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1-33:人の夢は儚いですね

すいません、1-34ではなく33でしたので訂正いたしました。

本文の変更はありません。

打ちのめされ倒れる騎士達を、村人達が慌てて縛り上げる。

コラルも痺れて動けない者に対し、止めを刺すことは無く気絶させただけで留めた為50人の捕虜が生まれた。


「こんなに捕虜にしても困らないか?」


村人達が不安そうに男達を見る。それとは逆に女達は騎士達の乗ってきた馬を見て表情を緩めていた。


「これだけ馬がいれば、移民も楽になるよね」


「歩いての避難に不安が有って反対してたけど、これなら荷物も結構持ち出せるよね」


「どのみち結界が直らないんじゃここに残る事は出来ない」


男とは違い女達は既に決めていたであろう計画を破棄し、今後の展開を含めて意識を切り替えていた。


「女性ってつよいよね」


「しかし、こちらもあまり時間に余裕が無くなって来ましたね。とりあえずこの男達から情報を取りますのでキュアリー様はこの女達を連れてってください。お前たちはこの連中を見張っていろ」


コラルは、キュアリーの呟きに答えながらもキュアリーへと指示を出した。そして縛られている騎士達を見ながら身分が高いであろうと思われる男を数人選び近くの民家へと引きずって行った。


「気絶してる人をどうやって運べと?」


キュアリーがそう呟くが、答えるべきコラルはさっさと移動していたのだった。


結局、周りにいたおばちゃん達の協力の元に集会場へと女性騎士達を移動させた。

当初、男達が目の色を変えて志願してきたのだったが、その血走った眼付が気に入らなかったキュアリーによって無情にも却下されたのだった。


「ありがと、そこのお婆さんの横に並べてくれる?」


未だスヤスヤと眠るお婆さんを指差すと、おばさん達は驚きの声を上げた。


「あら、フリカ御婆ちゃんだわ。何カ月ぶりに見たのかしら」


「種族変換組にいたのねぇ、気が付かなかったわ」


女性騎士を寝かせながら口々に話し始めるおばさん達を宥めながらキュアリーは追加の指示を出す。


「あ、それと、おそらく邪魔になりそうなので鎧を外しちゃってください。今はスリープで寝てるのでちょっとやそっとで起きる事はありませんから」


「ほう、まぁそれならちゃっちゃと外すかね。鎧なんざ外したことなんかないがね」


おばさん達はそんな事を言いながらも素早く5人の鎧を外し、下着だけの姿にする。


「下着はいいのかい?」


「はい、種族を換えた時に鎧が邪魔になりそうだったので」


「あら、何の種族にするの?」


「サキュバスです」


「・・・・・えっ?」


「ですから、サキュバスですよ?」


「「「なんだってそんな物騒な種族にするの!!」」」


おばさん達が揃って驚きの?抗議の?声を上げる。

そして、事情をしっている者達の視線が自然とお婆さんへと向かった。


「あああ~~もしかしてフリカ婆さんのせい?」


「あ、ありうる!えっとなんだっけ?ピッチピチだっけ?」


「ボンキュッボンじゃない?」


おばさん達がまたもや姦しく騒ぎ出す。

どうやらフリカ御婆さんは昔からピチピチのボンキュボンに憧れていたらしい。

子供の頃は、いつか自分はボンキュボンになるんだっと周りに告げていたと、まさにキュアリーにとっていらない情報がどんどん入ってくる。

これ以上情報に惑わされない様に、周りを出来るだけ意識しないように淡々と種族変換を行おうとして、ここで先程からやけに男達が沈黙を守っている事に気が付いた。そして男達へと視線を向ける・・・と、そこにはギラギラした目付きで女性騎士達を見る男達がいたのだった。


「こら!あんたたち外に出てなさい!」


視線に気が付いたおばさん達も一斉に反応する。そして、すごすごと外へと退出する男達を特に気にした様子の無いキュアリーが、なにやら厳しい眼差しで一人の女性騎士を見る。


「むむ、サラサ、この人はちょっと避けといてもらっていい?」


キュアリーの言葉に、サラサは示された女性騎士を見る。そして、なんとも言えないような表情でキュアリーを見た。


「あの、だいたい予想はつきますが、避ける理由は・・・」


「うん、胸!やっぱりイメージを阻害するものは出来るだけ外しときたいの」


サラサの目の前には、実に親近感の湧く姿があった。


「はぁ」


その言葉と共に、その女性騎士を脇へと退かした。その際に何気に自分の胸に視線を向けた事に気が付いた者はいなかった。その後、キュアリーはじっと他の女性騎士達を見ながらイメージを固め、その後スキルを発動した。

