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巫女と依巫  作者: 若宮 不二
第1章
5/49

5話 ここは?? ~side雪羽

 

  (う~ん)


 よく寝た。

 こんなに、ゆっくり寝たの初めて?

 目を開けても なんかボヤける……


 目をゴシゴシこすって しぱしぱすると

 ピントが合ってきた。


 天国のままだ。

 よかった。夢じゃなかったんだ。


 うーんと伸びをする。


(気持ちいいなぁ~)


 お布団でたっぷり寝たのって何年ぶりだろ?

 お父さんに女が出来て出てってからだから5年?6年?

 目覚めて何処も痛くないなんて!

 天国万歳!



 ぐぐ~~ぐぐぅ



 お腹、鳴った。

 お腹が鳴ったよ!

 へぇー

 死んでも お腹、空くんだ……

 っていうか

 すっごいペコペコなんだけどっ!

 空っぽだと胃が壊れちゃうよ?

 死後の世界で胃潰瘍 気にするって変だけど。


 なんか、なんか、なんか食べたい!


 天国なんだから、食べ物あるでしょ?

 少なくともリンゴはあるよね?

 自信ないけど。


 とりあえず、起きよう。

 この部屋に食べ物は無さそうだし……

 どっかに食堂とかあるんじゃない?

 天国なんだから無料だといいなぁ。


 ベッドから降りて 部屋を出ようとしたら

 ペシャリ。


 あっれ?


 足が立たない。


 ベッドに掴まって立ち上がろうとしたけど

 足に力が入らない!


 なんで?

 ってバタバタもがいていたら ベッドカバーやら布団やらが絡まって

 床の上に 山が出来た……


 ううううう。

 なぜだ?



 コンコンコン


 ドアがノックされた。

 びっくりして凍りつく。

 解らない言葉がして、ドアが開く。


 入ってきたのは、男の人。


 そう、例えるなら……

 スター〇ォーズのジェ〇イの騎士な人だ。ちっこい緑のお爺ちゃんじゃないよ!

 年齢は30歳位かな?

 くるぶし位まである丈の長いフードつきのマント?みたいなのを羽織って、

 厚手の黒い布マントの裾とかふちには銀糸で刺繍がされていて、映画より上等の感じがする。

 騎士?魔法使い?

 長身180cm超えるよね190位あるのかな? スラッとしていても、でっかいなぁ。



 ここが天国なら、この人は天使?神様?


 どっちにしても、そのイメージからは外れるような…… 


 なんて事を固まりながら考えていると

 向こうもあたしの状態に気付いて、ぎょっとしたみたいだった。

 そして、つかつかとあたしに近寄ると


「+++++++。」

 解らない言葉を一言かけて、あたしの手首をつかんだ。


 ビクッと体が震える。

 あたし、人に触れられるのヤなんだけど!


(何すんの?あたしいけないことした?この男の人表情(かお)が怖いよっ!)

 ジェ〇イのちょっと怒ったような顔に、じわりと恐怖心が持ち上がる。


(放してっっ!)


 手を振り放そうと、もがくけど放してくれない!


(うううう~ヤだよぅっ!怖いよぅ!)


「++++++、+++++++++++……」


(言葉わかんないよっ! もう!放せよっ!)

 必死で手を振るが、動きが緩慢な気がする……


(あれっ? 手に力入んない? そういえば立てなかったし……)


 自分の体の状態と、人に触れられるという最も苦手な状況にフリーズしかけていたら、手を開かされ、指に何かをはめられた。


(指輪だ)


 何? 何だ? なぜ指輪?


「これで言葉が通じるはず。 俺の言っていることが解る?」

 低いけれども、涼しげなよく通る声でその人は言った。


 (……あ。日本語。)

 覗き込まれるように、じっと見つめられて恐怖とは別の緊張感が込み上げてくる。


「……はい」

 なんとか一言搾り出せた。

 手も放してくれた。


「よかった。言葉違うから……その指輪が通訳してくれる」

 ジェ〇イがフッと軽く微笑む。


 う。

 この人、かっこいい!

