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1-52:キュアリー逃走?いえ、私はお家を目指しますよ?

アリアが庁舎でまだマナの減少速度に気が付いていない時、広場にいるキュアリーはドラゴン達の様子に違和感を感じていた。そもそもドラゴンが関わった一連の出来事において、初めからそれは感じていた事ではあった。


「ねぇ、貴方達って異様に弱体化してない?」


「クルルルル」


キュアリーの問いに鳴いて答えるドラゴンであったが、それこそドラゴンが暴れていてこの程度の破壊で終わるなど有り得る事では無い。ましてやドラゴンがドラゴンであるが故の最強の武器であるブレスはその破壊力においてまさに最強と呼ばれるだけの破壊力がある。しかし、この度の騒動においてドラゴンがブレスによる破壊を行ったのはドラゴンそれぞれ1回程度であった。


「そっか、マナがそこまで減ってるのか」


身体が大きければ大きい程に必要とするマナの量は多い。ましてやドラゴンはその巨体を動かすためにすらマナを消費している。そもそもマナ無しに空を飛ぶことは愚か地を走る事すら出来ないだろう。


「でも困ったわね、マナを作り出すかぁ、本来は自然界にある精霊樹や、幻想種と呼ばれる生き物がマナを作り出すって設定じゃなかったっけ?昔過ぎて今一つ覚えてないのよね」


かつてのゲーム設定を思い出してもその部分は非常に曖昧であり、そもそもこの世界があの異界への扉と同じ設定で良いのかすら解らない。ただ唯一地下に溜まったマナを大気中に放出する為の設備がキュアリーが引き籠っていた塔である事は経験から解っていた。


「この森からマナが流れ出ないように設定したらもう少し持つかもだけど、それはそれで鬼畜の所業よね。でも、そうしないと共倒れ?」


キュアリーにとってこの森はそれこそ長年住み慣れた場所である。それ故に、この森で今起きている異変を敏感に感じ取っていた。マナ濃度の変化、それはこの森で消費される量が増えただけでは無く、森から外へと流れ出す量が急激に増えている事に起因していた。


「困ったなぁ、何か対策ってあったっけ?」


自分の住む塔においても当たり前にマナを使用している。その使用量において特に顕著なのが結界であった。ただ、塔自体はそもそも塔から放出されるマナを使用している為にそれ程問題にはならないと思われるが、森を包み込む結界は範囲も広く、その消費量は非常に多い。それ故にこのままでは結界の維持が厳しくなることも予想できた。


「とにかく一度塔に戻らないと何ともならないかな」


自分が住んでいる塔がもつ機能は多岐に渡る。ただ、問題となるのはキュアリーはその機能を一部しか把握していない。元々自分が作った訳では無く、普通に生活するだけであれば別に十全に理解している必要が無かった為に調べようともしなかったのだ。


「うん、そもそも私はここへ調味料を買いに来たんだったよね、よし!帰ろうか!」


思い立ったが吉日と言わんばかりにキュアリーが門の外へと歩きはじめる。


テクテクテク、ドスドスドス、ドドドドドド、トテトテトテ


キュアリーに合わせてドラゴン達も歩きはじめる。それに合わせて他の魔獣達も歩きはじめた。


「・・・・・・まぁこうなるよね・・・・・・」


自分に着いてくるドラゴン達を見て、思わず天を見上げるキュアリーであったが、どのみち塔には入れないのだと開き直ってそのまま門の外へと歩いて行った。


その様子を眺めていた移民達は、ただ眺めている訳にはいかず自分達はどうするのか慌てて相談し始める。


「このままエルフ達の承認を得る方が安全だと思われます。しかし、それでは本来の目的が達成出来るかは不透明です」


「そうですね、それでは数名の者で後を追わせますか?」


「これは困りました。あの者達はどうやらここに残るようですが」


そう告げる男の視線の先には、キュアリー達に同行していた人族を主体とした避難民の姿があった。


「そうね、あの人達とは元々の目的が違うから」


ユーリの言葉に他の者達も頷き返す。しかし、そうするとどうするか、そもそもキュアリーが何処へ行こうとしているのか、目的はなど様々な疑問が湧き上がってくる。


「そうね、一応この集団における責任者は私という事になっているわ。だから私と、そうねフラントン、セサミ、貴方達は私と共に来なさい。ゾット、バドル、悪いけど貴方達はあの魔獣達の後を追ってください」


