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1-21:マナの欠乏

アリアは砦前の惨状を見た後、サラサとコラルを偵察へと向かわせると共に馬車をゆっくりと進めるように指示をした。


「これは・・・すごいですね」


「100人以上の者が倒れていますね。これをキュアリー様が行ったのでしょうか」


前方を見回しながらアリアとセリーヌが言葉を交わす。2人の言葉には改めてキュアリーに対する畏怖の響きが含まれていた。そして、先行しているサラサとコラルが倒れている者達の確認を始めた。数人を手分けして確認した後2人はお互いに何かを話し合い、そしてサラサが急いで馬車へと戻ってきた。


「アリア様、まだ全員を確認した訳ではありませんが倒れている者達全員気絶しているだけと思われます」


「え?死んでないの?」


サラサの言葉にアリアとセリーヌ、そしてそれ以外の者達も改めて周辺の様子を見る。すると、倒れている中にはピクピクとだが動いている者が確認できた。


「はい。ただ、単純に気絶しているようにも見えません。何らかの状態異常に陥ってる可能性があります。その為、まずは原因と思われるキュアリー様を探した方が良いかと・・・」


サラサの指摘にアリアは見える限りにおいてキュアリーの姿がない事に気が付いた。


「この倒れている中に混じっているとかは?」


「いえ、恐らく砦の中に入られているのかと、あと気のせいかもですが先ほどから体が怠く感じているのですがアリア様はいかがでしょうか?」


アリアは、その指摘に自分も軽い怠さを感じている事に気が付いた。今までは軽い興奮状態にあった為に気が付いていなかったが馬車での移動だけにしてはこの虚脱感は異常と思われた。

その時、後ろの馬車からセリーヌに対し叫び声が聞こえた。


「セリーヌ様、子供達が!」


その叫び声に慌てて馬車を止めアリア達が後方の馬車へと向かうと、馬車の中で冷や汗を流しながら必死に大きく息をする子供達の姿が見られた。


「これは・・・マナ欠乏症じゃ。MPポーションは持っとらんか?」


子供達の様子を見ていたマッスル一号が、顔を上げてセリーヌ達を見る。

そして、その言葉に慌ててセリーヌが手荷物からポーションを取り出してマッスルに渡した。


「ほれ、慌てる出ないぞ、ゆっくりで良い、飲み込むんじゃ」


子供を抱き起しながらその口へとポーションを当て、ゆっくりと飲ませていく。一口、二口と飲み下すと呼吸が次第に落ち着いていった。


「ほれ、次の子に飲ませてやれ」


マッスルがカーラへとポーションを渡した。カーラはそれを受け取ると急いで他の子達へも飲ませていく。

その様子を観察していたアリアは、回復した子供が又も息苦しそうにし始めた事に気が付いた。


「この場所は危険だわ、何か状態異常を引き起こしているのかも。キュアリー様が砦にみえるのならば急いで砦に向かいましょう。サラサ、悪いけど至急砦の中の確認を」


「了解しました」


サラサが砦へと駆けだす中、アリアは所持しているMPポーションを数本用意し各々へと配布した。


「今自分のステータスを確認しました。少しずつですがMPが減少してきています。各自自分の状態に注意してください」


「MPが少ない人は注意ですね、カーラ、子供達はまかせます」


「はい、セリーヌ様」


「馬車を出してください」


アリアの指示で、ゆっくりと馬車は動き始めた。馬車の両側にはパステルとミドリが周囲を警戒しながら歩いていく。


砦の中へと辿りついたサラサは、砦の中でも同様に人が倒れているのを確認した。

手近の者の状態を確認するが、外の者達と同様に息をしている事は確認できるが意識は無い。


「外傷はない、キュアリー様はどこに」


サラサは周囲を警戒しながら砦の中心へと進んでいく。すると、砦の中心付近にある物見の塔らしきものの手前で異様な光景を発見した。


「んん?なんだあれは」


恐らく作業に使われていたと思われる水牛数頭、家畜の豚、鳥、犬、その他砦で飼われていたと思わしき動物達が一所に集まり団子の状態を成していた。

特に争うことなく、それぞれが少しでも小さく集まろうとするかの様に押し合いへし合い集まっている光景はまさに異様としか言いようが無かった。

しかし、サラサは以前にもこのような光景を見た記憶があった。


「まさか!キュアリー様!」


動物密集地帯へと近づき、なんとか動物達を掻き分けて進むと、その中心には案の定キュアリーと思われるコパンダが牛や犬たちに頭を擦りつけられ、又は顔を舐められ、ただそれに抵抗する事無くコロコロと中心で転がされていた。


