1-19:偽装
キュアリーは、ユーステリア兵を武装解除の上拘束するように指示をし、アリア、サラサ、セリーヌ、そしてなぜがエセマッスル達までを加えたメンバーで臨時の会議を開いていた。
「う~ん、という事は現在のユーステリア軍は14歳前後が主力になるの?」
今回の襲撃者に関しての意見を聞いていた時、エセマッスル達が思いもよらない状況を教えてくれたのだった。
「うむ、今ユーステリアではマナの枯化によって動物、植物はもちろん人間にも大きな影響が出ておる。歳を経た物ほどその影響は著しい。そして意外にも身体強化などの魔法を日常的に使用していた兵士、冒険者などの方がその影響を強く受けた」
「中には命が尽きた者達も少なくない」
「逆に年若い赤子や幼児ほどマナ減少の影響を受けずに済んでいるのだ」
「我らも昨日より今日の方がこの通り男らしくなっておろう」
そう言って無意味な筋肉体操?を行うマッスルを無視してキュアリーはセリーヌに視線を向ける。
そのキュアリーの視線を受けセリーヌも大きく頷きました。
「大なり小なりエルフの森以外の地では起きている現象だと思います。そして、子供達の方が順応性が高いのか元気なのは事実です。私達の村でもそこは同様です」
「そうすると、今までは大なり小なりマナによって身体は強化されてたんだね」
「その事に気が付き始めたのはここ最近のことじゃがな。我らが村を出たのは若い者の重荷にはなりたくなかったからじゃ。それがこの様にまた筋肉が復活してくるとは」
「うむ、一昨日の夜など思わず体中を撫でまわしてしまったわい」
「だのう、ほれ、昨日よりさらに、ほれ!」
「おおお~~~」
どうやら彼らは少ないマナを自分たちが取り込んでしまわないように自ら人減らしの為村を出たようだった。
そして、確かに出会った時からしてもエセマッスル達は確実に肉付きが良くなってきているように感じられた。そして、その事にアリアは唐突に危機感を感じる。
「そうすると、もしかしてなんですが、この先マナを求める者達がエルフの森を襲撃する可能性が強くなると」
「否定はできん、我らですらこれ程顕著に影響が出るのだ。軍の連中や神殿の連中が気が付かぬ訳はなかろう。ましてや神官どもは焦っておるからな」
「焦ってるのですか?」
一番体の大きな仮称マッスル1号はアリアの疑問に大きく頷いた。
「今までは治癒の魔法、浄化の魔法など神殿の力を見せる術は多数あった。しかし、マナが枯化した今、神殿にはもはや治癒などの具体的な術は失われたのだ。それ故に人心を手放さぬよう形振り構わず様々な事をやっておる、良い事も悪い事も」
そう告げるマッスル1号は苦痛を感じさせる表情を見せた。
その表情を見ながら、キュアリーは彼らの素性に思い至った。
「そうですか、貴方方は元神官だったのですね」
キュアリーの言葉に、マッスル達は驚きの表情でキュアリーを見た。そして、静かに頷いたのだった。
「我々はユーステリア神教の神官だった。だが我らは異種族排斥など謳ってはおらん。共存を唱える分派だったのです。かつて偉大なる巫女神様が獣人やエルフとの融和の道を我らにお示しになったと伝えられています。そして、その教えに従い別れたユーステリア新派が我らです。しかし、それも大戦の煽りを受け、そしてイグリアの陥落で終焉を迎えたに等しい」
「さよう、イグリアにあった我らの本部は巫女姫様と共に滅ぼされました」
その言葉にセリーヌは驚いた。そして思わずと言った様子でマッスル達に告げた。
「それは違います!今代の巫女姫様はまだご存命です!」
「「「「「!?」」」」」
驚くマッスル達を尻目に、セリーヌは更に驚きの言葉を紡いだ。
「私達は今、その巫女姫様の下に向かっているのです!」
