怒りと炎と
カリン達がナット救出に向かっている中で、海の国サーラ、その城の一室で、王とその妃が、座りながら1人の男を尋問していた。尋問といっても、苦痛を与えるような事はしていない。ロープで手足を縛る事もせず、今すぐにでも逃げ出せるように、同じく椅子に座っている。だが妃に至っては目を向けてすらいなかった。
「すると、君が船の構造を伝えて居たわけだ」
「……そ、そうだ。そうすれば、借りた金をチャラにしてくれるって」
だと言うのに、王の質問に素直に答え続けている。だが、様子が普通ではなかった。暑くもないのに、全身から汗を流し、寒くもないのに奥歯はカチカチと鳴っている。座っている男は、常に体が震えていた。汗は体を冷やす為の物ではなく、極度の緊張による冷や汗。
「病気をしたんだ……それで、金がいるって……病気は治ったが、抱えきれないくらいの借金をもっちまった……そんな時に、あの人に声をかけられて」
「あの人? 名前は? 」
「わ、分からないんだ。仮面をつけているし顔もわからない」
「ほう。嘘をつくのかね? 」
「嘘じゃない! 嘘じゃないんだ! 」
「……クリン」
「や、やめろぉ!! その女をこっちに向かせるな!! 」
サーラの王、ライが、自分の妃であるクリンに声をかける。そして、目を男に向けた。 瞬間、男の様子が急変する。クリンを見た瞬間、男は全身を震わせ、ついには座る姿勢を維持できなくなり、椅子から転げ落ちた。転んだ時に、腕を痛めたのか、立ち上がる事もできず、ただ這いずり回るように距離を取る。その姿を見たクリンが、立ち上がり、一歩前にでて追いかける。その姿を見た男は、逃げられないと悟った男は、顔を口から泡を拭き、天を仰いで、そのまま動かなくなった。
「どうする? 水でもかけておこす? 」
「……これで三度目だ。そろそろ寝かせてやろう。亡き者にするには惜しい」
ライもそれ以上の追求をせず、クリンをたしなめる。クリンも同意し、元の椅子へと戻った。
「みんな、根っからの悪人じゃないわね」
「ああ。だが全員弱みがある。そこを狙われているようだ……協力に感謝する。“渡り“のオージェン」
部屋の暗がりから、気配を殺し続けていた巨漢が現れる。2mはある体躯、しなやかな手足、端整な顔つき。体つきこそ存在感があるが、まるでその場に居ないかのように、息を殺し、気配殺していたこの男は、オージェン・フェイラス。ゲレーンの諜報機関『渡り』の長である。
「よくぞ捕らえてくれた。これで、この国がなぜここまで海賊にやられていたのかの理由がわかった。まさか密偵が内部に潜んでいたとはな。礼を言う」
「……勝手な真似とは思いましたが、見過ごす事も出来ず」
「良い。むしろ我が兵にも見習わせたいほどの腕前。クリンが信用するの頷ける」
王の言葉に、困ったように眉をひそめるオージェン。その顔をみたクリンが助け船を出す。
「貴方であれば、私の『コレ』にも当てられずに済むでしょう?」
そして、その助け舟は凶悪だった。一瞬、場の空気が凍てつき、クリンから殺気が飛ばされる。彼女の殺気をもろに受ければ、自分の首が落ちたかのような錯覚をしてしまうほどに大きい。事実、彼女の従者は幾度となく首を落とされた錯覚を味わっている。
「……まさか、絞る事を覚えるとは」
「最初は単なる思いつきだったのだけれどね」
