第14話 九条の暴走、そしてまた巻き込まれる
翌日の昼休み。
ユウは購買で買ったパンを持って、校舎裏のベンチに座っていた。
「……今日は静かだ……平和だ……このまま何も起きないで……」
ミナが隣に座る。
「ユウくん、今日は落ち着いてるね」
「落ち着いてるよ……何も起きてないから……」
ミナは微笑んだ。
「ずっとこうだといいね」
「ほんとに……」
そう言った瞬間だった。
校内放送が鳴った。
『天野ユウ、至急、研究棟へ。繰り返します──』
ユウは絶叫した。
「なんでぇぇぇぇぇぇ!! 俺、何もしてないのにぃぃ!!」
ミナが肩を叩く。
「大丈夫だよ。きっと大したことじゃないよ」
「大したことじゃないなら呼ばれないよ!!」
研究棟。
白い壁、無機質な空気、機械の音。
ユウは震えながら中に入った。
「……ここ、怖い……絶対ろくなことにならない……」
そこへ、白衣姿の九条カナメが現れた。
「来たか、天野くん」
「来たくなかったよ!!」
九条は淡々と続ける。
「君の“運の偏り”について、追加の検証をしたい」
「やだ!!」
「安心したまえ。痛いことはしない」
「痛くないなら……」
「精神的な負荷はあるかもしれないが」
「やっぱりやだぁぁぁ!!」
ミナがユウの後ろに立つ。
「九条さん、ユウくんは……その……研究とか苦手で……」
「苦手とかじゃなくて怖いんだよ!!」
九条は無視して、奥の部屋へ案内した。
部屋の中央には、
古い機械のようなものが置かれていた。
丸いような、丸くないような、
どこかで見たような模様が刻まれている。
ユウは震えた。
「なにこれ……絶対危ないやつだよ……」
九条は機械を撫でながら言った。
「これは“旧式スキル解析装置”だ。
古い資料に載っていたものを復元した」
ミナが首をかしげる。
「古い……?」
「そうだ。だが性能は高いはずだ」
九条はスイッチを入れた。
ブゥゥゥゥゥン……
機械が低い音を立てて起動する。
ユウは後ずさった。
「やだやだやだ!! 絶対爆発する!!」
「爆発はしない」
九条は自信満々に言った。
その瞬間。
機械が、
バチッ!!
と火花を散らした。
「ほらぁぁぁぁ!! 言ったじゃん!!」
九条は眉ひとつ動かさない。
「問題ない。初期起動時にはよくあることだ」
「よくあっちゃダメだよ!!」
九条はユウに向き直る。
「天野くん。ここに立ってくれ」
「やだ!!」
「大丈夫だ。精神的な負荷は──」
「精神的な負荷がある時点で大丈夫じゃないよ!!」
ミナがユウの手を握る。
「ユウくん、私がそばにいるから」
「ミナぁぁぁ……」
ユウは震えながら機械の前に立った。
九条がスイッチを押す。
ブゥゥゥゥゥン……
機械が光り始める。
ユウは目をつぶった。
「うわぁぁぁぁ!! 死ぬぅぅぅ!!」
九条が呟く。
「……反応が……おかしいな」
ミナが不安そうに言う。
「え、どういう意味……?」
九条は機械のパネルを見つめた。
「通常なら“スキルの波形”が表示されるはずだが……
天野くんの波形は……乱れている」
ユウは叫んだ。
「乱れてるってなに!? 俺、壊れてるの!? 人間として!!」
九条は首をかしげる。
「……いや、壊れているわけではない。
ただ……“中心”が見えない」
ミナが息を呑む。
「中心……?」
九条は続ける。
「スキルには必ず“核”がある。
だが天野くんのスキルには……核がない。
まるで……“外側だけが存在している”ようだ」
ユウは絶叫した。
「外側だけってなに!? 俺、中身ないの!? 空っぽなの!? やだぁぁぁ!!」
九条は淡々と結論を述べた。
「……興味深い」
「興味深くないよ!!」
その瞬間。
機械が、
ドンッ!!
と大きな音を立てて揺れた。
九条が叫ぶ。
「まずい、暴走だ!!」
ユウは絶叫した。
「ほらぁぁぁぁ!! 絶対こうなると思ったぁぁ!!」
ミナがユウを抱き寄せる。
「ユウくん、伏せて!!」
機械が光を放ち、
部屋中に火花が散った。
そして──
ドォォォォォン!!
機械が爆発した。
煙が立ち込める。
九条は咳をしながら言った。
「……ふむ。やはり旧式は不安定だな」
ユウは泣きながら叫んだ。
「俺、なんで生きてるのぉぉぉ!!」
ミナはユウの背中を撫でた。
「ユウくん……大丈夫だよ。生きてるから」
「生きてるのが不思議なんだよ!!」
九条は壊れた機械の破片を拾い上げた。
「……この素材、どこかで見たような……」