感情のままに今回の旅の目的を告げてしまったセリーヌは慌てて自分の口を両手で塞いだ。
「へ?そんな話初めて聞いたような?」
「キュアリー様、空気を読みましょう」
そう呟くキュアリーをアリアは小さな声で窘める。
セリーヌがキュアリー達の様子を窺うが、キュアリーもアリアの目的地に罠がある訳でもなく、またその場所に巫女姫と呼ばれる人がいても別に気にも掛けていなかった。
セリーヌはその様子に内心安堵の息をついた。そして、セリーヌとマッスル達はお互いに情報交換を始めたのだった。
「でもさ、マナが枯化してきている状態をユーステリアはどう捉えてるのかな?なんとなくだけど嫌な予感しかしないんだけど」
セリーヌ達の会話を聞きながら湧きだしてきた疑問をキュアリーが口にした。そして、アリア達エルフや獣人達も同様の疑問を感じていたのか表情は厳しい。
「ご懸念の通り、この世界からマナが枯化したのはエルフ達亜人が世界の恵みであるマナを独占したからだと教えられています。そして、聖地であるエルフの森を取り返す為の聖戦をっと」
マッスル1号の説明にみんなが顔を顰める。しかし、その中でキュアリーは更なる疑問を感じた。
「でも、それっていくら兵数がいても厳しいよね?だってエルフは今も魔法を使えるし、いくらマナの多い場所へ進軍したからといってすぐ魔法が使える訳ではないのでは?」
「はい、しかしユーステリアには魔法の代わりにアーツがありますから」
「アーツ?」
キュアリーは聞きなれない単語に首を傾げた。そして、それはアリア達も同様だった。
その様子にマッスル1号達が”アーツ”に関する説明を始めた。
「ふ~ん、魔法スキルの代わりにそんなアーツなんて出来たんだ。それって両立するの?」
「はい、魔法も、アーツも両方使用出来る者はおります。しかもアーツはマナを使用しないと思われます」
「あら、それなら良い事ずくめ?」
アリアが説明を聞いてそんな感想を述べた。しかし、マッスル1号は首を横に振った。
「残念ながらアーツは基本1体1の戦闘向きです。広範囲に対応した攻撃技はほとんどありません。合わせて自己の回復は可能なアーツはありますが、他者を回復させるアーツは今の所ありません」
マッスル1号の説明を聞きながら、キュアリーは頭の中で対戦格闘ゲームのような物をイメージした。
「アクションゲームとMMORPGの融合?なんか相容れないような、そうでもないような・・・」
キュアリーの呟きに周りにいた者達は全員頭の上に疑問符を浮かべていた。それに気が付かずにキュアリーは苦手がらも昔に遊んだアクション型対戦ゲームを思い浮かべて疑問を浮かべた。
「でもさ、剣士系なんかはスキルもアーツもあんまり変わらないんじゃないの?」
どちらも自身の体や武器を強化して戦う為、VRゲームにおいては同様の効果を齎していたように思えた。
「いえ、一番大きな違いは持続時間ですな、アーツはどちらかといえば一瞬の攻撃や防御に特化されています。この為、魔法のように一定時間効果を発するゆな技はありません」
その説明にキュアリーは納得した。確かにアクション型戦闘は駆け引きを楽しむ戦いだった。キュアリーはあまり勝った記憶が無い為あれのどこが楽しいのかまったく理解ができなかったのだが。
「とにかく魔法を使えないからといって油断は出来ないってこと?」
「そうですな、エルフの森での持久戦になれば別ですが奇襲などを受ければ思わぬダメージを負う事も、ましてやマナの少ない場所や状況で戦えば勝つことは難しくなりましょう。ちなみにアーツは年若い者ほど使える者が多い、順応力の差でしょうかな」
一通り説明を受けた面々は、この先の旅路に不安を覚えた。まだそれ程にエルフの森を離れたわけでもないのに戦闘となったのだから。キュアリー達がこの先の戦闘に関して相談を始めると、今まで黙って話を聞いていたセリーヌがキュアリー達に質問をした。
