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巫女と依巫  作者: 若宮 不二
第2章
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5話 雪羽の休日 ~side雪羽


 今日はお爺ちゃんも外出していて、1日いないので

 お休みになった。

 好きな事をして過ごしていいって言われたけど、特に出来る事もない。

 お買い物に行く お金も持ってないし、街に出たことが無いから 勝手が分からない。

 あんまり外に行っちゃいけないみたいだし……

 庁内をぶらぶらしていると、どうやら神殿の近くまで来てしまったみたいだ。


 向こうから歩いてくるのは……


 ロニーさんとニーナさんだ。

 ニーナさんは、あたしの代わりに召喚された依巫(よりまし)で ロシア人だ。

 すごくキレイなお姉さん!

 28歳って言ってたけど、そんな年には見えないっていうか……夢見る乙女風な、ほんわか 天然な人だ。

 肌が抜けるように白いのは、この世界に来るまで、ずっと病院のベッドの上の暮らしだったから。 ニーナさんは、子供の頃から心臓に障害があって 移植待ちをしている状態だったそうだ。

 でも提供者は見つからず……体は限界に来ていて、あと数ヶ月の命と診断された。

 それが ロニーさんに召喚されて、サリエス先生が魔法治療で治して、

 今では歩いたり 普通に生活出来るらしい。

 (やっぱり サリエス先生って、スゴイ人だったんだ!)

 召喚者のロニーさんは、ニーナさんに一目惚れして 猛アタックの末、 現在二人はラブラブ同棲中だ。


「ニーナさん、ロニーさん。 こんにちは」

 手をつないで歩いてくる二人に 声をかける。


「あら。 ユキハちゃん、こんにちは」

「ユキハちゃん? こんな所でどうしたの?」

 二人そろって、まぶしい笑顔。 

 幸せがあふれてますね。

 でも、背の高い二人が目の前に並ぶと、壁のようです……


「天気がいいので、お散歩です。 お二人は? 神殿に御用ですか?」


「ええ。 神殿で依巫の試験だったの。 本当に私に神を降ろせるか、ちょっと試されたのよ。

 それで、ホラ。 これが 依巫の衣装なんだって。」

 クルリと回って衣装を見せてくれる。

 三条さんに見せてもらった 巫女装束と全く同じデザインで、色だけが真っ白だ。


 白装束……

 ニーナさんはウェディングドレスみたいだって言うけど、白ずくめの装いからは 他の事が連想されて笑えなかった。


「……依巫に、試験なんて あるんですね」

 話をそらす。


「本当に降ろす訳ではないけどね」

 明るく話すニーナさんとは違い、少し複雑な表情でロニーさんが言った。

 ロニーさんは、私に依巫の事を話したくなさそうだ。 

 あまり詳しく聞いてもいけないのだろうか?

 望んで失格に扱ってもらっているから 強くは言えないけど、気にはなるんだよね~

 試験内容って……どういうのが合格なの?

 聞きたいけど、聞けない。


 すると、話題を変えるように、ロニーさんが

「それより、ユキハちゃん。 言葉、すごく上手くなったね~ 二ヶ月経ってないのに上達、早すぎるよ~」

 そう言って、明るく笑う。

 目は心なしか 笑ってないように見えるけど……

 仕方ない、あたしも これ以上目の前でイチャつかれても反応に困るので、この辺で失礼させてもらおう。

 

「お爺ちゃんのおかげです! もっとちゃんと話せるように、猛勉強中です!」

 あたしも 勉強方法については、詳しく追求されたくないので

「では、わたしはこれで! さようなら~」

 二人に手を振って、そそくさと別れた。


 ニーナさんと二人なら、もっと一緒にいたかったなぁ。



 *********************************




 神殿には すぐ近くまで森が迫っていて、あたしは その森を散策することにした。


 木々の新芽が キレイ。

 ぽかぽかした 春の日射しが気持ちいい。

 気持ち良過ぎて、ぼーっとなる。

 サリエス先生の薬を飲み始めてから ぐっすり眠れていない。

 夜の間 骨が軋むように痛むせいだ。

 成長痛?

 骨が伸びる時、痛くなるんだよね?

 計ったら 伸びてるかな?

 少しくらい 痛くても我慢しなくちゃ……


 そう思って 飲み続けてるけど、さすがに睡眠不足になったかな~?


 ああ だるい……

 少し 座ろう……

 あの大木の根元が 気持ちよさそう


 大木の根元は、少し開けていて、教室程の広さの広場のようになっていて、やわらかい午後の日差しが降り注いでいる。 芝生のように蜜に生える下草の淡い緑が、日の光に照らされて輝いていた。

 

「失礼します……」

 木にことわりを入れて腰を下ろす。

 なぜって?

