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ベイラー、ハグを覚える

 病院というには小さく、家というには少々大きい、診療所というべき場所。二階建ての建物の中にある一室。小さな窓から、同じくらい小さな陽の光が入り込んでいる。その光の中に、大きなベットに小さな体が2つ寄り添うように眠っている姿がある。寝返りをなんども交互して、そのうち意識も覚醒していく。2人とも目を開け、瞬きをなんども行い、今自分の体がどうなっているかを確認する。数日前から発熱、気だるさ、吐き気が続いていたはずなのに、今やお腹がすいて仕方がない。どのくらい眠っていたのか分からないが、体は元に戻ってる。


「なおったー! 」

「たー! 」


 リオとクオ、2人でハイタッチしてお互いの健やかさに祝いを言葉を送る。ベットを飛び起き、体を柔軟し、調子を確かめる。寝たきりが続いていると、体が自分の思うように動くのは感動すら覚えた。


「薬、どうだった? 」

「苦かった」

「クオもー」

「みんなどこかな」

「探しに行く? 」

「そしたらリクを呼ばなきゃ。笛どこかなぁ」


 静まり返っていた病室が一瞬で騒がしくなる。お互いに顔をペタペタ触り合っていたかと思えば、蜘蛛の子を散らすように部屋中を行ったり来たりしている。そしてお互いに赤い石のはめ込まれた笛をみつけ、大きく息を吸った。音階もないホイッスルを息が続く限りに吹き続ける。一回、二回、三回。何度も何度も吹いて。5回目を超えた頃。小さい窓をコンコンを優しく叩く音がした。その音の主は、できうる限り、まだ病み上がりの彼女達を驚かせないように苦心した結果だった。双子はすぐにそのことに気がついて、窓をあけ放ち彼の名前を呼ぶ。


「「リク!! 」」

 《ーーー!》


 名前を呼ばれた彼は、診療所の道で腕を広げ乗り手達をの復帰を歓迎していた。四つ足のベイラーが、四本の腕をブンブン降っている様は、異様であったが、子供達には人気があった。すぐ人だかりができ始める。リクにペタペタと触り始める者もいた。


「……やっぱり、リクみたいなベイラーって珍しいのかな? 」

「姫さまは、二人乗りのベイラーは珍しいって言ってたよ 」

「じゃぁ、二人乗り四本腕で四本足なリクはものすごぉっく珍しいってこと? 」

「うーん。かもしれない」

「うーん。でもあんなにいっぱい人がいたら、リク歩けないね」

「とにかく、みんなを探そっか」

「とにかく、そうしようっか」


 高熱に浮かされていた最中、ずっとしていなかった会話ができることが嬉しくて仕方ない双子。同時に、自分たちの身に不思議な事が起きていることに気がつく。というより、自覚的になる。


「あれ? お姉ちゃん、今何みてる? 」

「うん? コップだよ。クオは今リクを見てるよね」

「う、うん」


 双子は、リクに乗っている時にはほかのベイラーと同じように感覚の共有が行われる。同時に、リクがバイパスとなって双子の感覚もそれぞれ共有されている。それはつまり、お互いの見ている物がわかるようになっている状態になっていた。それはベイラーを動かす上で重要だった。4本の腕を左右交互に自在に動かすにはお互いがどう動いているか簡単に把握することができる。リクは元々、リオ達と同じように双子のベイラーだった。それが不完全な形で1つの体として生まれ出てた。コクピットの操縦桿も4つ。2人がそれぞれの手足を担当し交互に動かすこと双子はリクを動かしていた。しかし。


「(リクに乗ってないのに、おねえちゃんの見てる物がわかる? )」


 現状、リオもクオも、まるでベイラーに乗っている時と同じようにお互いがお互いの見ている物を見ることができていた。


「(でも、見えるだけ。何を触ってるのとかはわからない)」

「(あれ。なんでクオが見てる物がみえてるんだろ……まぁいいっか)」


 妹のクオはこの症状に気がつき疑問に思ったが、姉のリオの方は気にもとめていない。リオは今はそれどころではなく、窓の外にいるリクにどうやって近付こうか考えていた。そして妙案を思いつく


