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巫女と依巫  作者: 若宮 不二
第1章
27/49

27話 巫女 2 饒舌な沈黙 ~side花音

花音の頭の中の話です

 

 ここは、ヤバイ。


 神官を名乗るお爺ちゃん達……

 怪我した女の子、無視しやがった。

 衣装も豪華で位が高いらしい神官たち……高慢糞坊主(こうまんくそぼうず)どもと命名しよう。

 私の事を「巫女様」「姫様」などと、目一杯持ち上げてはいるが、その目が語ってるよ

 賛辞(さんじ)贅沢(ぜいたく)で溺れさせとけば、下賎(げせん)の小娘なんぞ容易(たやす)くあしらえるって。


 残念でした。


 贅沢(ぜいたく)にはね、慣れてるんだ~

 自分の利益の事だけ考えて行動する人達の、(よこしま)()にもね。


 それにしても……問題は、この胡散臭(うさんくさ)い奴らから、何時(いつ)逃げ出して

 どうやって帰るかって事。


 帰る方法はあるんだろうか?

 知り合いが一緒だなんて、ものすごい偶然で少し心強いけど、永山さんだし……

 彼女を()てには出来ないか。


 永山さん、怪我してたみたいだし……

 今すぐは動けそうにない。

 大丈夫かな?

 早く合流してしまいだいんだけど…… 一緒に帰れるものなら そうしたいしね。


 私から見た彼女の印象は、とにかく悪目立ちする子だ。


 その低い身長と痩せた体型は、見た者を一瞬ギョッとさせる。

 黙って廊下の隅に立っていたら、最早(もはや)学校の怪談並みの不気味さがある。

 それに加えて、歴代担任達の目の()け様だ。

 実際に同じクラスになった事がないから、彼女と同じクラスだった子からの話だけど

 親から虐待を受けている!と言えない事情があるらしく、それを止められない引け目や罪悪感から逃れる為か、とにかく皆、彼女の事を特別気に()けていたそうだ。

 新学期のうちはクラスメイトも「自分より酷い環境の子がいるんだ。自分は恵まれている。彼女に負けないよう、頑張ろう。」という空気になるんだけど、

 その内、彼らにもそれぞれ悩みなどが出てくる訳で、その悩みを彼女の置かれている状況と比べた時、鬱屈(うっくつ)した気分になるらしい。

 自分にとっては大きな悩みでも、彼女にしたら取るに足らないことだろうと 思ってしまうと、自分の器が小さいと自分で認めることになる。ささいな事でも、一喜一憂したい年頃である。

 自分の周りの全てに感謝して生きるなんて、中学生には無理な話だ。

 むしろ、全てに反発して、不平と文句をタラタラ言って暮らしていたい。

 それが表立って出来なくなるのは、苦痛になる。

 そこで、彼女の存在が鬱陶(うっとう)しくなり、自然発生的にイジメが始まるという構図らしい。


 私はイジメられる方にも原因があると、思っている。

 彼女は、もっとはっきり、自分の気持ちを言って、態度を明示するべきだと思う。

 まあ、関わった事の無い私が言うのも変だけど……



 その永山さんが、異世界に飛ばされて、怪我までしてるなんて……

 どんだけ不幸体質なの?

 と、自分のことはさておき あきれてしまう。


 二人ともが、ちゃんと帰れればいいんだけどな。



 私がこんな事を考えている間も、高慢糞坊主どもはこの国の窮状をお涙頂戴に訴えて、私の重要性・必要性等々 延々と、熱弁をふるってらっしゃる。


(「わたしでお役に立てるなら、喜んで!頑張ります!」とでも言うと思ってんの?)

 誰が言うか、ボケ。

 別世界から女の子浚う暇があるんなら、強力な兵器でも開発しとけ。



 それはそうと、さっきから隣に座っているアルから、熱~い視線をガンガン感じるんだけど……

 アルは、正真正銘の王子様だった。

 生まれながらの、セレブってやつか……

 あ~、苦手だな。

 巫女と召喚者の関係も聞きました。

 運命の人?

 そんなの、本気で信じてるの?

 そりゃあ、ロマンチックですよね。


 でもね。


 言い伝えとか、一目惚れとかで、お嫁さん決めちゃうのは どうかと思うよ?


 王子さまの定番かもしれないけどもさ。


 シンデレラや白雪姫、オーロラ姫もだ―――――おかしいよ?

 白雪姫とオーロラ姫に至っては、一言も話していないよ?

 顔だけか!

 王子は顔しか見てないのかっ!と私はいつも叫びたくなる。


 あ……オーロラ姫は一人娘だから、王に成れるのか……


 私もそうなるかな。

 三条家の血筋と多国籍企業のグループ創業者の娘。

 血統と金――――― 欲する者は多い。

 閨閥(けいばつ)に組み込んで、資産を(うるお)わせたい御方々(おんかたがた)や、由緒正しき三条家と姻戚(いんせき)関係を結びたい成り上がりがこぞって、(ねら)ってくる。


 執事の黒須(くろす)が私に()いてからは、対処方法もずいぶん身に付いたけど、一度痛い目には()っている。

 だから、初対面の人を信用する事は出来そうにない。


 というわけで、ごめんね。アル。

 一目見た時から、2人は()かれあってその夜の内にベッドインなんて、ありえないから。

 そんなにフェロモン垂れ流しで熱心に見つめられても―――――――― 無理。

 きっと勝手な妄想(もうそう)(ふく)らましているんだろうな……

 見た目と違い、無垢(むく)でも初心(うぶ)でも可憐(かれん)でもないんです、残念ながら。

 だから、お願いです。

 そんなに、ウットリした顔で こっちを見るなっ!

 こっちは、この世界が(つか)めなくて、どんな対応していいのか悩んでるっていうのに!




 それに。


 永山さんを引きずり上げて放り投げた奴。

 アルの仲間なんじゃない?

 制服似てるし、馴れ馴れしかったよ?

 アルも、止めなかったしね……

 

 信用、できない。


 やっぱり信用なんて、とても、できないわ。

 アルフレッド。

 


 あーあ。まだまだ、知らない事が多すぎる。

 綺羅綺羅(きらきら)王子様に、(ほだ)されてうっかりドキドキしている場合じゃないよね。

 糞坊主達は、自分の都合のいい情報しかくれなさそうだし……

 一歩間違えると、あっさり殺されそう……

 

 情報、誰から聞き出せばいい?

 アルなら、ガードが(ゆる)そう?


 帰り方とか、何か方法があるのかな?

 呼べたんだから、帰る方法もあって欲しい。

 帰す方法ありません。だったら ヤだな~



 とにかく今は、様子を見るしかないか……


 そして、私は(しばら)くの間は 彼らに従順な、望み通りの巫女を演じ 情報を集める事にした。






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