第23話 世界の中心、そしてまた逃げる
空に開いた巨大な“円”。
そこから降り立った影の主。
世界が震え、風が逆流し、
校庭の木々がざわざわと揺れた。
ユウは泣きながら叫んだ。
「なんでぇぇぇ!! なんで世界が揺れてるの!?
俺、ただの一般人だよ!! 無能だよ!!」
影の主は、
ゆっくりとユウへ手を伸ばす。
「……返せ……我が“核”……」
ミナがユウの前に立つ。
「ユウくんには触らせない!!」
影の主はミナを見て、
ほんの一瞬だけ動きを止めた。
「……光の器か……
だが……無意味だ……」
ミナは震えながらも光の魔法を放つ。
「《ライトバースト》!!」
光が影に当たるが──
影は微動だにしない。
神崎が叫ぶ。
「効かん……!
これは……“円環の主”……!」
ユウは泣きながら叫んだ。
「なんでぇぇぇ!! なんでそんな偉い人が学校に来るの!?
俺、関係ないよ!! 帰って!!」
影の主は、
ユウの胸元に手を伸ばす。
「……そこにある……
我が“中心”……」
ユウは絶叫した。
「ないよ!! 俺、中心なんて持ってないよ!!
俺、ただの無能だよ!!」
その瞬間──
ユウの胸元が、
淡く光った。
ミナが息を呑む。
「……ユウくん……?」
神崎も驚愕する。
「……まさか……本当に……」
影の主は低く呟いた。
「……やはり……お前が……“核”を持つ者……」
ユウは泣きながら叫んだ。
「なんでぇぇぇ!! 俺、核なんて持ってないよ!!
返せって言われても持ってないよ!!」
影の主は手を伸ばし──
世界が震えた。
ユウは反射的に逃げ出した。
「やだぁぁぁ!! 逃げる!! 俺は逃げる!!」
ミナが叫ぶ。
「ユウくん、待って!!」
神崎も叫ぶ。
「天野! 戻れ!!」
だがユウは全力で走った。
校庭を横切り、
階段を転げ落ち、
廊下を滑り、
教室の机にぶつかり、
そのまま理科室へ突っ込んだ。
「痛いぃぃ!! なんで毎回こうなるのぉぉ!!」
その拍子に──
理科室の棚から、
“古い金属球”が転がり落ちた。
コロコロ……
ユウはそれを避けようとして、
さらに転んだ。
金属球は床を転がり、
壁に埋め込まれた“古代装置”の穴に
カチッとハマった。
装置が起動した。
ミナが駆け込んでくる。
「ユウくん!! 大丈夫──」
装置が光を放つ。
神崎が叫ぶ。
「それは……“円環装置”の中枢……!
なぜ学校に……!?」
ユウは泣きながら叫んだ。
「俺じゃないよ!! 転んだだけだよ!!」
影の主が理科室の入口に現れる。
「……見つけた……“核”よ……」
ユウは絶叫した。
「なんでぇぇぇ!! なんで追ってくるの!?
俺、何もしてないよ!!」
影の主がユウに手を伸ばした瞬間──
古代装置が、
ユウの胸元の光と共鳴した。
ゴォォォォォ……!!
影の主の動きが止まる。
「……これは……“核”の反応……?」
ミナがユウを抱き寄せる。
「ユウくん……!」
ユウは泣きながら叫んだ。
「なんでぇぇぇ!! 俺、何もしてないよ!!
なんで装置が光るの!? なんで影が止まるの!?
俺、ただ逃げただけだよ!!」
影の主は苦しげに声を漏らす。
「……核……返せ……
返さねば……世界は……」
ユウは叫んだ。
「返せって言われても持ってないよ!!
俺、ただの無能だよ!!」
その瞬間──
ユウの胸元から、
小さな光の粒がふわりと浮かび上がった。
ミナが息を呑む。
「……ユウくん……それ……」
神崎が呟く。
「……“円環の核”……!」
影の主は手を伸ばす。
「……返せ……!」
ユウは泣きながら叫んだ。
「やだぁぁぁ!! 返したくないよ!!
返したら絶対ろくなことにならないよ!!」
光の粒は、
ユウの叫びに反応するように
ふわりと揺れた。
影の主は苦しげに後ずさる。
「……なぜ……拒絶する……?」
ユウは泣きながら叫んだ。
「俺、返したくないんじゃなくて!!
返し方が分からないんだよ!!
説明してよ!! なんで説明してくれないの!?
なんでみんな意味深なことしか言わないの!?
なんでぇぇぇ!!」
影の主は、
その叫びに反応するように
大きく揺らいだ。
「……核の……意思……?」
ミナがユウの手を握る。
「ユウくん……大丈夫。
あなたは……あなたのままでいいんだよ」
ユウは涙を拭いながら言った。
「……俺、帰りたい……」
影の主は、
ユウの胸元の光を見つめながら
低く呟いた。
「……ならば……試練を……」
世界が、
再び震えた。