「ねぇクオ、ちょっと」

「なにお姉ちゃん」

「ちょっと、いいこと思いつちゃった。準備して! 」

「いいこと! うん! 」


 2人がテキパキと用意を進める。干してあった自分の服に着替えて、靴を履き替え、あるだけの食べ物と飲み物をほんの少しをカバンに詰め込んでいく。


「ねぇお姉ちゃん。姫さま達を探すのもいいけど、ちょっとだけ探険しない? 」

「クオは探険すきだねぇ」

「お姉ちゃんもでしょう? 」

「まぁねぇ」


 お互いのポケットを叩き合って準備ができたかどうか確認し合う。最後に2人は額を合わせ、小さな頃から行っている最終確認を行う。それは狩人である父の教えを反芻し合うもの。


「知らない場所では1人でいかない」

「知らない人にはついていかない」

「もし行くときは背中を預けるだれかと一緒にいる」

「もし行くときはだれかと一緒にいく」

「それでも1人になったら助けを呼ぶのが1番最初」

「獣は脅かさない」

「獣は甘やかさない」

「「そして、獣を食べる時は、お祈りを」」

「「また出会う時は私達をお食べください」」


 反芻が終わり、決して忘れないように唱える。命を奪う者としての免罪を次の出会いに託す。彼らが獣達を、人間の都合以外で許しを得るための祈りだった。そして一息つくと。ふと彼女達が思い出した。


「ねぇ。つるつるって、ネイラってどうなっちゃったのかな」

「……わかんない」

「……そっか」


 普段なら、怪我の看病はネイラが行なっていた。それが今ここにいない。その事実が浮き彫りになりながら、実感として彼女達に落ちていない。獣の死は何度も経験しているが、人の死、それも見知った人間の死は初めてだった。


「お姉ちゃん。つるつるにはまた、会えるよね」

「うん。だってまた共にっていつもネイラは言ってるもん……さ! 行こう! 」


 リオがクオの手を取りそのまま駆け出す。2人の歩幅は同一で、すぐに並び立つようになった。同時に目の前にある窓に向かって、合図と共に飛び出していく。


「リクー!! 」

「おはよー!! 」

 《ーーー!? 》


 言葉を発せないリクであるが、その分は体での表現、いわゆるボディランゲージを多少大げさにする事で仲間との意思疎通を図っている。しかし今回は大げさでもなんでもなく、自分の乗り手が飛び出してきたことによる驚嘆を全力で表していた。それも二階の窓からであり、落ちれば怪我では済まない。


 《ーー!! ーー!! 》


 リクが大いに慌てているのを双子はけらけらと笑う。この双子はリクが、手段がどうかはわからないが、兎にも角にも、どうにかしてくれることに全幅の信頼をおいて飛び込んでいた。そして事実、リクの対応は冷静だった。4つの腕から伸びる4つの手の平をできうる限り大きく広げ、落ちてくる2人を受け止める。ベイラーの手はよっつも並べば子供2人が横たわることなど容易い広さになる。その手のひらを転がるようにしてリオとクオは着地した。お互いに体をはたき合い、埃を払うと、一応は怪我がないかも確認する。そして自分達の身に何もないことを確認し終えると、リクに向かって精一杯感謝の言葉を述べた。


「リク、ありがとー! 」

「ありがとー! 」


 見事な着地に観衆が思わず拍手する。二人はその拍手に照れながらもおじきをし返す事で返礼とした。しばらくして拍手が止むと、珍しい物を見終えた観衆は自分の仕事へと戻っていく。拍手を受け終えた双子は、そのままコクピットに入ろうとした時、リクが急に動き出した。広げた手を動かし、頬ずりできるほど近くまで双子を近づけた。双子がそれに逆らわずになすがまま受け入れる。リクはそのまま双子を寄せ、頭にこつんとあてた。わずかに腕に入ると力が強くなっていく。


「どうしたの? 」

「リク、クオ達怪我してないよ? 大丈夫だよ? 」

 

