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巫女と依巫  作者: 若宮 不二
第1章
6/49

6話 召喚したものの 2 ~sideシード

2話の続きの話です。

 〈取り巻きA〉ことロイス・エッカートに、その子供を投げ棄てられた時、俺は頭が沸騰するかと思った。


 まず、この子供(よりまし)を粗雑に扱った事に、ものすごく腹が立った。

 ジジイ共の言っていることにも腹が立った。


(俺の召喚した娘は、依巫(よりまし)で、尊ばれて当然の(まれ)なる存在のはずだ!)

(巫女と比べても、決して劣る存在ではない!)


 そう心の中で叫んでいた。


 早く駆け寄って、助け起こしたかったが、

 俺が頭で考えているのとは別に、俺の心は 今の状況に少なからずショックを受けていたようで

 不覚にも固まってしまい 動けずに、ただ突っ立っていた。


 皆がぞろぞろと出て行って、呪縛が解けたように 俺はあわてて少女に駆け寄った。


 よかった。

 まだ息がある……


 応急処置で治療魔法をかける。

 得意の分野ではないが、一刻を争いそうな状態だった。

 見た目より、容態は悪いのかもしれない。


 念話で治療法師のサリエスに助けを求める。


 転移ですぐ来てくれた。

 院に移して集中治療してくれることになり、彼女を抱えた。

 あまりの軽さに怖くなる。

 体の冷たさに背筋が凍りそうだった。


 なぜ?


 今、初めて会ったのに。

 なのに、この命が消えるのが恐ろしい。

 助かって欲しい。

 俺の召喚魔法が不完全で、彼女をこんなに傷つけたのだろうか?

 自分が呼ばなければ、死の淵をさまようことも無かった?

 俺のせい?

 俺のせいなのか?

 なぜ、こんなに心が乱れるのだろう?

 自分が召喚した少女が、瀕死の状態だから……

 只、それだけなのだろうか?


 サリエスはチームを組んでくれて、彼女は集中治療室の中。

 サリエスはこの国で最も優秀な治療法師だ。大丈夫。

 きっと助かる。


 祈ることしか出来なかった。


 (どうか、助かってくれ……)


 あのサリエスをして、治療には数時間を要した。

 だが、幸い命に別状は無く、骨折や内臓の破裂なども粗方治したそうだ。

 あとは。2・3日治療を続ければ完治するとのことで、安心した。

 個室に移したところで、依巫(よりまし)である この少女の看病と世話は、女官長のライアが受け持ってくれることになった。

 ライアなら大丈夫。

 安心して任せられる。

 サリエスが手配してくれたのだろう。


 (感謝しないといけないな。)


 そして、俺は召喚と応急治療で魔力をはぼ使い切り、フラフラになりながら、報告の為に執務室(しょくば)へと向かった。

 魔道府(まどうふ) ラズモント執務長官に今日の報告をしようと執務室に入ると、長官は既に帰宅していて、副長官に明日報告するよう言われた。


 サリエスの治療中に念話で報告はしていたので、召喚の結果は皆に知らされているようだ。

 俺からの報告以外の筋書きが、執務室内に飛び交っているらしく「大変だな。頑張れよ。」などと執務室の面々から励まされた。


(どんな話になってるんだろう……) 


 頭をかかえながら、部屋に戻って今日はもう寝ようと居住棟へ向かいかけたが

 ふと あの子がちゃんと眠れているか気になった。


(ライアが付いているんだから、大丈夫に決まっているのは判っている……)


 でも、一度気になった事は頭から離れない。

 疲れているのに、こんなことで悩むのもバカバカしい。


(そう。 ちょっと、気になったから容態を聞きによっただけ……)


 病室に向かう廊下で、ライアに出くわした。

 容態を聞きに寄ったと言うと、生温かい目で微笑まれ


「安定してるわ。 今は、よく眠ってらっしゃいます。 でも、折角来たんだから、お顔だけでもご覧なさいな」

 と半ば強引に部屋に連れ込まれた。


 少女は、よく眠っていて規則正しい寝息が聞こえた。

 丸くなって眠る姿は、まるで猫だ。

 ライアに、よろしくと頼んで、俺は疲れた足を引きずるように自室に戻り、ベッドに倒れこむと そのまま深い眠りに落ちた。


 濁っていく意識の中で、少女が目を開けたらどんな顔になるのかと ぼんやり考えていた。 



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