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1-50:エルフの村攻防戦?蹂躙戦?

「キュアリー様、まった、まってください!」


「かいへ~~~ん~~~~!」


アルトの声に目の前で何が起きようかとしているか漸く認識したアリアは、杖を振りかざすキュアリーが視界に入るのとほぼ同時に制止の叫び声を上げた。

しかし、それは少し遅かった。振り下ろされる杖は急には止められない物なのである。そして、アリアの視線の先ではキュアリーが持った黒く光り輝く杖がまるでスローモーションでファリスへと振り下ろされていくように感じた。ファリスはその杖から身を攀じって逃れようとするが、その動きは杖に比べて遥かに遅い。


ピカッ~~~


杖の先端がファリスの頭上へと当たった瞬間、目が眩むような光が周囲に満ち、そしてその光が収まった先では・・・杖を振り下ろした姿のまま静止するキュアリーもっとも若干腰が引けているような奇妙な格好ではあるが、そして地面にはドクダミの花が咲き乱れ、その中央には横たわって目を回している一匹の狸の姿があった。


「や・・・やったよ!すごいよ!タヌキだよタヌキ!モフモフだよ!」


視線を杖の先に向けていたキュアリーは、杖を急いで仕舞って倒れているタヌキの首の後ろを摘まんでみんなへと見せびらかす。


「ふふふ、私だってやれば出来るのです!」


周囲の者達はキュアリーが言っている事の意味が解らず首を傾げているが、アリアは杖によって狸に生まれ変わったフェリスの事を言っているのが解った。それは単純に狸に姿が変わった事を喜んでいるのだという事を。


「キュ、キュアリー様、その・・・ファリスは元の姿に戻れるのでしょうか?」


「ファリス?」


アリアが恐る恐る尋ねるが、キュアリーはその言葉に首を傾げる。明らかにアリアが何を言っているのか解らないみたいなので、アリアはキュアリーがぶら提げている狸を指さした。


「ん?あ、あぁこのタヌキさんの事?」


「はい、一応それでもエルフの元老なので・・・」


「う~~~ん、種族改変しちゃってるから、気長にポコポコ叩いていたらいつかは戻るかも?」


アリアにそう返事をしながらも、キュアリーは先程までの笑顔とは真逆の苦々しい表情を浮かべていた。


「あ、あの、キュアリー様?」


キュアリーの機嫌を損ねたかと恐る恐る尋ねるアリアに、キュアリーは不機嫌な表情を浮かべて地面を杖でつっついた。


「なぜここでドクダミなの?ほら、薔薇とは言わないけどカスミ草とか色々あるじゃん」


狸が出た事には不服は無いキュアリーだが、どうやらその周りの花に不満がある様であった。


「き、貴様!今何をしたんだ!」


目の前で起きた出来事に思考が追い付かず呆然としていたアルト達は、キュアリー達の会話によって漸く思考が動き始めた。


「何って種族改変?」


「種族を改変だと・・・」


呆然としながらアルトはキュアリーの手元にぶら下げられている狸へと視線を向ける。そして、侮蔑の籠った表情を浮かべ、吐き捨てるように叫んだ。


「そんな子供だましに騙される私では無い!貴様らファリスを何処へやった!」


「どこって・・・これ?」


「ば、馬鹿にするな!そんな狸がどうした、とっとと捨てろ!貴様など・・・」


摘まんだ狸をアルトの方へ突き出したキュアリーに向け、アルトは罵詈雑言を叩きつけ始める。

しかし、アルトとは違いアルトの最後方にいたエルフ達は周囲に気取られない様にゆっくりと、本当にゆっくりとアルトの傍から遠ざかり始めている。そして、その事に気が付いているであろうアリア他の穏健派エルフ達もそれを指摘する事はしない。

誰しも、沈みかけの船に乗っていたい物では無いのだ。


「アルト様、いえ、アルト、貴方こそが今この瞬間にエルフの村、そして無関係であり守るべきエルフ達を危険にさらしている事に気が付いていないのですか?今この時点でこの村が無事である事がどれ程の奇跡であるかすら気が付かないと言うのですか?」


アリアはその視線をアルトへと向け反らす事は無い。しかし、その視線の中には以前のようなアルトを案ずるような、成長を望むような色は欠片も見られない。ただその瞳の中には侮蔑と絶望、後悔のいろがあった。