にひひと、人懐っこく笑うクリン。しかし、口に出している言葉は恐ろしい物であった。今まで、オージェンに向ける類の、普段から出し入れしているクリンの殺気は、単に全身から滲み出しているだけのものであり、意図的に制御が可能な代物であった。その殺気は、基本的に彼女を見る者に影響を与え、恐怖させる。だが、今彼女が行ったのは、自身の殺気を、ただ1人にのみ集中させてぶつけるものであり、その、だたでさえ膨大な、量的な意味合いをもつ殺気を、絞ってぶつけたのである。その集められた殺気を浴びせられたが最後、首が落ちるだけでは済まない。その腹を、足を、腕を、身体中を粉微塵に切り刻まれたかのような、錯覚にしては有り余る恐怖を対処に叩き込む事ができる。先程、泡を吹いて倒れた男は、逃げなかったのではない。あまりの恐怖に逃げる事が出来なくなっていたのだ。
「まぁコレ、ライには効かないんだけどねぇ。よく向けてるのに」
「知っている。それがどうした? 」
「貴方のそう言うトコ、好きよ」
「……夫婦漫才は他所でやって頂きたく」
オージェンが睥睨している中、部屋の扉を叩く者がいる。三回規則正しく鳴ったそれは、伝令の合図。
「入れ」
「王! 火急の報せが……おおう。また派手にやりましたな」
倒れ伏している男に目を見張りながら、サーラの重鎮、ゴルが訪れる。一番最初にカリン達を案内した彼は、この国を治める王の右腕を務めている。扉が空いたその瞬間、彼が入ったと同時に、オージェンの姿は見えなくなっている。パタンと静かに扉が閉まった。
「……もうちょっと長居してもいいのに」
「はて? 」
「構わん。ゴル。報せとはなんだ? 」
「はぁ。それが」
「親父いい!! 大変だ大変だ!!」
そして、今度はノックもせずに扉を開けはなつ無法者が現れる。その姿をみたゴルが盛大にため息をついた
「お前というやつは。王の前で何という礼儀を! 」
「こ、これはすまねぇ王様。親父がこっちに入っていったて聞いていてもたってもいられなくって」
「マリゴか。ゴルの息子だな。話には聞いている。しかし待て。いまゴルが火急の報せを持ってきていてな。その後話を聞こう」
「わかったぜ。急げよ親父! 」
「……全く。王、この国に、嵐が迫っています」
ゴルが、たっぷりと間を空けて、その嵐の詳細を話す。
「天気屋からの話ですので、確かです。海からこちらに、あと3日で来るかと」
「ただの嵐の話しているのではあるまい? 」
「はい。規模からして……『追われ嵐』かと」
「そ、そんな! 」
ここで初めてクリンが狼狽える。それはついこの間まで、その嵐の復興に携わっていた者の苦悩。
「あれは100年に1度おきるような嵐でしょう!? それがなんでまた!?」
「わ、私に言われましても」
「ゴル。お前の審美眼を疑う訳ではないが、少し冷静になれ。『追われ嵐』はついこの間収まったばかりだ。それもゲレーンに深い爪痕を残してな。それが間を空けずに、しかもこんな近くで嵐が起きるなどかんがえられん。普段の冷静なゴルならそう結論が出るはずだが」
理路整然とした反論に、ゴルも思わずたじろぐ。
「他、確かに、私めも動揺しておりました。今一度確認いたします」
「民を、それも、今はその嵐で被害を受けたゲレーンの人々がいるのだ。あまり騒がぬことだ」
「ッは! 」
ゴルがその場を去ろうとした時、バツの悪そうにマリゴが頭を搔く。その様子を見たゴルが怒鳴る。
「お前も海で追われ嵐を見たと言うのだろう! 今の王の言葉を聞かなかったのか! 帰るぞ! 」
「ま、まってくれよ親父! 確かに俺は追われ嵐の話をしに来たんだが、そうじゃないんだって! 」
「こ、こやつ、口からでまかせを! 」
胸ぐらを掴んであわや喧嘩に発展しそうな勢いになる。ゴルがたった今、己を恥じたばかりで、その恥を、自分の息子に上塗りされそうになっているのを止めたかった。だが、マリゴの様子は変わる事がない。
「だから! でまかせでもなんでもないって! もうすぐ出てくるんだから! 」
「……待て。マリゴ。何が出てくるんだ? 」
「王! 放蕩息子の事などお気になさらずに」