ユーリの指示に皆頷くそして、ゾット達の後ろにいる熊の獣人に視線を向け、自分が抜けたあとの指揮を頼んだ。


「ベイダン様、後の事は宜しくお願いいたします。万が一の折は・・・・・・」


「ユーリ、無理はするなよ。ここで無理をする必要は欠片も無い。まぁ幸いなことにこの村で政変があったようだ。あのアリアという者が中心となるのであれば早々悪い事には成るまい。お前の好きなように動け」


ベイダンの言葉に深く頭を下げ、ユーリは他の者を連れて事態の収拾を図っているサラサ達の方へと足を向けるのだった。


そして、そんな周囲の変化に気が付かず、突然の難民をまずどうするかを衛兵達と打ち合わせをしていたサラサ達はとにかく村の広場や空き地に当面の居住地を定め、各居住地にそれぞれの集団を分けて集めるように指示を出していた。


「分割されていれば一斉に何かしらの行動をするにもワンテンポ遅れるだろう。どれ程短い時であっても得られるならば貴重だ」


「しかし、その場合監視する者達も分散されます。三ヶ所となれば衛兵の数が足りません」


「そもそも反乱を起こした者達の監視にも人を割かなければならないのです。ここはぜひ外から来た彼らの助力も願うべきではないですか?」


「彼らの事を碌に解っていないのにそれは早計ではないか?」


「彼らの指揮官はエルフです。同じ同胞なのです!無意味に警戒しすぎる事は」


「そのエルフ同士で主導権争いしてるけどな、俺達はよ」


「レンドル、それは皮肉か? そもそもお前は斜に構えるだけで何も行動しない皮肉屋であろうが!」


「そなた達好い加減にせよ! 今はそれどこれでは無いのだ!」


コラルの怒鳴り声で漸く集まった者達は口を閉じる。しかし、この場にいる者達は決して今の状況を納得も理解もしていない事はこの状況でも明白であった。

そんな微妙な空気が流れる中、ユーリ達がやって来るのを見てコラル達は居住いを正す。そして、その後ろからはユスティーナ達も歩いてくる。


「何やら立て込んでおられるかな?」


ユスティーナはコラル達を見廻しそう言葉を掛けるが、純人族である彼女に声を掛ける者はいない。


「コラル、皆を連れて一先ず庁舎へと向かいましょう。まずはどこに腰を落ち着けるのかを決めねば皆さんも落ち着かないでしょう」


ユスティーナに対する態度に危惧を覚えたサラサは、コラルへと声を掛けて移動を促すのだった。

この時サラサ達は自分達の事に精一杯であるあまり、ドラゴン達が動いたことに対しても左程注意を払っていなかった。狭い場所から少しでも広い門の外にある広場へと移動した。勝手にそう思い込んでしまったのだった。そしてその事に気が付いたであろうユーリは、その事をあえて指摘する事は無かったのだった。


広場から庁舎へと場所を移し、その庁舎の何ら変わる事のない無事な姿に安堵の思いを抱きながらサラサは中へと皆を引き連れて入っていく。

そして、サラサはその際入り口で一人のエルフとすれ違った。


「え?今のってドルトン様?」


エルフ最年長と言われるドルトンは、ここ100年以上もこの村の運営に関わる事は無くなっていた。

それ故にサラサなどにとっては好々爺然としたドルトンしか記憶に無く、そのドルトンと庁舎の取り合わせは非常に奇異に感じたのだ。


「ほう、あの方が来られるとは珍しいな、ただ今は皆を会議室へと案内しよう」


「そうね・・・・・・」


違和感を感じながらもサラサは開かれている扉を潜り会議室へと入ろうとした所で、未だかつて見た事も無い程に顔を強張らせたアリアの姿を目にするのだった。


「扉は閉めずとも良い!各所からの連絡は最優先にしなさい、会議中でも構いません!サラサ、コラル、疲れているのは重々承知していますが、申し訳ありません森の境界における状況確認をお願いします。どうも魔獣達が次々と入り込み始めているみたいです」


「え?は、はい!至急確認をとります」


「お願いします」


サラサとコラルは会議室に招かれるや否やアリアから指令が下る。

アリアから齎される気配に、思わず何が起きているのかすら確認せずにサラサとコラルは会議室を飛び出す事となった。二人は庁舎から飛び出しながらもお互いに視線を交わし何が起きているのかを推察するが、お互いに答えを推察する事すら出来なかった。