「そうですな、一度アルト殿もドラゴンの群れの前に磔になるとよろしい。そうすれば己の認識がいかに愚かであるか解りましょう」


「ですな、この私ももう是までかと思いました。いやはや漏らさなかっただけ褒めて欲しい物ですな」


アリアの後ろにいる穏健派の元老達も口々に軽口を叩くが、その視線は言葉とは比較にならないほどに冷たい。もっとも、つい先ほどまで命の危険に曝されていたのだから当たり前ではあるが。


「馬鹿者どもが、あれは貴様らに反省と立場を自覚させる為の物だ、貴様らを危険に曝したのはそこのハイエルフだ、そんな事も解らんのか」


憤るアルトに合わせてその支援者達も同様に声を上げる。

しかし、その声も次の瞬間沈黙に変わった。


ガルルルル~~~

ギャオォォォ~~~

ドシドシドシドシ・・・


村の入り口付近から重低音の明らかに大型の生き物と思われる鳴き声が響いてきた。

そして、村の入り口へと視線を向けるとドラゴンがゆっくりと村の中へと歩み入ってくるのが見えた。


「き、貴様達何をしているか!あのドラゴンを村に入れるな!」


「結界を張れ!此のままでは村が壊滅するぞ!」


アルト達はその光景に慌てて自分が引き連れてきた兵士達へと、そして周囲にいる兵士達にも指示を出した。そして、アルトが連れてきた兵士達がそれぞれに矢と魔法をドラゴンへと浴びせかけた。


「愚かな事」


「ば、馬鹿!退避、退避して!」


兵士達とドラゴンの間に挟まれていたキュアリーはその状況に溜息を吐く。

そんなキュアリーとは別に、アリア達は慌てて端の方へと走り出した。


そしてキュアリーはと言うと、アルト達へと視線を向けながらゆっくりと横へと道を開ける。その際に何かぶつぶつと呟いているのは呪文を唱えているのであろうか。


ドドドドン!

グオォ~~~~!


攻撃の着弾と同時に、ドラゴンの叫び声が響き渡る。そして、周囲を煙や砂ぼこりが舞、視界が一気に悪くなった。誰もが目を細め、状況を確認しようとする中、ドドドドという太鼓のリズムのような音が響き渡り、その後砂煙の中からドラゴン達が飛び出して来た。そのドラゴン達の目は、明らかに怒りを含んでいた。


「と、止めろ!止めるんだ!」


アルトの叫びと共に、兵士達から次々と攻撃が飛ぶ。しかし、その攻撃はドラゴンに出血を強いはする物の、一向に深手を負わせた様子は無かった。


「エアーシールド!」


アルトはとっさに目の前に風の防護壁を張る。ただ、そもそもエアーシールドは風の力で攻撃を反らすのがメインであり、攻撃を受け止める為の物では無い。その為、目の前に突進してきたドラゴンは、容易くそのエアーシールドを突破してきた。


パリ~~ン・・・ドスドスドス・・・パコ~~ン!


「ギャオ?」


「「「「「あっ!」」」」」


「うん、まぁそうなるよね」


皆が注視する中、華麗にシュートを決めたドラゴンは首を傾げているが、ドラゴンに蹴られたアルトは村の中心へと錐もみしながら飛んで行った。


「「「アルト様~~~」」」


慌てて走り出すアルトの取り巻き達だが、その後ろ姿すら視界に入っていないアリア達はただただ崩壊していく村の姿に口をポカ~~ンと開けて突っ立っているだけであった。


ドドドン、ドガ~~ン、ドシ~~ン


「あ、火は噴いちゃだめだからね!森が燃えたらマナが減るからね!」


「ガオ!」


チロッと口の周りに炎を見せたドラゴンに対し、キュアリーはすかさず注意を飛ばす。そのキュアリーの言葉に、ドラゴンはピシッっと片手を上げて了承の意を示した。

ドシドシと目の前の家屋、建造物、木々を蹴倒しながら、ドラゴン達は前方へと進んで行く。ただ、特に目的地がある訳では無い為、誰もどこまでこの破壊が広がるのか予想できていなかった。そのドラゴン達は結局村の中心にある広場で停止したのだが、それは兵士達の力でもなく、キュアリーの命令でもなく、広場の中心にあった屋台、露店の野菜や果物のおかげであった。