「キュ、キュアリー様ご無事ですか!」


サラサは慌ててキュアリーを抱き起した。

キュアリーは虚ろな眼差しでサラサを見詰めると、次第に眼差しに光が戻ってくる。そして、ガシッっとサラサに縋りついた。


「サラサさ~~ん、この子達なんとかして~~」


目に涙を浮かべながら見上げるコパンダの姿に、サラサは顔を真っ赤に赤らめて強く抱きしめた。


「う~~~、可愛すぎます!なにこの生き物!」


今の状況をすっかりと忘れ、キュアリーを強く抱きしめて頬擦りし始めた。


「あぅ、ダメだ・・・、この人も駄目だ・・・」


キュアリーの瞳からまたもや光が消え去ろうとしたとき、サラサの頭をモフモフした手がゲシリと叩いた。


「ギャ!」


「ガルルル」


「ルル~~~」


じたばたするサラサを前足で押さえ込みながらルルはキュアリーの顔に鼻先を近づけクンクンと匂いを嗅いだ後、徐に周りを威嚇するように吼える。すると、今まで周りにいた動物達がキュアリーから少し遠ざかるがそれ以上に離れようとはしなかった。

しかし、ようやく動物達のおもちゃ状態から抜け出したキュアリーはがしっとルルへと抱きついたのだった。

そして、その様子を嬉しそうに見下ろした後、ルルは周りの動物達に見せ付けるようにキュアリーの顔を舐め始める。


「うわ!ルル!ちょっとまって!」


キュアリーの言葉に舐めるのを止めたルルは、コパンダキュアリーの首の部分を軽く咥え、より自分の懐へとキュアリーを抱え込んだのだった。


「えっと、ルル、様?お手を退けていただけると嬉しいのですが」


ルルに押さえつけられた状態のサラサが恐る恐るルルを見上げながらお伺いをたてる。

そのサラサを見下ろし、軽く鼻をならしたあと漸くルルは押さえつけている足をどかした。


「あ、ありがとうございます。と、ところで、キュアリー様何が起きたのかはご存知であったりされます?」


「う~~、多分あたしが大きくマナの必要なスキルを使用したからこの一帯のマナが一気に減少したんだと思う。それで、マナを放出してるあたしに生き物が集まったんだと思う」


若干動転して変な文法になりながらも現状を確認しようとするサラサに、キュアリーは端的に答えた。

そして、キュアリーの分析は現状をしっかりと認識したものであった。


「すると、砦の倒れている者達も?」


「急激なマナ不足によって、この辺り一帯がマナを消耗するエリアに変わったのかな?こんな現象は始めてみるからはっきりした事は言えないけど」


「では、この現象は止められるのですか?」


「数日もすれば周辺からマナが流れてきてある程度は回復するかな?おそらくだけど」


「数日ですか、その間に倒れている者達が死ぬようなことは?」


「どうなのかなぁ?MP切れしても意識を失うくらいだから死にはしないと思うけど、ただ地面に倒れたままっていうのは健康には良くはないから。風邪を引いたり、外敵に襲われたりとかまでは何ともいえないし。意識が戻らないで数日すぎれば健康にも良くないから」


