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第2話 本当に偶然です(本人談)

昼休みのチャイムが鳴ると同時に、ユウは机に突っ伏した。

全身の力が抜けて、魂が抜けかけている。


「……疲れた……俺、今日もう帰っていいかな……」


「ダメだよユウくん。午後は実技授業だよ?」


ミナが弁当箱を持って隣に座る。

彼女の笑顔は太陽みたいに明るい。

ユウはその光に焼かれそうになりながら、弱々しく顔を上げた。


「実技って……またモンスター相手のやつ……?」


「うん。でも今日は初級モンスターだから大丈夫だよ」


「俺にとっては全部上級だよ……」


ミナはくすっと笑い、ユウの頭を軽く撫でた。


「大丈夫。私が守るから」


「……ミナがいなかったら俺、今日死んでたよね」


「うん」


即答だった。


「そこは否定してよ!!」


ミナは慌てて手を振る。


「ち、違うの! その……ユウくんは運がいいから……!」


「運だけで生き残ってるって言われるのもどうかと思うんだけど……」


そんな会話をしていると、教室の扉が勢いよく開いた。


「天野!!」


黒川レンジが仁王立ちしていた。

背後には炎をまとった剣。

昼休みなのに完全に戦闘モードだ。


「お前、今日の実技で俺と組め」


「え、やだ」


即答だった。


レンジのこめかみがピクッと動く。


「なんでだよ!!」


「だって俺、足手まといだし……レンジくんの邪魔になるし……」


「分かってんならなおさら来い!! 俺が鍛えてやる!!」


「やだ……」


「やだじゃねぇ!!」


ミナが間に入る。


「レンジくん、ユウくんは私と組むから」


「なんでだよ!! お前ら二人とも回復と逃走しかできねぇだろ!!」


「逃走って言うな!!」


ユウは泣きそうになった。


結局、教官が来て強制的にペアが決められた。


「天野は白石と組め。黒川は別の班だ」


「なんでだよぉぉぉ!!」


レンジの叫びが廊下に響いた。


実技場は、学校の地下にある巨大な訓練施設だ。

人工的に作られた森の中に、初級モンスターが放たれている。


教官が説明を始める。


「今日の課題は“初級モンスターの討伐”だ。

 ただし、天野は戦闘禁止。逃げろ」


「なんで俺だけ特別ルール!?」


「お前が戦ったら危ないからだ」


「正論だけど傷つく!!」


ミナがそっとユウの肩に手を置く。


「大丈夫だよユウくん。私が守るから」


「ミナがいなかったら俺、学校来れないよ……」


「うん」


また即答だった。


「だから否定してよ!!」


教官が笛を吹いた。


「開始!」


森の中に散っていく生徒たち。

ユウとミナも慎重に歩き始めた。


「ユウくん、今日は初級スライムだから大丈夫だよ」


「スライムって……あのぷるぷるしたやつ?」


「うん。弱いよ」


「俺より?」


「……うん」


「そこは否定してよ!!」


ミナが苦笑したその時だった。


「ピギャアアアアアアアアアアアアアアア!!」


森の奥から、明らかにスライムではない叫び声が響いた。


ユウの顔が真っ青になる。


「ねぇミナ……今のスライムの声じゃないよね……?」


「う、うん……違うね……」


ガサガサガサッ!!


茂みが揺れ、巨大な影が姿を現した。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!」


それは、初級どころか中級以上の危険度を持つ

《アーマードベア》だった。


「なんでこんなのがいるのぉぉぉぉ!!」


ユウは全力で逃げ出した。

ミナも慌てて追いかける。


「ユウくん待って!!」


「無理!! 死ぬ!! 絶対死ぬ!!」


アーマードベアが咆哮し、地面を揺らしながら追ってくる。


ユウは泣きながら走った。

涙で前が見えない。

足がもつれる。


「うわあああああああああああ!!」


盛大に転んだ。


その瞬間、ユウの手から何かが飛んだ。

それは、さっきミナが渡してくれた“栄養ドリンク”の瓶だった。


瓶は空中を回転しながら飛び、

アーマードベアの頭に直撃した。


「ギャッ!?」


ベアは驚いて後ろにのけぞり、

そのまま背後の大木に頭をぶつけて気絶した。


ドサァッ!!


森が静まり返る。


ミナが呆然と呟いた。


「……ユウくん……すごい……」


「いやいやいやいや!! 俺じゃない!!

 転んだだけ!! 瓶落としただけ!!」


「でも……倒したよ?」


「偶然だよ!!」


ミナは微笑んだ。


「ユウくんって……本当に不思議だね」


ユウは地面に座り込んだまま、空を見上げた。


「……俺、なんで生きてるんだろ……」


その問いに答えられる者は、まだ誰もいなかった。


ただひとつ確かなのは──

今日もまた、ユウは“奇跡”で生き延びたということだ。


誰にも気づかれないまま。

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