があるのならば、肌を磨いてくれば多少身なりを整えられたかもしれない。人間の体とくらべ整える箇所が少ないとはいえ、出来る事はある。それはそれとして、そわそわしていつもより早く起きてしまった為にこんな朝早く来てしまった。こうなるとベイラーは暇を盛大に持て余す。人間のようにお茶を飲めるわけでもなく、本を読める訳ではない。前者は単純に飲み食いできず、本はベイラーの手では小さすぎた。そうすると、体を軽くうごかし関節のサイクルを動かす他ない。かつて小学生だったコウが夏休みの数週間行っていたラジオ体操を思い出しながら、いっちに、さんしと関節を回す。ラジオ体操。その名の通り朝の時間に流れる、日本特有の体操である。1回3分ほどで、第3番まであり、徐々に体にかかる負荷が増えていく。しかしながらその内容は洗礼されており、ラジオ体操第一は女性であれば3回、男性であれば5回この体操を行えば、成人に推奨される1日の運動量をクリア出来る優れた体操である。しかしながら国民全員がやっている訳ではない。忙しい日本の現代人の忙しい朝に悠長に体操をしている時間はない為であろう。コウはラジオ体操が決して嫌いではなかったが、朝早く起きてその体操を強要する学校の行為そのものが好きではなかった。


 ともなれば、睡眠から解き放たれたコウにとってラジオ体操はもはや嫌いになる理由がなくなり、さらにはベイラーの体では体の滑らかさに大いに貢献するため、暇つぶしとしてのラジオ体操はかなり有効だった。こうしてラジオ体操第一が終わる頃、宿の奥から聞き覚えの有る音が響いている事に気がつく。


 《そんな訳ないよな。1人で修練なんてそんな》


 朝日すらまだ上がっていない早朝(そうちょう)である。しかし聞こえてえくる風切り音は、コウにはこの旅では随分と耳に馴染んでいる。滑らかになったばかりのサイクルを回し、ゆっくりと歩いていく。宿を跨ぎ、その奥にある林。切り株を中心にして、剣戟を舞うカリンがそこに居る。マイヤが縫った練習着を見に纏い、髪を一つに纏めた、砂漠に来てからは見慣れた髪型。ハラハラと風に揺られて落ちる木の葉を無視しながらそこ佇むカリンは、左足を前に、右足を半身にして後ろに。腰を落とし、両手で肩に剣を担ぐようにするその動きは、コウ自身も慣れたカリンが1番得意とする構え。真っ向からの相手の脳天を叩き斬る、まさに豪剣を放つ構えである。


 邪魔をしてはならぬと息を潜める。一拍の後にカリンが動いた。半身だった体を前に出し、右足を踏み込む。同時に後ろに腹に力を入れ、一瞬で息を吐いた。声ではない息の気迫が体から迸り、踏み込みによってでいた加重を剣に乗せる。


「ズェアアア!! 」


 裂帛の気合いが放たれ、地面すれすれにまで剣が振られる。カリンの気迫が風となったように、舞い散る木の葉が吹き飛んだ。そして中心にあった一枚の葉が真っ二つに切り裂かれ、ハラリと地面に落ちる。振り切った剣を鞘へと戻し、残心。戦いは剣を収める瞬間こそが1番身を引き締めねばならない。それをカリンは思考せずとも実行出来る。この光景は、コウも何度か見たことがあった。


 《(いつもの素振りだ。素振りにしてはいつも気合いが入りすぎてるけど)》


 コウはその様子を冷めた目で見ている。これには意識と知識の差があった。コウがしっている剣の素振りは、部活の剣道部が行なっていた竹刀を如何に早く振るかを修練する物であり、それは数が物を言う。部活が初であるの剣道初心者が多かったコウの部活では、リズムよく軽快な素振りをする事が第一に大切とされていた。竹刀に慣れ、剣に慣れ、素早く振る為の練習である。


 しかしカリンは違う。すでにその領域は過ぎ去り、次の段階、体を戦いの時と同じ状態に瞬時に持っていく事へと進んでいる。息遣い、心臓の鼓動、心の機敏。すべてを戦いの時にベストの状態へと持っていく修練である。現代のスポーツではプロ選手が一定の動作、所謂ルーチンを行い、ベストコンディションを一定に保つ事で成果である勝利を勝ち取っている。スポーツであればルーチンを踏んでいる暇があるが、戦いになれば話は変わる。相手は待ってはくれない。カリンはベストコンディションに瞬時に移行し、最大限の力をいつでも発揮できるようにする練習を行なっているのである。こうなれば、素振り一つでもその内容は変わってくる。如何に素早くリズムよく振ろうが関係がなくなり、重要なのは、現状で出せる最大の攻撃を反復練習する事。そうする事でいつでも最大の威力を持った攻撃を出せる状態に体を覚え込ませる事ができる。