今までと同様に種族変換の対象となった者達を光が包み込み、その光が収まると共に目の前には実にサキュバスらいし恰好をした女性達が眠っていた。


「うん、成功!やっぱりサキュバスってこういう感じ・・・あ、えっと・・・」


黒い極小面積の衣装を着けた女性達、まさにキュアリーのイメージがそのまま形になったような姿がそこにあった。ある一点以外は・・・

その一点を見た後キュアリーは視線を彷徨わせる。そして、明らかに顔が引きつっていたのだった。


「キュアリー様、その、なんといいますか・・・試合に負けて勝負に勝つ?」


「いや、この場合は負け負けじゃない?」

「フリカ婆さんにとっちゃボンキュッボンは儚い夢なんだねぇ」

「だねぇ、フリカ婆さんって負け続きだねぇ」


周りのおばちゃん達どころか、この場にいる者の視線は一人のサキュバスへと注がれていた。

その視線の先には実にロリロリしたサキュバスちゃんがスースーと寝息を立てていたのだった。


「えっとね、世の中には質量保存の法則っていうのがあってね・・・」


サキュバスちゃんを見た後、みんなの視線が一気にキュアリーへと向かった。そして、その視線にたじろいだキュアリーが何やら言い訳を始めるがそれを聞いている者は誰もいなかった。


「とにかく、この露出の多い女達は隔離しとかないとね、男達の目に毒にしかならないよ」


「だね、今はまずこの村を脱出しないとだからね」


おばちゃん達がいつの間にか場を仕切り始める。そして、そのおばちゃん達の言葉を聞きとがめたユスティーナが慌てて言葉の意味を問いただすのだった。


「そんな!村の結界が壊れたなど!マナが無くなれば弱き者達から影響が出てしまうというのに!」


ユスティーナの叫び声を聞きつけて集会場の外へと出ていた男達も慌てて中へと駆け込んでくる。

そして、同様の説明を受け騒ぎ出したのだった。そして、ああでもない、こうでもないとワイワイと騒ぎ出す面々におばちゃん達の雷が落ちた。


「今そんな事ぎゃぁぎゃぁ言ってる暇なんかないでしょ!」


「だね、ほら巫女様さっさと村の脱出準備をしなさいな、この村はもう終わりだよ」


「いや、しかし脱出と言っても・・・」


「はっ!こうなったらエルフだろうがサキュバスだろうがなってやろうじゃないか」


「だね、フリカ婆さんを見れば、とにかく若返りは出来るみたいだしね」


「まぁこの目で見たし種族が変わっても問題ないさね、それどころかまた恋ができるよ、ひっひっひ」


「いや、あんたその笑い引くって・・・」


おばちゃん旋風が吹き荒れ、いつの間にかこの場の指揮を執り始めたおばちゃん達に誰もが逆らう事が出来なかった。そして、予想以上に順調に脱出の指示が村全体に行きわたったのだった。

そして、キュアリー達はただ”ぽか~~ん”とその様子を眺めていた。


「いや、真面目におばちゃん達ってすごいですね」


「うん、なんでこの人達最初っから動かなかったんだろ?」


「ですよね、そしたら色々な事があっさり決まったかもですよね」


「ははは、そりゃ無理ってもんさね、あたし達は学がないからね、だから頭のいい人の指示にしたがうのさ。ただこうするって決まった後でグジグジしててもしょうがないからね」


キュアリー達の会話に、突然声を掛けてきたのは先程までおばちゃん達の中心で指示を出していた女性だった。


「でも、今回種族変換は選ばれなかったんですよね?」


「まあね、種族が変わるって言われたってね、普通は騙されるもんかって思っちゃうさ。でもこの目で見たし、それ以上にこの村にもう居られないとなっちゃ意見も変わるってもんさね。ああ、そういえば遅くなったね、あたしゃアダーシャってもんさね、これから色々迷惑を掛けるかもしれないがよろしくね」


そう言うとバチっと音がする様なウインクをかましてくる。

恰幅の良い姿とあいまってまさに女傑といった雰囲気を漂わせていた。


「最初っからこの人が交渉に出てきた方がよかった気がする」


サラサの言葉に一同頷くしかなかった。

そんな会話の中、種族改変を行った人達が次第に目を覚まし始めた。そして、口々に変わってしまった自分の姿に驚き、又周りにいる自分の家族の姿に更なる驚きの声を上げていた。

その様子を見ている限り、大人も子供も家族が自分の周りにいる、そして種族が変わっても姿形が依然と極端に変わったわけではなく判別可能な事から、大きな混乱も拒絶の雰囲気もなく予想以上に穏やかであった為にキュアリー達は安堵の溜息を吐いた。

しかし、その比較的穏やかに流れ始めた空気の中、子供の叫び声が響き渡った。


「うわ~~~ん!!!」


その声のした方向へと視線を向けると、先程サキュバスへと種族の変わった者達を隔離した部屋からであった。


「あ、これはあれね、あの部屋で子供って一人しかいないし~」


サラサの声に、顔を引き攣らせたキュアリーがそっと視線を外し、集会場の外へと繋がる扉へと歩き出す。


「えっと、そういえば男の捕虜達はどうなったかなぁ」


キュアリーの呟きにしてはやけに大きな声が聞こえた。

そして、その様子に気がついている他の面々もその様子を生暖かく見守っていた。


「ちんちくりんは嫌だ~~~ボンキュボンがいいの~~~」


部屋からはそんな叫び声が響き渡った。

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