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選者
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選者:牛久保建男氏
ぼくは望月笑子『無機質な腐敗』を推した。
東北から派遣社員としてK県の大手自動車会社に働く二十四歳の妙子が主人公である。
使い捨ての存在の派遣社員の仕事、正社員への登用を信じ、『無機質な歯車』の一つとなって、しかし暑い現場で、頭から水をかぶって意欲を持って働く妙子の姿がよく描かれている。
妙子が、セクハラを受け訴訟を起こして闘う展開に、小説的説得力が欠けているという点では、私も同感だ。
その上で、他作品の中では取り分け作者の強い思いを感じ、そのことを大事にしたいと思った。
しかし、他を押し退けてまでというわけにはいかなかった。
選者:田島一氏
粗削りだが、派遣労働者へのセクハラ事件を通して、今日の大企業の腐敗の実相を読み手に投げ掛けた。
望月笑子『無機質な腐敗』からは、作者の強いモチーフが感じ取れた。
女性主人公と派遣先の管理職との関係など、形象の不足は否めないものの、作品全体にみなぎる力が選者を動かしたのだろう。