そう告げるキュアリーの言葉で、サラサは直接の死因には繋がらない事を理解した。

そして、その事をアリアへと連絡に戻ろうとしたとき、とうのアリア達の乗る馬車が広場へと入ってきた。


「キュアリー様!ご無事ですか!」


馬車からアリアが声を掛ける。しかし、サラサと同様にキュアリーを取り巻く動物達の光景に近寄る事に躊躇しているようだった。

その後、サラサから起きた事の説明を聞くと、アリア達はその対応で意見が割れる事と成った。

現在昏睡している者達を集め、最低限の治療をして欲しいと願い出るセリーヌとカーラに対し、アリアやサラサといったエルフの森メンバーは直接死ぬ可能性がないのであればこのまま進むべきだと反論をした。


「そもそも、この者達を助けている間に意識を取り戻せばより厄介な事になります。それに、私達のMPも今もって減り続けているのです」


そう言葉を続けるアリアに対し、セリーヌはなんとか砦の外で倒れている者達を中へと収納するだけでも良いのでと頼み続けていた。


「それに、キュアリー様の傍であればMPも回復していきます。ですから」


「それは私達だけでなく、砦にいた者達も同様だと気付いての発言でしょうか?」


「それは・・・」


サラサの反論にセリーヌは言葉を続けることができなかった。そして、先ほどから一切発言をしていないキュアリーの慈悲にすがろうとキュアリーを見つめ返した。

その視線を受け、キュアリーもどうした物かと考える。


「意識が戻るのが問題なら、戻ったらまたサンダーで意識を奪えばいいんじゃない?」


名案です!っといった反応を期待したキュアリーは、しかし見返される視線に怯えのような物を感じてあれ?っと首を傾げる。


「そ、それはちょっと」

「鬼ですか、そうですか」

「うむ、それはないな」


「あれ?」


一同の反応に又もや首を傾げる。何が不味いのかを考え、そうか!きっと怪我をさせる事を気にしてるのかっと思い当ったキュアリーはアイテムボックスから一つの武器を取り出した。


「サンダーでも手加減出来るから怪我はさせないんだけど、気になるならこれ使う?」


そういって差し出される武器をアリアが思わず手に取る。そして、その武器を鑑定してみた。


名称:突込み用ピコピコハンマー

攻撃力:0

効果:使用時に一時的に相手を混乱状態にする。クリティカル時前後の記憶が消える。

追加効果:混乱状態になった者の頭上にヒヨコが3匹5秒間飛び回る

     HP1%の回復効果

製作者:キュアリー・アギオ・アルモニア


それこそ突っ込みどころ満載の武器?を手にアリアは途方に暮れ、そのハンマーをサラサに渡す。

サラサからコラルに次はセリーヌにと順々に渡る。そして、武器の効果を確認するにしたがってやはりみんなの表情が微妙になっていった。


「キュアリー様、ちなみにこのハンマーのクリティカル発生率はどれくらいでしょう?」


満を持してアリアが尋ねるが、その回答はある意味予想通りの回答であった。


「さぁ?使用者にもよるし、ただ前に使用した時はLUKの高い人で5%、低い人で1%?」


「すなわち早くとも一人に20回はダメージは無いとはいえ攻撃すると?」


「うん、でもHP回復するよ?だから一応治癒装備?」


「治癒装備に変な効果つけないでください!」


アリアがまさに思わずといった感じで叫んでいた。


「え?でもそこが楽しいんじゃ」


そう告げるキュアリーに対し、またもや鬼だ、悪魔だなどという呟きが響いたが幸いなことにキュアリーには聞こえていなかった。

結局の所、意識を取り戻しても大きな障害にはならないとのキュアリーの判断の下、砦外に倒れている者を砦内へと回収作業が行われた。

もちろんだが、マナを放出するキュアリーは作業に参加させてもらえず、ただ動物達とコロコロと戯れているだけだった。


「う~~ルル、なんでルルまで参加してるの~~」


「ヴォン!」


ルルの鼻先で押されコロコロと転がるキュアリーの叫びは、作業をしている者達には届かなかった。

というか、届いていない振りをしていた。

感想を見て、キュアリーがこのままでは大量殺人者と思われそうで慌てましたw

早く続きを書かないと、誤解されてしまう!っとの思いで最近にはない速度で投稿を・・・

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