 リクの様子がおかしい事に気がついた双子はすぐにコクピットの中へと入り込む。病床についていたのは一日二日のはずだあったが、旅の最中ずっとリクと共にいた為、こうして操縦桿を握るのは随分と久し振りに感じてしまう。そうしてベイラー特有である感覚の共有が行われ始めた。リクと双子の見ている物、感じる物、考えている事が双方わかるようになる。すると、リクからリオとクオへ大量の情報が流れ混み始めた。それは言葉を発せないリクが、唯一双子に伝えることができる共有という手段を用いてのコミュニケーション。その第一声は、ずっと同じ言葉だった。


「「こわかった? 」」

「……おねえちゃん、これって」

「もしかして、リク、心配してくれてたの? 」


 リオがリクの伝えたい言葉を汲み取り終える。双子が毒で倒れている間、ずっと側にいたリクは双子の回復を心待ちにしていた。こうしてもう一度2人に会えて嬉しいが、どう表現したらいいかわからない。


「えっとね、そう言う時はぎゅーってするの」

「それで分かるから! 」

 《ーーー? 》


 そこで双子がハグを提案する。提案した直後、二人はすぐさまコクピットからおり、地面へと降り立つ。お互いがお互いを支えながら着地すると、こんどは大きく手を広げた。双子ができる精一杯の大きさまで手を広げる。


「これね、色々な時に使うんだ」

「うん。仲直りする時とか、嬉しい時とか」

「悲しい時とかもね」

「心配かけちゃってごめんね」

「もう大丈夫だよ」


 流石のリオもクオも、コクピットで共有していない時はリクが何を考えているの全ては分からない。だが、リクが何を言おうとしているのか、何を伝えようとしているかは分かる。それは双子特有の感覚によるものなのかは、単に察しがいいのかは分からないが、少なくとも、他の誰にも分からなかいリクの行動が分かるのはリオとクオだけであった。そんな双子の行動に応えようと、ゆっくりと動いていくリク。


 《ーーー?ーーー!? 》


 人間とベイラーではそのサイズ差があり、力加減を間違えてしまえば、それこそ潰してしまう。そしてリクはかつて、何も知らなかったかつ、脅され虐げられていたとは言え、ベイラー、人問わず、幾人に暴力を振るってしまった。その事からリクは、例え襲われたとしても力を行使する事に怯えている。もし今、リクが少しでも力を込めれば子供であるリオもクオも簡単に死んでしまう。その怯えと恐怖に気がついたのか、先に双子かうごいた。


「もう! こーするの! 」

「こう! 」


 リクの胴体に駆け寄り、そのまま抱きつく。思わずつんのめりそうになるのを堪え、宙ぶらりんになってしまった双子を、空いているふたつの左手をつかって支えてやる。リクが双子の行動を理解するのにすこしだけ時間がかかる。


 彼女たちは今、自分たちか先に抱きつくことで、リクに力加減を教えていた。普通であれば、ベイラーが人間から与えられる力などとるに足らないものになる。だがリクは違う。彼はパームに虐げられていた。鉈を投げつけられ、凶暴な獣と戦わせられ、傷つけられていた。その時の力の強さは今でもリクの身体に感覚として残っている。


  そして今、彼が感じているのは、二人のちいさな腕による圧迫。肌が傷つくこともなければ、痕が残る事もない。こんなに弱い力なのに、なぜこんなにも力を感じるのか理解できなかった。同時に、彼もまた、リオとクオにいま自分の感じている事を知ってもらいたいと思うようになっていた。リクの関節にあるサイクルがガコガコ小刻みに動き出す。力を全力で出す事はいつもやってきた。サイクルのなめらかさもすすみ、木屑ももうそこまで出ていない。しかし、誰かを抱きしめるのはコレが始めてだった。ゆっくり、ゆっくりと右腕で双子を抱えていく。双子の服がリクの肌と擦れた。やがてささくれだったリクの腕が二人を抱きしめる。ベイラーの肌は感覚器としての機能はほぼなく、暖かさも冷たさも感じる事はないが、それでも先ほどから二人の体温が心地よい。身体ではなく、心が充足していくのをリクは感じる。リクがはじてめて人間にハグを返す形になった。元より体が大きいリクであるため、リオとクオの身体がやけに小さく感じてしまう。力加減は間違っていないだろうかと様子をうかがった時、双子がピタリと動かなくなってしまっているのに気がつく。


