第16話 巨大ゲート、そしてまた逃げる
翌日の放課後。
ユウは校舎の廊下を歩きながら、心の底から祈っていた。
「……今日は何も起きませんように……
ゲートも開きませんように……
影も来ませんように……
ミラの兄も来ませんように……」
ミナが隣で笑う。
「ユウくん、そんなに毎日祈ってるの?」
「祈るよ!! 俺の人生、祈りでギリギリ保ってるんだよ!!」
ミナはくすっと笑い、ユウの手を軽く握った。
「大丈夫。私がいるから」
「ミナがいなかったら俺、学校来れないよ……」
「うん」
即答だった。
「そこは否定してよ!!」
そんなやり取りをしていると──
校舎全体が、
ゴゴゴゴゴ……
と低く震えた。
ユウは即座に叫んだ。
「なんでぇぇぇぇ!! 祈ったのにぃぃ!!」
ミナが窓の外を見て、息を呑む。
「ユウくん……あれ……」
ユウも窓から外を見る。
校庭の中央に、
巨大な青白い光の柱が立ち上がっていた。
「……え、なにあれ……?
え、でかくない……?
ゲートってあんなに大きかったっけ……?」
ミナは震える声で言った。
「……あれ、ゲートだよ。
でも……あんなサイズ、見たことない……」
ユウは泣きそうになった。
「なんで俺の学校にだけ巨大ゲート来るの!?
もっと広い場所あるでしょ!? 公園とか!!」
ミナがユウの手を引く。
「ユウくん、逃げよう!」
「逃げてるよ!! ずっと逃げてるよ!!」
二人が階段を駆け下りると、
校庭にはすでに教官の神崎が立っていた。
「全員、校舎から離れろ!!
これは……まずいぞ……!」
ユウは叫んだ。
「まずいってなに!? なんで毎回まずいの!?
俺、平和に生きたいだけなのに!!」
神崎は巨大ゲートを睨みながら言った。
「昔の記録に……似ている……
だが、詳細は読めん……」
ユウは震えた。
「読めないの!? なんで読めないの!?
読んでよ!! 命かかってるんだよ!!」
神崎は資料を広げる。
そこには、丸いような、丸くないような模様が描かれていた。
ミナが覗き込む。
「……この模様……どこかで……」
ユウは叫んだ。
「どこかで見たって言わないで!!
絶対ろくなことにならないから!!」
その時──
巨大ゲートが、
バチバチッ!!
と火花を散らした。
ミナが叫ぶ。
「ユウくん、伏せて!!」
ユウは反射的に地面に倒れ込んだ。
その瞬間、
ゲートから何かが飛び出してきた。
黒い霧のようなもの。
形を持たない影の塊。
ミナが震える声で言う。
「……なに、あれ……?」
神崎が険しい顔で呟く。
「……“群れ”だ……
記録にあった……“円環の軍勢”……」
ユウは絶叫した。
「軍勢!? なんで軍勢が学校に来るの!?
俺、軍勢に恨まれるようなことしてないよ!!」
影の塊がユウに向かって迫る。
ミナが前に出る。
「ユウくん、後ろに!!」
「後ろにいるよ!! ずっと後ろにいるよ!!」
影がユウに触れようとした瞬間──
風が、
ふっと逆流した。
影が揺らぎ、
形を保てなくなる。
ミナが驚いた。
「……また……ユウくんの周りだけ……風が……」
神崎も呟く。
「……天野……お前……何者だ……?」
ユウは泣きながら叫んだ。
「何者でもないよ!! ただの無能だよ!!
なんで俺の周りだけ自然現象が暴れるの!?
嫌われてるの!? 風に!? 影に!? 世界に!?
なんでぇぇぇ!!」
影の塊は風に弾かれ、
ゲートの中へ吸い込まれるように消えた。
静寂。
ミナがユウの肩に手を置く。
「ユウくん……大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ……
俺、なんで生きてるの……?」
ミナは優しく微笑んだ。
「ユウくんが……生きようとしてるからだよ」
ユウは顔を覆った。
「……俺、もう帰りたい……」
神崎は巨大ゲートを見つめながら呟いた。
「……“円環の軍勢”……
まさか……復活の兆し……?」




