1/40
プロローグ
初めて、本当の先輩を知ったのは…雨の降る校庭。
サッカーゴールにもたれ、雨が降っているのに傘も差さず、雨空を見つめていた。
だがあれは…雨ではなかった。
先輩の頬に伝うものは…あれは…雨ではなかった。
いつも女の子に囲まれ、明るくて誰にもやさしい、そして頭脳明晰、容姿端麗と…
まるで作られたかのような人物像に、なんとなく胡散臭さを感じ、私はこの先輩が苦手だった。
周りが騒げは騒ぐほど、ますますその感は否めなくて、廊下で女子の大群を見かけたら、方向転換してしまうくらい係わり合いになりたくなかった。
雨が降る中…あの時先輩はなにを考えていたのだろうか…。
苦手なはずなのに、あの時は声をかけたかった…
「先輩…どうしたんですか」と…
雨の中…私は、ぼんやり先輩を見ていた。
それは…
私が先輩を好きになったひとつめの出来事だった。