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1-31:種族改変

集会場におけるドタバタ騒動がとりあえず収束へと向かう。

そして、結界に守られた集会場はとりあえずの静寂に包まれていた。


「キュアリー様、落ち着かれましたか?」


アリアが心配そうに座り込んでいるキュアリーへと視線を向ける。

しかし、その視線の先のキュアリーは何か考え込んでいる様子でこれといった反応は無かった。

それでもアリアはとりあえずパニックになっている感じではない為、家畜を隅に寄せるなどの指示を出し始める。

一方、コラルやサラサは倒れていた男達をどうするかで悩んでいた。


「拘束しようにも手足が折れてちゃ出来ないぞ?どうするよこれ」


「そうですね、部屋の隅に放っておけば良くないですか?あ、でも勝手に自分で治癒されても困るので薬など所持品の確認は必要ですね」


その後二人はゴソゴソ所持品を確認した後、本当に部屋の隅へとコッカー達を集めただけで放置したのだった。

この間集会場にいた者達は、そのほとんどが窓から外の様子を伺っていた。

そして、結界に阻まれた生き物達はその結界によって集会場からのマナの流れが無くなったために散り散りに散って行った。その為、先程まで見えなかった村の様子が見えるようになり、今は広場の先で慌てて走り回る村人達の姿が見える。