 だからこそ、戦いと同じように息をし、腹に力を込め、気合いを入れて剣を振るうのである。達人になればなるほど、常時と戦いの状態に差が無くなり、いつでも戦えいつでも日常生活で笑顔で過ごせるようになる。


 なおその領域に居るのがカリンの姉である。


 残心を終え、息を吐く。汗ばんだ体を拭こうと切り株に戻る時、こちらをじっと見るコウにカリンがはじめて気がついた。


「今日はどうしたの? せっかくのお休みなのに」

 《カリンこそ、せっかくの休みに何してるのさ》

「日課だけど? お休みの日に日課をやってはいけないという事はないでしょう」

 《そりゃそうだ》


 会話が続かない。カリンは汗を拭いながらもコウの言葉待っている。剣を置き、切り株に腰を下ろして水筒を手に取る。清潔で味の良い水がカリンの喉を潤す。如何にタルタートスの背が高く、比較的涼しいといってもここは砂漠の真ん中。日が登ればすぐに暑くなる。剣戟という全身運動を行った状態ではあっという間に汗をかき水分を失う。コクコクと飲み込む水はカリンの体に染み込んでいく。もう少し飲んでしまおうとカリンが思った瞬間、コウがついに口を開いた


 《カリン》

「ふぁい? 」

 《デートしよう》

「ブッ!? 」


 せっかくの貴重な水を噴き出すほど衝撃的な言葉だった。冷たい水を飲んだ事で頭は冷静に回るものの出てくる言葉はどれも混乱に満ちた物ばかり。


「(あの鈍感で己を律しているのかと勘違いしてしまいうなほどまったく自分からは動かないコウが! こっちが一言加えないと一緒に散歩すらしないコウが! 自分から! それも、デートの誘い! あの、下町で男女が行うという、私は見たこともないけど、それは恋仲になるはずの男女が行うという、あの! デートに、コウが、私を、誘う!? )」


 修練で出た汗とは別の種類の汗が止めどなく出てくる。


「(聞き間違えよ。だってあのコウよ? 私を好きだとか言っておいてそのあと何もないのよ? あまつさえ私が本当に好きかどうかわからないとまで言うベイラーよ? そんなコウが男女の行いに誘うなんてそんなことある訳が)」

 《カリン? 》

「へぁ!? ど、どうかして? 」

 《いや、もしマイヤさん達と予定があるならいいんだけど》

「そ、そんな事ないわ! ええ暇よ! 暇ですとも! ウルトラ暇よ! 」

 《そ、そんなになの? 》

「あくまでたとえと知りなさい! 」

 《え、じつは暇じゃないの? 》

「暇なの! お分かり! 」

 《そ、そっか》


 混乱のために会話すらできない状態だった。受け答えもどこかぎこちない。


「で、デートというからには何処か行きたい場所があるのでしょう? 」

 《うん。この前工房で聞いたんだけど、今日は、余った鉄を使って工芸品を出し合う市場をやるんだ。カリン、まだこの土地の工芸品、見たことないだおろう? せっかくのお休みだし、カリンさえ良ければなんだけど》

「(こ、コウがデートの計画をこんなスラスラと!? ゲレーンに居た頃は川に誘うのだって四苦八苦していたのに!? )」


 追撃を貰い混乱がさらに加速している。その結果、誘いに乗るか乗らないかの返事すら返していない事に気がつくのにも遅れてしまう。


 《あ、あの》

「な、なに? 」

 《できれば、なんだけど》

「なんなの? 」

 《返事は、もらえるかな》

「なんの? 」

 《えっと、その》

「今練習着で、着替えてくるから、ええと、中央の池で待っていて」

 《それじゃぁ、来てくれるって事? 》

「でなければわざわざ着替える必要があって? 」

 《そっか。わかったけど、できればちゃんと返事がほしいなって》

「(どうしたの今日のコウ!? はぐらかしが効かない! )」


 暗黙の内に事を終え、自分の想定内に会話の主導権を握る気でいたカリンがその思惑を尽く外されたじたじになる。しかしコウの言葉も納得が行く物であり、言葉にしない事は逃げる事でもあるようで、カリンにはそれは卑怯とも捉えられた。最後にカリンは卑怯な事が嫌いであった。


「行きます。誘うのだから、楽しみにしていいと? 」

 《退屈はさせないつもりだ》

「結構。先に行っていて」

 《わかった! 》


 コウが振り向き、ゆっくりと歩きだしていく。それだけみればいつもと変わりないが、道を曲がった直後に木々の合間から見えたコウは、スキップしながら意気揚々としている姿であり、明らかに喜んでいるようにしか見えない。その姿はカリンの頭を抱えさせるには十分だった。