そして、村を飛び出して直ぐに森に異常が起きている事を悟る事と成る。


「何よこれ、ドラゴンは何処に行ったの?」


門を抜けるまでにドラゴンの姿は無かった。そして門を抜けた先に広がる広場のどこにもドラゴンの姿は見当たらない。


「あれ程の巨体だ、いれば気が付く筈ではあるが」


「そもそもキュアリー様から離れなかったドラゴンがって、キュアリー様はどこ?!」


周りを見渡すがあの銀色に輝く特徴的な髪が何処にも見当たらない。それに、キュアリーを守るかのように取り囲むルーンウルフが一頭もいない。


「まて、ドラゴンの足跡ならこちらへと向かっているが・・・・・・有り得ないな、あの巨体が通るにはこの道は狭すぎるぞ。どういう事だ?」


広場にあるドラゴンの足跡は、森の奥へと向かっている。ただ、そもそも広場から森の奥へと続く道はエルフ達ですら二人並んで通る事が出来ない幅しかない。しかし、その道の手前でドラゴンのみならず多くの魔獣の足跡が途切れているのだった。


「サラサ様、そこは先程まで大きな道が出来上がっておりました。ただ魔獣達が通り過ぎたら自然と塞がって、信じられない事だと思うのですが」


「周りの樹木が動いて道を作ったのです!」


広場の警護として残っていた衛兵達がドラゴンの消えた先を見ていたサラサ達へと報告をする。


「精霊術ね、でも今この世界でここまでの精霊術を使えるなんて」


「それよりどうする、キュアリー様を追うか?」


「でもアリア様は森の外の偵察を指示されたわ。きっと何かが起きているのだと思うから」


サラサが躊躇していると、村の中から数人の衛兵達がキュアリーを呼びながらウロウロと門の外へと出てくるのが見えた。


「お前達、アリア様の指示でキュアリー様を探しているのか?!」


「「「は、はい!そうであります!」」」


サラサの姿に気が付いた衛兵たちは、急いでサラサの下までやって来た。そして、アリアから指示された内容を伝える。


「キュアリー様は恐らくこの道を通って塔へと向かわれたのだと思われる。ただ、その後ろをドラゴンを含む魔獣が追従している為に発見は容易だと思う。急いで追いかけろ!塔の領域に入ってしまわれたならば我々では如何ともしがたくなるぞ!」


サラサは目の前の道を示し、衛兵たちにキュアリーの後を追う様に指示を出した。

ただ、その衛兵達本人はサラサの指先を辿り、森の中へと続く細い道を見て顔を蒼褪めさせた。


「こ、この道を辿るのでしょうか?」


「急げ、時間との勝負なのだ!」


コラルもぐずぐずしている衛兵達に苛立ちを覚える。それ故に思わず怒声を上げるがそれでも兵士達は動こうとしない。


「わ。我々は森林でのサバイバル訓練を受けた事が無いのです。無理です、森の中に入れば自力での帰還は出来ません。遭難してしまいます」


衛兵の一人が悲痛な表情を浮かべてサラサとコラルに訴えかける。そして、彼らの徽章を確認した二人は彼らが政庁専属の衛兵である事に気が付いたのだった。


「これ以上時間を浪費する事は出来ないわ。仕方が無いからコラル、貴方は彼らの内2名を連れてキュアリー様を追ってください。私は残りの者を連れて森の境界で起きている事の調査を行います」


「そうだな、それしかないか。よし、お前とお前、私についてこい。遅れるな!」


コラルは一瞬顔を顰めながらも、すぐに自分に随伴する者を指示し、森の奥へと続く道へと足を踏み込んでいった。そしてサラサは彼らと真逆の方向、森の境界線を確認する為に他の者達を連れて走り出すのだった。

投稿予定が相変わらずズレてしまっています。ごめんなさいm(_ _)m

とりあえず今週は火曜日と水曜日が投稿出来ないかもなので、木曜日イツキ、金曜日イツキで来週月曜日がコルトになる予定です。

火曜日、水曜日にイツキを投稿出来たら予定がズレると思います。


あと、・・・・・・は偶数じゃないとって他の作者の方が言ってみえたので、今更ながらにこの章から変えてみました!

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