「笛の音が止まないね」


「そうだな、しかし結界を壊したのがあいつらだとすればもう止んでいてもおかしくないのだが」


「まさかこうも早く侵入者が現れるとは思わないのだが」


自分を納得させるように話しながらも、それでも不安そうに集会場の外へと視線を向ける事の出来ない村人達。

そんな中、漸く復活したキュアリーが立ち上がった。


「そっか、種族転換かけたんだっけ」


何やら独り言をブツブツ呟きながらもコッカー達の方へと歩き始めた。そして、アリア達はその様子を不思議そうに眺める。


「何かなさるのでしょうか?」


「さぁ?キュアリー様の発想はそうですね・・・ある意味神掛かってみえますから」


アリアは暗に理解不能と言いたげな言葉を返す。

そして、コッカー達の下へとたどり着いたキュアリーは、杖を大きく振りかぶって何かを唱えた。

光がコッカー達を包み、誰もが視線をそらせた。そして、数秒後に漸く光が収まった時、その先には4人のコボルトが倒れていた。

ちなみに、改変の影響なのか、それともキュアリーが併せて治癒したのかコボルトはみな傷一つない状態であった。


「うん、まぁこれで本人達も無事亜人になったね。亜人差別もこれでなくなるかな」


他の面々は実際に種族改変にて亜人へと変わる姿を見て、驚きと興奮に包まれ、またコボルトの姿に恐怖を感じていた。


「こ、これが種族変換?」


「本当に・・・」


「コボルトだ・・・」


周りでざわめきが広がる。


「あの、キュアリー様、意図してコボルトにされたのですか?」


「うん、名前的になんとなくコボルトかな?って思ったことは否定しないよ?」


「「「?」」」


キュアリーの言葉に、皆が意味が解らず首を傾げる。しかし、その様子を特に気にする事無くキュアリーは集まっている人たちへと声を掛ける。


「とりあえず、自分が今まで馬鹿にしていた亜人になっちゃったんだから、これ以上馬鹿騒ぎはしない・・・かな?」


「ところで、このコボルトになった者達の危険性は?」


「どうかな?普通のコボルト並み?」


その言葉にその場にいた者達が慌ててコッカー達を縛り上げ始めた。


「ん?」


「普通の者達にとってコボルトはそれこそ普通に脅威です!」


その言葉に、キュアリーはきょとんとした眼差しで作業者達を眺める。


「う~ん、ルル悪いけど見張ってて」


「ヴォン!」


キュアリーの指示でトテトテとルルが縛られた男達へと歩いて行った。

そんな最中にアリアがキュアリーへと声を掛ける。


「キュアリー様、もし宜しければ他の者の種族改変を早めませんか?」


「それはなぜ?」


「村自体の結界が壊れたのです、早急に村を出る必要があると思います」


アリアの言葉に他の者達からも同意の意見が出る。

それは、村の者達からも同様であった。


「私共も既に覚悟は出来ております。私達だけでは用意する事の出来なかった未来が、キュアリー様のおかげで用意できるのです」


「我々も気が付いていたのです。イグリアが負けて国王が殺された時に」


「そうですね、ましてやイグリアの仲間であった者達に裏切り者がいたっと知った時に」


「逃げても未来は無い、解ってはいたのです。でも、家族の為に逃げるしかなかった」


思い思いの言葉が次々に綴られていく。ただ、話す者達の表情には明るい未来への希望があるような気がした。


「わかった、それじゃ希望の種族単位で集まってくれる?あと、家族は出来るだけ同じ種族が良いと思う」


キュアリーの言葉に、ぞろぞろと人が動き出し集団を作る。そして、その中で最大の集団へとキュアリーは移動した。


「ここはエルフへの希望者です」


サラサが集団の希望を聞きキュアリーへと伝えた。そして、キュアリーは集団を一通り見渡して、最後の確認を行う。


「種族の変更は何度も出来ません。あと、今までの経験上ですが忌避感や緊張などが強い場合上手く変換が出来ない場合があります。その為、まずスリープで寝て戴く事にします。サラサお願いできますか?」


「はい、今回はこの部屋全体にスリープを掛けます。みなさんは次に目覚めた時に新たな生活が待っています。みなさんまず床に横たわってください」


サラサの指示の下、みなが床へと横たわる。そして、それを確認してサラサはスリープで眠らせて行った。


「キュアリー様、後は宜しくお願いします」


「うん、種族改変エルフ!」


杖を振り上げ呪文を唱える。そして、杖から広がる光にが床に眠る者達を包み一際明るく輝いた後には、エルフへと姿を変えた集団が眠っていた。


「すごいですね、本当にエルフへと姿が変わっています」


サラサは、床に眠る一団を見て驚きの声を上げる。

そして、コラル達は一人一人の状態を確認して、全員が問題なくエルフへと変わっている事を確認した。


「まぁね、ただ見た目だけではなく種族事態を変更すると所持してるスキルも、レベルも初期に戻っちゃうけどね。ある意味キャラ作り直しってことだから」


「キャラ作り直し?」


「え?レベル戻っちゃうんですか?」


アリア達も驚きの声を上げる。


「うん、それに種族ごとに持てるスキルや持てないスキルもあるでしょ?そういった物も関係するんだろうしね」


「だろうしって・・・もしかしてあんまりキュアリー様も理解してないとか?」


「うん、だって魔法とかも大体そんな物でしょ?使えればいいのよ」


キュアリーの言葉にアリア達は複雑な表情を浮かべる。

しかし、それとは別にキュアリーは淡々と種族の変換を行っていった。


「この集団は猫人ですね」


「うん、わかった。その女の子を前に出して」


「あ、はい。その・・・さっきから一人を前に出されたり、移動されたりされてますが何か理由があるのですか?」


「ああ、うん、希望種族が一番イメージしやすい人を前に出してもらってるの。呪文時に種族名を入れてるのもその方がイメージしやすいからだしね」


「なるほど、それではイメージが狂うと種族がおかしくなると?」


「たぶんね、今までにもあったけどどう見てもエルフに見えない人をエルフには出来なかったしね~、まぁイメージだから太った男の人はエルフにはできたけどね・・・」


「はぁ、まぁ見本がいますからね、ある意味」


そんな事を言いながらも次々に寝ている人達を希望種族へと換えていく。しかし、もう残り一名という所で大きな障害が立ちふさがったのだった。


「ごめん、もう一回聞いてもいい?」


「はい、希望種族はサキュバスです。ちなみに、備考でムチムチプリンプリンの小悪魔風希望と入ってます」


サラサの言葉にキュアリーの思考が停止した。思考どころか体全体がフリーズしたと言ってもいい。

そして、サラサ達も同様にその対象者を見つめる。

皆の視線を一身に集めながらもスヤスヤと安らかな眠る女性がいた。

推定身長は150センチ以下と小柄で、銀色の髪を綺麗にまとめている。

手足は希望とは真反対に今にも折れそうなくらいに細い。

更には、ムチムチプリンプリンというよりはシワシワペシャンペシャンといったところであろうか?


