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銀の術師と星巡儀(アストロラーベ)  作者: さまよえるペンギン
魔法屋、はじめました。
35/57

破壊の意味

破壊をどう定義づけすべきだろう。

命が壊れることと、物体(モノ)が壊れることの区別は、彼女につくのだろうか。


ーーでは。イノチとは何だろう?


ずず……っ。

タイタニアの脚が後ろに滑る。"生身"であるセティの腕力に圧されているのだ。

「…ちぇ。敵わないね」


彼女はニヤリと笑い、機体が、まるでヒトそのものの動きで飛びすさる。

鋼鉄でできたはずの機体が、あろうことか、空中でバク転を決めーーその勢いのまま、手にした振動剣を突き出してくる。


「ーーッ!!?」

セティのカワセミ色の髪が、ひらりと飛んだ。

「ーー破壊、します」


"彼女"は、全てを絶つ剣。

怒りも、憎しみも。哀しみも、怨嗟も。

ーー全てを。


「はぁぁあああッ!!」

(データ処理が追いつかな……ッ)


セティの体が宙に舞う。エドウィンは、もちろん心配しなかった。だって彼女は機械だから。いくらでも換えは利くし、直せば済むことだ。だから、心配しなかった。


「ーー邪魔するの?」

空色の瞳の"騎士"が、愉しげな声音で言う。

だって、機械(セティ)の前には白い人影が、彼女をかばうみたいにしていたから。

「あいにくボクは、優しくないよ?」

巨大な剣を、タイタニアが振り上げる。

「セティ」

銀の声が呼ぶ。

彼女(セティ)が額に付けた兵器が起動する。反物質砲。


彼女はーー。


放たれた反物質が、タイタニアの装甲を消滅させ、操者に届く直前。

シルフィドが干渉するより一瞬だけ早く。


破裂音。


「はじ…、かれた?」

エドウィンが驚愕に目を見開く。珍しくシルフィドが声を荒げた。

「ーーちっ。誰だ!?」


夕日色の髪と、澄んだーーどこまでも澄み切ったスカイブルーの瞳。

こんな巨大な機体を動かしていたとは思えない少女が、白い光に守られてそこにいた。


森国(しんこく)パーセル。女王パンドラを守護するは騎士。ーーアルカネット」

彼女は名乗りーーどこかへ向けて手を挙げた。

「……あ~、うん。そー。負けたよ~。賭けはカシウスの勝ち……」

怒鳴られたのだろう。騎士は首をすくめ、小さく舌を出した。そして、エドウィンとセティ。シルフィドに手を振る。

「今日のところは退くよ。ーーけど」

強気に微笑むのは、何故だろう。

「負けないから」


そして、正体不明の干渉源ーー錬金術師たちとは異なる体系の何者かの"術"が空間をゆがめ、夕日色の髪の騎士を回収していった。

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音声化シリーズ。
知り合い様に企画していただいたものだったり、自分で企画したものだったり。
よろしかったら、音声にて、ひととき、浮き世を忘れてみて下さいませ♪

◆銀の術師と機械の小鳥(音声)◆
◆どうしたら、君の心が手に入る?◆
↑こちらは、作っていただきました!((o(^∇^)o))
ありがとうございます!!

◆魔法の街と枯れる花(音声)◆
↑ある機械少女の悩み

◆ドラゴンと、絵と(音声)◆
↑本編の2と3の間辺り。番外編的な。

◆【英語】君は美味しいフィッシュ・スープ◆
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