「ゴル。控えよ。今マリゴと話している」
違和感が拭えぬライが、マリゴに、言葉の続きを促した。ライの言葉にゴルはすっかり萎縮し、部屋の隅へと縮こまる。マリゴも、自分の言葉を正確に伝えようと、四苦八苦する。彼が伝令として海の上で働いていた期間は短く、その感覚を思い出すのに時間が必要だった。
「俺が見たのは山からだ。そして、そいつはもうすぐこの上を通る。そう言う進路だった。だからきっと、『追われ嵐』が海の上で起きてるのは本当だぜ」
「……山から? 上を通る? まさか」
その瞬間だった。最初は、小さな風が壁に当たっている火のような音だった。それがやがてお大きくなり、耳をつんざく音にかわり、最後に、城全体が、石を積み上げてできた、頑強なはずの城が、大きく揺れた。何かが当たったのではない。ただ、その近くを、何者かが通った。
「……こんなに近くまで!? 」
「まさか、食いにいくのか! 嵐を! 海の上に、本当にあるというのか! 」
ライが、クリンが、その天を塞ぐ巨体を見て叫ぶ。2対4枚の巨大な羽。山脈のように長く、巨大な体躯。顎から生える、そびえ立つ木々のように長い牙。どれもこれも、地上にはない大きさをもってして、空を悠然と飛ぶその姿。
「龍だ……龍が、海へ向かっている! 」
このサーラの空の上を、蓋をするかのように飛んでいる龍。あまりに大きすぎて、進んでいるのかがわからない。だが、確かに進行方向は海を目指していた。その姿をみて、クリンが、自身の大切な妹が、今どこに居るのかを思い出した。
「カリンは、今海賊の元に囚われた仲間を助けに行くって、沖に……ッツ! 」
「待てクリン!! 」
クリンの行動は早かった。揺れでもろくなった壁を文字通り一振りで叩き斬り、城から文字通り一足で飛び出していく。誰も止める事など出来なかった。
「お、王……」
「今すぐ伝令を! 今クリンは武器を取りに行った! ならまだ時間はある! 急いで船を用意しろ! 船員はいらん! 」
「お、王は! 」
「今すぐにでも追いかけたいが、ゲレーンの人々に伝えるのが先だ。ゴル、マリゴ! 今すぐ船を用意させろ!間に合わずに怒り狂ったクリンが何をしでかすか想像できないお前達ではあるまい! 」
「お、応 !」
「急げよ! 」
すぐさま指示を飛ばし、自身はこれからの事をゲレーンの人々に、そしてゲレーン王、ゲーニッツにどう伝えるかを思案している。同時に、懸念を抱かずにはいられなかった。
「一体、何が起きているんだ……一体、何が起きようとしているんだ」
◆
「《このやろう! このやろう!! 》」
舞台は、パーム達のいる戦場に戻る。コウを庇ったガインはその場に動かずに、力の入らない体に、普段であればなんの疑問もない状態に、ひたすらに悲しんでいる。コウは、目の前の、その汚れた右腕を持つ、パームのベイラーに、そして、パームの操るベイラーに、ただただ怒りをぶつけていた。燃え盛る炎は勢いを弱める事なく、コウの体を燃やしている。特に肩が激しく燃え、翼のように横に広がっている。だが翼と決定的に違うのは、決して羽ばたかない事と、その触れる物を容赦なく焼き尽くすこと。
「《お前が! お前がぁあああ!! 》」
コウは今、たった1人で戦っている。それは孤軍であるという意味ではない。乗り手であるはずのカリンを置き去りにし、仲間であるはずの龍石旅団を無視し、パームに向かっている。ただ、兎にも角にもコウには技量がなく、殴ると言う行為も、拳を大きく振り回すだけの乱打でしかない。その大雑把な攻撃すら、炎を身に纏う事で、必滅の威力を誇っていた。
「こいつ、動きが素人になりやがった。素人になった癖に、なんだこの力は!! 」
