第11話 ゲート異常、そしてまた巻き込まれる
月曜日の朝。
ユウは学校の昇降口で、靴箱の前にしゃがみ込んでいた。
「……なんで俺の週末って毎回サバイバルなんだろ……」
ミナが隣にしゃがむ。
「ユウくん、昨日の図書館……大変だったね」
「大変どころじゃないよ!! ミラの兄に殺されかけたんだよ!?
図書館で!! 静かにしなきゃいけない場所で!!」
ミナはくすっと笑った。
「でも、生きてるよ?」
「それが一番不思議なんだよ!!」
そんなやり取りをしていると、校内放送が鳴った。
『全校生徒は体育館に集合してください。繰り返します──』
ユウは震えた。
「……絶対なんか起きてる……」
ミナがユウの手を引く。
「行こう、ユウくん」
体育館にはすでに生徒が集まっていた。
教官の神崎が壇上に立ち、険しい表情で話し始める。
「全員、静かに聞け。
今朝から、世界中でゲートの不安定化が報告されている」
ざわつく生徒たち。
ユウは小声でミナに囁いた。
「……ゲートの不安定化って……なに……?」
「うーん……なんか、揺れたり、光ったり、変な音がしたり……」
「全部怖いよ!!」
神崎は続ける。
「原因は不明だ。だが、過去の記録に似た現象がある」
ユウは首をかしげた。
「過去の記録……?」
ミナも小声で呟く。
「そんな話、聞いたことないな……」
神崎は古い資料を掲げた。
紙は黄ばんでいて、ところどころ破れている。
「この資料には、昔のゲート暴走の記録が残っている。
だが詳細は不明だ。読めない部分が多い」
資料の端に、
丸いような、丸くないような、
どこかで見たような模様が描かれていた。
ユウは気づかない。
ミナも気づかない。
誰も気にしない。
ただの古い資料だ。
神崎は続ける。
「今日の放課後、上級生と教官でゲートの調査に向かう。
1年生は校内待機だ」
ユウは胸を撫で下ろした。
「……よかった……今日は安全……」
その瞬間。
体育館の床が、
ゴゴゴゴゴゴ……
と低く震えた。
ユウは絶叫した。
「なんでぇぇぇぇぇぇ!! 安全じゃないのぉぉぉ!!」
天井の照明が揺れ、
体育館の中央に、
青白い光がゆらりと浮かび上がる。
ミナが叫ぶ。
「ゲート反応!!」
神崎が前に出る。
「全員、後ろへ下がれ!!」
ゲートが開き、
中から小型モンスターが飛び出してきた。
《シャドウインプ》
影のように素早く動く小型モンスターだ。
ユウは震えた。
「無理無理無理無理!! 影は嫌だ!! 影は俺を嫌ってる!!」
ミナがユウの前に立つ。
「大丈夫、私が──」
その瞬間。
シャドウインプがユウに向かって飛びかかった。
ユウは反射的に後ろへ飛び退いた。
その拍子に、
体育館の床に置かれていた“掃除用具入れのモップ”を蹴飛ばした。
モップは空中を回転しながら飛び、
シャドウインプの顔に直撃した。
「ギャッ!?」
シャドウインプはそのまま床に落ち、気絶した。
静寂。
神崎が呟いた。
「……天野。お前、また……」
「違う!! 俺じゃない!! モップが勝手に!!」
ミナは笑いながら言った。
「ユウくん、すごいね」
「すごくないよ!! 俺は無能だよ!!」
神崎はシャドウインプを確認しながら、
床に落ちたモップを拾い上げた。
「……このモップ、柄が古いな。いつの時代のだ?」
ただの独り言だった。
誰も気にしない。
ユウは泣きそうになりながら叫んだ。
「俺、なんで生きてるのぉぉぉ!!」
ミナは優しく微笑んだ。
「ユウくんが……頑張って逃げたからだよ」
「逃げただけだよ!!」
「うん。でも、それでいいんだよ」