「あの、みなさんは変装はされないのですか?今回も変装をしていれば違ったケースも考えられるのでは」
その言葉にみんなが一斉に顔を見合わせる。
「変装!そうですよね、人族に見せかければいいのですよ!」
「そうだな、それでとりあえずは即戦闘というケースは減るか」
「では、帽子でも被りましょうか?」
「わたしらはどうするか。フードを被るか?」
エルフも獣人もそれぞれ思い思いに顔を隠し始めた。
そして、それぞれに持ち物の中から自分たちの正体を隠す工夫をする事にした。
その後、セリーヌの前には思い思いにそれぞれの特徴を隠したエルフや獣人達が集まった。
しかし一人、一人と集まる者達を見ながらセリーヌの表情はしだいに困惑から諦めへと変化していく。
「あの、あまり言いたくはないんですが、ぜったいその格好では怪しまれますっていうか怪しい集団にしか見えません!」
「え?え?だってエルフとは解らないよね?」
「俺だって獣人とは解らんぞ」
サラサとコラルが自分の姿を確認しながらそんな事を言う。まさに何の為に変装するかを全く理解していない、方法が目的と入れ替わる典型的な状況に陥っていた。その時自信に満ちた声が響いた。
「愚か者!エルフと解らないだけでは意味がない!お前たちは何を考えているのか!人族がこちらを不審に思わず、我らに関わる事無く旅が出来なければ意味がないのだ」
セリーヌは、背後から聞こえてきたアリアの声にまさに我が意を得たりといった面持ちで振り返り、あまりの光景に口と目をぽっかりと開いたまま硬直した。
そこには煌びやかな衣装を纏い、エルフ特有の透き通るような肌、金糸のような髪をなびかせ扇で口元を覆ったアリアの姿が見えた。確かに、髪をなびかせる事によってエルフの特徴的な耳は隠されている。しかし、エルフ独特の美しさは逆にこれでもかと強調されていた。ましてや、こんな身なりの者が旅をしていれば盗賊や、それ以外の者達にさえ襲ってくれ、金をもっているぞ!っと声高々に叫んでいるようなものだった。
「どう、この威厳に高貴な装い、人族など足元にすら近寄る事などできないでしょう!」
得意げに胸をはるアリアに、セリーヌは真っ向から否定する事も出来ず遠回し、遠回しにその格好では不味い事を伝えようとした。エルフや獣人達は皆アリアの指摘に頷き、そしてその智謀を褒めそやしている。その為、セリーヌはアリアの間違いを直接指摘する事ができなかった。その為、中々うまく伝える事ができず最後になんとか美しすぎるものは要らぬ蜂を呼ぶなどの例えで納得してもらうことが出来た。
「はぁ・・・」
溜息を零すセリーヌは、そういえば一番問題になりそうな人がまだ出て来ていない事に気が付き慌てて周りを見回した。すると、視界の端にルルと何か別の生き物がいる事に気が付いた。
その生き物の丸々とした姿はベアー系の生き物だという事は解った。ただ、サイズ的には1メートル20センチくらいの為、まだ子供なのかもしれない。ただ、今まで見た事もない白と黒のツートンカラー、円らな目の周りは黒く大きく縁どられ、しかも全体的にも丸々モコモコしており思わず抱きしめて頬ずりしてしまいそうな魅力を湛えている。
「か、可愛い!」
セリーヌは思わずそう叫んだ。そしてそのセリーヌの視線気が付いたその生き物は、シュタッっと片手を上げて見せる。
「これで大丈夫よね?エルフに見えないでしょ?」
「キュ、キュアリー様ですか?!」
そのモコモコな生き物から聞こえていた声は明らかにキュアリーの物だった。
すいません。10月投稿ができませんでした><
リアルな生活が忙しすぎて・・・・
ただ、がんばって書き続けては行きます!




