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第3話 最弱コンビ、任務に出る

アーマードベア事件から一夜明け、ユウは布団の中で丸くなっていた。

天井を見つめながら、昨日の出来事を思い返す。


「……なんで俺、まだ生きてるんだろ……」


本気で不思議だった。

あの巨大な熊に追われて、転んで、瓶を落としただけで倒せる確率なんて、宝くじの一等より低いはずだ。


「……いや、宝くじは買わないと当たらないし……俺は買ってないし……」


自分で言っててよく分からなくなってきた。


そんな時、スマホが震えた。

画面にはミナからのメッセージ。


『ユウくん、今日の任務、一緒に頑張ろうね!』


ユウは布団に顔を埋めた。


「……任務……行きたくない……」


だが、行かないわけにはいかない。

ハンター養成校の生徒として、実戦訓練は必須だ。


しぶしぶ制服に着替え、学校へ向かった。


教室に入ると、すでにミナが席で待っていた。

彼女はユウを見るなり、ぱっと笑顔になった。


「ユウくん、おはよう!」


「おはよう……」


「今日の任務、初級ゲートの調査だって。危険度は低いよ」


「俺にとっては全部高いよ……」


ミナはくすっと笑った。


「大丈夫。私が守るから」


「……昨日もそれ言ってたよね」


「うん。今日も言うよ」


ユウは少しだけ心が軽くなった。


そこへ、教官が教室に入ってきた。


「よし、全員揃っているな。今日の任務は“初級ゲートの安定化作業”だ。

 天野と白石はペアで行動しろ」


「はい!」


ミナが元気よく返事をする。

ユウは小さく手を挙げた。


「……はい……」


教官は続ける。


「初級ゲートとはいえ、油断するな。モンスターが出る可能性もある。

 特に天野、お前は絶対に前に出るな」


「言われなくても出ません……」


「むしろ後ろにいろ」


「言われなくても後ろにいます……」


教室が笑いに包まれた。


ユウは涙目になった。


ゲートは学校から少し離れた廃工場の跡地にあった。

青白い光がゆらゆらと揺れ、空間が歪んでいる。


ミナがゲートの前で手を合わせる。


「じゃあ、ユウくん。ゲートの安定化装置を起動しよう」


「俺がやるの……?」


「うん。ボタン押すだけだよ」


「ボタン押すだけで死ぬ可能性あるよね……?」


「ないよ」


ミナは笑顔で断言した。


ユウは震える手で装置に近づく。

ボタンは赤く光っている。


「……押すよ……?」


「うん、押して」


ユウは目を閉じて、そっとボタンを押した。


ピッ。


装置が低い音を立てて起動し、ゲートの光が安定した。


「……あれ? 普通にできた?」


「うん、できたよ。ユウくん、すごい!」


「いや、ボタン押しただけだよ……?」


ミナは嬉しそうに笑った。


「でも、ユウくんが押したんだよ」


「……なんか、ミナに褒められると嬉しいけど……複雑……」


その時だった。


ガサガサガサッ!!


ゲートの奥から、何かが飛び出してきた。


「ギャアアアアアアアアアア!!」


小型のモンスター《スティンガーラット》だ。

尻尾に毒針を持つ危険なネズミ型。


「ユウくん、下がって!」


ミナが前に出る。

だがスティンガーラットは素早く、ミナの横をすり抜けてユウに向かってきた。


「ひぃぃぃぃぃぃ!!」


ユウは反射的に後ろへ飛び退いた。

その拍子に、足元にあった鉄パイプを蹴飛ばす。


パイプは空中を回転しながら飛び、

スティンガーラットの頭に直撃した。


「ギャッ!?」


ラットはそのまま気絶した。


ミナが目を丸くする。


「……ユウくん……また……」


「違う!! 俺じゃない!! パイプが勝手に!!」


「でも、ユウくんが蹴ったんだよね?」


「偶然だよ!!」


ミナは微笑んだ。


「ユウくんって……やっぱりすごいよ」


「すごくないよ!! 俺は無能だよ!!」


「でも、生き残ってるよ?」


ユウは言葉に詰まった。


確かに、生き残っている。

毎回、奇跡みたいな偶然で。


ミナはユウの手をそっと握った。


「ユウくん。私はね……ユウくんが無能だなんて思ってないよ」


「……ミナ……」


「だって、ユウくんは……誰よりも“生きよう”としてるもん」


ユウは胸が熱くなった。


その時、背後から声がした。


「おーい天野ァァァァァ!!」


振り返ると、黒川レンジが走ってきた。


「なんでお前、またモンスター倒してんだよ!!

 俺が来る前に終わってんじゃねぇか!!」


「知らないよ!!」


ユウは泣きそうになった。


レンジは気絶したスティンガーラットを見て、ため息をつく。


「……まあいい。どうせ偶然だろ」


「そうだよ!!」


「でもよ……」


レンジはユウをじっと見た。


「お前……なんか最近、妙に運良くねぇか?」


ユウは固まった。


ミナだけが、静かに微笑んでいた。


「……ユウくんは、昔からだよ」


ユウは気づかない。

自分が“奇跡の中心”にいることを。


今日もまた、誰にも気づかれないまま、世界は少しだけ救われていた。

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