第12話 逃げる覚悟、そしてまた偶然
ゲートが体育館に出現した翌日。
ユウは保健室のベッドで、天井を見つめていた。
「……俺、なんで毎日こうなるんだろ……」
ミナが椅子に座り、心配そうに覗き込む。
「ユウくん、昨日のゲート……怖かったね」
「怖かったよ!! 体育館でゲート開くとか聞いてないよ!!
俺、体育館は安全だと思ってたのに!!」
ミナはくすっと笑った。
「でも、生きてるよ?」
「それが一番怖いんだよ!!」
ミナはユウの手を握った。
「ユウくん……今日、ちょっと話したいことがあるの」
ユウは不安そうに身を起こした。
「な、なに……? 怖い話じゃないよね……?」
「怖くないよ。たぶん」
「たぶんってなに!?」
ミナは少しだけ目を伏せた。
「……ユウくん、最近……危ないことが多いよね」
「多いよ!! 毎日命の危機だよ!!」
「だから……私、もっと強くなりたいの」
ユウは驚いた。
「ミナ……」
「ユウくんを守れるくらい……強くなりたい」
ユウは胸が熱くなった。
「……俺なんかのために……?」
ミナは微笑んだ。
「ユウくんは……大事だから」
ユウは顔を赤くした。
「……ありがとう……」
その時だった。
校内放送が鳴った。
『白石ミナ、至急、教官室へ。繰り返します──』
ミナは立ち上がった。
「……呼ばれちゃった。ユウくん、ここで待っててね」
「う、うん……」
ミナが保健室を出ていく。
ユウはひとり残され、ため息をついた。
「……俺、ミナに守られてばっかりだな……」
ベッドから降り、窓の外を見る。
校庭の隅に、古い石碑のようなものが置かれているのが見えた。
(……あんなのあったっけ……?)
なんとなく気になって、ユウは保健室を出た。
校庭の隅。
古い石碑は、苔むしていて、ところどころ欠けていた。
表面には、丸いような、丸くないような、
どこかで見たような模様が刻まれている。
ユウはしゃがみ込み、石碑を触った。
「……なんだろ、これ……」
その瞬間。
石碑が、
ほんの一瞬だけ、
かすかに温かくなった。
ユウは気づかない。
ただの気のせいだと思った。
「……なんか、ぬるい……?」
風が吹き、落ち葉が舞う。
石碑の模様の一部が、落ち葉に隠れた。
ユウは立ち上がった。
「……俺、ミナを守れるかな……」
その時。
背後から声がした。
「ユウくん!」
ミナが駆け寄ってくる。
「ごめん、待たせちゃった!」
「ううん……俺も今来たところ……」
ミナはユウの顔を見て、少しだけ驚いた。
「……なんか、ユウくん……雰囲気変わった?」
「変わってないよ!? 俺はいつも通り無能だよ!!」
ミナは笑った。
「ううん……なんか、ちょっとだけ……強そう」
「強そう!? 俺が!? そんなわけないよ!!」
ミナはユウの手を握った。
「でも……ユウくんがそばにいると、私、安心するの」
ユウは照れくさくて目をそらした。
「……俺、ミナを守れるようになりたい……」
ミナは嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、一緒に頑張ろうね」
ユウは頷いた。
「うん……逃げるけど……逃げながら守るよ……」
ミナは笑った。
「それでいいよ。ユウくんらしいもん」




