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第10話 ミラの兄、そしてまた逃げる

日曜日の昼下がり。

ユウは珍しく平和な時間を過ごしていた。


「……今日は任務もないし……ミナと図書館で勉強……平和……」


ミナが隣でノートを広げている。


「ユウくん、ここの公式覚えてる?」


「覚えてないよ……」


「じゃあ一緒にやろうね」


ミナは優しく微笑む。

ユウは少しだけ心が軽くなった。


(……こういう日がずっと続けばいいのに……)


そう思った瞬間だった。


図書館の窓ガラスが、

バァンッ!!

と大きな音を立てて割れた。


「ひぃぃぃぃぃぃ!!」


ユウは椅子ごとひっくり返った。


ミナが叫ぶ。


「ユウくん、下がって!!」


割れた窓から、黒い影が飛び込んでくる。

長い髪、鋭い目、獣のような気配。


ミラだった。


「……ユウ」


「え!? なんで図書館に!? 静かにしてよ!!」


ミラはユウを見つめ、静かに言った。


「……逃げて」


「逃げてるよ!! いつも逃げてるよ!!」


ミラはユウの腕を掴んだ。


「早く。来る」


「来るってなに!? 誰が!? なんで!? 俺なにしたの!? してないよね!?」


ミラは答えない。

ただ、窓の外をじっと見つめている。


次の瞬間。


図書館の外の地面が、

ドンッ!!

と大きく揺れた。


まるで巨人が歩いているような振動。


ミナが震える声で言った。


「……ミラちゃん……まさか……」


ミラは小さく頷いた。


「兄が来た」


「兄!? なんで!? なんで兄が来るの!? 俺関係ないよね!? ねぇ!?」


ミラはユウの腕を強く引いた。


「逃げて。あの人は……ユウを殺す」


「なんでぇぇぇぇぇぇ!!」


図書館の入口が吹き飛んだ。


そこに立っていたのは、

ミラと同じ青い瞳を持つ、

しかし圧倒的な威圧感を放つ男だった。


「……ミラ。戻るぞ」


低く、冷たい声。


ミラがユウを庇うように前に立つ。


「嫌。私は……まだ帰らない」


男はミラを一瞥し、すぐにユウへ視線を向けた。


「……お前か」


「え!? 俺!? なんで!? 俺なにしたの!? してないよね!? ねぇ!!」


男は淡々と言った。


「……理解不能だ」


「理解不能ってなに!? 俺そんなに変!? 変かもしれないけど!!」


ミナがユウの前に立つ。


「ユウくんに近づかないで!!」


男はミナを見て、わずかに眉を動かした。


「……光属性か。邪魔だ」


ミナは震えながらも光のバリアを展開する。


「ユウくん、逃げて!!」


「逃げてるよ!! ずっと逃げてるよ!!」


ユウは図書館の奥へ走り出した。

本棚の間を縫うように逃げる。


男が追う。


ミラが追う。


ミナも追う。


図書館は大混乱だった。


「なんで俺が追われてるのぉぉぉ!!」


ユウは必死に走り、

角を曲がった瞬間、

足元に置かれていた“本の山”につまずいた。


「うわああああああ!!」


盛大に転ぶ。


その拍子に、

本棚の上に置かれていた“古い石板”が落ちてきた。


カランッ!


石板は床に転がり、

ほんの一瞬だけ、

淡い光を放った。


ユウは気づかない。

ミラも、ミナも、男も気づかない。


ただの古い石板だ。


男はユウに手を伸ばした。


「……終わりだ」


「終わりたくないよぉぉぉ!!」


その瞬間。


石板が、

ピシッ……

と小さくひび割れた。


男の動きが一瞬だけ止まる。


ミラが叫ぶ。


「今!!」


ミナが光の魔法を放つ。


「《ヒールライト・バースト》!!」


光が男の目を眩ませる。


男は舌打ちした。


「……今日は引く」


そう言って、影のように消えた。


静寂。


ユウは床に倒れ込んだ。


「……死ぬかと思った……」


ミナが駆け寄る。


「ユウくん、大丈夫!?」


「大丈夫じゃないよ……」


ミラはユウを見つめ、静かに言った。


「……ごめん。巻き込んだ」


「巻き込んだってレベルじゃないよ!!」


ミラは少しだけ目を伏せた。


「でも……あなたは、まだ死なない」


「なんでそんな怖いこと言うの!?」


ミラは答えなかった。

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