 恐怖と緊張で気が付かなかったけど、かなりの美形ですよ。

 真顔はキツイ感じで心底怖く感じるけど、笑うと印象変わるなぁ~

 他人に微笑まれることなんか無い人生だったから、こんな男前さんに笑いかけられるだけで、赤面してしまう……



 笑ってなかったら、ちょっと、いや、かなりとっつき難い雰囲気なんだけど、笑うと目つきの鋭さがフッと緩む。ギャップが凄し!

 瞳の色が 薄めのオリーブグリーンで

 髪の毛の色は……

 暗い金髪?黒に近い茶?端っこのほうは金にみえるよなぁ

 何色って言うんだろ?色抜けていくのかな?


 なんて、つい まじまじと見ていたら



 ぐ~ぐぐぅ~~


 またもや

 腹が!


 はっ!はずかしいいいいい!

 人生初、男前に微笑まれておいて

 なぜに

 鳴るよ?あたしの腹。

 お約束ともいえるが、あたしは超絶美少女でも最強でもないぞ……



 案の定、ジェ〇イはプッと噴出すと、表情をかなり柔らかくして

「元気になった証拠だな。俺の名は、シーウェルド・レスコス。ようこそ、アースリンドへ」

 そう言うと握手した。スッと握ってパッ放す軽いもので、気づけば離れてた。

 立ち上がれない、あたしを支えて立たせてくれて

 テーブルまで連れてきてくれた。

 人に触れられるのは苦手なんだけど、なんだか すごくそっと支えてくれてる感じがして

 不思議なことに、もう恐怖感は無くなってた。


「少し待っていて。何か持ってこよう」


 と、さわやかに出て行った。



 声出せなかった…… ありがとうとか…… 人としてダメだろ、あたし。

 そしてシーウェルド・レスコス、親切すぎ。 こんなに親切にされて逆に居心地悪いよ……



 親切馴れしてない あたしは不安になる。

 待てと言われたので、椅子に腰掛けて待つが ふと疑問に思う。


(アースリンドって何? 場所? 天国にも地名あるとか? まさか……?)


 そう、死んだにしては やけに感覚が生々しいのだ。

 腹は減るし

 自分の手をつねってみても、痛いし

 息、してるし

 止めると苦しいし……


 やだな……


 あたしは、ヤな展開の予感に暗くなってきた……


 そういえば、あたし下着だったはずなんだけど、長袖でゆったりしたワンピースを着せられていた。

 白で、厚手のたぶん木綿地、所謂(いわゆる)天使服?

 お笑いコントの天使が着ている服のまんま。

 生地は(なめ)らかで、上等そう。

 寝巻きなんだろうか?

 ブラははずされていたけど、元から胸は無いから問題ないけど……

 悲しいかな ブラをしてないと、丸っきりの子供だ。



 ドアがノックされた。

 はいと答えると

 さっきのレスコスさんと、小太りの小母さんが入ってきた。

 ちょっと前はすんごい美人だったっぽい、その小母さん女がトレーにのせた食事を出してくれた。


「おまたせしました。

 私はお世話係りのライア・パーキンスでございます。ライアとお呼び下さいまし。

 姫様。 さ。冷めない内にどうぞ召し上がれ」

 元美人小母さんが言う。


 (姫様って!何?!)


「あ、わたし 永山(ながやま) 雪羽(ゆきは)と申します」

 あわてて名乗り、お辞儀をする。


 (姫じゃないですっっ)


 それにしても、すごい顔一杯笑顔だ!ライアさん!

 満面の笑みってまさにコレ!

 こんなに笑顔で話しかけられたのも、親切にされたのはじめてデス!

 はい。

 ましてや見ず知らずのお方に……

 目一杯微笑まれて、相手が小母さんでもドキドキしてしまいます。


「ナーガ・ヤーマ・ユキハ様。……ナーガ様とお呼びしてもよろしいですか?」

 発音しにくそうにライアさんは言った。


(しまった。外国っぽく 逆に言わなきゃ)


「永山が姓で、雪羽が名前です。ユキハ・ナガヤマです。ユキハでいいです」


「失礼いたしました。では、ユキハ様とお呼びしても?