パームが、ザンアーリィベイラーを必死に動かしてその拳を躱す。殴り抜けた跡に、一条の炎が軌道を残して消えていく。あの場所に一瞬でもいれば、空を飛ぶために軽く調整されたザンアーリィベイラーは粉々に砕け散ってしまうであろうと言う予想が簡単についた。
「《ウァアアアアアアア! 》」
コウが吠え、一歩踏み込んで再び大振りに殴りつける。横らか顔を打ち付ける大雑把な横殴りだが、その踏み込みが恐ろしい速さを持ってして行われる。しかし一撃一撃が大振りであるがゆえに、からぶった後の隙はひどく、体を一回転させながら無理やり姿勢を整えているような有様。しかしパームは、コウの動きに精彩がなくとも、出力される力が圧倒的で、反撃はおろか、防御も出来ず、まるで手が出せずにいる。
「本当に、あれがコウなのか……あれじゃ獣と同じじゃないか」
レイダに乗るオルレイトがその姿を評する。怒りに任せ力を振るい、炎を纏いながら吠え叫ぶ姿は、人間のそれとも、ベイラーとも違う。手負いの獣が、己より大きな獲物に向かっていくような、どれだけ自分が傷つくこも省みずとも、その獲物を獲らなければ死んでしまうような壮絶さがあった。
「《……おかしい》」
「どうしたレイダ」
「《先程から動きがおかしいのです》」
「そんなの見てわかるじゃないか」
「《そうではありません。あの動きは姫さまの動きではありません……剣を持たず、拳を無造作に、無遠慮に振るうなど》」
「あの動きは、コウ自身の動きだっていうのか? 」
オルレイトが疑問を投げたその瞬間、パームのベイラーがコウの拳を受けて仰け反る。大振りの拳は、確かにパームに防がれたはずであったが、あまりの威力にガードの上から弾き飛ばした。その動きは、技量の何もなく、ただ、力任せの拳打でしかなかった。しかしコウの力そのものが、急激に上がっていた。
「……あんな戦い方、たしかに姫さまならしない。でも、どうしてだ? 」
「《わかりません。しかし、ぼさっとしている訳にもいかないようです! 》」
レイダがサイクルショットを向ける。その向けた先には、もう何度目かのアーリィベイラーの増援が迫っていた。その数3。オルレイトもその意図を汲み、すぐさま3発のサイクルショットで牽制する。しかし、アーリィベイラーはまるで怯みもせず、むしろレイダの事など目もくれずに頭上を飛んでいき、コウへと襲いかかった。彼れらはたから見れば、コウを襲う悪漢であるが、そもそもコウはパームに向けて明確な殺意を抱いており、それを宣言している。阻止しようと考えるのは自然な流れであり、話し合いの余地などはすでになく、実力行使でしか止められない事も、今のコウを見れば明らかである。結果として、全員が全員ナイフを握り、コウの身体へ突き立てるべくおそいかかる。
「《邪魔だああああ!! 》」
コウに向けて複数のアーリィベイラーがナイフを振り上げた、その瞬間だった。コウの肩で燃え盛っていた炎が、一瞬凄まじいい速度で膨張し、背後へと伸びた。突如行われた攻撃に、2人のベイラーは炎に飲まれ、その体を焼かれる。ベイラーという、その体が木で出来ているからこそ、受けてはいけない類の攻撃をアーリィベイラーが受けてしまい、火が回る事を恐れ、攻撃している最中である事も忘れ、一旦コウから離れた。それが明確な隙になる。その隙をコウは見逃さなかった。
「《ずえぁああああ!! 》」
気合いなのか叫び声なのか、すでに区別はつけられなかった。怯んだ相手に向け、頭を掴みかかり、そのまま地面へと叩きつける。