「一体、コウに何が起こったというの」

「ありゃ誰かに入れ知恵されたんだろ」


 黄色い悲鳴を上げて思わず尻餅をつく。声をかけてきた片目の少女、サマナがニヤニヤしながらそれを眺めている。


「おはよう姫さま。どうした? 」

「あ、あああ貴女いつからそこに? 」

「コウが『デートをしよう』ってところから」

「ほとんど全部じゃない! 」

「いやぁ、まさに混乱の最中。陸に上がった魚みたいだ」

「だ、だってあのコウよ? 」

「コウだって1人のベイラーだったってことだろう。わからないでもないなぁ」

「そ、そう言うもの? 」

「私のおじいちゃんはメイロォに恋してた。人間が人間以外を好きになるのなら、ベイラーがベイラー以外を好きになる事だってあるよ」 

「そうかもしれないけど、それにしたって急じゃない? 」

「そしたら、誰かに入れ知恵でもされたんだろ」

「そうよね! コウがあんな気の利く事をする訳がないわ! 」

「その信頼はどこからきてるのやら」

「コウをなめてはいけないわ! 鈍感を煮詰めたような子なのだから! 」

「話は聞かせていただきました」

「「キャアア!? 」」


 今度は2人してその顔に驚く。いつもの給仕服に着替え、眼鏡を朝日に反射させるマイヤ。


「なんですか黄色い声を上げて」

「ご、ごめんなさいマイヤ」

「お、おはようマイヤ」

「お二人共。おはようございます。このマイヤ不覚でした。まさかこんなに遅くに起きてしまうなんて。まだ朝食の準備が出来ておりません」

「珍しいわね。マイヤが寝坊なんて」

「(それでも朝日が登る頃に起きてるんだから十分早起きな気がする)」

「昨日、縫い物が滾って、もとい、手間取りまして」

「ならもう少し眠っていていいわよ」

「いいえ。朝御飯をご用意させていただきます」

「昨日作ってくれたスープとパンがあるじゃない。大丈夫よ。貴女の事だから火はもう起こしてるんでしょう? 」

「し、しかし」

「凝った料理を作ってくれるのはありがたいけど、マイヤは頑張り過ぎよ。今日は休暇なのだし、貴女も今度こそ羽を伸ばしなさい」

「か、かしこまりました」

「サマナは今日どうするの」

「のっぽの所でもいこうかな。最近あいつ体壊してるし」

「オルレイトの所ね。あの子も薬が手放せないから」

「あいつ、よく体壊すのか? 」

「ええ。体が弱いと言っていたわ。普段はそんな素振りは見せないのだけどね」

「なら、見舞いにでもいってやるか」

「さて姫さま。お召し物をこちらに。修練なさってたのでしょう」

「ええ。お願いね。そうだマイヤ。貴女が縫っていたのはなあに? 」

「ローブでございます」

「それ、今日着て行っていいかしら」

「それはもう、是非! 」


 ◆


 《しまったな。食事の事を全く考えてなかった》


 気分るんるんで池で待つコウ。楽しみな時間が待っている事で心が浮き足立つも、ここで人間とベイラーの決定的違いを思い出す。食事である。待ち合わせについたはいいがカリンが来るまでにかなりの時間がかかる事が予想さえれた。かくして再びのラジオ体操である。池の前で今度は第二体操を行おうかと準備していると、池からセスがやってくる。彼は最近池の上でボードをつくりそこで眠っていた。起き上がってコウを認めると、ボードを蹴って岸まで上がってくる。


 《(ずっと池の上で酔わないのかな)》

 《何をしているのだ》

 《ラジオ体操》

 《らじ、何? 》

 《簡単な運動。これならベイラーでも簡単にできる》

 《ほう。どうやるんだ》

 《腕を交差して、こう》

 《こうか。おお肩がよく動く》

 《これをテンポよくやる。いちに、さんし》

 《いちに、さんし》


 赤いベイラーと白いベイラーが大きくてを手を広げ、腕を交差し、また元の位置に戻す運動を繰り返す。人間のテンポよりは遅めにしながら、ゆっくりとサイクルを回す。ガコガコと小気味よい音が岸に響いた。