 ユキハ様はここに召されて2日間、何も口にされてないので、今はこんな食事で申し訳ございません……

 あまりしっかりした物だと体が受け付けませんので。お許し下さいませ」


 ライアさんが、すごくすまなさそうに言った。


(そそそそ、そんな丁寧な言葉遣いであやまらないで下さい)


「いえ。様なんて付けないで下さい。 おいしそうです。いただきます」

 もう、どう対応していいのかわかんないので

 とにかく、食べる、いただきます。

 メニューはポタージュみたいな具のないスープと、皮の柔らかいパン、コップに入ったミルク。

 お腹が減っていたってのもあると思う。でも


 五臓六腑にしみわたるぅ~~~って、こういうことなんだって分かった。


 スープはきっといろんな材料が溶けて入ってるんだろうなと思わせる、栄養ありそうな味がした。

 パンは 白パン? 皮も柔らかくって まだ ほんのり温かかった。

 ミルクは……牛乳じゃないと思うんだけど、濃厚で美味しかった。


 あんまり美味しくて、もくもくと食べてしまった……

 最後のミルクを ぷはっと 飲み終えると、なんだか気恥ずかしくなった。

 二人とも、ほんわかした目で見てくれていた。


「ごちそうさまでした。  美味しかったです。ありがとうございます」

 照れてしまって、うつむたまま お礼をどうにか言えた。

 お口にあって良かったと、またまた笑顔で対応されて

 どうやら迷惑に思われてないようなので、ちょっと安心して


 思い切って、自分から聞いてみた。

「あのう。ここは何処ですか? なんで私は此処に居るんでしょう?」



 返ってきた答えに驚いた……

 あたしは死んだわけじゃなくて、召喚されたらしい。


 召喚って! 何よっっっ???


 あんまり突飛な内容で現実味が無い。


(わぁ~。 小説にありがちな異世界召喚物じゃ~ん。

 なんか、すっごい最強になってたりするの?あたし! 魔王やっつけちゃう?勇者?逆ハー?王子様?)


 とか、ちょっと期待したんだけど……

 微妙な立ち位置であるような……


 とにかく

 レスコスさんが説明してくれた内容を整理してみる。


 まず

 ここは魔法のある世界で、大陸全土を巻き込む大戦争がおこりそうで、

 この国(アースリンドって国名らしい)は負けそうである。


 で、神の力を借りて攻めてくる敵を追い払おうと

 昔から伝わる方法で

 神の声を聞き、伝える、巫女(みこ)

 神の器れ物(いれもの)になり戦神と成る、依巫(よりまし)

 魔法で召喚することにしたらしい。


 この世界の人間なら、みんな持っている魔力が邪魔をして

 巫女や依巫になれないそうで、仕方なく他の世界から召喚するのである。


 ところが、巫女は普通に召喚されたが

 依巫(よりまし)はボロボロのあたしが召喚されてしまい

 新たに召喚するかどうか検討中だそうな。


 あたしが()めている指輪は依巫(よりまし)用の物で新しい人が来るまでは貸してくれて

 衣食住も保障してくれる。



 レスコスさんの職業は上級魔道師。この人があたしを召喚した。

 ライアさんは女官長であたしの世話係もしてくれる。



 とりあえず、今聞いた情報はこれ位。

 ゴメン、一気にいろいろ説明されても無理だから……


 あまり展開についていけてないあたしに

「心配しなくて大丈夫。今は体を治すことだけ考えて」と ライアさんは気遣ってくれた。


(やさしい人だなぁ~)

 あたしってお人好しだろうか?

 怒ったりするところなんだろうか?

 でも、怪我治してくれたしなぁ……


 そして、ライアさんは ひまわりみたいな明るい笑顔を振りまいて

「疲れたでしょう、ゆっくり休んで下さいね」と、

 レスコスさんをそのふくよかな体で押し出すようにして出て行った。


 ……疲れた。


 実は、まだ治りきってないんだろうか……

 体がだるい。

 考えること、いっぱいできたのに、頭がぼおっとする。


 とりあえず、すぐにどうこうするわけじゃないみたいなので、寝てから考えることにした。


 (あたし、寝てばっかりだなぁ~)


 まあ、眠れる内に寝とくのは悪くないと思う。

 体力回復と、頭の中を整理するために、あたしはとっとと寝た。



眠れる時に眠っておき、食べれる時に食べておくのが雪羽の基本

です

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