そのまま、何度も、何度も、何度も地面にぶつける。アーリィベイラーの体のあちこちがひしゃげ始め、遂には、飛行の際に使われていたチシャ油が噴出した。その油も、コウの炎によってさらに逆巻き、業火となって消え去る。すでに原型が留めないほど形が変わると、そのベイラーを無造作に襲い掛かるベイラーへと投げ飛ばした。無様に飛んで行ったベイラーを避ける事もできず、残り2人のベイラーはその投げられたベイラーの下敷きになり、しばらくすると、動かなくなった。事の全てを遠巻きに見ていたケーシィが、思わず呟いた
「一瞬で、一瞬で3人のベイラーを……あれがベイラーなの? あんな力を持つのがベイラーなの? 」
体に浴びたチシャ油をふるい落すコウ。通常、チシャ油は冷たくなるとすぐに固まり、その凝固作用は、ベイラーの身動きを止める程に硬い。それが行われないという事は、コウの体が、凄まじい温度を保っている事実に他ならない。だが同時に、頭部に浴びた油だけは、燃える事も固まる事もなく、ただコウの瞳を濡らし、その頬を濡らしている。
「《俺の……俺の邪魔をするなら……お前たち全員……ここから消えてしまえ!! 》」
コウの咆哮に呼応するように、全身の纏う炎が一呼吸ごとに燃え盛る。赤い炎が、肩を起点に集まり始める。その大きさと輝きは、この洞窟内を昼間と間違うほどに明るく照らし出す。コウの一呼吸毎に、その明かりは強く、徐々に大きくなっていく。この異常すぎる自体に、オルレイトの直感が働いた。
何が起こるかは分からないが、何か悪い事が起こる事だけはわかった。
「みんな!サイクルシールドだ!!」
「《ど、どうしたのです? 》」
「なんでもいい! あれはマズイ気がする! ナット! サマナ! 手伝え!! 」
「わ、わかった」
「応よ! 」
「リオ! クオ! ガインを連れてこい! 今すぐ! 」
「のっぽが怒鳴ったぁ」
「でもわかったぁ! 」
「全員助かりたかったらこっちにこい! 」
サマナとナットがすぐさまレイダの側に寄り、サイクルシールドを作り出す。双子もオルレイトの直感と、自分たちがひしひしと感じる違和感に従い、素直に指示に従う。動けなくなったガインを抱え、急いでレイダ達の元に向かう。
「サイクルシールド! できるだけ厚く、できるだけ大きく! 」
「《仰せのままに! 》」
レイダが全員を背後に回ったのを確認すると、すぐさまシールドを構える。
「セス! あたしたちも! 」
「《いいだろう》」
セスもシールドの構築に手を貸す。二人掛かりで作られたシールドは、徐々に、そして確実に大きくなり、この洞窟の中で、コウ達の壁となった。そして、壁が天井にぶつかったその時。ソレは起こった。
「《燃えてしまええええええ!! 》」
コウの咆哮が、炎を起爆させた。コウの肩を起点に凝縮された炎が一瞬で解き放たれ、爆発する。辺り一面を、文字通り火の海に変えた。倒れたアーリィベイラーは避ける事も出来ず、ただその炎に巻かれる。火力もさることながら、衝撃はそれ以上で、集まったアーリィベイラーはそのことごとくが内壁へと追いやられ、一瞬で四肢を砕かれた。そして、コウの起こした爆発により、洞窟内部が、崩落を始める。頭上を塞いでした天井を、その爆発はぶち抜いた。
「《が、ががあああ!! 》」
「耐えろレイダ! 僕の薄い命などいくらでもくれてやる! だから耐えてくれ! 」
「《こ、これはぁあ!?》」
「気張れ! 気張ってセス! 」
地形を変える威力を持った爆裂を、レイダのシールドが耐える。その衝撃は、かつての『追われ嵐』の比ではなかった。凄まじい衝撃がレイダの手足を襲う。関節のサイクルは軋みをあげる間もなくヒビが入り、木屑が生まれると同時に灰になる。そして、爆破により一気に燃え上がり、吹き上がり、舞い上がった。洞窟はその頭上を吹き抜けに変えながら、辺りはまさしく炎の海となった。
次回。ついに鉄仮面の男と、コウが対峙します。




