第18話 奇跡の連鎖
廃工場でのゲート調査から一夜明けた朝。
ユウは布団の中で丸くなっていた。
「……俺、今日こそ休みたい……
学校行ったらまた何か起きる……絶対起きる……」
スマホが震えた。
ミナからのメッセージ。
『ユウくん、おはよう!
今日も一緒に登校しようね!』
ユウは布団の中で叫んだ。
「なんでぇぇぇ!! 優しいけど!! 優しいけど!!」
登校途中。
ミナが隣で歩きながら言う。
「ユウくん、昨日の調査……すごかったね」
「すごくないよ!! 転んだだけだよ!!
俺、転んで世界救うタイプなの!? 嫌だよ!!」
ミナはくすっと笑った。
「でも……ユウくんが近づくと、ゲートが弱くなったよ」
「弱くなったのは俺のメンタルだよ!!」
そんなやり取りをしていると──
校門の前に、
見慣れない老人が立っていた。
白い髭、丸い背中、杖をついた小柄な老人。
ユウは震えた。
「……なにあの人……怖い……」
ミナが首をかしげる。
「知らない人だね……」
老人はユウを見ると、
にやりと笑った。
「……おぬしが、天野ユウかの?」
ユウは即座に叫んだ。
「なんでぇぇぇ!! なんで俺の名前知ってるのぉぉ!!」
ミナがユウの前に立つ。
「あなた、誰ですか?」
老人は杖をつきながら近づいてきた。
「ワシはオオバ。
ただの老人じゃよ。
……おぬし、面白い“流れ”を持っておる」
ユウは絶叫した。
「流れってなに!? 俺、川じゃないよ!!
なんでみんな俺を川扱いするの!? なんでぇぇ!!」
オオバはユウの肩に手を置いた。
その瞬間──
風がふっと逆流した。
ミナが驚く。
「……また……ユウくんの周りだけ……」
オオバは目を細めた。
「……やはり“中心”が欠けておるのぉ……」
ユウは叫んだ。
「中心ってなに!? 俺、空っぽなの!? やだぁぁ!!」
オオバは笑った。
「空っぽではない。
……“どこかにある”だけじゃ」
「どこかってどこ!? 俺のどこ!? 怖いよ!!」
ミナがユウの手を握る。
「ユウくん、大丈夫だよ。オオバさんは悪い人じゃないよ」
オオバは頷いた。
「悪い者ではない。
ただ……おぬしの“流れ”が気になっての」
ユウは泣きそうになった。
「俺の流れってなに!? なんで俺だけ自然現象に嫌われてるの!?
影にも風にも世界にも嫌われてるの!? なんでぇぇ!!」
オオバは空を見上げた。
「……嫌われておるのではない。
“避けられておる”のじゃ」
「避けられてる!? なんで!? 俺、臭いの!? 違うよね!? ねぇ!!」
ミナが笑いながら言う。
「ユウくん、臭くないよ」
「そこは即答してくれてありがとう!!」
オオバは杖をつきながら歩き出した。
「……いずれ分かる。
おぬしの“中心”が戻る時が来る」
ユウは叫んだ。
「戻らなくていいよ!! 戻ったら絶対ろくなことにならないよ!!」
オオバは振り返り、
意味深な笑みを浮かべた。
「……世界の“円環”が動き出した。
おぬしは……その中心におる」
ユウは絶叫した。
「なんでぇぇぇ!! 俺、中心にいたくないよぉぉ!!」
老人はそのまま去っていった。
ミナはユウの手を握り直す。
「ユウくん……大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ!!
なんで俺の周りだけ自然現象が暴れるの!?
なんで知らない老人に“中心”とか言われるの!?
俺、ただの無能だよ!!」
ミナは優しく微笑んだ。
「ユウくんは……無能じゃないよ」
「無能だよ!!」
「ううん……ユウくんは……ユウくんだよ」
ユウは顔を赤くした。
「……ありがとう……」




