表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先輩を好きになった20の出来事  作者: 夏野 みかん
4/40

3

その夜の夢も…私は…先輩の猫だった。


「猫は【寝子ネコ】が語源という説があるくらい、睡眠時間が長いって聞いたことがあったけど、ほんとお前はよく寝るよなぁ。」と言って、私の頭を撫でていた。


「にゃぁ~(まただよ。なんでこんな夢をみるんだろう)」


「目が覚めたか…」そう言って、私の顔を覗き込んだ先輩は、嬉しそうだった。


撫でられる大きな手に、私の体…というか猫になった私の体は、どうやらお気に入りらしく、先輩の大きな手に自分のほうから頭を寄せていった。


その様子に、先輩はやわらかく微笑むと…私を抱き上げ、腕の中に囲い…自分の頭を猫の私に逆に寄せてきた。


「平蔵…おまえは温かいよなぁ…。生きているって、この温かさなんだよなぁ…」


そう言うと、より私を抱きしめてきた。


「…俺…決めきれない。わかっているけど…決めきれないんだ。どうしたらいいのか…」


そう言う先輩の肩越しから、見える景色の中に…どこかで見た写真があった。


これは…どこかで見た気がするのだが…思い出せなくて…思わず手を伸ばしたら…


体が真っ逆様に落ちいって


          

             

 …目が覚めた…。



あの…写真の人達って、どこかで見たような気がする…まぁ夢の中のことだから、いろんな記憶を繋ぎ合わせているのかもしれないが…なんだかすっきりしないまま…夜が明けてしまった。




まったく、なんでこんな夢を見るのだろうか…あの雨の日、ゴールポストに凭れていた先輩が忘れられないからだろうか。


熱が下がり…ようやく明日には家に帰れると言う日…。わが兄貴が見舞いに来た。


「なぁ…おまえなんで、雨の中…なにやっていたんだ?」


さすがに…先輩の泣いている姿を見て、植え込みから出るに出られず…そのままいたら…こうなりましたとは言いづらかった。


「そ、それはお兄ちゃんが、部室にいなかったから…」


「雨の中、待っていたのか…びしょぬれになって…ふ~ん…」と意味ありげに笑ったが…


「悪かったなぁ…、どうしてもあいつの側についていてやりたいかったんだ。だけど…大丈夫だと言って逃げられて…あの日は…部室に行けなかった。あいつもおまえと同じで…いつも我慢すんだ。どうにか力になってやりたかったが…」


そう言って、苦笑し…


「だが、俺が側にいるより、もっとあいつの心を癒すことができる奴が現れて…まぁ良かったんだろうなぁ」と私に言ってるというより、そう言って自分自身を納得させているようだった。


お兄ちゃんが珍しく真面目な事を言っている姿に…思わず


「…彼女?」と聞いた私に…ポカンとした顔が…私を凝視すると!


「あぁ…いやいや…男だよ。ほら、秋月だよ。」


「お、お…お兄ちゃん、秋月先輩と知り合い?!」


「はぁ?何言ってんだ。?覚えてないか?ほら…親父たちが別れる前に住んでいたあのアパートの、上の階に住んでいた翔太だよ。おまえ、翔兄って言ってよくついて回っていたじゃん。」


呆然とした…私の顔を見て、兄は…


「おまえ…知らなかったのか?!秋月 翔太が…おまえが言っていた翔兄だってことに…通りで……俺はおまえが年頃だから恥ずかしがって、あいつに近づかないと思っていたんだけど…気がつかなかったんだ…マジかよ。」




混乱しながらも私の頭は、12年程前の記憶を捜していた…。


両親が別れる2年ほど前だった…当時4歳の私はひとつ上の兄よりも、翔兄に懐いていた、翔兄はほんとに優しくて、兄や他の男の子たちが嫌がるなか、私はかなり邪魔な存在だったろうに、皆と一緒に遊ぶことも、うまく話すこともできない私を、翔兄は私の手をひいて仲間に入れてくれた。


そうだ…あの頃…父と母の仲は、冷え切っていて夫婦喧嘩が耐えなかった、


両親の喧嘩が恐くて…寂しくてアパートの踊り場で泣いている私を翔兄は、よく自分の家に連れて行ってくれた。翔兄のお父さんとお母さんは仲が良くてうらやましかった。



翔兄のお父さんは、力が強くてよく腕にぶら下がって遊んでもらった。



翔兄のお母さんは、編み物が上手で…マフラーと手袋を編んでもらった。



私は…もう家に帰らない、翔兄のお家の子になると言っていたっけ…





でも…あれは私が5歳、兄や翔兄が6歳の頃だった…翔兄の一家が交通事故で…翔


兄の…翔兄のお父さんとお母さんが亡くなったんだった…。助かったのは翔兄だけだった。




あぁ…そうだ。あの写真は…先輩の肩越しで見たあの写真は


…翔兄のお父さんとお母さんだった…。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