第22話 円環の軍勢、そしてまた逃げる
世界中でゲートが暴走し始めた翌日。
ユウは学校の屋上で、膝を抱えていた。
「……俺、もう限界だよ……
昨日も軍勢来たし……
おとといも軍勢来たし……
その前も軍勢来たし……
なんで俺の人生、軍勢に囲まれてるの……?」
ミナが隣に座り、優しく背中をさする。
「ユウくん、大丈夫だよ。私がいるから」
「ミナがいなかったら俺、屋上に来れないよ……」
「うん」
即答だった。
「そこは否定してよ!!」
そんなやり取りをしていると──
空が、
ぐらり……と揺れた。
ユウは即座に叫んだ。
「なんでぇぇぇ!! 空が揺れるのは嫌だよ!!」
ミナが立ち上がる。
「ユウくん……あれ……!」
空の中央に、
巨大な“円”が浮かび上がっていた。
青白い光の輪。
ゆっくりと回転している。
ユウは震えた。
「なにあれ……?
え、空に輪っか浮いてる……?
なんで……?」
ミナは息を呑む。
「……ゲート……じゃない……
もっと……大きい……」
その時──
屋上の扉が開いた。
神崎教官が駆け込んでくる。
「天野! 白石! すぐに避難しろ!!
“円環の軍勢”が……完全に動き出した!!」
ユウは絶叫した。
「なんでぇぇぇ!! 俺、ただ屋上で泣いてただけだよ!!
なんで世界が動き出すの!? 俺関係ないよね!? ねぇ!!」
神崎はユウの肩を掴む。
「天野……お前は“中心”に近い。
ここにいては危険だ!」
「中心ってなに!? 俺、空っぽだよ!!」
ミナがユウの手を握る。
「ユウくん、行こう!」
「行きたくないよ!! 帰りたいよ!!」
だが──
空の“円”が、
ゆっくりと開き始めた。
まるで巨大な瞳が開くように。
ユウは泣きながら叫んだ。
「なんでぇぇぇ!! 空が開くのは嫌だよ!!
閉じて!! 閉じてよ!!」
ミナがユウを抱き寄せる。
「ユウくん、大丈夫だから……!」
その時──
空の円の中心から、
黒い霧が溢れ出した。
霧はゆっくりと形を成し、
巨大な“影の塊”となって降りてくる。
神崎が叫ぶ。
「……来たか……“円環の軍勢”の主……!」
ユウは震えた。
「主!? 軍勢の主!?
なんで主が学校に来るの!?
俺、主に恨まれるようなことしてないよ!!」
ミナがユウの前に立つ。
「ユウくんは私が守る!!」
影の塊は、
ゆっくりと地上へ降り立った。
形は曖昧。
人のようで、人ではない。
巨大な輪のような光が背後に浮かんでいる。
声が響いた。
「……欠けた“核”よ……返せ……」
ユウは絶叫した。
「核ってなに!? 俺、核とか持ってないよ!!
怖いよ!! 返せって言われても持ってないよ!!」
影の主はユウに手を伸ばす。
「……お前の中に……ある……
我が“中心”……」
ユウは泣きながら叫んだ。
「ないよ!! 俺、中心なんて持ってないよ!!
俺、ただの無能だよ!!」
ミナが光の魔法を放つ。
「《ライトショット》!!」
光が影に当たるが──
影は微動だにしない。
神崎が叫ぶ。
「効かん……!
これは……“円環の主”……!」
ユウは震えた。
「円環の主!? なんでそんな偉い人が学校に来るの!?
俺、関係ないよ!! 帰って!!」
影の主は、
ユウの胸元に手を伸ばした。
「……返せ……“核”を……」
ユウは絶叫した。
「やだぁぁぁ!! 返せないよ!! 持ってないよ!!」
その瞬間──
ユウの胸元が、
ほんの一瞬だけ、
淡く光った。
ミナが驚く。
「……ユウくん……?」
神崎も息を呑む。
「……まさか……本当に……」
影の主は低く呟いた。
「……やはり……お前か……」
ユウは泣きながら叫んだ。
「なんでぇぇぇ!! 俺じゃないよ!!
俺、何もしてないよ!!」
影の主は手を伸ばし──
世界が震えた。




