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1-32:鴨がネギ持って・・・葱はどこ?

キュアリーがマナの状況を見ながら結界の種類を変更する。

これによって生き物の出入りが可能になった。


「う~ん、これで虫や爬虫類の出入りは制限できる・・・はず?」


そう呟きながら漸くサラサ達を伴い集会場を後にしたのだった。

そして、笛の音の聞こえる村の入り口へと移動した。

するとそこには人の塊が出来ており、その中で何か争いが起きているのは解るが内容を理解する事は見ただけでは解らなかった。


「なんでしょう?あそこから笛の音が聞こえているのは解りますが」


「笛の音を止めようとしている者と、それを防ごうとしている者で争っているようですね」


群衆の叫びや怒鳴り声を聴き、コラルがサラサの疑問に答えた。

そして、更には群衆は結界を早く修復しようとする者とそれを阻もうとする者で分かれているようだった。


「何をしている!」


コラル達の声に反応し、数人の男達が明らかに敵意を向けて武器を構えた。

その様子にコラル達も同様に剣を抜き放つ。

その為、多くの村人が慌てたようにその場から逃げ出した。


「これ以上こちらが譲歩すると思うなよ、我らに武器を向けた事を後悔するがいい」


「うるさい!汚れの獣人ごときが!」

「最初っからてめえら亜人どもが気に入らなかったんだ!くたばれ!」

「死ね!」


コラルの言葉に反応し、3人の男達が剣を手に襲いかかってきた。しかし、その男達の剣がコラルへと届こうかという瞬間、逆にコラルは3人の男達の間を走り抜けていた。


「雑魚どもがいきがるな」


コラルは吐き捨てるように呟き、残る男達を見る。そして、そんなコラルの背後では3人の男達だった物が、首から上を失い血を吹き出しながら音を立てて倒れ込んでいった。


「「「ソート!カイン!シマフ!」」」


「亜人どもめ!」


叫び剣を抜く男達。しかし、明らかに武器を向けながらもその剣先は恐怖に震えている。

その様子を見てキュアリーは溜息を吐いた。


「コラル、鬱憤が溜まってたのは解るけど、この程度の者達は殺す価値もないのでは?あのコッカー達ですら殺さなかったのに」


「そうです、コラルは短気すぎです。それに危なくキュアリー様や私に血がかかるところでした」


異議を申し立てるキュアリー達を気にした様子もなく、コラルは更に男達へと威圧を強めていく。


「キュアリー様、もうあまり時間がない。これ以上のイレギュラー要素は早々に排除するべきです」


頑として譲らず、コラルは明らかに目の前にいる男達を切り捨てようとしている。そして、その事に男達は漸く気が付いたのか、又は自分達では絶対に叶わない事を感じたのか叫び声を上げ村の外へと逃走した。


「はぁ、まぁ結果オーライってところかな?で、結界は結局あいつらが壊したの?あと、さっきまでの笛はなんの意味があるの?」


キュアリーの問いかけに、遠巻きに見ている者達から返事が来る。


「結界を壊したのはあいつらです!」

「あと、笛はユーステリア軍に場所を知らせるためだとか」

「早く結界を直さなければ!」


そうして、恐らく結界のかなめとなっていた物へと取り付く男達であったが、その後に絶望的な声を上げる。


「ああ・・・結界の魔法陣が破壊されている!」


キュアリー達も覗き込むと、祠の様な物が壊され、中に魔法陣が書かれていたと思われるプレートが砕けているのが見えた。また、そのプレートに設置されると思われる結界石も同様に真っ二つに割れていた。


「この魔法陣は・・・増幅?ふ~ん、それだけじゃないみたいね、他にも何か刻まれてたっぽいけどここら辺は判別出来ないほど砕けてるね」


「そうですね、これを復元するのはちっと難しそうですね」


そう告げるキュアリー達、そして村人達はただ呆然と魔法陣であった者を見つめるのだった。

そして、その様子を遠巻きに覗いていた者達が、ちらほらと集まり始めた。

その者達はこのまま結界の中で生きることを選択した者達であった。


「な、なぁ結界はどうなったんだ?」


「壊れたのか?で、でも直るんだよな?」


男達が口々に尋ねる。そんな中、今まで魔法陣を見つめていた男が答える。


「結界は壊れた。結界の基礎である魔法陣がここまで砕けてしまっては、もう直すことは無理だ」


「そ、そんな、それじゃこの後どう過ごせばいいの?結界が無ければ追手達の目を誤魔化すことも出来ないのよ」


判断における前提条件の崩壊、それによって思考停止に陥った者達がそれぞれ呆然と結界石のあった場所を見る。しかし、まさにその視線の先に何かが動くのを見咎めて叫び声を上げた。


「ユ、ユーステリア軍だ!」


「くそ!笛の音に引き寄せられたか」


「馬鹿どもが」


村人達の視線の先、森の切れ目と思われる場所より一騎、また一騎と数を増やし現れる騎兵の姿があった。

そして、現れた騎兵は勢いのまま雪崩込む事は無く、こちらへと視線を向けながらも森の出口で隊列を作る。


「門を閉じろ!」

「警報を鳴らせ!急げ!」


叫び声が響き渡る。ある意味流石はユーステリアと戦い生き残った者達といった所か、敵を認識すると同時に一気に意識が戦闘へと切り替わっている。

男だけでなく、女達も家の中へと飛び込み武器を手に飛び出してくる。


「弓だ!弓隊を集めろ!」

「魔法は効かないと思え!」


村の奥より次々と人が集まり飛び出してくる。

その様子を驚きと共にキュアリー達は眺めていた。


「これは、驚きですね」


「ですね、慌てふためいてあっさりと蹂躙されるイメージしか無かったです」


「うん、なんか情けないイメージしか無かったよね」


門を閉じ低いながらも作られている村の柵を利用した防衛体制、これを瞬く間に作り上げていく。誰もが指示された訳ではなく、それでいてしっかりと役割分担がなされている。この事に驚きながらも、それでいてもキュアリー達は正規の騎兵を阻むのは厳しいだろうと判断していた。