 《!? ーーー!! 》


 あれほど満ち足りていた心が急速に冷めていく。恐怖で身体が強張っていく。よっつあるうちの余ったふたつの腕をつかい、双子の身体をちょんちょんとつつく。自分がまた、誰かを傷つけてしまったのかもしれない。そう考えるだけで身体が動かなくなった。


「リク? 」

「どうしたの? 」


 二人から、それぞれ一言づつ言葉を発してくれた事で無事を確認する。単に抱きしめられてほんの少し息苦しかっただけであったが、無事であるという事実にリクは大いに喜んだ。しかし、今度は抱きしめるという行為そのものを怖がり始める。抱きしめた腕を引っ込め、その場に双子を下ろそうとする。しかしリオの手がそれを止めた


「リク。大丈夫。ちゃんとわかってるから」

「力加減、考えてくれたんでしょう? リクはえらいなぁ」


 双子はリクの頭にまでよじ登り、今度は頭を撫でてやる。


「まだ、怖い? 」

 《ーーー》


 首肯で応えるリク。その答えに、不満がないわけではなかったが、これ以上無理強いをするのもリクに悪いと感じ、双子が相談し合う。


「おねえちゃん。これじゃぁ抱っこし合いできないね」

「ちょっとずつなれていけばきっと大丈夫だよ」

「教えないほうがいいのかなぁ」

「……ねぇクオ」


 リオが撫でる手を止める。


「リクの怖がりって、やっぱり脅されてたからなのかなぁ」

「きっとそうだよ。初めて会った時、リクボロボロだったもん。あとで姫さまに聞いたら、人がたくさんリクをいじめてたんだって。だからリクの肩にはたくさんの傷があるんだって」


 リクの肩は、今でこそ傷はないが、まだ脅されていた頃、鉈で何度も傷つけられ、凶暴な肉食の生物と狭い洞窟の中で戦わされている。そしてリクはその生物と何度も戦う中で、自然と戦い方だけは身に付けてしまっていた。


「リクはね、きっと、ソウジュの木から生まれてすぐにパームに捕まっちゃって、いろいろひどいことを手伝わされてちゃったんだと思う。まだリオともクオとも、あんまり触ったり、触られれたりは怖いんじゃないかな」

「……どうすれば怖がってくれなくなるかなぁ」

「お怪我じゃないし。お医者さんじゃ治してくれないと思う」

「じゃぁおねえちゃん誰に聞くの? 」

「えーと、えーと」


 リクの肩でうんうん唸るリオ。そのリオの様子を見守りながらナデナデを続けるクオ。傍から見れば異様だが、本人たちは真剣な眼差しだった。やがて唸り声が長く続きすぎていびきなのか動物の鳴き声なのかわからなくなる頃、リオは一つの答えを出した。


「オルレイトにきく! 」

「えー。オルレイトー? 」

「あれ、オルレイト嫌い? 」

「嫌いじゃないけど、言ってること難しくてよくわかんない」

「でもでも、本たくさん持ってるから、なんかわかるかも」

「じゃぁ、クオはナットに聞く」


 ナット。その単語が出た瞬間、リオが大いにうろたえた。


「な、なんでナットなの? 」

「言ってることわかりやすいし、わかんなかったら一緒に調べてくれるもん」

「え、えー……」

「どうしたのおねえちゃん? 」

「なんか、なんかそれ、だめ! 」

「どうして? 」


 リオが珍しく妹に癇癪をお越している。理由は簡単だった。


「だって、リオもナットとお話ししたいもん」

「クオだって! 」

「クオよりもたくさんおしゃべりしたいー! 」

「どうしてぇ? 」

「だって、ナットと話すの、なんか、たのしいし……」


 リオが顔を真っ赤にしながら、もじもじしながらしどろもどろに応える。リオもクオも、ナットに窮地を救ってもらったことがある。同時に、彼女たちの見分けがつく、両親以外の初めての男の子だった。また行動を共にしている龍石旅団の中では、同世代の(年はナットの方が上であるが、そもそも他の男性が成人しかいない)男の子はナットしかおらず、話しかけやすいとも言える。ナットもナットで、彼女らを一度心無い言葉で傷つけてしまったことがあり、じゃれあいを無碍にすることはない。最近では文通をしてくれるような仲である。