「えっと・・・このおばあちゃんが小悪魔風サキュバス?」


対象者は推定80歳は超えている、それどころか100歳は行ってるんではないかという老女と思われた。


「えっと、さっきも話した通りイメージが重要なのよね、で、これってなんって難題なの?」


「あ~~、その~~、追加情報宜しいでしょうか?」


「ん?」


「希望種族を聞いたとき、なぜサキュバスが良いかと尋ねたのですがどうも小柄で痩せぎすで、長い生涯結局モテ期も来ず、独身で終わったそうです。それで、新たに生まれ変われるならと思い切ってサキュバスにと・・・」


「むぅぅ~~~~~」


キュアリーの頬を特大の汗が零れ落ちた。

更にはサラサもいらない情報をキュアリーへと補充してくる。


「その、この御婆さんずっと一人でみえたんですよね、他の家族達と一切会話する事もなく。もしかして相談できる相手とかもいなかったのではないでしょうか?」


「だなぁ、しかもサキュバス希望って中々口にできずに最後はこの要望を書いた紙を渡してきて、あとはずっと下向いてたしなぁ」


「う~~あ~~~、なんかぜんぜんサキュバスのイメージの欠片も無いんですけど!」


キュアリーは頭を抱えてしゃがみ込んだ。


「キュアリー様、他の者を見ながら種族を変更すればいかがでしょう?」


「イメージした人を起点に発動するので、無理!それに連続して種族変えると壊れる」


「壊れる?」


「うん、なんていうのかな?不定形生物Z?みたいなのが出来た」


「「「・・・・・・・」」」


キュアリーの過去形の言葉に恐怖を覚える一同、それに対し更にはキュアリーが今いるメンバーを見て溜息をつく。


「まだ変更していないメンバーでムチムチプリンプリンはいないしねぇ」


「「「酷!」」」


「我々エルフは清楚可憐が信条です!あんな牛乳(ウシチチなんて!」


「そうです!牛乳ウシチチなどダークエルフと間違えられます!あんな下品な連中など!」


何やら別の炎にガソリンを注いでしまったキュアリーに対し、エルフメンバーの抗議が殺到する。

溜息を再度吐きながらもキュアリーが憐みの視線を向けたところ、更なる爆弾が投下された。


「そういうキュアリー様だってお仲間じゃないですか!」


「!!!あたしは美乳なの!これでもCはあるんだから!」


「見栄って大事ですよね」


「ですね~Cですか・・・ふっ」


「うきゃ~~~このトリプルAどもが!」


「「「!!!!」」」


まさに一種触発、それぞれ思い思いに武器を手に掛けようと動き始めた時、あきれたようにコラル達が会話に割り込んできた。


「そんな事よりどうするかだろ?」


「「「「そんな事!!!!」」」」


コラルは一斉に振り向くキュアリー達に思わず尻込みをする。

しかし、それでも引き下がる事なく意見を述べた。


「村の中でイメージ出来そうなのを捕まえれば良い、さっきから鳴り響く笛の音も気になるし俺らで偵察してくる」


「わかった、わたしも行く。キュアリー様、アリア様はここでお待ちください」


そういうとコラルとサラサが集会場を飛び出して行った。


「あ~~~~逃げた!っていうか・・・」


ドゴン!っという何かがぶつかる音が外から聞こえる。そこには結界にぶつかりひっくり返ったコラルとサラサがいた。


「結界解かないと出れないって・・・おそかったね」


ある意味故意なのかうっすらと微笑を浮かべたキュアリーがいたが、それに気が付いた者は幸い誰もいなかった。


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