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巫女と依巫  作者: 若宮 不二
第1章
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8話 お引越し 1 ~side雪羽

 あたしがアースリンドに召喚されて3日目。


 意識もはっきり戻ったし、体力面ではまだまだだけど 怪我は治ったようだった。

 確かに体に痛むところは無いけれど、ものすごくだるい。


 朝ご飯もまだだし、着る服もないので ベッドでゴロゴロしていると

 朝一番から部屋を移された。


 前の部屋は病室だったそうで、普通の部屋に引っ越しをするのだそうだ。

 別に荷物はないので、自分だけの移動。


 昨日は天使服だったけど、やっぱり寝巻きだったみたいで ライアさんは着替えを用意してくれていた。


 ピンクとオフホワイトで、スカートの部分がふわっと膨らんでいる(内側に何層もレースみたいなのが付いている)ワンピース。

 さらに

 繊細(せんさい)なレースが

 フリフリっと付いていて

 とっても

 とっても

 可愛らしい、乙女なデザインで……

 着る前は、ちょっと嬉しかったりしたんだけど

 鏡に映ったのは……


「ホラー……入りましたぁ……」


 思わず何処かの大衆居酒屋(行った事ないけど)のセリフを真似てしまいたくなる程の 恐ろしい物体で……


 一言で言えば

『お嬢様のミイラ』

 お父様に愛されすぎたお嬢様が、不慮(ふりょ)の事故で命を落とした後も、娘の死を受け入れられないお父様に毎日世話をやかれ、彼女が生前好きだったドレスを着せ替えられたりしてる……


 そんな、イメージ。

 我ながら、悲しい。

 でも それくらい、恐怖を感じる程に似合わなかった。


 だって……


 髪の毛は屋上で切られたままで、不揃(ふぞろ)いかつ(いびつ)なショートカットだし、

 顔はげっそりしてるし……(こっちの世界に来てさらに(ほほ)はこけてしまった)


 何より、肌がカサカサで 色が黒いので、乙女なピンクと合わないのだ。


 もっと地味なのをライアさんにお願いしたら、ライアさんも似合わないと思ったのか、用意しますと言ってくれた。 取り合えず、新しいのが用意できるまでは、この服で過ごさないといけないんだけど……


(誰にも()いたくないです。)


 あたしが気にしていると、

 ライアさんが大判のスカーフみたいな布を

 ライアさんが着ているドレスの前に付いてる(ひだ)の中から するりと取り出して、

 あたしの頭に(かぶ)せた。


(どこに隠してたの???)


 あたしが、びっくりしていると


「女官の制服には、『(かく)し』があるのですわ。」


 とペロっと(ひだ)をめくって、見せてくれた。

 そこにはポケットが沢山あって、いろんな物が入っていた。


 プロの、七つ道具ってやつですか!


 女官の服はデザインが決まっていて、見習い以外は 比較的自由に生地が選べるそうです。

 役職とかは胸のブローチの花の数で分かるようになっていて ゼロから女官長の5つまでで……

 ライアさんは当然 花5つです。


 ライアさんのドレスは臙脂(えんじ)色でしっかりした生地だけど光沢は抑えた感じ。

 ライアさんの濃い色の金髪によく似合っています。

 ドレスの(すそ)が床に付きそうな長さなのに、全然動きに支障がない。

 踏んだりしないし、ひっかけたりしない。(単に、着慣れているから?)

『隠し』に道具なんかが いっぱい入ってたのにドレスがふんわりしているだけにしか見えない……

 恐るべし、女官服!


 あたしが感心していると


「男性には『隠し』のことは秘密ですよ」と口止めされた。


 なんでも、

「せっかく()ましてても、ドレスの中が道具だらけだと思われては、興ざめだから」 なんだそうだ。

 そういうものなんだろうか?


 まあ、顔はスカーフで見えないようになったんだから、一安心でしょと、

 車椅子に乗せられて部屋を出た。

 部屋の外に男の人が2人立っていた。


「移動します。宜しくお願いします」

 ライアさんが2人に頭を下げた。


 いかにも、警備員みたいな がっしりとした体型の人たちは、無言で軽く敬礼して

 あたしとライアさんの前後に付いた。


 ライアさんがあたしに、

「警護の衛兵(えいへい)ですわ」

 と教えてくれた。


 薄い布ごしに見える範囲でだけど なるほど、そんな格好です。

 剣?下げてるし、服も軍服っぽい。 甲冑(かっちゅう)とかは着てないんですね。


(この人たち、ドアの外にずっといたのかな~? SPみたいに?)


 自分はそんなに危険なのだろうかと、ちょっとドキドキしながら

 エレベーターホールみたいな所に押して行かれた。

 衛兵さんが壁の操作盤を押すと、床の模様が光って、ヒュッ軽い浮遊感と落下感を感じたら 同じような場所にいた。

 車椅子なんて大げさだと思ったけど、乗っておいて良かったかも……

 ちょっとクラっときた。

 廊下へ出ると、入った時の廊下とは全く違ってて……


 空間移動?したってことかな?

 上下移動だけじゃなさそうで―――― ほら、光の方向とか違うし。


 どこまで移動したんだろ?

 これも魔法?? 

 魔法って便利~~~!


 廊下の中央には青い絨毯が敷かれていて、壁の装飾とかもホテルっぽくなっていた。

 壁に絵とか掛けてあるし……

 宿泊料高そうなんですけど。


 その廊下の一番奥の部屋まで、あたしは連れて行かれた。



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