 命を助けてくれた、両親以外ではじめて自分を見てくれる優しい男の子。脚も早く、こっちのことを気にかけてくれる。今回の病気もまっさきにナットが気づいてくれていた。


 そんな男の子に、リオはいつしか惹かれていた。


「クオだって楽しいからナットと話したいいんだもん。おねえちゃんはオルレイトとお話しがあるんでしょう? オルレイトの方いけばいいじゃんかー! 」


 だが、それはリオだけではない。同じ時間、同じ顔で生まれたクオもまた、ナットにいつしか惹かれていたのである。出来るなら、ナットとたくさん一緒にいたいと思うのは自然な事だった。ただ、どちらもまだ恋などしらない為。自分でも訳が分からず癇癪を起こしてしまっている。


「そ、そうだけど、でもそれじゃぁ」

「それじゃあ。なに? 」

「……クオがいっぱいナットとおしゃべるするんだもん」

「……おねえちゃん、それがなんで嫌なの? 」


 キョトンとするクオ。リオの方はもう頭がいっぱいいっぱいでほぼ半泣きの状態だった。


「わからないから嫌なの! 」

「さっきからおねえちゃんがわからないよ! 」


 ついに癇癪が爆発し、ギャーギャーと言い争いが置き始める。悲鳴と怒号を足して二で割ったような。もはやお互い何を相手に言っているか訳がわからなくなりだした頃、今度はリクが二人を制した。ふたりがただ仲良くしてほしい為に行う方法を、さきほど教わったばかりだった。


「「リク? 」」


 一瞬くぐもった声が上がる双子。リクが、教わったばかりのハグを、ふたりに おこなった。喧嘩をしないでほしい。ただその一点だけで行ったハグは、さきほどとは違い、二人を潰すようなことはない。ベイラー特有である木の表面のざらつきが二人に刺さらないように、細心の注意を払い、かつ力で押しつぶさない程度の。抱きとめる強さで二人を両手で抱えてみせた。


「リク……止めてくれたの? 」

「リク、ごめんね……」


 抱き返す双子。そこにはもう険悪な雰囲気は残っていない。リオがいったように、仲直りするときでも、ハグというのは有効だった。やがてリオが二人ともが満足する方法を思いつき思わず笑顔になった。


「ねぇ、一緒にいったらダメかな? 」

「一緒に? 」

「うん。オルレイトのところと、ナットのとこ。一回探してみて、見つかった方に話をきくの。そうしたら。リオも、クオも、ナットを見つけられればお話しできるでしょう? 」

「……もしナットがみつからなかったら? 」

「そしたら、姫さまたちに聴きにいこう? お宿が二個に分かれてるってお医者さん言ってたし、たぶん、えーっと、マイヤさんとかは知ってると思う」


 リオの提案を受け、しばし考えるクオ。リクが心配そうに眺めている中、ひとつだけ条件をだした。


「おねえちゃん、それで、オルレイトにあったら、クオ、リクの中にいていい? 」

「いいけど、どうして? オルレイトそんなに嫌い? 」

「嫌いじゃないけど、お話しが長いのいやー! 」

「わかった! それでいいや! リオからも言ってみる! オルレイトってたまにいろいろなこと教えてくれるけど、吹雪みたくずっと話してるんよねー」

「そうー! たまにぜんぜん違うことはなしてるんだもん」


 本人のいない場所であり悪口はいい放題。止める者はいない。これが完全ないいがかりの悪口であればカリンかマイヤが教育するところではあるが、オルレイトの悪癖については、オルレイト以外は全員気が付いている事実であった。なおこれもオルレイトは無自覚であるため性質が悪い。


「さ! そうと決まれば、いくリク! 」

「お池の方行ってみよう! そこに人がたくさんいるってさっききいた! 」

「じゃぁ、探検だね! 」

「うん! たんけーん! 」


 リクに乗り込んでいくリオとクオ。手足の感覚を確かめ、のっしのっしと歩いていく。


 コウがテレポートしてとなりの二丁目にいったのとも、ちょうど同じくらいの時間だった。


同時進行ですが日常がもうちょっと続きます。

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