4話 小さな決意 ~sideライア
ドアを軽くノックする
返事は無い。
まだ眠っているのかしら?
そっとドアを開け、中に入る。
ベッドを覗くと、小さく丸まってよく眠っている。
良かった。
うなされてもいないし、痛そうでもないわ。
2日前、シーウェルドが召喚に成功した依座様を見た時は 驚いたわ。
まさか依座様が、こんな子だなんて……
まだ小さい子供。
傷だらけで、汚れて、瀕死の状態で……
治療法師の サリエスに呼び出されて、集中治療室で治療をする際に裸を視た時、
昔の記憶が呼び起こされて、心臓を握り潰された様に 締め付けられた。
私の中の消えない記憶。
忘れてしまいたい、でも忘れられない愛しく悲しい思い出と、目の前の痛々しい少女が、つい重なってしまう……
いいえ、これは、依座様。
私の可愛かった、あの子じゃあない。
そう自分に言い聞かせて、サリエスを手伝った。
依巫様は
何処か高い所から落ちたみたいに骨が数ヶ所折れていた。
鼻も折れていた。
それと、打撲。
しかも、それだけじゃなく
身体中痣だらけで酷かった。
明らかに殴られた跡だわ。
小さい火傷の跡も沢山あった。
昨日今日でできた傷じゃない……
一体、どうしたらこんな非道い事になるのかしら。
どんな暮らしをしていたのかしら?
奴隷の焼き印は無かった……
親に捨てられた
浮浪児かしら?
分からない。
分からないけど
私がお世話する以上、もう酷い目には遭わせませんわ。
サリエスが治癒魔法を施しましたもの。
傷はすっかり癒えたでしょう?
起きたら美味しい食事にしましょうね。
栄養を取ってゆっくり休めば
カサカサの肌も、艶のない髪も、痩せこけた体も 良くなるわ。
だから、今はゆっくり
おやすみなさい。