「・・・これ、どうすれば良いのでしょう?」


「「「・・・・・」」」


目の前の瓦礫の山と化した家々を見ながら、アリアは力なく誰に尋ねるでもなく呟いた。

それをすぐ横で聞いていたサラサ達ではあるが、勿論その問いかけに答える答えを持っていなかった。


「さて、ルル、ルルパパ、帰ろうか」


「ヴォン!」


チラリと遠くに見えるドラゴン達へと視線を向けたが、その事に特に興味を惹かれる訳もないキュアリーは、傍らにいるルルと、ルルパパ、そしてルーンウルフ達へと視線を向けて倒壊した村の入り口へと歩きはじめる。

その様子に気が付いたアリア達は、今まで呆けていた頭を振り、何とか思考回路を正常に戻すとキュアリーへと追いすがるのだった。


「ま、まってください!このまま放置は酷いです!」


「お願いします、助けてください!」


アリアとサラサはキュアリーの前へと回り込み、膝をついて懇願するが、キュアリーは明らかにめんどくさそうな表情を浮かべる。


「え~~~、私これ以上関わらない方が良い気がするんだけど」


「何を言ってるんですか!このドラゴンや魔獣達がエルフを襲わないのはキュアリー様がいるからです!」


「そうですよ!今この状況で魔獣達が住民を襲い始めたら、力ない者達が多数犠牲になります!」


「「お願いします!力を貸してください!」」


アリアとサラサは二人そろって土下座をする。その姿を見ながらも、キュアリーの表情には明らかにメンドクサイなぁという思いがありありと見えた。


「いやぁこれは凄いですね。これって・・・」


その時、村の入り口から中を窺う様に大勢の人達が覗き込んでいるのが見えた。

そして、その先頭にはユーリ達の姿も見える。魔獣達に遅れて到着したユーリ達一行が漸く到着したのだ。

もっとも、ドラゴンや魔獣達から明らかに距離を置いての到着だと思われる。


「あ、あそこにドラゴン達がいるわ!これって大丈夫なのか?」


「魔獣っていうかあれ肉食だろ?草食系は来る途中で草食べてたよな?」


ワイワイガヤガヤ騒いではいるが、彼等は一向に村へと入ってくる様子は無い。


「貴方達そこで何してるの?」


「こんな状態ですが村への立ち入りに許可が要るのではないかと、私達は難民ですから」


問いかけるキュアリーへユーリはそう答えた。


「そ、そうですね、一応立ち入り許可を正式に出さないとなのですが、今はこの状況なので門の前で一度野営をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「今この村の決定機関が麻痺しているので、出来るだけ早く対応しますので」


アリアの傍にいた元老の一人も、同様に答えを返す。

ユーリ達も無理を言うつもりは無いようで、アリア達の提案を了承し、野営の準備を始めた。

しかし、キュアリーはなぜかアリア達に引っ張られながら村の中心へと向かっていた。


「ドラゴンに撥ねられましたから今アルトは治療中だと思います。ですから、今のうちに私達で村の行政機関を掌握しなければ」


「ファリスもいなくなった・・・ってそう言えばあのタヌキは何処行きました?」


その後のドタバタですっかり忘れ去られてしまったファリスタヌキは、気が付けば周りから居なくなっている。


「まさか踏み潰された?」


「魔獣に食われた?」


皆が慌てて周囲に視線を向けるが一見してその姿は見当たらない。


「どうしま・・・え?」


アリアがこのまま放置しても良いのか悩みながらキュアリーへと視線を向け、その傍らにいるルルへと視線を落とすと、ルルが何か茶色い物を咥えているのが見えた。そして、目を凝らしてその茶色の物を見ると、それはファリスタヌキであった。


「・・・あの、キュアリー様、そのタヌキはどうされるので?」


「あ、うん、モフモフが出た記念に飼おうかなって、ほらルルも気に入ったみたいだし?」


明るい返事の内容とは裏腹に、ルルに咥えられているタヌキは涎でベタベタになっている気がする。


「その・・・気に入られてはいる様ですが、その、餌と思われてませんか?」


「え?・・・・・・ルル、それ食べちゃダメだからね?」


「クゥ~~ン」


咥えられたタヌキと、ルルの様子、表情を見たキュアリーが、そっとルルへと注意をすると、ルルは悲しそうな瞳でキュアリーを見返すのだった。

投稿遅れました。申し訳ありませんm(_ _)m

中々書く時間が取れなくてなのです。

今週の予定は、月:コルト、火、水、木:イツキ、金:コルトで投稿の予定です!

予定は未定なのです!(マテ

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