 《次はなんだ》

 《腕を、頭の向こうに。これで脇を伸ばす》

 《のばす? こうか》

 《そうそう》


 なんとも呑気な時間が流れる。時折意図しない動きをするセスに体操の姿勢をおしえながら行うことで通常の何倍もかかってしまったが、お互いに嫌な思いはしていない。


 《ま、まってくれ、その足の動きはなんだ? 腕を広げながら、足を、曲げる? ん?? 》

 《ゆっくりでいいから! 》

 《自分の体が信じられなくなってくるな》

 《乗り手がいれば違うんだろうけどね》

 《それでは意味がないのだろう? 》

 《うん。それにこれを覚えるといい暇つぶしになる》

 《なるほど。それはいい》

 《さ。次はジャンプだ》

 《ジャンプ!? 乗り手なしでか! 》

 《そんな高くなくていいし、なんなら飛ぶフリでいいんだよ》

 《経験者は無茶を言う》


 結局ジャンプできず、膝を曲げて伸ばすような運動となる。こうしてガコンガコンとサイクルを回し、たっぷりと時間をかけようやくラジオ体操第一が終わった。隅々まで体を動かしたことでセスが体に溜まった削りカスを払う。


 《悪くないが、くたびれるな》

 《でも暇つぶしにはなる》

 《なるほど。白いのが強い理由のひとつとみた》

 《これをやってるからって強くなる訳じゃないけど》

 《セスはこれからサマナとのところにいくが、白いのは今日どうするんだ》

 《待ち合わせしてるんだ》

 《待ち合わせ? 》


 セスが首を傾げながら遠くを眺めるすると何かを見つけたのか、途端に目に虹色の線が走り始めた。それはベイラーが興奮すると浮かび上がるサインであり、コウにも例外なく出るサインである。


 《なんか見つけたの? 》

 《いいや。ではな白いの》

 《まだラジオ体操第二があるけど》

 《今度だ。邪魔をするほど野暮ではない》

 《邪魔? なんの? 》

 《さらば》


 コウの問いかけに答えないまま、セスがその場を離れる。ひらひらと振る手を尻目に、コウが首を傾げていると、その姿を目にし体が固まった。


 さきほど会ったはずの女性が装いを変えている。その姿はゲレーンでもよくみたドレスであったが、羽織っている物が違かった。群青色のローブを肩にかけ、髪を編み込んでいる。普段とは違う姿に胸が高鳴ると同時に、デートと聞いていつもと違う格好をしてくるカリンにうれしく思っていた。片手にはちいさなバスケットを持っている。


「待たせてしまったわね」

 《気にしないで》

「さっきセスとすれ違ったけど、何かお話してたの? 」

 《ベイラー同士でどうやって暇つぶしするか考えてた》

「何それ? 面白いの」

 《うん。面白い》

「そう」

 《カリン》

「なに? 」

 《似合っている。初めてみた》

「当然でしょう」

 《うん。そう言うのを可愛いって言うんだと思う》

「か、可愛い!? 」

 《うん。可愛い》

「そ、そうでしょうとも! 」

 《市場まで距離がある。乗る? 》

「ええ。そうするわ」

 《どっちに? 》

「どっち? 」


 コウが肩とコクピットを指差す。普段はしてこない提案に面くらいながらカリンは答えた。


「急がなくていいのだから、肩にするわ」

 《落ちないように気をつけて》

「大丈夫よ。貴方が助けてくれるもの」

 《わかった》

「(これも誰かの入れ知恵だというのなら、飛んだ策士ね)」


 表情に出さないまま、コウの手を借り肩へと収まる。振動と上下運動を出来るだけ抑えるようにコウが歩き出す。人間の歩く速度より少し早い程度の速度だが、視点の高さと、何よりコウの顔がすぐ横にある事は風景を飽きさせなかった。


「(入れ知恵だとわかれば、私がいちいち心を乱すこともないわ)」


 心の中で防波堤を築きながらコウの横顔を眺める。するとかすかに、しかし確実にコウの目は虹色の線が絶えず走り、ピカピカとまぶしくなっている事に気がつき、視線を逸らした。ベイラーの目は興奮によって光。その興奮の種類は様々であり、好奇心が丸出しになっている時や、猛っているとき、そして、恥ずかしがっている時にその目は蘭々と光るのである。そして今こうして光っているということは、コウは何かしらの感情を抱いていると言うことになる。


「(まさか)……ねぇコウ」

 《どうしたの? 》

「もう一回さっきのを聴きたいわ」

 《さっきの? 》

「私の今日の装いをなんていった? 」

 《可愛い》


 一応は即答してみせる。その瞬間、目に走る一筋の光がさらに輝きを増した。それをみたカリンが確信する。


「(自分でやっておきながら、コウ、まさか恥ずかしがってるの!? )」


 さっきから肩に招いておいてこちらを見ようともしない。それは恥ずかしがっているのを隠しているようにしか見えなかった。


「(もうなんなの! 今日のコウ! それに、それにもしかしなくても、コウと2人きりで、ちゃんと散策するのって、もしかして、もしかして)」


 カリンの心は今日一日たくさん揺さぶられる事となる。今日初めて、彼らは2人で平和にデートをするのである。



真っ当なデート回

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