 だって、御神木っぽい大木なんだもん。

 トト〇とかが 住んでそうなんだもん。


 座って、木にもたれて ボーっと上を見る。

 木漏れ日と、小鳥の鳴き声が心地いい。


「平和だ~」


 自分の世界の事が、嘘みたい。

 なんて、やすらか。


 しばらく、(ほう)けていたけど居心地がいいので ここで少し勉強することにした。

 スカートのポケットから小さな辞書を取り出して、お爺ちゃんから借りている魔法具のルーペみたいなのを片目にあてる。

 すると、見たものが頭の中に記憶されるという 反則な道具だ。 古代の遺物だそうで、どういう仕組みになっているのかは不明、お爺ちゃんも解明しようとしたけど 技術が失われているので再現は無理だと諦めた、超貴重品だ。

 もっと早く習得したいと言った あたしに、お爺ちゃんが貸してくれた。

 ただ、長時間使うと脳に負担がかかるので 1時間使ったら、1時間休む という約束をした。


 気が付くと


 2時間くらい辞書を眺めてた。


 ふあああ~

 疲れた。


 ころんと、横になる。

 伸びをすると、すごく気持ちいい。

 自然と まぶたが重くなる。


 温かい日差しに 気持ちよ~く ウトウトしてたのに、

 鼻がツーンとしてきて、金属臭いニオイが……


 ああ…… 鼻血だ。


 魔法のルーペ、使い過ぎたか。 

 何度か使いすぎで、そのたび鼻血を出してるから、今更びっくりしないけど……

 さすがに 寝ながら鼻血をたれ流すのはマヌケなので、ハンカチを探してポケットをさぐる。


 無い。

 何も、入って無い。


 しまった。


 何で拭こう?


 ぼやけた頭で考えながら、無理やり起き上がると

 いつからいたのか 仔犬?が二匹、ほんのすぐ近くに座っていて あたしの方をじっと見ている。


 犬?


 形は、確実に仔犬。 柴犬の子供っぽい。

 でも、色が…… 赤と、青だ。

 赤い仔犬は 白地に、耳・口の周り・足・尻尾・背筋が赤い。 青い仔犬は、それの青い版だ。

 こっちの犬を初めて見た。

 色が違うんだね~

 などと、鼻血垂れ流しで感動していると、仔犬があたしの前まで歩いてきて、いきなり飛びついてきた。

 うわ~可愛いー!!と悶絶するあたしに 二匹はよじ登る勢いで顔目掛けてダイブしてきた。


 そして


 ペロペロと、あたしの鼻を 舐め始めた。

 


 ペロペロ ペロペロ ペロペロ

 鼻が くすぐったい~


 ペロペロ ペロペロ ペロペロ

 うーん

 くすぐったいな~


 ペロペロ ペロペロ ペロペロ

 もう……

 いいかげんに、しつこい!

 顔が、べとべとになったよ!


 二匹を、自分から引き剥がして地面に置く。

 一瞬、私の鼻血を徹底的に舐め摂るこの子達が、肉食で あたしを食べようとしてるかもって思ったけど、小さな尻尾を 目一杯振っているのを見たら、そんな考えは吹き飛んでしまった。


「かわいい~」


 犬、大好き!

 毛色が多少違っていても、可愛いものは可愛い! 

 あたしの 手とかにじゃれつく仕草も、かわいすぎ!

  

 二匹は ちょこんと並んで座っている。

 赤が左で青が右。

 その様は、なんだか…… そう…… なんだか……


 お湯と水?


 水道のカランだよ~

 あははは! 


 突然笑い出した あたしを二匹は不思議そうに見ている。

 手を差し出すと匂いを嗅いでペロリと舐めた。

 尻尾をぱたぱたと振って、頭を撫でてやると手にまとわり付いてじゃれてきた。

       

「名前つけていい?」

 通じるとは思ってないけど、聞いてみる。 

 以外にも クゥ~ンと鳴いて、尻尾を振る。

 

「言葉、通じてるの?

 じゃあOKってことで。 何がいいかな? 

 赤と青…… まんまか。

 お湯と水、ホットとクール…… ファイアとアクア……良いじゃない! 

 まてまて…… 周りが洋風の名前ばっかりだし、あたしが付けるんだから和風のがいい!

 う~ん……

 オンレイ

 安直?

 気にするな! 

 よし! 決まった。

 君達の名前は オンレイ


「気に入った?」

 と 聞くと

「アン!」

 と答えてくれた。

 尻尾振ってるし 気に入ってくれたとしよう。



 夕刻を告げる神殿の鐘が鳴り出すと、オンとレイは落ち着かなくなった。

 日も傾いてきたし、お家に帰る時間なのかな?

 あたしも、そろそろ帰らないと……

 

「オン、レイ。 お家に帰る時間だよ。 楽しかったし、また遊んでね」

 そう言うと、分かったとばかりに あたしの周りをぐるぐる駆けて

 そのまま森の奥に走っていってしまった。


「また、会いたいなぁ」

 名残おしかったけど、むりやり連れて帰る訳にもいかないし、また会える事を祈る。 

 そして あたしも ミリが心配するといけないので、部屋に戻った。




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