「圧倒的に数が少ない、最悪のタイミングだね。種族転換で寝てる人達がいればまだ何とかなったかもだけどね」


「で、どうされます?」


「まぁ、どっちみちあたし達の敵ではあるんだよね、あの連中は」


キュアリーの視線の先ではその後も数を増やしていった凡そ50騎程の騎馬をとらえていた。


「厳しいな、魔法がどこまで発動するかか・・・」


「マナが厳しい、消費の少ない付与でなんとかする」


ユーステリア側はこちら側の状態を気にする事無く、ある意味余裕を感じる動きでもって並足にて村へと近づいてきた。


「どうされます?即戦闘といった感じではなさそうですが?」


「そうだな、とにかく俺達の姿を見られない方が良いのだろうが今更隠れても遅いだろう」


サラサ達の会話の最中にもキュアリーは近づいてくるユーステリア兵をジッと見つめていた。


「うん、良さそうなのが・・・・ある意味タイムリーな登場だね」


ブツブツと呟きながら頷くキュアリーに気が付き、サラサは怪訝な表情で尋ねた。


「あの?どうかされましたか?」


「え?ほら、あの後ろの方にいる人、顔はよく見えないけどスタイル的に丁度良くない?」


「え?」


キュアリーの指さす方向を見ると、そこには明らかに女性的なラインの鎧を身に着けた兵士がいた。


「ああ、つまり生贄決定ってことですか?」


「うん、ほらボンキュッボンって感じじゃない?」


「・・・周りの贅肉寄せてんじゃないです?」


サラサは何やら妍のある物言いでその兵士を睨み付ける。

しかし、コラルはその兵士のスタイルを見て口笛を鳴らし、サラサから蹴飛ばされた。


「蹴るな!しかし、他の兵士と明らかに一線画してますね、貴族か、教会関係者か」


そんな事をワイワイと話しているキュアリー達を他所に、兵士の一団は村の手前で足を止めた。


「このような場所に村が有るとは聞いておらんが、我々は貴様らに今関わっている余裕はない。見逃してやるから情報を寄越せ」


先頭にいた兵士が村へと声を掛ける。そして、村人たちは戸惑った様子で顔を見合わせた。


「我々は14、5歳の少年達を探している。この近辺へ来ている事までは解っている。何か知っている者はおらんか?」


「14、5歳?」


「少年?人狩か?」


村人達の声に意味を理解していない様子に気が付き、男は改めて言いなおす。


「勘違いしないでくれ、我々は人探しをしている。村に危害を加える積りはない」


「ここ最近は村の者以外見かけた事は無いです。騎士様達がお探しの方も同様です」


村の男の言葉に、騎士は顔を顰める。


「此方へ最近来た馬車と遭遇している事は解っている。隠すとお互い為にならんが?」


その騎士は殺気を込めて村人達を睨み付けた。そして、その言葉に動揺した村人の幾人かが思わずキュアリー達の方へと視線を向けてしまう。

そして、その動きに逸早く気が付いた男達がキュアリー達へと視線を向けた。


「ふむ、そこにいる者達が何やら情報を持っていそうだな」


キュアリー達は思わず舌打ちをしそうになった。明らかにかまかけである。

しかし、この村人達の動きでキュアリー達の関与が疑われることとなった。


「残念ながらご希望の情報は持っておりません。彼らが私達を見たのは私達がこの村に2日程前に到着したからでしょう」


「ふむ、それは後程詳しく訪ねるとして、いつまで我々をこの様な場所に止め置く気だ?そろそろ村の中へと入れてもらいたいのだが」


男のその言葉に若干弛緩しかけていた空気が一気に緊張を帯びた。

村人達はしきりと騎士達全体へと視線を向ける。恐らく今この場で戦闘を始めた際のリスクを確認しているのだろう。

その事はもちろん男達も気が付いていた。

そして、まさに村人達が言葉を発しようとした時二つの事柄が発生したのだった。


「「刺突三連!」」


男の背後にいた二人の騎兵が一気に前へと踏み出し、手に持った槍で村の門の破壊を試みた。


「サンダーレイン」


キュアリーが手のひらを前方へとかざし、男達へと雷の雨を降らせた。

そして、その後はコラルが武器を手に前へと走り出し、門横の柵を飛び越えてまだ痺れが抜けず身動きの取れない男達へと無慈悲の刃を叩きこむ。


「くぅ・・・スキル・・・だと・・・なぜ、発動・・・するのだ・・・」


殆どの騎士と同様サンダーレインによって馬上から叩き落とされた男が、今まで以上に動揺の言葉を噤む。


「なぜスキルが使えないと思ったの?マナがないから?ないなら作ればいいじゃない。ホ~ホッホッホ」


キュアリーはワザとらしく挑発するように胸をそらせ手のひらで口元を隠して高笑いをする。


「ねぇこれ第三者が見ると明らかに俺たちが悪役じゃね?」


「コラル、あんた何言ってんのよ、第三者が見なくてもあたしらが悪役だって」


サラサとコラルは顔を見合わせた後に高笑いを続けるキュアリーを眺めた。

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