第20話 人類総力戦
巨大ゲートの出現、ヴァルドの襲撃、謎の老人オオバの登場。
世界は静かに、しかし確実に不穏な方向へ動いていた。
だが──
ユウは今日も学校にいた。
「……なんで俺、普通に授業受けてるんだろ……
昨日、命狙われたんだよ……?」
ミナが隣でノートを取りながら言う。
「ユウくん、授業中だよ」
「授業中に人生相談してるんだよ!!」
先生がチョークを落とした。
ユウはビクッとした。
「ひぃっ!? なんでチョーク落ちただけで怖いの俺!!」
ミナはくすっと笑った。
「ユウくん、敏感すぎるよ」
「敏感じゃないよ!! 命の危機に慣れすぎてるだけだよ!!」
そんなやり取りをしていると──
校内放送が鳴った。
『全校生徒は体育館に集合してください。
繰り返します──』
ユウは机に突っ伏した。
「なんでぇぇぇ!! 体育館集合は絶対ろくなことにならないやつ!!」
ミナが肩を叩く。
「大丈夫だよ。きっと説明だけだよ」
「説明だけで済んだこと一度もないよ!!」
体育館。
教官の神崎が壇上に立ち、険しい表情で話し始めた。
「……世界中でゲートの暴走が確認された。
政府は“総力戦体制”に入った」
ざわつく生徒たち。
ユウは震えた。
「総力戦!? なんで!? 俺、昨日転んだだけだよ!?
なんで世界が総力戦なの!? 俺関係ないよね!? ねぇ!!」
ミナがユウの手を握る。
「ユウくん、大丈夫。私がいるから」
「ミナがいなかったら俺、体育館に入れないよ……」
「うん」
即答だった。
「そこは否定してよ!!」
神崎は続ける。
「上級生と教官は、これよりゲート封鎖作戦に参加する。
1年生は校内待機だ」
ユウは胸を撫で下ろした。
「……よかった……俺は安全……」
その瞬間。
体育館の扉が、
ドンッ!!
と大きな音を立てて開いた。
ユウは絶叫した。
「なんでぇぇぇ!! 安全じゃないのぉぉ!!」
扉の向こうから、
黒い霧が流れ込んでくる。
ミナが叫ぶ。
「ゲート反応!!」
神崎が前に出る。
「全員、後ろへ下がれ!!」
霧の中から、
影のようなモンスターが次々と現れた。
《シャドウレギオン》
影の軍勢。
ユウは泣きながら叫んだ。
「なんで軍勢が学校に来るの!?
俺、軍勢に恨まれるようなことしてないよ!!」
ミナが光の魔法を展開する。
「ユウくん、逃げて!!」
「逃げてるよ!! ずっと逃げてるよ!!」
ユウは体育館の端へ走った。
その瞬間──
影の軍勢が、
ユウの周囲だけ避けるように動いた。
ミナが驚く。
「……また……ユウくんの周りだけ……」
神崎も呟く。
「……天野……お前……何者だ……?」
ユウは泣きながら叫んだ。
「何者でもないよ!! ただの無能だよ!!
なんで俺の周りだけ影が避けるの!?
嫌われてるの!? 影に!? なんでぇぇ!!」
影の軍勢は、
ユウが逃げるたびに形を崩し、
動きが乱れ、
やがて体育館の外へ押し戻されていく。
ミナが光の魔法で追撃する。
「《ライトバースト》!!」
影が霧散する。
神崎が叫ぶ。
「よし、押し返した!!
全員、避難を続けろ!!」
ユウは壁にへたり込んだ。
「……死ぬかと思った……
なんで俺の周りだけ自然現象が暴れるの……?」
ミナがユウの手を握る。
「ユウくん……大丈夫だよ。
ユウくんは……生きてるから」
ユウは顔を覆った。
「……俺、生きてるだけで世界に迷惑かけてない……?」
ミナは優しく微笑んだ。
「かけてないよ。
ユウくんは……ユウくんのままでいいんだよ」
ユウは少しだけ落ち着いた。




