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第20話 面接始まる①

 午前中、面接の練習をやった俺達であるが果たして役に立ったのか?

 そして主に質問をする人がダレンさんという事で今回の雇用に全く関係ない事を散々、聞きまくるのではという心配がかなりある。

 その前に応募者がたくさん来れば良いのだが……そっちの方が心配になる。


 そして面接開始の2時から20分間前……

 控え室は店で面接は店の2階になっているが、どれくらい応募者が来ているか気になったのであろう。

 ドロシアが様子を見に行ったのである。


「結構、応募者来ているよ、タイセー」


「結構って何人くらい?」


「…………」


「……良いよ、ドロシー所定の位置に待機してくれる?」


 こういう時は余り責めるべきではない、次回から気をつけてくれれば良いのだ。


「御免ね、タイセー……」


 俺は大丈夫だよとドロシーに言い放つと、ダレンさんの方に振り返ってもう1回面接の段取りを再確認する。

 サブの料理人と給仕人は一緒に募集したので、最初にどっちの応募者か聞いて確認する事、そしてお店で雇うのに関係ある事を質問するように念を押す。

 ダレンさんはきょとんとしていたが、基本的な進行は俺に任せる事で同意してはくれた。 


 さあ、準備は出来た、いよいよ面接開始だ!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「では最初の方、どうぞ。では料理人か、給仕人のどちらの応募なのか? 氏名と年齢、現在の職業があればお願いします」


 1番乗りは若い女性だ。

 しかし、何かやる気の無い投げやりな感じは拭えない。


「ええと、給仕人希望です。名前はダニエラ・グリプ、22歳、現在は無職です」


「グリプさん、今回の応募動機について話してください」


「動機?」


「応募目的です、どうしてこの仕事をしたいと思ったのかですね」


「う~ん。特に無いんですが、なんとなく……かな」


「何となく……だとぉ! こらぁ真面目にやらんとしばくぞ、こらぁ!」


「ひっ!」


「あああ、ダレンさん、駄目です!」


 最初の面接は……失敗だった。

 ダレンさんが応募者のやる気の無い態度に激怒してしまったのだ。

 こうなっては選定以前に辞退されてしまうのは必然である。


「ダレンさん、駄目ですよ。あんなに怒っちゃ……」


「だってよぉ! あんないい加減な奴がこの世に存在する事自体が許せねぇ!」


「まあまあ、ダレンさん。次に行きましょう」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ええと、エマ・ブリュネルです。料理人の応募で来ました……そのセーファスさんの紹介です。えと……元魔法省勤務です」


「おおっ、来たね。ようこそ!」


「ああっ、セーファさん!」


 この娘がセーファスさん推薦というか紹介の娘か、結構可愛いし、真面目そうじゃないか。

 じゃあ、質問はセーファスさんに任せるか。


「じゃあ、エマ。今回の応募動機は?」


「セーファスさん、前の通りで良いんだね」


「…………」


 前の通りって……

 何だ……面接の練習してきたのか、まあ良いけど。


「ま、まあ、良いよ。で、答えてご覧」


 手で汗を拭きながらエマさんに質問するセーファス。


「は、はい! 私は魔法使いとしては頭打ちと言われましたが、この魔力と料理の腕がダレンさんのお店に生かせると聞きました」


 おお、マニュアル通りかもしれないけど……なかなかしっかりしてるじゃないか。


「料理の方はどうだい?」


「あ、あのセーファスさんはご存知ですが、魔法省の食堂で働いていた時に料理を結構覚えました。必ずお役に立てると思います」


 ここでダレンさんが口を挟んだ。


「家族は?」


「は、はい! 父がもう亡くなり、母と2人暮らしです」


「ふ~ん。誰かと付き合っているとか? 恋人は?」


「なっ!?」


 はい、ダレンさん、アウト、アウト!


「な、何でぇ! どうして聞いちゃいけないんだよ!」


 そんな俺の注意を聞いたダレンさんが口を尖らせる。


「あの、ダレンさん、それは私生活の事でお店の雇用とは直接関係無いんで不味いんですよ」


 俺の注意にもダレンさんはむきになって反論する。


「いや、ほらよぉ。関係あるって! うちの店は仕入れに行く時間も朝早いし、営業時間の終了も遅いだろう。だからよ、恋人が居ても会えないじゃねぇかと」


 ……あの、言いたい事は分りますけど、それは通らないんですよ。

 俺がそう言うとダレンさんは不承不承頷いたのだった。


「あ、あの、その不規則な勤務でもだ、大丈夫です……」


 エマさんはそう言ってセーファスを見る。

 その視線が熱い。

 セーファスは気付かない振りをしているし……

 分り易い、本当に分り易い。


 俺達はその後、エマさんに対して魔法や料理の腕を聞いた後、次の予定を伝えて帰したのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「では次の方!」


 ドロシアに案内され、来たのは……


「あああっ! あいつはっ!」「あああっ、セーファさん! あの人は!?」


「ああ、アンタ達!」


 誰のものでもないベンチに先に座ったばっかりに難癖をつけた女。

 そして中央広場にて差たる理由も無く、女の集団に散々いたぶられた俺達……

 その主犯格であるカルメンと呼ばれていた赤毛の女がそこには立っていたのであった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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